【新春インタビュー 4種校長会に聞く①】 全連小大会の成功もとに一層の飛躍を 道小学校長会会長 本間達志氏(関係団体 2019-01-15付)
道小学校長会会長 本間達志氏
―校長会として新年の展望をお聞かせください。
各学校においては、二〇二〇年度から完全実施される新学習指導要領や今年度からの移行措置への円滑な実施に向けて、社会に開かれた教育課程の推進、指導体制の整備、校内研修の充実等に取り組んでいるところです。子どもたちには、変化の激しい時代を生きていくために、基礎的な知識・技能を身に付けるとともに、それらを活用した思考力・判断力・表現力、主体的に学ぶ豊かな人間性などが求められています。
こうしたことを踏まえ、北海道小学校長会では、近年、本道教育の質の向上を目指す上で、時代の要請に応える「授業改善」が重要課題であると主張してきました。各学校においては、校長のリーダーシップの下、教師一人ひとりが授業研究を通して研鑽を積み重ね、授業力の向上に努めていくことが大切です。
その一方では、中学年の外国語活動や高学年での外国語科の導入によって、授業時間数が増加します。移行期である今年は、各学校では、日課表の中にどのように増加する時間を組み入れるかについて頭を悩ませたことと思います。完全実施される二〇二〇年度に向けて、全道各市町村においては、時数の確保について工夫や検討を重ねているところもあるかと思います。今後も理事研修会等を通して情報交換を行い、より効果的な運用を図っていかなければならないと考えています。
また、特別の教科道徳においては、考え・議論する道徳の授業実践を積み重ねていくことはもちろんですが、指導要領の趣旨を踏まえ、評価の在り方等も含めた指導方法の研究についても取組を進めていく必要があります。
教員の定数改善が最重要課題
―校長会の抱える課題と対策をお願いします。
一つ目は、教員の定数改善についてです。
道小では、全連小との連携を大切にしながら、活動を行っていきたいと考えています。
その全連小では、教育活動を充実させていくために、関係機関への要望活動を行っています。昨年十二月十三日には、二〇一九年度の予算要望活動として、全連小の役員と私を含めた全国の常任理事が、衆議院議員会館及び参議院議員会館に出向き、「小学校教育の充実・改善に関する要望書」を提出してきました。
この要望書においては、教員の過度な長時間勤務を改善し、子どもと向き合う時間を確保するための教員の定数改善や外国語科を担当する専科教員・専門性のあるスタッフ等の人的措置、諸条件の整備が大きな柱となっています。
しかし、この教員の定数改善について、財務省は財政制度等審議会において学校の実態を反映していない数値データを示し、その必要性がないことや学校の統廃合による解決策を示しています。
こうした財政審の対応に対して、全連小では、「現状をよく理解していない机上の空論である」と強く反論しています。その中では、「わが国の教育の質を維持向上してきたのは、教員の長時間勤務に支えられてきた日本型教育であることはOECDも認めているところである。」と述べています。
このやりとりからは、財政側と教育現場のギャップの大きさが伝わってきます。教育現場の私たちが、行政側の理解を求める活動を継続していかなければなりません。
二つ目は、「学校における働き方改革」についてです。
一昨年末、学校における働き方改革を議論する中教審の会議で、「中間まとめ」を取りまとめました。それを踏まえ、文部科学相では通知を発出し、各教育委員会に対して必要な取組を促してきました。各教育委員会では、推進計画等を策定し、取組を進めています。具体的には、校務支援ソフトの導入、夏季休業中の閉庁日の設定、勤務時間管理、留守電の設置スクールサポートスタッフ等の人材活用などが挙げられ、着実に広がってきているように感じます。しかし、前述の教員の定数改善によらなければ、教員の長時間勤務を根本的に解決することは難しいのではないでしょうか。道教委におきましても、「学校における働き方改革〝北海道アクションプラン〟」を策定し、取組を進めています。道小では、自治体間格差が広がることのないよう、各地区校長会と情報を共有し、道教委に現場の実態を伝えていきたいと考えています。
三つ目は、要望活動についてです。
毎年春、「要望書」および「提言書」を道教委に提出しています。
本年度の提言書では、「本道教育の一層の充実に向けた教育条件の整備についての提言」として、内容を「新学習指導要領の趣旨を生かした授業構築に向けた教育条件整備への提言」「チームとしての学校の実現に向けた教育条件整備への提言」の大きく二つにまとめました。来年度も、未来を担う子どもたちの教育内容を充実させていくための提言を行いたいと考えています。
「北海道文教施策・予算策定に関する要望書」については、毎年、各地区からいただいた要望をまとめ、次年度に向け、道中・道公教とともに、道教委に要望しています。八月に行われる文教施策懇談会・各課懇談会にも活用されるものなので、既に各地区への働きかけを行っているところです。
四つ目は、組織の健全化についてです。
平成二十七年度から二十八年度の「組織の在り方検討委員会」の最終報告を踏まえ、事務局構成が変わりました。この組織改革は、「チーム道小」を一層推進していくためのものです。また二十九年度から三十年度の「企画研修委員会(旧組織の在り方検討委員会」では、道小の組織力の充実・向上を目指すための組織改革と学校数および会員数の減少による課題への対応について検討してきました。
今後も現状を把握し、理事研修会や地区研など、道小の根幹となっている活動を維持しつつ、組織の健全化について検討をしていくこととなります。
ことしも「チーム北海道」掲げ
昨年十月四・五日の両日、全国からおよそ二千五百人の校長先生方をお迎えし、第七十回全国連合小学校長会研究協議会北海道大会を函館市で開催しました。北海道胆振東部地震発生から一ヵ月後であり、また、大型の台風上陸の心配もありましたが、大会期間中は見事な晴天に恵まれ、無事に二日間の日程を終えることができたことは、北海道小学校長会の会員全員の大きな喜びであります。
全連小大会は、北海道は八年に一度開催されますが、函館市での開催は初めてのことでした。函館市小学校長会を中心に最善の対策を練り、スムーズな運営を目指して取り組んで参りました。幾度も実行委員会を開き、チーム道小で準備を進めて参りました。
本大会では、これまでの研究成果と課題を踏まえ、大会主題のさらなる追究を目指すため、副主題を「ふるさとの地から世界を見つめ 新しい社会の形成に向けて挑戦する子どもを育てる学校経営の推進」と設定し、学校経営の責任者である校長の果たすべき役割と指導性について究明しました。分科会においては、八年前の北海道札幌大会での「分科会の充実こそが、最大のおもてなし」という理念を継承し、発信性のある研究協議ができないかと考えました。今までの参画型の分科会を一歩進め、実物投影機二台を駆使してフリップに書いたグループ討議でのキーワードを投影したり、アナライズカードを活用したりするなど、効果的な視覚化を取り入れ、さらなる分科会の深まりを目指した運営に努めました。
研究協議のまとめからも、十三すべての分科会で、校長の役割と指導性について、熱心かつ提案性のある協議が行われたことがうかがえ、分科会の充実の更なる深化を求めてきた、本大会の目的を十分に果たすことができたのではないかと思っております。
シンポジウムでは、スキージャンプの五輪メダリスト葛西紀明氏、函館出身の元アナウンサー佐藤麻美氏、北海道PTA連合会顧問の青田基氏のお三方に、「ふるさと、挑戦、未来創造」をテーマに、熱く語っていただくことができました。
参加された校長先生方から、北海道大会の運営や、分科会の充実についてお褒めの言葉をいただきました。さらに、今大会の成功に向け、北海道が一丸となり「チーム北海道」として取り組んだことに対しても高い評価をいただきました。
―新年度の重点的取組を伺います。
ことしも、ここ数年と同様に「チーム北海道」という言葉を掲げて、活動を進めていきます。道中学校長会、道公立学校教頭会はもちろん、北海道教育委員会や各市町村教育委員会等の教育関係諸機関とも連携を図りながら活動し、様々な教育課題の解決に向けて取り組んでいきたいと考えています。
(ほんま・たつし)
昭和57年北海道教育大学札幌分校卒業。昭和57年の札幌市立幌西小を振り出しに、昭和62年札幌市立旭小、平成9年札幌市立桑園小、平成15年札幌市立和光小、平成18年札幌市立白石小教頭、平成22年札幌市立手稲中央小校長、平成25年札幌市立篠路小校長、平成29年から現職の札幌市立発寒西小校長。
昭和33年12月5日生まれ。60歳。帯広市出身。
(関係団体 2019-01-15付)
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