4定道議会予算特別委の質問・答弁概要(28年12月12日)(道議会 2017-03-08付)
四定道議会予算特別委員会(二十八年十二月十二日開催)における内田尊之委員(自民党・道民会議)、小岩均委員(民進党・道民連合)の質問、および柴田達夫教育長、梶浦仁学校教育監、村上明寛総務政策局長、北村善春学校教育局長、岸小夜子学校教育局指導担当局長、桜井康仁教育政策課長、原光宏教職員課長、鈴木淳義務教育課長、川端雄一学校教育局参事(生徒指導・学校安全)の答弁の概要はつぎのとおり。
◆通学路の安全確保
内田委員 二十四年に京都府や千葉県などで、通学路を登下校中の児童生徒が亡くなったり、大けがを負ったりといった交通事故が相次いだことから、文部科学省、国土交通省および警察庁が連携して、対応策を検討した。
その結果、「通学路における緊急合同点検等実施要領」を作成し、関係機関が連携して通学路の安全点検を実施するとともに、安全対策を講じるよう各都道府県教委などに依頼しており、道内においても、各市町村が対策に取り組んだと承知している。
しかし、最近においても、通学路を登下校中の子どもたちが被害者となる交通事故が、全国各地で相次いでいる。
そのため、国においては、先月、文科省、国土交通省および警察庁が合同で都道府県に対し、通学路の交通安全確保に向けた取組のさらなる推進を促したと承知しているが、本道においては、これから本格的な冬に向かうことから、除雪に伴う雪山の問題など、あらためて子どもたちを守る取組を徹底することが大切であると考えているので、以下、伺っていく。
道教委は、二十四年にすべての市町村を対象として通学路の調査をしたところ、いわゆる「危険個所」が九百九十六ヵ所にのぼったと承知している。
「危険個所」については、現在、必要な対策がどのように講じられているのか、伺いたいと思う。
川端学校教育局参事(生徒指導・学校安全) 危険個所における必要な対策について。道教委においては、これまで、二十四年の点検で対策が必要となった危険個所について、道路管理者や警察および市町村等に協力要請を行うほか、通学路の安全マップが作成されるよう各学校に指導助言するなど、安全対策が円滑に行われるよう支援してきた。
現段階においては、すべての個所において、例えば、危険個所への看板の設置や危険個所を迂回する通学路の工夫のほか、スクールガードなどの地域ボランティアと連携した登下校時間帯の街頭指導など、地域や関係機関と連携した取組が実施されている。
内田委員 道内において、登下校中に児童生徒が被害者となった交通事故は、二十五年度以降、どのようになっているのか、発生状況について伺いたい。
川端学校教育局参事(生徒指導・学校安全) 登下校中における交通事故の発生状況について。これまで、道教委では、児童生徒が登下校中に全治一週間以上のけがを負う交通事故に遭った場合には、道教委への報告を市町村教委や学校に求めてきている。
札幌市を除く道内の公立学校における事故発生の報告件数については、二十五年度は、小学生が十件、中学生が七件で合計十七件、二十六年度は、小学生が十二件、中学生が十二件で合計二十四件、二十七年度は、小学生が十二件、中学生が十七件で合計二十九件、二十八年度は九月末現在、小学生が五件、中学生が五件で合計十件となっている。
また、事故の内容別では、二十五年四月から二十八年九月末までの期間の総件数八十件のうち、歩行中に車などと接触した事故が五十一件、自転車の乗車中に車などと接触した事故が二十八件、スクールバス乗車中の事故が一件であった。
内田委員 様々な取組をしているということだが、残念ながら数字をみると、今までの取組の成果がみえていないと言わざるを得ないのではないかと思う。
ただ、小・中学校では、二十五年度に比べ増加傾向にあり、特に中学生の増加傾向が大きい。この点について、どのように受け止めているのか、また、事故防止に向けてどのように取り組む考えなのか伺う。
川端学校教育局参事(生徒指導・学校安全) 中学生の事故の状況について。二十五年度から二十七年度の三年間に報告された中学生の交通事故は、経年で七件、十二件、十七件と増加傾向にあり、児童生徒が安心して学校生活を送る上でも登下校時の安全を確保することは重要な課題であると受け止めている。
事故の内容としては、三十六件中二十一件が自転車運転中の事故となっており、道教委では、これまでも、自転車運転に関する道路交通法の改正点など、交通ルールを周知する取組を行ってきているが、今後においては、あらためて、交通ルールの順守や生徒が自ら危険を予測し回避する力を身に付けられるよう、警察等と連携した実技を伴う交通安全教育の実施に向け、関係市町村教委に対し、これまで以上にしっかりと働きかけを行っていく考えである。
内田委員 国の要領では、子どもたちを交通事故から守るため、地域を挙げて「推進体制」を整えることが推奨されている。
通学路の安全は学校だけが取り組むべきものではなく、保護者、地域が一体となって取り組むことが大切であると考えている。
推進組織はそのために必要だと考えるが、組織率は十分ではないと聞く。
地域を挙げて通学路の安全を確保するため、地域の実態に即した推進組織の結成を促すべきと考えるが、見解を伺う。
川端学校教育局参事(生徒指導・学校安全) 推進体制の整備について。道教委では、通学路の安全確保に万全を期すため、地域ごとに推進体制を整備し、通学路交通安全プログラムを策定するとともに、これに基づく取組を継続して推進することが重要であると考えている。
このため、道教委では、すべての管内で毎年開催している「学校安全推進会議」や「学校安全教室」などの機会に、体制整備の必要性等を市町村教委に働きかけてきており、二十七年度末においては、札幌市を除く百一の市町村で整備され、二十八年度中には、新たに六十六の市町村で整備を行う予定となっている。
今後においては、未整備の市町村教委に対して、既存の組織の活用も含めて、早急に体制を整備するよう一層働きかけを行っていく考えである。
内田委員 文科省の指針では、各市町村が「通学路交通安全プログラム」を策定するよう促している。
しかし、このプログラムも推進体制と同じように、策定が進んでいないと聞く。道教委として、積極的な対応が望まれるが、どのように取り組むのか見解を伺いたい。
川端学校教育局参事(生徒指導・学校安全) 通学路交通安全プログラムの策定状況について。二十七年度末においては、六十五の市町村で策定され、二十八年度中には、新たに七十六の市町村が策定予定となっている。
道教委としては、通学路交通安全プログラムに基づき、年一回を基本とした安全マップの見直しの機会などを活用して、学校、教育委員会、警察等が連携し、道路の幅や見通し、車両の通行量などの点検を行い、その点検結果に基づく対策の実施や、対策内容の改善・充実を一連のPDCAサイクルとして取り組むことで、通学路の交通安全の確保が効果的に図られるものと考えており、今後、未策定の市町村教委に対して、実効性のあるプログラムを策定・実施している事例を提供するなどして、すべての市町村で策定するよう積極的に働きかけていく考えである。
内田委員 文科省は二十五年に、公立学校だけでなく、国立、私立の学校も含め、地域ぐるみで連携して取り組むことが大切であるとして、私立学校の所管部局や附属学校をもっている国立大学にも対応を依頼している。
道内において、これらの学校と地域の連携はどのように図られているのか伺う。
北村学校教育局長 国立、私立を含めた取組について。道内においては、推進体制が整備されている百一市町村のうち、三市に国立学校が、十六の市と町に私立学校が設置されており、推進体制に参画しているところは一町にとどまっている状況である。
国では、各地域で連携した取組がなされるよう、国立・私立学校に対し、教育委員会と連携しつつ、推進体制へ積極的に参画するよう依頼してきているが、道教委においても、このことを踏まえ、国立・私立学校が各地域の推進体制に積極的に参画し、通学路交通安全プログラムに基づく取組が実施されるよう、本年十二月に市町村教委等に通知をしており、今後においても、知事部局や国立大学法人等と情報共有するなど連携を強化し、国立や私立学校も参画した取組の推進が図られるよう努めていく。
―指摘―
内田委員 ことしも十月二十八日、横浜市で集団登校中の小学生の列に軽トラックが突っ込み、一年生の男の子が亡くなったほか、四人が重軽傷を負ったという事故が発生している。千葉県の八街市でも十一月二日、集団登校中の小学生の列にトラックが突っ込み、四人がけがを負う事故も発生している。
北海道はこれから厳寒、雪の季節を迎え、雪山の陰になって見通しが非常に悪くなってきており、事故につながる危険性が大きくなってきている。行政、学校、地域が一体となって、子どもたちを守る総合的な取組を進めていただくよう、強く指摘する。
◆特別支援教育について
内田委員 学校の先生は誰にでもできるものではない。昭和二十四年に制定された「教育職員免許法」によって、勤務する幼稚園、小・中・高校、特別支援学校の学校種別や担当する科目の免許をもっていなければならないという趣旨が規定されていると承知している。
しかし、この法律の附則では例外として、「当分の間は、特別支援学校教諭免許状を有していない場合であっても、特別支援学校の教諭となることができる」という趣旨が定められている。
つまり、特別支援学校の中学部の教員は、中学校教諭免許だけあれば良いということである。
特別支援教育の在り方を考えたときに、この規定には問題があるのではないかと考える。免許が必要とされる車の運転に例えると、バイクの免許だけでは普通乗用車には乗れない。
また、普通乗用車の免許があるからといって、ダンプなどの大型車やブルドーザー、クレーン車といった、いわゆる特殊車両を運転することはできない。それぞれの車種に応じた免許が必要で、それ以外の車を運転すれば、当然、無免許運転になる。
教育職員免許法の附則が言うところは、普通乗用車の免許で大型車や特殊車両を運転できるというのと、同じではないかと考える。
特別支援学校の教員は、子どもたち一人ひとりの障がいに応じた適切な指導が求められるほか、障がいの多様化や重度・重複化への対応などもあることから、より一層専門性が求められると思っている。
特別支援学校教員の免許の所有状況について、道立の特別支援学校における教員の免許所有状況はこの数年、どのような状況になっているのか伺う。
原教職員課長 特別支援学校教員の免許状の所有状況について。過去三ヵ年における道立特別支援学校に勤務する教員の特別支援学校教諭免許状の所有率は、二十五年度が八一・五%、二十六年度は八四・三%、二十七年度は八六・一%となっており、さらに本年度は八七・四%と、年々、免許状の所有率は上昇してきている。
内田委員 教育職員免許法においては、小・中学校の教員について、勤務する学校の小・中の種別に対応する免許が必要であるとされているが、特別支援学級を担当することに伴っては、特段の免許要件が定められていないと承知している。
小・中学校の特別支援学級を担当している教員について、免許所有状況はどのようになっているのか伺う。
原教職員課長 小・中学校の特別支援学級担当教員の免許状の所有状況について。過去三ヵ年において、二十五年度の特別支援学校教諭免許状の所有率は、小学校で四六・八%、中学校では三八・六%であったが、二十六年度は、小学校で四七・九%、中学校で四〇・八%、二十七年度は、小学校で五〇・八%、中学校で四三・九%、さらに本年度は、小学校五二・一%、中学校で四七・〇%であり、小中合わせると、五〇・四%と年々、免許状の所有率は上昇してきている。
内田委員 年々上がっているということだが、特別支援学校に勤務する教員のうち、一二・六%は特別支援教育に関する免許をもっていないということである。
また、小・中学校の特別支援学級担当の教員では、四九・六%が特別支援教育に関する免許をもっていないということになる。
小・中学校の特別支援学級のうち、「知的障がい」「自閉症・情緒障がい」の学級では、「子どもの実態に即して、特別支援学校の学習指導要領を参考としながら、知的障がい特別支援学校の各教科を取り入れるなど、特別な教育課程を編成している」と聞いている。
そのように対応している学校の割合は、八割にのぼるとも言われているが、免許法では小・中学校の特別支援学級担当教諭について、特別支援学校教諭の免許を所有することが必須条件となっていない。
小・中学校の特別支援学級は、全国的にも増加傾向が続いており、それに伴って、特別支援教育に関する免許をもっていない先生が担当するケースが増加しているという指摘もあると聞く。
道教委として、そのような状態をどのように受け止めているのか伺う。
村上総務政策局長 特別支援学級を担当する教員などについて。小・中学校の特別支援学級担当の教員には、教育職員免許法において、特別支援学校教諭免許状の所有は義務づけられていないが、道教委としては、特別支援学級に在籍している児童生徒に一人ひとりの障がいの特性に応じた指導を行うためには、特別支援学級を担当する教員が、専門の免許状を有することが望ましいと考えている。
しかし、小・中学校の特別支援学級担当教員の免許状の所有率は、年々上昇しているものの、約五割程度と低く、特別支援学校教員の所有率も不十分な状況にある。
道教委としては、これまで、現職教員を対象とした免許法認定講習の開催、より専門性の高い道立特別支援学校と小・中学校との人事交流など教員の専門性の向上を図る取組を行ってきており、加えて、二十六年度実施の教員採用選考検査からは、小学校と特別支援学校小学部、中学校と特別支援学校中学部および高校と特別支援学校高等部との併願制度を導入し、登録者に占める免許状所有者の割合が、一四・二%から一七・四%に三・二ポイント増加した。こうした取組を進めながら、小・中学校の特別支援学級への専門性をもった教員の配置に努めてきた。
しかしながら、指摘のとおり、近年、特別支援学級が増加している中、約半数の学級において、免許状を所有していない教員が特別支援学級を担当している状況にあることから、特別支援教育にかかる専門の免許状の取得をより一層強力に促進していく必要があると認識している。
内田委員 小・中学校の特別支援学級については、特別支援学校教諭免許状の所有率が二十八年度で小学校が五二・一%、中学校が四七%、全体では五〇・四%ということである。
その要因として、小・中学校の特別支援学級担当教諭について、特別支援学校教諭の免許を所有することを必須要件と定めていない、免許法にあると言わざるを得ないと考えている。
二十七年十二月二十一日の中教審答申「これからの学校教育を担う教員の資質能力向上について~学び合い、高め合う教員育成コミュニティの構築に向けて」では、「特別支援学校教諭等免許状の所持率向上」がうたわれている。
その中では、特別支援学校教員の特別支援学校教諭免許状所有率が、全国で七二・七%にとどまっていることを指摘した上で、「障害の多様化等への対応や、一人ひとりの障害に応じた指導が求められることから、教育職員免許法附則第一六項の廃止も見据え、三十二年までに、概ねすべての特別支援学校教員が免許状を所有することを目指し、国が必要な支援を行うことが適当である」と述べられている。
道教委としても、全国の教育委員会と連携して、国に対して免許法の改正を求めるべきと考えるが、教育長の見解を伺う。
柴田教育長 特別支援学校教諭免許状の取得について。指摘のあったように、昨年十二月の中教審答申では、児童生徒一人ひとりの障がいに応じた適切な指導など、これまで以上に特別支援学校教員の専門性が求められる現状を踏まえ、三十二年度までに、概ねすべての特別支援学校の教員が免許状を所有することを目指し、国が支援を行うことや小・中学校の特別支援学級担任の免許状の所有率を現状の二倍程度を目標とすることが掲げられた。
道教委では、特別支援学校教員の特別支援学校教諭免許状の所有率を高めるため、これまでも全国都道府県教委連と連携し、国に対し、教員養成大学等に免許状が取得可能な課程の設置や定員増など量的拡大を働きかけることなどについて要望してきた。
道教委としては、このたびの中教審答申を踏まえ、免許法附則第一六項の廃止も見据えた特別支援教育に携わる教員の専門性の向上につながる施策を充実するよう、全国都道府県教委連とも連携しながら、国に対し、提案、要望していく考えである。
―指摘―
内田委員 教育職員免許法の趣旨から言えば、特別支援教育に携わる者は特別支援学校教諭免許状を所有していることが大前提であるということである。
道教委として、まずは国に対し、免許法附則の特例の廃止についてしっかりと働きかけるとともに、教員養成大学に対しても、当該免許状の取得可能な課程の充実について強く要請していくことを指摘する。
◆道徳教育について
内田委員 国においては、「子どもたちに、しっかりとした道徳性を養う」という観点から、道徳教育を重視し、二十七年三月に学習指導要領の一部改正が告示され、四月から移行措置が開始された。今後は、三十年度から小学校、三十一年度からは中学校において、それぞれ教科書を使用した「特別の教科である道徳科」が、全面実施されるものと承知している。
教科書を使用した「特別の教科である道徳科」が導入されるまで、あと一年半余りとなっている現在、本道の道徳教育をより一層充実させていく必要があると考えている。
道教委は、全国学力・学習状況調査の児童生徒質問紙調査の結果から、本道の子どもたちの道徳性に関する課題を、どのように認識しているのか伺う。
鈴木義務教育課長 本道の子どもたちの道徳性について。全国学力・学習状況調査の児童生徒質問紙調査には、道徳性にかかわる項目が設定されており、例えば、「学級みんなで協力して何かをやり遂げ、うれしかったことがある」「人の役に立つ人間になりたいと思う」の項目については、肯定的に回答している本道の児童生徒の割合が、全国と同じ状況であり、「自分には良いところがあると思う」「学校のきまりを守っている」「地域や社会で起こっている問題や出来事に関心がある」の項目については、継続して全国より低い状況となっており、本道の子どもたちは、自尊意識や規範意識、また、ふるさとへの関心や愛着などについて、全国の子どもたちに比べ、低い傾向がみられる。
内田委員 「自分に良いところがあると回答した子どもの割合が全国より少ない」「地域のことに関心があると回答した子どもの割合が少ない」といった本道の子どもたちの現状を踏まえると、より一層、道徳の授業を充実させる必要があると考える。
子どもたちに道徳性を養うために、道徳性を教え込むのではなく、「考え、議論する道徳」が重視されているということだが、これは具体的にどのようなことを指すのか伺う。
鈴木義務教育課長 考え、議論する道徳について。これまでの小・中学校における道徳の授業の中には、読み物の登場人物の心情の読み取りだけに偏った指導、一方的に道徳的価値について教え込んでいる指導、子どもに望ましいと思われることを言わせたり、書かせたりすることに終始している指導などの事例がみられる。
特別の教科である道徳科においては、こうした指導方法を改め、善悪の判断や親切、思いやり、公正、公平などの道徳的価値について、自分自身の問題として受け止めて考えたり、自己を見つめて書いたりする学習活動や、自分とは異なる意見と向かい合い、議論する中で人間としての生き方について考えを深める学習活動を取り入れるなど、「考え、議論する道徳」の授業を実現することが求められている。
内田委員 道徳の教科化が全面的に実施されることになると、教科書が活用されることになるが、「考え、議論する道徳」に授業を転換するためには教科書の活用はもとより、子どもたちが身近な人々や出来事から、人として生きていく意義などについて考え、自分の生き方を考えていくことができるよう、郷土の特色を生かした教材を独自に作成することが必要ではないかと考えるが、道教委の見解を伺う。
梶浦学校教育監 教材の作成について。道徳の授業の教材は、子どもが道徳的価値の自覚を深め、人間としての在り方や生き方などについて多様に感じ、互いに学び合う共通の素材として重要な役割をもっていることから、道教委としては、子どもにとって身近に感じられ、道徳的価値について、話し合いなどを通して考えを深めることができる地域教材の開発や活用に努める必要があると考えている。
これまでも、北海道の歴史や文化などを対象に、地域性等も踏まえ、道独自の教材を作成してきており、今後においては、本道にゆかりのある偉人や著名人などを対象に教材を開発、作成することとし、現在、道教委の指導主事や各管内の道徳教育推進教師等で構成する教材作成会議を立ち上げ、準備を進めており、計画的な教材の提供に努めていく考えである。
内田委員 道徳の授業を「考え、議論する道徳」に転換して、本道の道徳教育をより一層充実させていくためには、教員の理解を深め、指導力向上を図ることが大切と考えている。
道教委は、今後、道徳教育の充実に向けてどのように取り組んでいくのか、教育長の見解を伺う。
柴田教育長 道徳教育の充実に向けた取組について。道徳の特別の教科化に当たっては、学習指導要領の改訂の背景や趣旨はもとより、効果的な指導方法や体制の整備などについて、教員の理解を十分に深める必要があり、これまで、道教委では、国の事業を活用し、すべての小・中学校の道徳教育推進教師を対象とした研修会を各管内で実施してきた。
特に、本年度は、「考え、議論する道徳」についての理解を深めるため、道内の小・中学校の道徳教育の中核となる教員が、道内四ヵ所で開催する道徳教育パワーアップ研究協議会や、研究授業に参加できる体制を整えるなどして、道徳の授業の改善充実に取り組んできた。
今後も、こうした取組を継続するとともに、地域の特色を生かした教材や優れた授業の実践などを掲載した指導資料を作成し、各種研修会や指導主事の学校訪問等において活用しながら、「考え、議論する道徳」の授業づくりについて指導助言するなどして、本道の道徳教育の一層の充実に努めていきたいと考えている。
◆小中一貫教育について
小岩委員 文科省が進める、義務教育学校、小中一貫型の学校が本年度から道内の自治体でも取り組まれ始めた。
その目的と設置にかかわる手続きなど、制度の概要について伺う。
鈴木義務教育課長 小中一貫教育の目的等について。昨年六月に学校教育法等が一部改正され、本年四月から施行されている小中一貫教育の制度については、義務教育において、既存の小・中学校に加えて、小学校と中学校の九年間を通じた教育課程を編成し、系統的な教育を行うことを可能とする義務教育学校を設けるなど、制度上の選択肢を増やし、設置者が地域の実情を踏まえ主体的に判断して、小中一貫教育を円滑かつ効果的に導入できる環境を整えることを目的として導入されたものであり、具体的には、義務教育学校と小中一貫型小学校・中学校の二つの形態が制度化された。
また、設置の手続きについては、公立の義務教育学校は、地方自治法に基づき、市町村の条例において、その設置について定めることとされており、一方、小中一貫型小学校・中学校は、文科省通知に基づき、市町村教委規則等において、当該小学校および当該中学校が小中一貫教育を施すものである旨を明らかにすることとされている。
小岩委員 法律が去年改正され、ことしから施行ということなので、私たちを含めて、道民、特に保護者にとってはなじみがあまりないものである。
児童生徒、あるいは保護者への影響、学校現場の受け止めについて伺いたいと思うが、こうした新しい制度が教育現場に入るたびに、一番の影響を受けるのは児童生徒、そしてその保護者である。
新しい制度に対しての影響というものをどのようにとらえているのか、加えて、学校の教職員をはじめ、学校現場の受け止めというものはどのようになっているのか、伺いたい。
鈴木義務教育課長 小中一貫教育の児童生徒への影響等について。二十六年度に、文科省が小中一貫教育を実施している学校を対象に行った実態調査によると、児童生徒については、学習意欲の向上、学習習慣の定着、コミュニケーション能力の向上、保護者については、学校への満足度の高まり、学校に協力する意識の高まりなどの成果がみられる一方で、児童生徒の人間関係の固定化や、小学校高学年におけるリーダー性の育成などに課題がみられる。
また、学校や教職員については、指導方法を改善する意欲の向上、小・中学校間で互いのよさを取り入れる意識の高まりなどの成果や、小・中学校間の打ち合わせ時間やコーディネートする担当者の確保などの課題を認識している。
小岩委員 常に教育現場は制度変更によって混乱が起きたり、新たな問題が発生したりすることも多い。
時代が変わるにつれて、いじめの問題も表面化して、件数も多くなっているが、一方では、子どもたちが、自ら命を絶つということもないわけではない。
道内では人口減少に伴って子どもたちも減ってきている。義務教育学校が、教育効果の側面、メリット・デメリットだけではなく、道内の子どもの減少が続く地域で、小中一貫という形で、施設一体型など施設管理の観点から学校の統廃合が加速されることを懸念している。
そこで、道教委としては、この制度に対して、どのような見解をもっているのか、また、道内の市町村教委における新たな義務教育学校、小中一貫型小・中学校への取組、あるいは動きについてどのようにとらえているのか伺う。
岸学校教育局指導担当局長 小中一貫教育制度について。本制度については、各市町村が、地域の実情や児童生徒の実態などを踏まえ、義務教育学校の設置をはじめ、小学校段階と中学校段階を一貫させた教育活動の充実に積極的に取り組むことなどによって、これまで以上に地域の特色を生かした義務教育の学校づくりが可能となるものと認識している。
道内においても、本年四月から中標津町、斜里町において、二校の義務教育学校が設置され、今後については、北広島市や小清水町など十六市町村が小中一貫教育制度の導入を予定しており、各市町村において、社会の変化や教育の動向等を踏まえながら、地域とともにある学校づくりが進められていると考えている。
―指摘―
小岩委員 都市部、あるいは地方などで市町村の中に小学校、中学校が一、二校しかない、あるいは併設型でもともと一校の学校でやっている地域もたくさんある。特に、人口がそれほど多くない市などで、小・中学校の統廃合に一貫教育、義務教育学校がその手段として使われることがないように、道教委としても、市町村へ指導、あるいは情報提供など進めていくよう指摘する。
◆非常勤講師の採用と雇用
小岩委員 高校の非常勤講師の採用にかかわっては、二十八年の一定の予算特別委員会で、全道百四十五校の高校で五百三十九人の時間講師が任用されていることについての雇用や勤務の実態について、取り上げさせていただいた。
時間講師の任用に当たっては、学校からの事前の説明や勤務条件にかかわる書類の交付が確実に行われているかどうか確認する、二つ目として、時間講師の任用にかかわる意見などを伺っていく、その上で制度の適切な運用に努めていくとの答弁があった。
その後、半年たって、道教委として、こうした取組をどうしたのか伺う。
桜井教育政策課長 道立高校の非常勤講師の任用等について。道立高校では、体育や芸術教科などの教育課程を展開する上で、学校の必要に応じ非常勤の時間講師を任用しているが、任用時の勤務条件等の説明状況などについて把握するため、本年四月から五月にかけて、道立高校百四十二校の時間講師五百三十四人に対しアンケート調査を行った。
調査結果では、勤務条件の事前説明や具体的な説明が十分でない、学校によって報酬支給対象業務にばらつきがあるといった意見が一部にあった。
道教委としては、これまでも任用予定者に対する勤務条件の説明を適切に行うよう道立学校長に指導してきたが、このたびの調査結果を踏まえ、来年度に向けて、任用予定の時間講師への業務内容を含めた勤務条件の説明が早期にかつ確実に行われるよう、あらためて指導を徹底するとともに、対象業務について校長会から意見を伺うなどして、制度の適切な運用に努めていく考えである。
―再質問―
小岩委員 こうした意見調査、アンケートなどをする背景には、非常勤、非正規雇用で働いている人が、雇用主である道教委なり、任命権者である校長先生なりと対等に話すには弱い立場だということがある。身分が安定していないので、これから同じ学校で働く先生たちとはまた違う立場で雇用されていることを、教育委員会としても認識いただいて、今後も、適正な運用を目指していただきたいと思う。
非常勤講師といえども、テストやその準備や採点、そして成績付けなど、正規の業務を行わなければならない。
こうした業務も、当然勤務時間であろうと思うが、サービス残業的な扱いとされることのないよう、指導しているのかどうか伺う。
桜井教育政策課長 非常勤講師の報酬の支給対象業務について。道立高校の非常勤講師の報酬は、校長が定める勤務時間数に応じて支給している。
この勤務時間とは、担当教科の授業時間のほか、当該教科に密接な関連があり、かつ、ほかの教員に行わせることが適当でないと校長が判断し、勤務を命じた時間としており、例えば、定期試験の作成、採点、成績評価、特別活動の補助的業務、補習授業といったものについては報酬の支給対象としている。
こうした考え方は、各学校長には、本年三月にも通知しているが、あらためて指導を徹底するとともに、対象業務について校長会から意見を伺うなどして、制度の適切な運用に努めていく考えである。
小岩委員 道教委では、教員免許更新の申請は月末締めで受理して、書類の確認など事務的手続きを経て免許更新の確認証明書を申請者に発行している。
しかし、そのための期間に約二ヵ月程度要しているということであり、非常勤講師として勤務を希望しながらも、ブランクが空いていたため、有効期限が過ぎてしまって、講習を受講したけれども、免許更新申請に時間がかかり、二、三ヵ月待たされるということで、中には不利益を被った事例があったと承知している。
申請から免許更新まで二、三ヵ月という期日がかかる理由と、それを改善することができないのかどうか、見解を伺う。
村上総務政策局長 教員免許更新にかかる証明書の発行について。更新講習修了確認の申請件数は、年間五千件を超えており、申請書の受理、点検、内容確認、発行、送付といった作業を月単位で集約し証明書を発行しており、こうした更新講習の修了確認の作業においては、申請書の添付書類の確認はもとより、複数の免許状を所有している者や、他の都府県で授与された免許状を所有している者、婚姻等により免許状の授与時から氏名が変更している者など、確認作業に時間を要するケースも相当数みられることから、概ね証明書発行まで二ヵ月程度要している状況にある。
しかしながら、より早く証明書を発行している県もあることから、道教委としても、月単位で行っている事務処理の見直しを検討し、証明書発行までの期間の短縮に努めていきたいと考えている。
―指摘―
小岩委員 なるべく早い証明書の発行をしていただきたいと思う。
ほかにも、時間がかかるということで、不利益を被っている事例があるのではないかと推測できることから、早期の証明書の発行に向けて、事務処理の改善を指摘する。
(道議会 2017-03-08付)
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小学校の英語教育で教育長 30年度先行実施望ましい 中・高学年で系統的に指導―1定道議会一般質問(29年3月7日)
一定道議会一般質問(七日)では、小学校における英語教育について質疑が行われた。柴田達夫教育長は、小学校学習指導要領案で、「新たに中学年に設けられる外国語活動と、教科化される高学年の英語との...(2017-03-09) 全て読む
1定道議会一般質問(29年3月7日) 29年度以降も情報提供等 土曜授業推進事業で教育長
柴田達夫教育長は、七日の一定道議会一般質問で、文部科学省委託「土曜授業推進事業」について、事業終了後の二十九年度以降も、その成果の普及や土曜授業を実践する学校の事例収集・情報提供などを行っ...(2017-03-09) 全て読む
1定道議会一般質問(29年3月7日) 全道サミットで事業成果など発信 小中高一貫ふるさとキャリア教育推進事業
一定道議会一般質問(七日)では、小中高一貫ふるさとキャリア教育推進事業が取り上げられた。 同事業は、地域の未来を担う人材を育成するため、地方自治体や地域の産業界など関係機関・団体の支援...(2017-03-09) 全て読む
1定道議会代表質問(29年3月3日) 高校の英語教育 新たな学習プログラム開発
三日の一定道議会代表質問では、グローバル教育の充実に向けた高校における英語教育について、質疑が行われた。 柴田達夫教育長は「グローバル化が急激に進展する社会において、本道の将来を担う子...(2017-03-07) 全て読む
1定道議会代表質問(29年3月3日) 子どもの貧困対策 生活実態踏まえ必要な援助を
三日の一定道議会代表質問では、子どもの貧困対策について、質疑が行われた。 高橋はるみ知事は「今後、朝食をとっていないことや、医療機関の受診抑制など、生活に必要なものが欠けているはく奪状...(2017-03-07) 全て読む
1定道議会代表質問(29年3月3日) 道教委職員の再就職 職務の公正な執行 透明性確保に尽力
三日の一定道議会代表質問では、道・道教委職員の再就職について、質疑が行われた。 柴田達夫教育長は、道教委職員の再就職状況について、「過去五ヵ年間に本庁課長級以上の退職者で、団体等からの...(2017-03-07) 全て読む
1定道議会代表質問(29年3月3日) 建設技術者育成へ 辻副知事が答弁 教育機関等と連携
三日の一定道議会代表質問では、建設業における技術者確保について、質疑が行われた。 辻泰弘副知事は「本道の建設業においては、建設技術者などの確保や育成が喫緊の課題になっており、道では、こ...(2017-03-07) 全て読む
1定道議会代表質問(29年3月3日) 学力向上 実証的な分析活用 授業改善を一層充実
一定道議会代表質問(三日)では、学力向上について、質疑が行われた。 柴田達夫教育長は「子どもたちに確かな学力を身に付けさせるためには、子どもたちの学力や学習状況を把握・分析し、教育指導...(2017-03-07) 全て読む