札幌市教委の30年度教育方針概要(上)
(市町村 2018-03-27付)

 札幌市教委の三十年度教育方針説明会(三月一日付1面既報)で、引地秀美学校教育部長、和田悦明児童生徒担当部長、檜田英樹教職員担当部長、山根直樹生涯学習部長が所管事項について説明した。概要を連載で紹介する。

◆知・徳・体の調和のとれた育ち

▼学ぶ力の育成―引地学校教育部長

▽さっぽろっ子「学ぶ力」の育成プランの改訂点について

 市では子どもたちに、自ら課題を見つけ、自ら学び、自ら問題を解決する資質や能力などの「学ぶ力」を育成することを目指しており、三十年度のプランでは、「主体的・対話的で、深い学びの実現」「学校・家庭・地域の連携強化」「校種間・学校間の連携による教育活動の充実」の三つの改訂点がある。

 これらの改訂を行った背景として、新幼稚園教育要領・学習指導要領で重視されている事柄がある。

▽さっぽろっ子「学ぶ力」の育成プランの実現に向けて

 これらを踏まえ、「学ぶ力」の育成ではつぎの四点について、特に重視してほしい。

 一点目は、「学ぶ力」の育成に向けた五つのポイントについて。五つのポイントは、現在の札幌市の子どもの状況などから明らかになった課題をもとに、札幌市の目指す「学ぶ力」の姿をより具体的に表現したもの。

 各学校においては、三十年度も自校の「学ぶ力」育成プログラムの中に、この五つのポイントを明確に位置付けたり、関連付けたりすることによって、より一層、指導方法などの充実改善を進めてほしい。

 二点目は、分かる・できる・楽しい授業づくりの充実に向けて、課題探究的な学習を取り入れた授業の工夫改善を図ること。各学校では、昨年三月に策定された課題探究的な学習推進方針に基づき、授業の工夫改善を進めてもらっている。

 学ぶ力の育成のページに課題探究的な学習の展開例を示しているが、課題探究的な学習に決まった「型」はない。授業づくりや授業後の振り返りに、六つのセルフチェックを大いに活用してもらい、「型」ではなく「質」の側面から授業改善を図ってほしい。

 また、三十年度からすべての小学校で「算数にーごープロジェクト」を実施する。この事業は、課題探究的な学習の充実の一環として、小学校高学年の算数を対象に、二十五人程度の少人数による指導体制を取るほか、少人数指導を効果的に進めるためのプレゼンテーションソフトを用いた共通の指導資料を用いることで、学習への意欲を高めるとともに論理的思考力を伸ばすことをねらいとしている。

 三点目は、『さっぽろっ子「学び」のススメ』について。このリーフレットは、学校と家庭が一体となって、子どものよさや可能性を認め、励まし、支えるかかわりを通して子どもの習慣づくりを進める指針となるもので、学校と家庭をつなぐものとして作成したもの。市の学校教育における子ども観・教育観を示したものでもある。

 また、同様の考えで幼児版のリーフレットも作成し、市立幼稚園・認定こども園を通して各家庭に配布した。幼児版では、幼児期の特性を踏まえ「学習習慣・運動習慣・生活習慣づくり」を「学びの土台づくり」と表現し、五つのポイントについても、幼児の生活に即した具体的な言葉かけやかかわり方の例を示している。

 三十年度においても、各園・学校からこのリーフレットをあらためて家庭に配布し、趣旨を十分に伝えた上で、学校の実情に応じた補助資料を作成したり、懇談会や面談など、一年間を通じて話題にしたりするなど活用の仕方を工夫し、保護者とともに継続的に子どもの成長を見取り、支え、子どもが自己肯定感や向上心を高められるよう取り組んでほしい。

 四点目は、学びの系統化について。新幼稚園教育要領・学習指導要領では、幼小、小中、中高などの円滑な接続を図ることについて示され、学校段階間の接続はますます重要となってきている。今後は、例えば小中の接続については、義務教育九年間を通して子どもに資質・能力を育むため、学びの連続性や系統性を重視し、各学校の教育課程を工夫改善したり、各学校の「学ぶ力」育成プログラムを活用して小・中学校間で目標や課題などを共有したりするなど、連続性のある教育を推進してほしい。

▽進路探究学習の充実

 進路探究学習の充実について。今後も小学校段階から、職業体験などを通して働くことの意義を子どもたちが感じ取るとともに、コミュニケーション能力や課題解決能力などを高めようとする意欲や態度を育んでいくことは、ますます重要になると考えている。各学校においては、子どもが将来への夢や社会で活躍する自分のイメージを描きながら、自分自身の在り方を見いだし、将来の生き方や進路について考える進路探究学習の充実を図ってほしい。

▼豊かな心の育成―和田児童生徒担当部長

▽豊かな感性と社会性を育む体験活動や道徳教育の充実

 豊かな感性と社会性を育む体験活動や道徳教育の充実について。他人を思いやる心や社会に奉仕する精神を育むためには、高齢者などとのふれ合いやボランティア活動など、社会福祉や地域貢献についての取組を充実させることが大切。

 また、優れた文化施設を活用し、子どもの感性を育み、情操を養うことは生涯にわたって文化や芸術に親しむ心豊かな市民を育成する上でも大変重要なことと考えている。

 道徳教育の充実については、子どもの発達の段階に応じた道徳教育を推進し、豊かな心を育成することが求められている。

 「特別の教科 道徳」は、小学校は三十年度、中学校は三十一年度から全面実施となる。道徳の教科化に向け、道徳教育推進教師を中心とした校内体制の整備、年間指導計画にもとづいた年間三十五時間の「道徳の授業」の確実な実施および、子どもの学習状況や道徳性にかかる成長の様子について、学習の過程や成果などの記録を計画的に蓄積したものを活用するなど、様々な方法で子どもの成長を積極的に受け止めて認め、励ます適切な評価に向けた取組をお願いする。

▽命を大切にする指導の充実

 教育委員会では、いじめ対策自殺予防事業として、三十年度も著名な講師を招いての教員研修を行うほか、「子どもの命の大切さを見つめ直す月間」を設定し、各学校において命を大切にする指導の取組を重点的に行ってもらうことなどを通して、子どもが自ら命を絶つなどの痛ましい事故の未然防止に努めている。

 各学校においては、いじめの指導資料および子どもの心を理解するためのガイドブックなどの指導資料を有効に活用しながら、命を大切にする指導の取組を一層推進してほしい。

▽いじめや不登校の未然防止・早期発見・対処の取組

 いじめの未然防止・早期発見・対処の取組について。市のいじめの現状としては、毎年各学校にお願いしている「悩みやいじめに関するアンケート調査」において、一〇%強の児童生徒が「今の学年になってからいじめられたことがある」と回答している。ひやかしやからかいなど、見逃しがちないじめも、いつのまにかエスカレートして深刻な事態につながる可能性もあることから、その一つ一つに適切に対応する必要がある。

 昨年三月に国の基本方針が改定されたが、各学校においては改定された国の基本方針や本市の基本方針などを今一度参酌してもらい、PDCAサイクルによる学校の基本方針の評価および見直しを図ってほしい。

 いじめの防止については、児童生徒が自らいじめの問題について考え、意見を述べ合う機会を設けるなど児童生徒の主体的な取組が大変重要。学校においては、スクールカウンセラーなどを有効に活用したり、いじめに関するアンケート調査の結果に基づいた教育相談を実施したり、いじめを早期に発見するためアウトリーチの手法を活用した相談体制を構築したりすることが求められている。

 教育委員会としても、今後もスクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーを活用した各学校の教育相談体制が一層充実するよう、学校を支援していきたい。

 不登校への対応について。札幌市の不登校児童生徒数は、全国と同様に微増傾向で推移しており、不登校状態が長期化する前の初期段階での迅速な対応とともに、新たな不登校を生まない未然防止の取組を一層強化していくことが求められている。

 不登校の未然防止としては、魅力ある学校づくりの取組が不可欠である。昨年度までの欠席日数や遅刻、早退、別室対応などの状況にも着目し、不登校の予兆をとらえ、迅速に対応する体制の整備が重要。そのためにも、小学校低学年など早期の段階において「行き渋りがある」「集団になじめない」など、不登校の心配のある児童について、スクールカウンセラーなどの人材を活用するほか、適切なアセスメントを行い、チームとして計画的な支援に努めることが重要である。

 また、欠席が長期化しているケースについては、スクールソーシャルワーカーなどの人材を活用し、子どもや保護者の悩みや困りに寄り添いながら、かかわり続ける支援が求められている。

 現在、市では学校に登校することが難しい児童生徒に対する支援を、教育支援センターと相談指導教室の市内六ヵ所で実施しており、仲間とかかわりながら学習活動や体験活動に取り組むことで、人とかかわることへの抵抗感を和らげるなど、一人ひとりの状況の改善を図っているところ。

 また、昨年度から未然防止の活用を図るため、身近な地域の相談室としての役割を担うとともに、欠席三十日に満たないなど、不登校の心配のある児童生徒の受け入れを積極的に行っている。

 相談支援パートナー事業については、三十年度も相談支援パートナーを全中学校および中等教育学校に、相談支援リーダーを小学校十校に配置する。不登校やその心配がある児童生徒への支援、家庭への訪問など、様々な形でのかかわりや働きかけに活用してほしい。また、二十九年度から小学校五校に相談支援パートナーを派遣し、未然防止に資するモデル的活用や効果検証を進めている。

 今後も、不登校の子どもに対する将来の社会的自立に資する支援の推進とともに、すべての児童生徒を対象とした未然防止の取組に努めてほしい。

▼健やかな身体の育成―引地学校教育部長

▽さっぽろっ子「健やかな身体」の育成プランの改訂点について

引地学校教育部長 健やかな身体の育成については、市の最重点事項として二十九年度からは「さっぽろっ子“健やかな身体”の育成プラン」の中核に、小・中学校における健やかな身体育成プログラムの作成・実施を新たに位置付けた。

 全国体力・運動能力、運動習慣等調査の実技調査の結果の経年変化をみると、体力合計点の平均値が依然として全国と比べると低い水準であるものの、小・中学校ともに、改善の兆しがみられており、各学校における地道な取組の成果が徐々に表れ、市の子どもの体力・運動能力は改善に向かっているととらえている。

 健やかな身体育成プログラムを作成する目的は、計画的・継続的に取組が進められるよう、検証改善サイクル、いわゆるPDCAを確立させることにある。本年度の自校の取組の成果と課題を明らかにした上で、三十年度に向けてプログラムの改定を行い、体育と健康の両面での指導の一層の充実をお願いする。

▽さっぽろっ子「健やかな身体」の育成プランの実現に向けて

 三十年度の健やかな身体の育成に関しては、つぎの五点について特に重視してほしい。

 一点目は、体力・運動能力の向上について。子どもたちが自らの運動や健康に関する課題を発見し、その改善に向けた取組を進める力を育むことができるよう、体育、保健体育における課題探究的な学習の充実を図ってほしい。特に、運動が苦手な子どもも意欲を高めて学ぶことができる指導の工夫を行うなど、すべての子どもが運動・スポーツへの関心や意欲を高め、個々の生活に応じて、運動を取り入れることができるような工夫や取組をお願いする。

 なわとび運動については、小学校を中心に積極的に取組を進めてもらっているが、子どもの発達の段階に応じた行い方や、日常の運動習慣づくりにつながるような一層の工夫をお願いする。

 また、二〇二〇年の東京オリンピックの開催を見据えて、全国で推進しているオリンピック・パラリンピック教育については、冬季オリンピックの開催都市の特色を生かした指導を行うことができるよう、本年度、小学生向けの副読本および中学校、高校の教師用指導資料を作成した。四月に全校配布するので、活用してほしい。

 二点目は、部活動の充実について。学校教育の一環として行われる部活動については、学習意欲の向上や責任感、連帯感の涵養、好ましい人間関係の形成などを図るなど、教育的意義が高いものだが、生徒や教職員の負担が過度になっているなどの課題もみられることから、各学校においては、それらの改善も含めて活動の一層の充実に向けた体制づくりを進めてもらっている。今後は、部活動の目的を家庭、地域に丁寧に伝え、指導の充実を図るとともに、持続可能な運営体制づくりをお願いする。

 三点目は、基本的生活習慣の確立について。子どもが日ごろから健康的な生活を意識して実践できるよう、学校・家庭・地域が一体となった取組を進めてほしい。その際には、先ほど話した『さっぽろっ子「学び」のススメ』を大いに活用してほしい。

 四点目は、食育の推進について。食に関する指導の全体計画のもと、栄養教諭などの専門性を活用するとともに教職員が連携協力して、児童生徒が望ましい食習慣の形成が図れるよう、給食時間はもとより、関係教科などとの横断的な指導および食に関する指導の手引や学校給食フードリサイクルを活用するなど、計画的、継続的に食育を進めてほしい。

 五点目は、性に関する指導の充実について。性に関する指導の全体計画のもと、性に関する指導の手引や産婦人科医師・助産師の講師派遣事業などを活用するなど命を大切にする指導と関連を図った指導の充実をお願いする。

 各学校における健やかな身体育成プログラムの実行は二年目を迎えるが、検証改善サイクルを確立するために、つぎの四つの共有について特に重視してほしい。

 まず教職員間の共有について。プログラムの作成に当たっては管理職をはじめ、体育教諭や養護教諭、栄養教諭などを含めた検討を重ね、その経過や内容について校内の各種会議などを通じて教職員全体で共有していることと思うが三十年度も、ぜひ新体制の中での共有をお願いする。

 子どもとの共有について。「なぜ、主体的に健康の保持増進を図ることが大切なのか」など、健やかな身体づくりの目的を子どもと共有することが重要。また、一人ひとりの子どもが自ら目標をもって日常的に健やかな身体づくりに取り組むことを支援し、子どもの伸びを認め、励まし、一層の意欲の向上につなげてほしい。

 つぎに、学校間の共有について。特に、異校種間におけるプログラムの共有によって、系統性、連続性のある取組となることが効果を一層高めるものと思う。例えば、現在多くの小学校でなわとびに取り組んでいるが、この小学校段階で身に付けた運動能力を中学校においてどのように生かしていくかなどといった点も一つの視点になるかと思う。

 最後に、家庭・地域・外部人材との共有について。学ぶ力の育成同様、健やかな身体の育成においても学校・家庭・地域が一体となって取組を進めていくことが重要。プログラムを学校ホームページや学校便りなどに掲載するとともに、その内容や子どもたちの取組の様子について、保護者集会、懇談などにおいて説明してもらい、保護者や地域の関心を高め、日常実践につなげてほしい。

◆札幌らしい特色ある学校教育

▼雪・環境・読書の具体的な取組について―引地学校教育部長

 札幌らしい特色ある学校教育の実施については、新年度で十年目を迎えることから、つぎの十年に向けた検討プロジェクト会議を開く予定。

 「雪」については、雪と親しむ学習活動の一つのスキー学習に関して、本年度もすべての小学校と約九割(八八・八%、八七校)の中学校で実施した。教育委員会としても、スキーリサイクルのほか、中学校や高校の教員を対象とした指導者研修会およびスポーツ局によるインストラクター派遣などを引き続き実施したいと考えている。

 加えて、市における一九七二年冬季オリンピック大会の歴史と伝統を大切にし、近隣の施設を利用したスケート学習や、カーリングなど地域の特色を生かした活動など、札幌オリンピックミュージアムの活用を含めた札幌ならではのウィンタースポーツの積極的な取組も進めてほしい。

 「環境」については、さっぽろっこ環境ウィークにおけるエコアクションのほか、環境局と連携して進めているエコライフレポートの取組など、持続可能な社会の創造に主体的に参画する実践について取り組んでもらっているところ。

 各園・学校においては、引き続きエコにかかわる取組を進めてもらうとともに、教育委員会が実施しているさっぽろっこ農業体験事業のほか、市環境プラザを活用するなど、体験的な活動を通して環境の大切さを実感する学習の一層の充実をお願いする。

 「読書」について。市の子どもは全国と比べて「読書が好きな子ども」の割合が高くなっている。これは朝の一斉読書をはじめ、すべての園・学校において、工夫した読書活動の取組を推進してもらっている成果と考えている。

 各学校においては、子どもの読書活動の幅を一層広げるとともに、学校図書館ボランティアなどに加え、三十一年度までに全中学校への配置を予定している学校図書館司書と連携し、授業などにおける学校図書館の利活用をこれまで以上に進め、子どもたちの豊かな学びを支えてもらうようお願いする。

 雪、環境、読書の三つのテーマ以外の取組について。各園・学校においては、札幌ならではの様々な地域の環境を生かした体験活動への取組とともに、ふるさと札幌の理解を深める学習によって、札幌の特色や魅力を学ぶ機会の充実を図ってほしい。

◆学校教育の今日的課題

▼校種間連携―引地学校教育部長

 新学習指導要領総則には、「学校段階間の接続」についての記述が新設され、校種間の連携によって育成を目指す資質・能力を着実に育むことが明記されている。

 幼小の連携・接続の取組については、幼児期の遊びと児童期の学びをつなぐスタートカリキュラムの作成、実施を一層進めてほしい。

 また、三十年度の小中の連携・接続の取組については、昨年度発行した『札幌市小中連携の手引』を活用し、これまでの取組を土台として小・中学校が目指す子ども像を共有し、九年間を通じた系統的な教育を目指す小中一貫教育の視点から連携・接続を推進してほしい。

 教育委員会としても三十年度、小中一貫教育にかかる本市の方向性について、検討していく予定。

▼特別支援教育―引地学校教育部長

 重点には、校種や学級・教室別の指導・支援のポイントなどを示している。

 新学習指導要領および幼稚園教育要領の総則では「個別の教育支援計画や個別の指導計画の作成と活用」について示された。特別支援学級に在籍する児童生徒や通級指導教室に通う児童生徒については、個別の教育支援計画や個別の指導計画を必ず作成し、効果的に活用しながら、一人ひとりの教育的ニーズに応じた早期からの継続的な指導・支援の充実に努めてほしい。

 その際、サポートファイルさっぽろを市における個別の教育支援計画の基本様式として昨年一月に策定しているので、今後はサポートファイルさっぽろを活用してほしい。

 なお、個別の教育支援計画には多くの関係機関などが関与することから、保護者の同意を事前に得るなど、個人情報の適切な取扱いを十分に注意するようお願いする。

 また、いわゆる障害者差別解消法が施行されたことに伴い、教育委員会では市立学校職員における対応要領に加え、各園・学校の協力を得て取組集を作成し、各種研修会にて説明してきた。本年度は、中学校の定期テストにおける合理的配慮の状況について把握し、今後、各学校の問い合わせなどに対応できるよう、データベースにまとめている。

 なお、幼児教育センターにおいては、市立幼稚園・認定こども園による地域教育相談の実施、教育センター教育相談室においてはちえりあ教育相談室やまこまる教育相談室などにおける教育相談の充実に努めていく。

▼人間尊重の教育―引地学校教育部長

 本年度から人間尊重の教育に向けた三つの視点として、「校種間の連携による連続性のある人間尊重の教育に向けた取組の推進」「教師自らの人間尊重の意識の向上」「子ども自身が自分を振り返り、人間尊重の意識の高まりに気づく手立ての構築」を示しているので、これらを参考にしてもらい、一層の指導の充実に努めてほしい。

 各学校における指導の充実に向けては、教育委員会が引き続き実施する人権教育推進事業の研究成果を参考としてもらうとともに、市が互いの個性や多様性を認め合い、誰もが生きがいと誇りをもつことができるまちの実現を目指していることなどを教職員の皆さんに十分に理解してもらった上で、指導の充実を図ってもらうようお願いする。

 つぎに、国際理解教育について。特に外国語教育の充実についてだが、三十年度は外国語指導助手(ALT)を七人増員し、計百十四人を小・中学校および高校などに配置する。小学校では、五・六年生の学級において年平均十四回、ALTとの授業ができる予定となっている。

 また、各学校の実情に応じて三・四年生での活用も可能となる。中学校では、ALTの増員配置と配置方式の見直しによって、各学級において週一回ALTとの授業ができる通年配置校は八十三校となる。今後はすべての中学校において、週一回ALTとの授業ができるよう配置のさらなる充実を図る予定。高校および中等教育学校では、全校に通年配置を継続する。

 さらに、三十二年度の小学校高学年における外国語活動の教科化および中学年での外国語活動の円滑な実施に向けて、昨年三月に配布した『札幌市小学校における英語教育推進のすすめ』を活用し、校内において外国語教育の推進役となる教師(英語専門教師)を各小学校において位置付け、外国語教育の充実に努めてほしいと思う。

 小学校における外国語活動および外国語の時数増への対応については、「学校週五日制や長期休業の本来の趣旨を踏襲すること」「総合的な学習の時間のさらなる充実を図ること」「児童や教職員の負担を増やさないこと」などを主な視点として、各学校においては全市共通の授業時数の確保のほかに、学校行事の日程や学校行事の日課、クラブ活動、委員会活動、参観日の日程の工夫など、大変な苦労をかけているが、これまでの自校の教育活動全体を見直し、時数を生み出すようお願いする。

◆信頼される学校の創造

▼教員の指導力や資質の向上―引地学校教育部長

 三十年度は教員の指導力や資質の向上に向けた研修の充実について、つぎの二点を重点としている。

 一点目は市教員育成指標を生かした教員研修の充実について。二十八年十一月に教育公務員特例法の一部が改正されたことに伴い、市では二十九年度に市が求める教員像を見直すとともに、市教員育成指標および市教員研修体系、市教員研修計画を策定した。

 各園・学校においては、教員のキャリアステージに応じて、身に付けるべき資質を明確にした教員育成指標を、研修計画立案の参考にしたり、研修を振り返る際の目安にしたりするなど、教員一人ひとりがより主体的に研修に参加し、自らの資質の向上を図ることを推進してもらうようお願いする。

 二点目は市教育研究推進事業の充実について。次年度以降も札教研事業への積極的な参加について、教職員への働きかけをよろしくお願いする。

 なお、三十年度は道徳の教科化に向け、市における道徳教育のさらなる充実を目指し、小学校道徳研究部と中学校道徳研究部の設立に向け、準備委員会を正式に立ち上げていく。

 以上、三十年度についても、教育センターにおける研修の積極的な活用を図りながら、教員の指導力や資質の向上にかかる取組をお願いする。

▼安全・安心な学校づくり―和田児童生徒担当部長

 各学校においては、学校や地域の実態に即した学校安全計画を策定するとともに、子どもが危険に対して自ら身を守ろうとする態度や能力を育む体系的・具体的な安全教育を推進し、さらには家庭や地域社会と連携して、登下校の安全確保など危機管理体制を構築してもらうようお願いする。

 併せて学校安全計画については、命を大切にする指導やいじめ防止対策の取組についても体系的に位置付けてもらうようお願いする。

 重点には、安全教育や安全管理と組織活動のそれぞれのポイントを示しているので、参考にしてほしいと思う。

 特に、不審者への対応については事故の未然防止に向けて児童生徒へ指導を行うとともに、保護者や地域との一層の連携を図り、校区内の安全に努めるようお願いする。

 以上、三十年度の学校教育における学習指導などの重要事項について、市学校教育の重点に沿って説明した。各園・学校においては、市学校教育の重点の内容を先生方に周知してもらうとともに、日ごろから、手元に置いてもらい、積極的かつ継続的に活用するようお願いする。

(市町村 2018-03-27付)

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