2定道議会予算特別委員会の質問・答弁概要(28年7月5日)(道議会 2016-11-01付)
二定道議会予算特別委員会第二分科会(七月五日開催)における荒当聖吾委員(公明党)の質問、および柴田達夫教育長、梶浦仁学校教育監、村上明寛総務政策局長、岸小夜子学校教育局指導担当局長、伊賀治康教職員課服務担当課長、河原範毅高校教育課長、鈴木淳義務教育課長、堀本厚健康・体育課長、船木誠生涯学習課長の答弁の概要はつぎのとおり。
◆プログラミング教育
荒当委員 小学生のプログラミング教育について議論されている。小学生でのプログラミング教育の導入の是非はともかく、国際競争力という視点から、プログラミング教育の重要性は高まることは間違いはないと思われる。
コンピューターに仕事をさせるプログラムの勉強については、先生方の力量に依存する部分が多く、手が回っていないのが実態であろうかと思う。
そんな中、全国に先駆け、地域のイベントとしてプログラミング教育を実践している自治体がある。旭川では六年前から、釧路では四年前から、U―16プログラミングコンテストで、小・中学生がつくったプログラム同士を戦わせるというイベントを行っている。
特筆すべき点は、中学生へのプログラミングの指導を行っているのは、地元のプログラムを学ぶ高専生や工業高校の生徒であること。夏休みに二回、そのあとは、要請があれば中学校まで出向いて教えている。教える高専生や工業高校生も良い勉強になっており、優秀な子どもたちを輩出しているということである。
パソコン関係の部に所属している中学生は北海道でもいるが、先生に聞くと、部活動の目標がない、大会がないと口にしている。プログラムを学ぶ上で、目標となるものが絶対に必要であり、そのヒントは旭川、釧路にあると考える。道教委としても、今後の求められる教育活動の中に、こうした子どもたちにとって学びの目標となるイベントなどの内容を含めて考えていく必要があると思うが、見解を伺う。
村上総務政策局長 プログラミング教育について。プログラミング教育は、子どもたちに、コンピューターに意図した処理を行うように指示することができるということを体験させながら、論理的思考力や創造性、問題解決能力などを、各教科等で育まれる思考力を基盤としながら子どもたちの発達の段階に即して身に付けさせていくことを目指すものであり、こうしたプログラミング教育を推進するためには、ICT環境の整備と教員の指導力の向上を図ることはもとより、専門的な知識を有する人材や関係機関等と、連携・協働していくことが重要と考えている。
道教委としては、これまでも高校生はもとより、小・中学生も参加できる道産業教育フェアや工業高校フェスタへの支援や周知を行ってきており、参加した子どもたちからは、高校生にロボットゲームやマイコンカーラリーなどを教えてもらい、プログラミングに興味がもてたとの感想も聞かれており、子どもたちが一層こうした体験ができるよう機会の充実に向けて、関係機関とも連携していく考えである。
― 意 見 ―
荒当委員 今までは、「壊れない、故障しない」という、日本の製品精度の高いものづくりが世界的な評価を得ていたが、これからは、プログラム精度の高いものづくりへと、必ず変わってくると思われる。
中央教育審議会で教育内容に関する主な改善事項において、中学校段階では、「特に、技術・家庭科の内容としては、マルチメディアの活用やプログラミングと計測・制御などに関する基本的な内容をすべての生徒に学習させる」と書いてある。ここまで記載されるということは、必ず改訂学習指導要領に、プログラミング教育をやりなさいと書かれるはずなので、道が先進的なプログラミング教育をするべきと提案する。
その準備として、学びの目標となるイベントをたくさん確保し、子どもたちが携われるようにお願いしたい。
◆工業高校の人材育成
荒当委員 企業は事業継続性の観点から、熟練技能者の育成に、より真剣に取り組むようになり、特に、大企業では、技能五輪と熟練技能者育成を関連付け、専門の技能五輪チームをつくり、世界大会優勝を目指している。多くの北海道の工業高校出身者が、技能大会で活躍している。
北海道は、工業系の職種がほかの都府県から比べると少ない傾向にあり、熟練技能士のマイスター登録数についても同様となっている。ほかの都府県では、熟練技能士が、高校生へのより高度な技能指導を行っているケースが多いと聞いているが、北海道においては、工業科の先生の努力に頼る部分が大きい現状にある。
一見すると地味な活動にみえるが、わが国のものづくりを支える極めて重要な活動であり、道教委としても、もっと注目して、工業教育の充実に向け、ものづくり人材の育成を支援していく必要があると思うが、見解を伺う。
河原高校教育課長 工業教育の充実について。道教委では、これまで、生徒や教員に対し、厚生労働省が行うものづくりマイスター制度を活用し、認定された熟練技能者が高度なものづくり技能を指導する取組を推奨してきており、工業教育を展開している道立高校十七校のうち、昨年度は十三校で実施した。
また、昨年度から、企業や大学等と連携した取組を行う「専門高校プログレッシブ・プロジェクト推進事業」では、研究指定校八校のうち、二校の工業科設置校が、地域産業の特性に応じて、高齢者や障がい者のコンピューター操作をサポートする機器の開発やホタテの貝殻を粉砕処理し、ろ過材として再利用するための研究などに取り組んできている。
さらに、教員の指導力の向上を図るため、隔年ごとに高校産業教育実技講座と高校産業教育長期実技研修を実施している。
道教委としては、北海道の経済をけん引することが期待されるものづくり産業の人材を育成することは非常に重要と考えており、今後においては、これまでの取組の充実を図るとともに、教員の主体的な研修への支援を行うほか、大学や企業等と連携して取り組んでいる事例を広く普及するなどして、ものづくり人材の育成に向けた工業教育の充実に一層努めていく。
― 指 摘 ―
荒当委員 工業教育の充実は、先生方で決まると思う。しかし、先生方は教科指導、生徒指導にはじまって、クラス担任、クラブ顧問、通学指導から研修会に至るまで、実に多忙である。その中で、専門分野での指導力向上を図るために努力をいただいていることはよく分かる。
現在は、教員採用の受検資格年齢が五十九歳以下と大きく引き上げられ、これは、その道のスペシャリスト、プロフェッショナルを募集する取組からの引き上げと評価している。一層、努めていただくようにお願いする。
荒当委員 現在、道立学校には、生徒の情報教育用、産振設備用、教職員の校務用としてのパソコンが公費で措置されており、教育効果を高めていることは承知している。
しかし、パソコンを利用するのに当たっては、一つの大きな問題として、OSやアプリケーションを更新し続けなければならないということがある。
特に、教育用としては、最新の技術を学び、即戦力を養成することになる工業高校の情報技術科において、最新のパソコン、十分な性能を備えたパソコンを利用することはとても重要なことだと考えている。
道教委として、そのような問題に対処しているとは思うが、特に、情報技術科の生徒が日々使うパソコンの更新がどのようになっているのか伺う。
河原高校教育課長 情報技術科のパソコンの更新について。道教委においては、情報技術科を設置しているすべての道立高校六校に対し、二十五年十月に生徒実習用システムとして、五年リースで生徒用パソコン二十台、教師用パソコン一台を新たに整備しており、OSについては、常に最新のOSが利用可能となるようクラウド方式を採用している。
そのほか、職業科を設置しているすべての道立高校五十九校の教育用パソコンについて、二十七年度にリースの更新期間が八年であったものを六年に短縮しており、今後とも、生徒が最新の情報技術を学べるよう必要な教育環境の整備に努めていく。
― 意 見 ―
荒当委員 OSやソフトウエアの更新は、金がかかるものだが、オープンソースのOSやアプリなども活用し、いろいろ工夫して、教育環境の整備に努めていただきたい。
◆運動部活動の外部指導者
荒当委員 生徒たちの部活動は、それぞれの学校の先生方が顧問を務めることとなっている。特に、運動部活動については、自分が経験したことのある種目の部活動の顧問をしている先生もいるが、中には、自ら全く経験のない種目の顧問を引き受けざるを得ない先生もいる。一から勉強しなければならない先生もたくさんいる。しかし、どの先生方も、平日や休日の練習、大会参加などに、勤務時間外であっても、子どもたちのためにという思いで、日夜奮闘している現状にあると承知している。
一方、道内では、中・高校生の体育授業や部活動などを支援する団体A―bankが立ち上がっている。
このような団体と連携を図り、外部指導者を中・高校の運動部活動に導入することは、自分の専門ではない種目を指導している先生にとっては、指導方法について学ぶ機会にもなり、生徒にとっても、本物にふれる機会となって、大変効果的な取組であると思う。
こうしたことから、市町村教委や学校が、運動部活動を支援してくれる団体などと連携し、外部指導者を積極的に活用することが重要と考えるが、道教委として、どのように考えているのか伺う。
堀本健康・体育課長 運動部活動における外部指導者の活用について。本道では、学校の小規模化に伴う教職員数の減少による練習・引率等の負担の増加や、生徒の部活動指導へのニーズの高度化・専門化に対応した指導者の不足などの課題が生じており、こうした課題への対応策として、外部指導者の活用も有効であると考えている。
こうしたことから、道教委としては、これまでも、道体育協会との連携による外部指導者人材リストの作成や、専門的な指導者がいない道立学校への外部指導者の派遣などに取り組んできたほか、ことし三月には、市町村が外部指導者を公募し、ニーズに応じた専門的な指導力を有する人材を中学校に派遣している事例や、学校支援地域本部を活用し、地域の人材を派遣している事例など、道内外の取組をまとめた実践事例集を作成し、市町村教委および学校に情報提供した。
今後においては、こうした人材リストや事例集等を活用し、各種会議や研修会等を通じて、効果的な外部指導者の活用について指導助言を行うとともに、運動部活動への支援を行っている団体等について、新たに情報収集し、学校等へ提供するなど、外部指導者等を活用した部活動指導の充実に向けて取り組んでいく考えである。
― 指 摘 ―
荒当委員 学校がどんどん閉校していく中で、残っている学校も小規模化が進み、先生の数を十分に確保できない学校もたくさんある。野球、サッカー、バスケットボール、バレーボールなど、どこの学校にもありそうな部活動であるが、野球やサッカーは生徒数が少なく、チームが組めないから部活動がないだとか、指導できる先生がいなくてできないというような問題を抱えていることもあろうかと思う。
また、児童生徒が本物のアスリートやプロフェッショナルとふれる機会は大変有意義である。広い北海道内のすべての地域でそれをかなえることは難しいかもしれないが、都市部からでも進めて、広がりをみせていただきたいと思うので、よろしくお願いする。
◆学校・家庭・地域の連携
荒当委員 核家族化や住民同士のつながりの希薄化などを背景に、地域が一体となって子どもの成長を支える意識が、以前に比べ、低くなっているのではないかと感じている。現在、取組が進められているコミュニティ・スクールに、PTAとしても積極的にかかわっていくことが必要ではないかと考えている。
子どもの健やかな成長のために、学校、家庭、地域は、それぞれの役割を自覚して、協力することが必要である。そのためには、PTAの存在は大きいと思うが、そもそもPTAの目的と活動について伺う。
船木生涯学習課長 PTAの目的と活動について。PTAは、保護者と教職員が協力して、学校および家庭における教育に関し理解を深め、会員相互の学習やその他の必要な活動を行い、児童生徒の健全な育成を図ることを目的としている。
その活動については、例えば、子どもの生活習慣に関する研修会の開催やキャリア教育の一環として、親子企業訪問の実施、登下校時の安全指導や地域防災訓練への参画、通学路の清掃や花壇の整備など、学校と家庭、地域をつなぐ様々な取組が行われているものと承知している。
荒当委員 PTA活動を充実させるには、様々な団体との連携が必要。現在、PTAと道教委が連携した取組が進められていると認識をしているが、どのような取組をしているのか伺う。
船木生涯学習課長 PTAと道教委が連携した取組について。道教委では、これまで、PTA等と連携し、子どもの生活習慣の改善を目指した「早寝早起き朝ごはん」運動の展開をしており、夏休みなどの長期休業中に様々な体験を促す「子ども朝活」事業や、規則正しい生活習慣を身に付ける「生活リズムチェックシート」の活用促進に取り組んできた。
また、道教委と小・中学校、高校のPTA連合会等で構成する、「北海道子どもの生活習慣づくり実行委員会」において、体験活動や読書に親しむことを目的としたノーゲームデーの設定や、インターネットの利用のルールづくりの普及を図るフォーラムの実施などの「どさんこアウトメディアプロジェクト」を推進している。
道教委としては、今後とも、PTA等の関係団体と連携し、子どもたちの健全育成に向けた各種取組を推進していく。
― 意 見 ―
荒当委員 PTAの新しい在り方について、真剣に話し合う時期に来ているのではないか。
PTAはこうあるべきであるという決めつけを守っていくのも大事なことだが、集える人たちで集い、できるところからやっていくというリスタートも、そろそろ考えなければいけないのかと思っている。
荒当委員 学校現場も保護者も大変忙しく、余裕のない中、PTA活動について、実質的には役員など一部の保護者がかかわっているのが実情だと考えている。だからこそ、保護者だけではなく、多くの地域の方々が協力し、学校と地域をつなぐコミュニティ・スクールのような取組が必要なのではないか。
コミュニティ・スクールは、学校と保護者や地域の皆さんが、ともに知恵を出し合い、学校運営に意見を反映させることで、協働しながら子どもたちの豊かな成長を支え、「地域とともにある学校づくり」を進める仕組みであり、こうした取組が、より多くの保護者が教育活動に積極的にかかわっていくことにつながるものと考える。
こうしたことから、コミュニティ・スクールの導入をより積極的に進めるべきと考えるが、道教委の見解を伺う。
梶浦学校教育監 コミュニティ・スクールについて。地域住民が学校運営に参画するコミュニティ・スクールは、学校と地域が力を合わせて子どもの成長を支える仕組みであり、保護者や地域住民の連携・協力を得ることによって、学校の環境づくりや教育活動の充実を図ることができるとともに、保護者同士や地域の人々の人間関係の構築や学校を中心とした地域のネットワークの形成など、地域づくりの促進も期待されるものと考えている。
道教委としては、学校と地域が子どもたちの成長に対する目標や課題を共有し、社会総がかりで子どもたちを育む持続可能な仕組みとしてコミュニティ・スクールの活用が広がるよう、これまでも、制度の仕組み等を学校関係者を中心に周知する研修会等を行ってきており、今後、さらに研修内容を充実し、保護者や地域住民に広く参加を働きかけるほか、ことし十月には、全国的な「コミュニティ・スクール推進フォーラム」を開催するなど、導入促進に向けた取組を強化していく考えである。
― 指 摘 ―
荒当委員 生徒を主役に教育活動の充実を図っていくことが重要と考える。地域がもつ学校への期待と付託を実現できるよう、コミュニティ・スクールの早期導入促進をお願いする。
(道議会 2016-11-01付)
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