3定道議会一般質問の質問・答弁概要(28年9月26日)
(道議会 2016-12-21付)

 三定道議会一般質問(九月二十六日開催)における森成之議員(公明党)、藤川雅司議員(民進党・道民連合)、真下紀子議員(日本共産党)の質問、および柴田達夫教育長、道の村木一行保健福祉部長、田中宏之保健福祉部少子高齢化対策監の答弁の概要はつぎのとおり。

◆日本遺産について

森議員 国において、二十七年度に創設された日本遺産は、地域の歴史的魅力や特色を通じて、地域の文化・伝統を語るストーリーを認定する制度で、そのストーリーを語る上で不可欠な、魅力ある有形・無形の文化財群を総合的に活用し、国内外に戦略的に発信することによって、地域の活性化を図ることを目的としているものと承知している。

 オリンピック・パラリンピック東京大会が開催される二〇二〇年までに全国で百件程度が認定される予定であり、現在、三十八件が認定されているが、道内ではいまだに認定されていないとのことである。

 日本遺産は、認定された地域の認知度が高まるとともに、認定後の様々な取組を通じて、地域住民のアイデンティティーの再確認や地域のブランド化にも貢献するなど、文化振興はもとより、地域振興や観光振興にも大いに資する取組の一つであることから、早期認定に向けて、道教委としても積極的に取り組む必要があると考える。教育長の所見を伺う。

柴田教育長 日本遺産について。日本遺産は、地域が様々な文化財を中心に食や観光などを含めてパッケージ化し、魅力あるストーリーとして国内外に発信することによって、地域の活性化を図ることを目的としており、地方創生にも資するものであると認識している。

 道教委では、これまで文化庁職員を講師とする日本遺産の認定に向けた説明会の開催や、認定を受けた日本遺産の内容やその効果などについて、市町村に情報提供するとともに、意向調査を実施し、認定への希望のある市町村に対し、専門的な立場での指導助言を行ってきた。

 現在、二十九年度の認定に向け、江差町では、国指定の重要文化財である「旧中村家住宅」や全国的にも知名度の高い「江差追分」などを中心として、また、函館市と松前町では道外の九自治体とともに、北前船寄港地の繁栄の歴史などを中心として、それぞれストーリーの作成が進められているほか、三十年度以降の認定を目指し、小樽市など他の地域でも検討組織の立ち上げなど機運の高まりがみられる。

 道教委としては、観光や地域振興などの関係部局で構成する「日本遺産連絡調整会議」などを通じて、知事部局との連携を図りながら、国との調整や市町村への指導助言など、早期の認定に向けて、積極的に取り組んでいく。

◆主権者教育について

藤川議員 ことし七月十日に投票が行われた参議院議員選挙から、国政選挙において本格的に十八歳以上から選挙権行使が行われるようになった。メディアなどでも取り上げられ注目され、関心が高まってきた。

 投票率をみると、全国では全体の投票率が五四・七%、十八歳五一・二八%、十九歳四二・三%、十八歳と十九歳では四六・七八%となっている。北海道においては、全体の投票率が五六・七八%、十八歳四六・七%、十九歳四〇・〇三%、十八・十九歳では四三・三八%という結果であった。

 道教委では、この十八歳・十九歳の投票率についてどのように受け止めているのか、また、道選挙管理委員会との連携などによって、意識の醸成に取り組んできたと承知しているが、取組の効果はどうであったのか伺う。

柴田教育長 政治的教養を育む教育に関し、参議院議員選挙における十八歳・十九歳の投票率などについて。ことし七月に実施された参院選における本道の十八歳・十九歳の投票率は四三・三八%であり、全国の投票率と比較すると約三ポイント低く、北海道全体の投票率との比較でも約一三ポイント低いという結果であったことから、生徒が政治参加の重要性や選挙の意義について、より理解を深めるとともに、有権者として自らの判断で権利を行使することができるよう、指導の充実を図る必要があると考えている。

 道立高校においては、選挙権年齢の引下げを踏まえ、公民科等で国が作成した副教材を活用し、主権者としての自覚を高める学習を実施してきたほか、選挙管理委員会の職員を招き、模擬選挙等を行っており、受講した生徒からは「選挙を身近に感じることができた」「自分も選挙権を大切にしたい」などの感想が出されている。

 道教委としては、このたびの参院選での投票率などを踏まえ、引き続き、生徒の政治参加の意識を高め、政治的教養を育むことができるよう、選挙管理委員会等と連携した実践的な取組の充実を図っていく考えである。

藤川議員 高校では、国が作成した副教材を活用した意識の醸成を図ってきたと承知している。

 この副教材をみると、なかなかよくできていると思う。すべての高校生に配布したとのことだが、どのように活用したのか、全学年で活用したのか伺う。

柴田教育長 副教材の活用等について。昨年九月に国が作成した高校生向け副教材は、公民科の科目「現代社会」や「政治・経済」の授業の中で、憲法や選挙、政治参加に関する学習において、また、総合的な学習の時間や特別活動等の中で、模擬選挙や模擬議会などの実践的な活動を取り入れる際などにおいて、すべての道立高校の全学年で活用されている。

 道教委としては、今後も、各学校において作成した指導計画に基づき、この副教材を効果的に活用するよう指導助言を行っていく考えである。

藤川議員 十八歳・十九歳の投票率の傾向をみると、十八歳の投票率が十九歳よりも高くなっている。この点からみても、若いうちからの意識の醸成が必要であると言えると思う。

 そこで、中学校からの取組も重要と考えるが、中学生に対する取組はどうなっているのか。今後、充実を図るべきと考えるが、どう取り組んでいくのか伺う。

柴田教育長 中学校における政治に対する関心を高める指導について。中学校では、学習指導要領に基づき、社会科公民的分野において、民主政治の仕組みを理解させ、議会制民主主義の意義などについて考えさせる学習などを行うこととなっており、道内の中学校においては、模擬選挙や、選挙管理委員会職員による講話を通じて政治参加について考える活動、また、議場において、地域に関する課題などについて首長と質疑を行う活動など創意工夫した学習活動も行われている。

 道教委では、今後、こうした中学校の実践事例を学校教育の手引に掲載し、指導の充実を図るとともに、国に対し、中学生用の副教材の作成などについて、働きかけていく考えである。

藤川議員 政治意識の醸成・向上は、学校だけではなく、家庭、地域社会での活動という場面でも、社会の出来事や課題などについて、関心をもってもらうことも重要である。

 学校としても、地域活動への参加についての動機づけ、地域と連携した政治意識の向上も必要と思うが、これまでの取組と、今後、どのように充実していくのか伺う。

柴田教育長 地域と連携した取組について。道教委としては、高校生が地域の課題解決に向け、主体的に取り組み、政治や選挙について理解を深めるためには、学校が地域等と連携した学習活動を行うことが大切であると考えている。

 これまで、道立高校では、総合的な学習の時間などにおいて、国の副教材等を活用しながら、地域の課題をテーマとして取り上げ、地域住民の意見を聴取しながら解決策を探る課題研究を行うほか、地方議会の視察や、高校生の視点からみた地域の将来について、「子ども会議」において、町に提言したりするなど、地域や関係機関等と連携した実践的な学習に取り組んできている。

 道教委としては、このような学習がより一層充実するよう、引き続き、選挙管理委員会はもとより、地域の関係機関と一層連携するとともに、地域と連携した実践事例等について情報収集を行い、優れた取組を各学校に提供していく考えである。

◆多様性を尊重する社会

真下議員 道いじめの防止等に関する条例、いじめ防止基本方針では、LGBT・SOGIに関しては、人権教育の推進にとどまっている。教育現場での研修機会も少なく、教職員の対応にも課題があるとの調査も報道されている。適確な理解に基づかない、誤った対応を普及しては、逆効果と言える。どのような研修に努めているのか、また、今後、どのように改善していくのか。さらに、今後、条例の見直しの中でどのように取り組もうとしているのか、教育長に伺う。

柴田教育長 多様性を尊重する社会に関し、LGBTやSOGIに関する教職員の研修等について。道教委では、LGBTやSOGI、いわゆる性同一性障害や性的指向、性自認などに関する正しい理解を深めさせるため、これまで、教職員向け指導資料を作成・配布し、校内研修等での活用を促すほか、各管内で実施する「生徒指導研究協議会」や、「初任段階養護教諭研修」などにも、性同一性障害等に関する内容を取り入れるなどして、研修の充実に努めてきた。

 しかしながら、市町村教委や道立学校において、研修を実施している割合が低いことから、今後、校内体制の整備に取り組んでいる事例や、指導資料等を活用した研修の事例などを取りまとめ、学校に提供するなどして、研修の確実な実施と充実に努めていく考えである。

 また、「北海道いじめの防止等に関する条例」については、条例施行後三年を目途として、国における「いじめ防止対策推進法」などの関連する法律の動向等を踏まえ、必要な措置を検討していく考えである。

真下議員 性的指向や性自認等に対する理解と高い寛容性の醸成のために様々な取組が必要とされる。特に、トイレの利用にストレスが高いと聞いたが、日常生活の中で、誰でもが使えるトイレの設置など、ハード面で対応していく必要があるのではないだろうか。今後、建築される建物も既存の建物も含めた公共建築物、また、学校現場において、どのように取り組む考えなのか伺う。

柴田教育長 性同一性障害等のある児童生徒に対する学校施設の対応などについて。道教委では、これまで、性同一性障害等も含め、様々な事情に配慮した多目的トイレについて、建物が狭隘である一校を除くすべての道立学校に整備してきたが、市町村立学校においては、半数程度の整備状況となっていることから、今後、市町村に対し、国の補助事業を活用した多目的トイレの整備などを積極的に働きかけていく考えである。

 また、性同一性障害等のある児童生徒に対しては、職員トイレの使用や更衣室としての保健室の利用など、学校生活の各場面で様々な工夫をしながら支援に取り組むよう、児童生徒の心情等を尊重したきめ細かな対応について、各種会議等を通じ、市町村教委や学校に対し、指導助言を行っていく。

◆貧困対策等について

真下議員 見えにくくなっている貧困のサインを見逃さず、学校や医療機関などと連携し、対象者の把握と支援のアプローチを行うかが大切になる。

 道は、相対的貧困等の支援に結び付けていくために、どのような対策をとるのか。

 また、貧困家庭の子どもたちを支援するためには、よりきめ細かな実態把握を行い、支援に結び付けていくことが必要と考えるが、どう対応するのか伺う。

田中少子高齢化対策監 支援が必要な子どもたちの把握などについて。子どもの貧困対策を効果的に進めるためには、関係する機関が子どもへの支援の視点に立ち、相談対応を出発点として、各種の取組につなげていくことが重要である。

 このため、学校におけるスクールソーシャルワーカーの配置推進による相談支援の充実に加え、生活困窮世帯の子どもたちに対する学習支援などに取り組むとともに、本年度から、様々な環境で生活する子どもたちが、学びや食事をともにしながら、安心して過ごすことのできる居場所づくりを進めることとしており、こうした取組を通して、支援を求める声を挙げることができない子どもたちを把握し、実際の支援に結び付けていくなど、相談支援施策の一層の充実を図っていく考えである。

柴田教育長 子どもたちへの支援について。道教委では、保護者の経済状況などにかかわらず、すべての子どもが等しく教育を受けることができるよう、これまでも、就学援助制度の適切な実施について、市町村教委や学校に対し、働きかけてきたが、今後は、知事部局が実施する子どもの生活環境などの実態調査なども参考にしながら、各市町村における就学援助の実施状況をより具体的に把握し、保護者に対する制度の周知徹底を図るなど、支援を必要とするすべての子どもの保護者が、こうした制度を活用できるよう促していく考えである。

― 指  摘 ―

真下議員 ことしの第一回定例会のわが会派の代表質問において、子どもの貧困対策計画の中で、子どもと保護者の生活支援に取り組むという大事な視点をもちながら、施策の達成年度と目標、財源の確保については、明らかにされていないこと、対象が限定され、子どもの貧困の捉え方が狭い上に、目標も低いと指摘したが、実態調査の結果を踏まえ、こうした課題を早急に解決すべく、見直していくことを強く求めておく。

真下議員 札幌市や旭川市などの事業実施医療機関では、就学援助対象者は世帯全員を無料低額診療の対象としていると聞いている。低所得であっても、子どもの貧困の背景にある世帯全体の受診を保証するものであり、画期的と言える。しかし、事業そのものを知らない人も多く、周知を図ることで必要な医療を受けることができる、あるいは、相談窓口へつなぐなどの効果が期待される。事業の効果に対する認識と、今後、どのように取り組むのか伺う。

 また、就学援助の周知と一体に、無料低額診療など他施策の普及啓発も行う必要があると考えられる。そうすることで、貧困の早期発見にもつながることが考えられるが、保護者や教職員への周知について、どのように取り組むのか伺う。

村木保健福祉部長 就学援助対象者の無料低額診療事業の利用について。無料低額診療事業における診療費減免の方法は、事業を実施する医療機関において定めることとされ、道内では、一部の医療機関において、就学援助制度の対象となっている保護者の世帯を対象とする取組を行っており、生活に困窮する世帯の医療を受ける機会を確保する観点から、有意義なものと考えている。

 道としては、引き続き、無料低額診療を実施する医療機関について、ホームページによる情報提供を行うこととしているが、各医療機関の事業内容などについても、検討していく。

柴田教育長 他の支援制度に関する保護者等への周知について。道教委では、就学援助制度について、これまでも、保護者等への周知も含め、制度の適切な実施について、市町村教委などに働きかけてきており、各市町村では、子どもの入学時や進級時における保護者への制度の案内のほか、広報誌やホームページの活用など、様々な機会を通じて周知を行っている。

 道教委としては、今後、就学援助制度の周知に際しては、無料低額診療など福祉担当部局等が実施する支援制度などについても併せて知らせるなど、各市町村において、学校や保護者等に対して、よりきめ細やかな情報提供が行われるよう、知事部局とも連携しながら、働きかけていく考えである。

― 指  摘 ―

真下議員 道も有意義と評価された無料低額診療について、道民に広く周知するとともに、医療支援の在り方として、道においても、どのような方法がとれるのか、考えておいていただくよう指摘する。

(道議会 2016-12-21付)

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