文科省 学校における衛生管理マニュアル 低リスクの活動から徐々に 8場面で感染症予防対策(コロナウイルス関連 2020-05-26付)
文部科学省が22日に公表した「学校における新型コロナウイルス感染症に関する衛生管理マニュアル~学校の新しい生活様式」では、地域の感染状況を3段階に分け、学校における衛生管理の対応を記載。「各教科等」「部活動」など8つの活動場面で感染症予防対策を示した。
各活動場面における感染症予防対策の概要はつぎのとおり。
◆各教科等
▼感染症対策を講じてもなお感染のリスクが高い学習活動
▽理科における児童生徒同士が近距離で活動する実験や観察
▽図画工作、美術、工芸における児童生徒同士が近距離で活動する共同制作等の表現や鑑賞の活動
▼感染症対策を講じてもなお感染のリスクが高く、中でも特にリスクの高い活動
▽各教科等に共通する活動として児童生徒が長時間、近距離で対面形式となるグループワーク等および近距離で一斉に大きな声で話す活動
▽音楽における室内で児童生徒が近距離で行う合唱およびリコーダーや鍵盤ハーモニカ等の管楽器演奏
▽家庭、技術・家庭における児童生徒同士が近距離で活動する調理実習
▽体育、保健体育における児童生徒が密集する運動、近距離で組み合ったり接触したりする運動
〈レベル3地域〉
上記の活動は、感染症対策を講じてもなお感染のリスクが高いことから、行わないようにする。
〈レベル2地域〉
上記の活動は、可能な限り感染症対策を行った上で、「リスクの低い活動から徐々に実施することを検討」する。すなわち、これらの活動における、児童生徒の「接触」「密集」「近距離での活動」「向かい合っての発声」について、可能なものは避け、一定の距離を保ち、同じ方向を向くようにし、また回数や時間を絞るなどして実施する。
この場合にも、感染症対策を講じてもなお感染のリスクが高く、特にリスクの高い活動については実施について慎重に検討する。
その際には、以下の点にも留意する。
▽できるだけ個人の教材教具を使用し、児童生徒同士の貸し借りはしないこと
▽器具や用具を共用で使用する場合は、使用前後の適切な消毒や手洗いを行わせること
▽体育の授業に関し、医療的ケア児および基礎疾患児の場合や、保護者から感染の不安によって授業への参加を控えたい旨の相談があった場合などは、授業への参加を強制せずに、児童生徒や保護者の意向を尊重すること。また、体育の授業は、感染者が発生していない学校であっても、児童生徒や教職員の生活圏(通学圏や、発達段階に応じた日常的な行動範囲等)におけるまん延状況を踏まえて、授業の中止を判断すること
▽体育の授業は、当面の間、地域の感染状況にもよるが、可能な限り屋外で実施すること。ただし気温が高い日などは、熱中症に注意すること。体育館など屋内で実施する必要がある場合は、特に呼気が激しくなるような運動は避けること
▽体育の授業におけるマスクの着用については必要ないが、体育の授業における感染リスクを避けるためには、児童生徒の間隔を十分確保するなど、事務連絡「学校の体育の授業におけるマスク着用の必要性について」(令和2年5月2日)を踏まえた取扱いとしてほしい。
▽水泳については、事務連絡「本年度における学校の水泳授業の取扱いについて」(令和2年5月22日)を参照してほしい。
▽教育委員会は、地域の感染状況を踏まえつつ、上記の感染症対策を講じてもなお感染のリスクが高い学習活動についての各学校における実施状況を把握し、仮に感染症対策が十分でないと判断する場合には、必要な指導助言を行うとともに、地域内の他の学校にも注意喚起を行うこと
〈レベル1地域〉
感染症対策を講じてもなお感染のリスクが高い学習活動については、可能な限り感染症対策を行った上で実施することを検討する。
その際には、レベル2地域における留意事項も、可能な範囲で参照する。
なお、特別支援学校などにおける自立活動については、教師と児童生徒や児童生徒同士が接触するなど、感染リスクが高い学習活動も考えられる。個別の指導計画に基づく自立活動の一つ一つの具体的な指導内容について、実施の要否や代替できる指導内容について検討するなどの見直し等を行い、適切な配慮を行った上で実施してほしい。
◆部活動
地域の感染状況に応じて以下の通り取り組む。
〈レベル3地域〉
可能な限り感染およびその拡大のリスクを低減させながら、なるべく個人での活動とし、少人数で実施する場合は十分な距離を空けて活動する。
密集する運動や近距離で組み合ったり接触したりする場面が多い活動、向かい合って発声したりする活動は行わないようにする。
〈レベル2地域〉
可能な限り感染症対策を行った上で、リスクの低い活動から徐々に実施することを検討する。密集する運動や近距離で組み合ったり接触したりする場面が多い活動、向かい合って発声したりする活動の実施は慎重な検討が必要である。
なお、相当の期間において感染者が確認されていない地域にあっては、可能な限り感染症対策を行った上で通常の活動に移行することが考えられる。他方、直近の一週間において感染者が確認されている地域にあっては、より慎重な検討が必要である。
〈レベル1地域〉
可能な限り感染症対策を行った上で通常の活動を行う。
▼全体を通じての留意事項
▽運動不足の生徒もいると考えられるため、生徒のけが防止には十分に留意すること。また、生徒に発熱等かぜの症状がみられるときは、部活動への参加を見合わせ、自宅で休養するよう指導すること
▽生徒の健康・安全の確保のため、生徒だけに任せるのではなく、教師や部活動指導員等が活動状況を確認すること
▽活動時間や休養日については、部活動ガイドラインに準拠するとともに、実施内容等に十分留意すること。特に分散登校を実施する学校では、ガイドラインよりも短い時間の活動にとどめるなど、分散登校の趣旨を逸脱しないよう限定的な活動とすること
▽活動場所については、地域の感染状況にもよるが、可能な限り屋外で実施することが望ましいこと。ただし気温が高い日などは、熱中症に注意すること。体育館など屋内で実施する必要がある場合は、こまめな換気や消毒液の使用(消毒液の設置、生徒が手を触れる個所の消毒)を徹底すること。また、長時間の利用を避け、十分な身体的距離を確保できる少人数による利用とすること。特に、屋内において多数の生徒が集まり呼気が激しくなるような運動や大声を出すような活動等は絶対に避けること
▽用具等については、使用前に消毒を行うとともに、生徒間で不必要に使い回しをしないこと
▽部室等の利用については、短時間の利用とし一斉に利用することは避けること
▽運動部活動の実施に当たっては、体育の授業における留意事項を踏まえること
▽運動部活動でのマスクの着用については、体育の授業における取扱いに準じること
以上のほか、文部科学省作成のQ&Aで示している内容に留意すること。
◆給食
学校給食は、児童生徒の健やかな育ちを支える重要な機能である一方、感染のリスクが高い活動でもある。レベル3の地域にあっても、臨時休業期間中に工夫を凝らして取り組んでいる自治体の例などを参考に、学校給食施設や、栄養教諭、調理員等の人的資源を最大限活用することなどによって、いかに児童生徒の適切な栄養摂取や食生活を支援できるかということについて、感染リスクにも配慮しつつ積極的に検討することが望まれる。
学校給食を実施するに当たっては、学校給食衛生管理基準に基づいた調理作業や配食等を行うようあらためて徹底してほしい。給食の配食を行う児童生徒および教職員は、下痢、発熱、腹痛、嘔吐等の症状の有無、衛生的な服装をしているか、手指は確実に洗浄したかなど、給食当番活動が可能であるかを毎日点検し、適切でないと認められる場合は給食当番を代えるなどの対応をとる。
また、児童生徒等全員の食事の前後の手洗いを徹底してほしい。会食に当たっては、飛沫を飛ばさないよう、例えば、机を向かい合わせにしない、または会話を控えるなどの対応が必要である。
〈レベル3地域〉
通常の提供方法による学校給食の実施は原則として困難だが、適切な栄養摂取ができるよう、配膳の過程を省略できる品数の少ない献立(例えば、主菜と具沢山の汁物等)を提供することや、給食調理場において弁当容器等に盛り付けて提供することなどの工夫が考えられる。それらが困難な場合には、少なくとも配膳を伴わない簡易な給食(パン、牛乳等)を提供することも考えられる。
また、持ち帰りや配布を含めた食事支援の工夫について、保護者の希望や同意および地域の実情を踏まえ検討してほしい。
〈レベル2地域〉
通常の学校給食の提供方法に徐々に戻していくとともに、地域で感染者が確認された場合には、警戒度合を上げ、レベル3の対応に戻すなど柔軟に対応してほしい。
〈レベル1地域〉
衛生管理を徹底した上で、通常の学校給食の提供方法を開始する。
◆図書館
学校図書館は、児童生徒の読書の拠点として、また学習・情報の拠点として、学校教育における重要な機能を果たしている。図書館利用前後には手洗いをするというルールを徹底し、また、児童生徒の利用する時間帯が分散するよう、工夫して図書館内での密集を生じさせない配慮をした上で、貸出機能は維持するよう取り組む。
なお、日本図書館協会によって、図書館における新型コロナウイルス感染拡大予防ガイドライン(令和2年5月14日公表)が作成されているので、参考にしてほしい。
◆清掃活動
清掃活動は、学校内の環境衛生を保つ上で重要である一方で、共同作業を行うことが多く、また共用の用具等を用いるため、換気のよい状況で、マスクをした上で行うようにする。掃除が終わったあとは、必ず石けんを使用して手洗いを行うようにする。
◆休み時間
休み時間中の児童生徒の行動には、教員の目が必ずしも届かないことから、児童生徒本人に感染症対策の考え方を十分理解させるとともに、地域の感染状況および学校の状況に応じて、休み時間中の行動についての必要なルールを設定することなども含めて、指導の工夫が必要である。
〈レベル3地域・レベル2地域〉
トイレ休憩は混雑しないよう動線を示して実施する。また、廊下で滞留しないよう、私語を慎むなどの指導の工夫が必要である。
〈レベル1地域〉
上記のレベル2以上の地域の取組を踏まえ、徐々に制限を緩和するとともに、会話をする際にも、一定程度距離を保つこと、互いの体が接触するような遊びは行わないよう指導する。
◆登下校
登下校時には、休み時間と同様、教員の目が届きづらいことに加えて、特に交通機関やスクールバスへの乗車中は、状況によっては3つの密が生じ得ることを踏まえ、以下のような工夫や指導が必要である。
▽登下校中については、校門や玄関口等での密集が起こらないよう登下校時間帯を分散させる
▽集団登下校を行う場合には密接とならないよう指導する
▽公共交通機関をやむを得ず利用する場合には、マスクを着用する、降車後は速やかに手を洗う、顔をできるだけ触らない、触った場合は顔を洗うなどして、接触感染対策などの基本的対策を行うほか、できるだけ乗客が少ない時間帯に利用できるようにするなどの配慮を検討する
スクールバスを利用するに当たっては以下のことが考えられる。
▽利用者の状況に配慮しつつ、定期的に窓を開け換気を行うこと
▽乗車前に、家庭において検温し、発熱が認められる児童生徒等は乗車を見合わせること
▽可能な範囲で運行方法の工夫等によって、過密乗車を避けること
▽利用者の座席を離し、それが難しい場合は、会話を控えることやマスクの着用について徹底すること
▽利用者に手洗いや咳エチケット等を徹底すること
▽多くの利用者が触れるドアノブ等を消毒すること
◆健康診断
健康診断の実施は、法令に定められているものであり、児童生徒等の健康状態を把握するためには年間のいずれかの時期で実施する必要がある(特例として、令和2年度は6月30日までに行う必要はない)。
3つの条件(密閉、密集、密接)が同時に重ならないよう、日程を分けて実施するなどの工夫のほか、例えば、以下のようなことが考えられる。
▽児童生徒等および健康診断にかかわる教職員全員が、事前の手洗いや咳エチケット等を徹底すること
▽部屋の適切な換気に努めること
▽密集しないよう、部屋には一度に多くの人数を入れないようにし、整列させる際には1~2㍍の間隔をあけること
▽会話や発声を控えるよう児童生徒等に徹底すること
検査に必要な器具等を適切に消毒する。健康診断の実施の判断や実施の方法等については、学校医、学校歯科医、関係機関等と十分連携し、共通理解を図っておくことが重要である。
(コロナウイルス関連 2020-05-26付)
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