札幌市教委 2年度教育方針概要・上 連携から一貫重点に “自立した札幌人”目指す(市町村 2020-02-27付)
札幌市教委の令和2年度教育方針説明会で、相沢克明学校教育部長、長谷川正人児童生徒担当部長、紺野宏子教職員担当部長、鈴木和弥生涯学習部長が所管事項について説明した。概要はつぎのとおり。
【札幌市学校教育の重点―5つの重点施策・教育内容】―相沢学校教育部長
2年度の札幌市学校教育も、一人ひとりの子どもたちが一歩一歩確実に“自立した札幌人”へと学び育つことを目指して展開していく。
学校教育の重点には、2年度、特に重点となる施策や教育内容を示している。
具体的には、すべての子どもたちに共通に育む「知・徳・体の調和のとれた育ち」、すべての園・学校が共通に取り組む「札幌らしい特色ある学校教育」、障がいのある子ども、不登校の子ども、海外から帰国した子どもや日本語の習得に困難のある子どもなど、特別な配慮を必要とする子どもたちを対象とした「子どもの発達への支援」、すべての園・学校が確立すべき姿としての「信頼される学校の創造」、そして、今日的な課題を踏まえ、様々な機会を通じて取り組むべき「教科等の枠組を越えた教育」の5つとなる。
つぎに、2年度札幌市学校教育の重点のキーコンセプトは「連携から一貫」。5つの重点施策・教育内容、いずれにおいても、具体的な取組においては、札幌市の学校教育にかかわる様々な大人や組織が連携し、すべての子どもたちの一貫した育ちを支援する教育を進めていく。
続いて、5つの重点施策・教育内容について順次説明する。
【知・徳・体の調和のとれた育ち】―相沢学校教育部長
この重点施策においては、学ぶ力、豊かな心、健やかな体をバランスよく育む取組に、一人ひとりの子どもたちが主体的に取り組むよう支援する。
各学校段階では、学ぶ力、豊かな心、健やかな体の各取組の関連を重視することで、一人ひとりの子どもたちの調和のとれた育ちを支援する。
また、学ぶ力、豊かな心、健やかな体のいずれの取組においても、各学校段階間の接続を意識して相互に連携し、一貫した子どもの育ちを実現できるよう、自校の学校段階以外の取組が確認できる形となっているので活用してほしい。
▼学ぶ力の育成―相沢学校教育部長
2年度においても、学びの質を高め、家庭と一体となって学ぶ力を育むことを目指し、さっぽろっ子「学ぶ力」の育成プランの推進を通して取り組んでいく。
札幌市学校教育の重点では、学ぶ力を子どもの姿で具体化した札幌市全体の共通指標を掲載している。毎年、この指標や全国学力・学習状況調査の結果を分析し、さっぽろっ子「学ぶ力」の育成プランを改訂している。
元年度は、「普段から、計画を立てて勉強している」「授業中、自分の意見を進んで発言している」の2つの設問で課題がみられた。引き続き、さっぽろっ子“学び”のススメを活用し、学校と家庭が連携して、習慣づくりと環境づくりに取り組むとともに、課題探究的な学習を取り入れた授業改善を積極的に推進する。
また、この2つの設問でも、小学生に比べ中学生の肯定的な回答が低くなっているが、他の設問においても同様の傾向がみられる。小学校で身に付けた力を中学校で一層伸ばしていけるよう、2年度さっぽろっ子「学ぶ力」の育成プランでは、先日、各学校に通知した小中一貫した教育基本方針を踏まえ、小中一貫した教育に関し、本年度の連続性のある教育を一歩進め、実践を伴う系統性・連続性のある教育の推進と位置付けている。
もう一つの改訂点は、「ICTを活用した学習活動の充実」。
新しい学習指導要領の総則においては「知識の理解の質を高め、資質・能力を育む主体的・対話的で深い学び」の実現に向け、「ICTを活用した学習活動の充実」が盛り込まれている。
国のGIGAスクール構想によって、札幌市も2年度から順次、1人1台のタブレット端末整備に着手する。ここ数年で、子どもたちが校舎のあらゆる場所、様々な授業において、日常的にこのタブレット端末をツールとして活用した学びの実現を目指していく。
▼豊かな心の育成―長谷川児童生徒担当部長
全国的な傾向として、いじめや不登校、子どもの自殺などの問題が、引き続き喫緊の課題となっており、札幌市においても同様であると考えている。
「自分にはよいところがある」と思う子どもの割合が本年度は全国的に低下しており、一人ひとりの子どもを共感的に理解し、子どもが自己肯定感を高めたり、自他の生命を大切にする意識を高めたりする指導を一層充実させていく必要があると考える。
豊かな心の育成は、一朝一夕にはいかないことだが、すべての教育活動を通して、子どもが互いを尊重し、支え合いながら、よりよく生きようとする態度を育むとともに、「他者を思いやる心」「生命を尊重する心」「自然や美しいものに感動する心」などの「豊かな心」の育成を図ることが重要である。
そのためには、子どもたちを取り巻く環境の変化を踏まえ、自然体験や社会体験など多様な体験的な活動を通して、家庭や地域とともに調和のとれた豊かな人間性や社会性を育む教育を推進する必要がある。
旅行的行事はもとより、本市の豊かな自然や体育・文化施設を活用した多くの体験活動等が全市的に展開されている。各校においては、小中一貫した教育の取組を進められていると思うが、まずは、行事や体験活動がどのようなねらいをもって、どのような内容で行われているか、小・中学校9年分の情報を共有し、効果的な配列を検討したり、重複する活動を精査したりしながら、確実に成果を積み上げていくことが重要。
また、豊かな心を育むためには、こうした体験活動と各教科等の関連を明確に意識して取り組むことも重要となる。学校段階間を接続する縦糸と教科等横断的な取組とする横糸をしっかり織りなすことで、子どもたちの豊かな心が編み上がっていくものと考えている。
豊かな心を育成するためのもう一つの柱が、道徳教育となる。道徳教育の要となる「特別の教科 道徳」は、小学校に続き、本年度から中学校で全面実施となった。各学校においては、年間指導計画を立て、教科書を使用した授業を適切に行っていると聞いている。
今後は、さらに教科書の教材を生かし、課題探究的な学習となることを意識して授業改善を図っていくことが望まれる。教科書を使いながら、しっかりと考え、議論する道徳となる授業を展開するためにも、教育課程編成の手引を十分に活用してほしい。
また、小・中9年間でどのように道徳性を養っていくかの見通しをもつためにも、小・中学校間で年間指導計画を共有したり、授業交流をするなど、ますますの工夫に期待している。
命を大切にする指導に当たっては、全教職員一人ひとりが子ども理解に努めることが極めて重要。その上で、子どもが自分を大切に思う自尊感情や自他のかけがえのない命を大切にする気持ちをもてるよう指導を徹底する必要がある。
自分がいじめられたときに「誰にも相談しない」と答えた子どもは、各校の皆さんの努力のおかげで少しずつ減少してはいるが、それでもなお1割程度いることを重く受け止め、子どもが相談しやすい環境づくりや相談窓口の周知、教育相談の充実などに努めてもらうようお願いする。
また、子どもの命にかかわる自殺関連行動については、危機管理意識を強くもち、適切に対応する学校が増えていると感じている。今後もそうした対応を一層充実するため、SOSの出し方に関する教育などを推進するとともに、自傷行為などの対応方法や友達から悩みを打ち明けられた子どもの指導、フォロー、家族に医療機関への受診を提案する際の留意点などについてシミュレーションしておくなど、学校全体として危機管理意識をさらに高めてほしい。
その際、『子どもの心を理解するためのガイドブック』と『自殺関連行動に係る具体的対応のためのガイドブック』に具体的な事例や対応例も掲載しているので、研修会などで活用するようお願いする。
つぎに、いじめの防止に向けた取組について。
いじめの対応については、各校で策定している学校いじめ防止基本方針に基づき、担任などが一人で抱え込むことなく、組織的に対処することが定着しつつある。
しかし、組織的対応が学年対応であったり生徒指導部対応であったりすることがあると、法に基づいた学校いじめ対策組織としての対応が遅れた、と保護者などから指摘される可能性がある。いじめの疑いがある事案については、まずは、学校いじめ対策組織を迅速に活用して対応するようお願いする。
また、欠席が増加している子どもの中には、しばらくしてからいじめを訴える場合もあるので、背景にいじめがないか、随時確認を徹底することが重要となる。そうしたいじめや不登校などの情報については、進級や転校する際はもちろんだが、中学校への進学の際にも小・中学校間でできるだけ丁寧・確実に引き継ぎを行うようお願いする。
さて、昨年6月に国や道の方針の改定の趣旨を踏まえ、市いじめの防止のための基本的な方針を改定した。その中で、本市独自の項目として入れたところがいくつかある。
1つは、いじめに向かわない態度の育成に向けて、児童生徒が主体となるいじめ防止の取組を進めること。子どもたち自らがいじめの問題について考え、意見を述べ合う機会を設けたり、児童会・生徒会によるいじめ撲滅宣言、いじめ防止の標語づくりなどの取組を今後も積極的に進めてほしい。
2つ目は、全市で取り組む悩みやいじめに関するアンケート調査のほかに、学校独自のいじめアンケート調査を実施すること。独自アンケートは、ねらいに応じて無記名で実施するなどの工夫をしてもらい、児童生徒が発するわずかなサインを見逃さず、いじめの疑いも含め、積極的に教育相談に結び付けてもらうようお願いする。
3つ目は、学校いじめ防止基本方針の周知。特に、学校いじめ防止対策組織の存在や活動内容をホームページなどで子どもや保護者に周知するとともに、いじめの疑いがあるときには、迅速な組織の活用をお願いする。
教育委員会としても、学校の対応を支援するために何ができるか検討している。2年度からは、いじめをはじめとする生徒指導や保護者などへの対応について苦慮するケースが増加していることを踏まえ、子どもの最善の利益を念頭に置きつつ、教育委員会および学校が法的側面から助言を受けられるスクールロイヤーによる支援体制を構築する予定。現在、準備を進めているので、詳細が決まり次第連絡する。
▼健やかな体の育成―相沢学校教育部長
2年度においても、学校での体育・健康に関する学びの質を高め、市民ぐるみで健やかな体を育むことを目指し、さっぽろっ子“健やかな体”の育成プランの推進を通して、健やかな体の育成に取り組んでいく。
全国体力・運動能力、運動習慣等調査によると、札幌市は引き続き、体力合計点の平均値が全国に比べて低い水準にあり、特に小・中男女とも、持久力と敏しょう性に課題がみられる。また、運動する子どもとしない子どもの二極化も顕著である。特に、中学女子で体育の授業以外をほとんど運動をしない生徒が25%にまで達している。
札幌市では、これらの課題解決に向け、元年度から道教育大学と連携し、その要因を分析するとともに新たな取組の開発に取り組んでいる。2年度は、確かなエビデンスに基づく健やかな体の育成に向けた新たな取組に挑戦していく。
各学校においては、子どもが自らの運動や健康に関する課題を発見し、その改善に向けた取組を進める力を育むことができるよう、体育、保健体育の授業における課題探究的な学習の充実を図っていくことが重要となる。
特に、運動が苦手な子どもも意欲を高めて学ぶことができる指導の工夫を行うなど、すべての子どもが運動・スポーツへの関心や意欲を高め、個々の生活に応じて、運動を取り入れることができるような取組の推進に努めてほしい。
ことしは東京オリンピック・パラリンピック大会の年。本市でもサッカーやマラソン、競歩の競技が実施される。これを、健やかな体の育成の絶好の機会ととらえ、積極的に活用していく。
すでに、すべての小学校では東京オリンピックの開会式が行われる7月24日に合わせて、子ども自身がなわとび運動の目標を定めて実施する札幌市“目指せ!なわとびマイベスト”プロジェクトに取り組んでおり、モチベーションの向上とともに、なわとび運動の質的な充実と発展の契機になるものと考えている。
また、全国で推進しているオリンピック・パラリンピック教育については、これまでも冬季オリンピックの開催都市である札幌市の特色を生かした取組を進めてきているが、東京オリンピック・パラリンピックを契機として、ふるさと札幌への思いをより強くするとともに、オリンピック・パラリンピック精神に基づくスポーツの意義や価値について実感する学びの機会の充実に努めていく。
【札幌らしい特色ある学校教育】―相沢学校教育部長
2年度も、引き続き、2つの柱を設定し、すべての園・学校での取組を一層推進していく。
1つ目は、「幼・小・中・高のつながりを意識する視点」。学校・校種間の連携や地域・外部人材の効果的な活用など、つながりの視点の具体例を参考に、各園・学校の実情に応じて重点テーマを設定し、子どもの目線で一貫した取組となるよう推進する。
2つ目は、「発信」。幼・小・中・高のつながりを意識する視点に資するため、校種を超えた多くの学校、保護者や地域の皆さんに対し、ホームページや学校だより、発表会などを通して、自校の取組を積極的に発信する。
このように、子どもたち自身の発信を前提とした学びを展開することで、より質の高い学びを実現するとともに、実際に発信することを通して、自己表現力を育成していく。
各園・学校において具体的な取組を行うに当たっては、子どもたちが、自立した札幌人の具体的な姿の1つである、“ふるさと札幌を心にもち、国際的な視野で学び続ける人”を意識できるよう、札幌ならではの施設や本物体験ができる地域の環境を生かした体験的活動を積極的に取り入れていく。
また、1972年に冬季オリンピックを開催し、2030年に2度目の開催を目指している札幌の現状を踏まえたオリンピック・パラリンピック教育や、SDGsの理念に基づく札幌のまちづくりに関する学習などを通して、札幌の特色や魅力について学ぶ機会の充実に取り組んでいく。
このような札幌らしい特色ある学校教育に幼稚園から高校段階まで一貫して取り組むことによって、子どもたちが将来、札幌を離れたとしても、札幌を心のふるさととして誇りに思い、札幌をはじめとした様々な地域において、国際的視野をもって社会に貢献し活躍できる人となるよう育てていく。
【子どもの発達への支援】―相沢学校教育部長
子ども一人ひとりの発達を支える視点から、障がいのある子ども、不登校の子ども、海外から帰国した子どもや日本語の習得に困難のある子どもについては、新学習指導要領の総則において、「特別な配慮を必要とする子どもへの指導」として整理された。
▼特別支援教育―相沢学校教育部長
まず、子ども一人ひとりの教育的ニーズに応じた特別支援教育について。
特別な教育的支援の必要な児童生徒の支援を進める際には、担任のみに任せるのではなく、園・学校として計画的・組織的に取組を進めることが大切であり、その取組を支えるツールとして、個別の教育支援計画などの計画は大変重要な位置付けとなる。
2年度においても、個別の教育支援計画などを活用し、早期からの切れ目のない指導・支援の充実に取り組んでいく。
通級による指導を受ける児童生徒や特別支援学級に在籍する児童生徒については、個別の教育支援計画および個別の指導計画を必ず作成し、効果的に活用していく。
なお、通級による指導を受ける児童生徒の個別の教育支援計画および個別の指導計画については、在籍している学校で作成する。
また、通級による指導を受けていない通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒についても、可能な限り、計画を作成し、活用することに努めていく。
続いて、合理的配慮の提供について、いわゆる障害者差別解消法が施行されたことに伴い、本人・保護者からの合理的配慮の提供を求める申し出があった場合、各園・学校では子どもの学習への参加の機会を確保するために、合理的配慮としての教育内容や方法、支援体制などについて必要な変更・調整を行うことになる。
その際には、申し出の内容をもとに、まずどのような社会的障壁が生じているのかを確認した上で、子どもの参加の機会を確保するために必要な合理的配慮の内容について、保護者と丁寧に話し合うことが大切。また、保護者と合意形成を図った合理的配慮の内容については、校内の教職員や関係機関等と共有を図ったり、計画的に取組を進めたりするため、個別の教育支援計画または個別の指導計画に必ず明記するようにする。
各園・学校では、札幌市立学校職員における対応要領、取組集、中学校の定期試験における合理的配慮の状況についてまとめたリーフレットを活用するなどして、合理的配慮の提供に関し、適切に対応していく。
【不登校への対応】―長谷川児童生徒担当部長
札幌市の不登校児童生徒数は、全国と同様に増加傾向にあり、小学校においては、1校当たり3人程度で10年前からほぼ倍増している。
また、中学校においては、10年前は1クラスに1人の不登校生徒がいる割合だが、こちらも現在は、2クラスに3人以上いる割合となっている。
各学校においては、新たな不登校を生まない学校づくりに努めているが、いわゆる教育機会確保法が施行されたことを受けて、昨年12月18日に送付した通知「不登校児童生徒への支援の在り方について」で示したように、今後の不登校児童生徒への支援は、“学校に登校する”という結果のみを目標にするのではなく、児童生徒が自らの進路を主体的にとらえて、社会的に自立することを目指す必要がある時代になっている。
私たちは、学校教育に携わる者として不登校児童生徒が学校復帰して、それぞれのクラスで毎日充実した学校生活を過ごすことができるように支援を続けることはもちろんだが、これからは、それと並行して進路選択上の不利益や社会的自立のリスクが生じないよう、学習支援などを充実するための様々な取組をしていかなければならない。
そのため、不登校状況が長期化している児童生徒については、教育支援センター・相談指導教室を活用してもらうのはもちろんのこと、ICTなどを活用した学習支援やフリースクールなどの民間施設の利用など、様々な学習支援が考えられる。
教育支援センターと相談指導教室の6ヵ所については、引き続き積極的な活用をお願いするが、今後は、国のGIGAスクール構想も見据え、ICTなどを活用した学習支援についても研究を進める必要があると考える。また、フリースクール等の民間施設との連携についても、一層の充実をお願いする。
登校は可能だが、教室には入れないような児童生徒については、引き続き相談支援パートナー事業を活用願う。来年度も全中学校に相談支援パートナーを、小学校10校に相談支援リーダーを配置する。
また、本年度2学期から小学校20校に、相談支援パートナーを新たにモデル配置した。小学校では、登校渋りのある児童の迎えによる登校への働きかけなど、特に不登校の未然防止の役割としての効果が期待されるので、来年度も引き続き、小学校20校に相談支援パートナーを配置し、効果検証を図っていきたい。配置校においては、効果的な活用について様々な工夫をお願いする。
また、支援計画などの統合について、不登校児童生徒、障がいのある児童生徒および日本語指導が必要な外国人児童生徒などに対する支援計画を一つにまとめて作成する場合は、サポートファイルさっぽろを基本様式とする。
なお、必要に応じてサポートファイルさっぽろの書式を一部変更したり、平成30年10月22日付通知「不登校児童生徒、障がいのある児童生徒および日本語指導が必要な外国人児童生徒等に対する支援計画を統合した参考様式の送付について」の参考様式「児童生徒理解・支援シート」の必要なシートを加えたりすることも考えられるので、教職員の負担も考慮しながら各学校で検討してほしい。
【信頼される学校の創造】―相沢学校教育部長
▼校種間連携―相沢学校教育部長
校種間が連携し、一貫して子どもを育む環境を整備することは、子ども自身がこれからの社会で生き抜いていくために必要な資質・能力を確実に身に付けるために、極めて重要である。
令和2年度は、特にこれまで各地域において築き上げられた小中連携の取組を足がかりとしながら、義務教育として目的・目標が規定されている小学校と中学校の教育の連続性や系統性を確保する取組を、一層推進していく。
教育委員会では、前年度から小中一貫した教育についての在り方検討委員会を設置し、札幌市の教育の実情を踏まえた小中一貫教育について検討を進めてきた。この議論を踏まえ、このたび、市小中一貫した教育基本方針を策定し、過日学校に通知した。
この基本方針に基づき、2年度から順次、中学校区を基盤としたパートナー校単位で9年間の系統性・連続性のある小中一貫した教育を協働的に推進していく。2年間の準備期間を踏まえ、4年度からは、すべての小・中学校で小中一貫した教育を本格実施する。
小中一貫した教育を展開する小・中学校を中心として、市立幼稚園では地域の幼保小の日常的な連携や幼保小連携協議会を通した幼小連携・接続、市立高校においては、開成中等教育学校での実践などを参考にした中高連携・接続に取り組み、幼稚園から高校までを見通した一貫した育ちを支援する教育環境の整備を目指していく。
▼家庭や地域とともに進める学校づくり―相沢学校教育部長
2年度においても、幼児版を含むさっぽろっ子“学び”のススメを積極的に活用し、学校、家庭、地域の3者が子ども観を共有することによって、連携して子どもの成長を認め、自己肯定感や向上心を高めていく様々な取組を進めていく。
▼教員の資質・能力の向上―相沢学校教育部長
2年度はつぎの2点を重点として教員の資質・能力向上に取り組む。
1点目は、札幌市教員育成指標の活用。各園・学校においては、教員のキャリアステージに応じて身に付けるべき資質を明確にした教員育成指標を積極的に活用し、教員一人ひとりが、自らの資質の向上を図るための研修に、より主体的に取り組むよう支援する。
2点目は、校内外における効果的な研究・研修による資質向上。2年度の研修については、大幅な見直しを行った。これまで以上に、管理職をはじめ、すべての教職員が研修の重要性を理解し、協働して日常的に研修に取り組む意識の醸成が、教員の資質向上のカギとなる。
各園・学校においては、校内外における研究・研修の計画的・効果的な実施に取り組んでいくことになる。その際、札教研事業については、札幌市の貴重な研究・研修機会として積極的に活用し、授業改善と人材育成に取り組んでいく。
▼安全教育―長谷川児童生徒担当部長
各学校においては、地域の実態に即した学校安全計画に基づき、子どもが危険から自ら身を守ろうとする態度や能力を育む体系的・具体的な安全教育を実施することが大切。そのため、学校安全計画などについては、定期的な見直しをするようお願いする。
安全教育については、生活安全、交通安全、災害安全の3領域の教育と、組織活動がある。安全に関することに軽重はつけられないが、登下校防犯プランに基づいた安全確保については、引き続き留意するようお願いする。
また、様々な災害の発生を踏まえ、札幌市では、災害に強いまちづくりに全庁的に取り組んでいるところ。北海道胆振東部地震において本市も大きな被害を受けたことなどを受け、教育委員会としても、前年度から防災教育研究推進事業を開始し、各学校種段階での防災教育の在り方などについて実践研究を行っている。今後、本年度の研究の成果を取りまとめ、周知・啓発を図っていく。
各学校においても、防災教育のねらいに沿い、危機管理対策室作成の資料を活用するなどした取組を一層推進してもらうようお願いする。
【教科等の枠組を越えた教育】
▼進路探究学習―相沢学校教育部長
子ども一人ひとりが将来に希望をもち、生き方や進路について考える学習である進路探究学習は、現在の学びの意味を自己の将来とのつながりで理解し、学ぶ意欲の向上を図るとともに、社会的・職業的自立に向けて必要な基盤となる資質・能力を身に付けることにつながる。
新学習指導要領において、小学校から高校まで一貫したキャリア教育の充実を図ることが位置付けられたことも踏まえ、2年度は特別活動を要にするとともに、各教科・科目等の特質に応じて、各学校段階間の連携・接続を意識した学びの充実を図っていく。子どもたち自身が主体的に一貫した進路探究学習に取り組めるよう、活動を記録し蓄積する教材である、いわゆるキャリア・パスポートを積極的に活用していく。
▼人間尊重の教育―相沢学校教育部長
現在の社会においては、民族や国籍、性や年齢の違い、障がいの有無などにかかわる多様な人権課題があるが、子どもが自他の生命を尊び、互いにかけがえのない人間としての尊厳や個性、多様性を認め合うためには、まず、教師自らの人間尊重の意識の向上が特に重要。2年度においても、多様な人権課題に対する教職員の意識が高まるよう、講演会などの研修機会の充実に努めていく。
また、この4月、白老町に民族共生象徴空間ウポポイが開業する。これまでの札幌市アイヌ文化交流センターと併せて、宿泊学習や修学旅行などでウポポイを積極的に活用し、系統的・体験的な民族教育の推進に取り組んでいく。
▼国際理解教育―相沢学校教育部長
現在、教育委員会では、本年度中の公表に向け、市英語教育改善プランを策定中。2年度は、この改善プランに基づき、小中高一貫した系統的な外国語教育の充実に取り組んでいく。
小学校においては、本年度、外国語教育の推進役となる英語専門教師を、全校において位置付けてもらった。2年度も引き続き英語専門教師に対し、教科化に対応した情報提供を行っていくとともに、一定の英語力を有する加配専科教員の増員を図っていく。
また、中学校においては本年度民間試験である英検IBAを全中学生対象に実施した。2年度についても、生徒自らが英語力の伸びを実感し、新たな目標や学ぶ意欲を喚起できるよう、全中学生を対象に行う。
ALTについては、一層の活用の充実を図るため、本年度からNon―JET ALTにおいてもTTを行うことが可能となった。2年度は、ALTの増員によって、小学校での配置時間数を増やす予定。これによって、早い段階から、生きた英語にふれる機会の充実を図っていく。
一人ひとりの子どもたちが“自立した札幌人”へとすくすく育っていくための学校教育が日常的に展開されるためには、何よりも、日々、子どもたちと向き合っている教職員が元気で生き生きと働いていることが前提となる。
共に知恵を出し合い、教員の働き方改革と学校教育の重点に基づく各園・学校の各種取組の両立を図ることが、大きな課題となる。
(市町村 2020-02-27付)
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