【解説】学習保障支援を　日本教育学会

（コロナウイルス関連 2020-05-26付）

　日本教育学会は２２日、「９月入学よりも、いま本当に必要な取り組みを～より質の高い教育を目指す改革へ」を発表した。９月入学の制度切り替えによる財政・家計負担を累計で６・５～７兆円と試算。オンライン学習の環境整備、教職員や学習支援員の増員など、学校再開と学習保障に向けた支援策の必要性を示した。

　第１部「９月入学・始業実施の場合必要な措置と生じる諸問題」では、児童生徒数が急増する年度が生まれることで発達差への配慮、カリキュラムや行事の見直しが必要になること、家庭では就職の遅れで１人当たり１００万円以上の損失が生まれることなどの問題を指摘。

　新入生の増加で生じる教員の人件費は、小学校で１年生の人数が１・４倍になった場合に年間１４３０億円、小・中・高を含む６年間で１兆７１６０億円にのぼると試算している。

　私立学校では新入生不在による授業料等の収入損失分に１兆６３００億円から２兆５７００億円、家計の教育費負担が小・中・高校で２兆５０００億円とした。

　第２部「いま本当に必要な取り組みに向けて」では、学力保障を進める緊急的な指導・ケア体制の整備を提案。対面授業・オンライン学習の併用体制の構築、通信費など低所得層への支援の拡充、学習支援員やスクールカウンセラーなどの人員配置などの施策を示した。

　学習の遅れを取り戻すため、教職員の増員のための予算・制度措置を提案。任期付任用教員による学習補充教室の運営など、格差解消に向けた取組を示した。

　これら教職員や学習支援員などの増員に約１兆円、学校再開に向けた支援と休業中の学習保障に向けた支援に２６００億円を見込み、「９月入学制よりもはるかに大きな、しかも長期的に持続する効果が見込める」と提案している。

(コロナウイルス関連 2020-05-26付)