道高教組が道教委に要請 時数確保のみ短絡的 コロナ対策事務連絡撤回を
(関係団体 2020-05-27付)

 道高教組(尾張聡中央執行委員長)は21日、道教委の小玉俊宏教育長に対して、19日付の事務連絡「新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた学校教育活動等の実施における“学びの保障”の方向性等について」の撤回を申し入れた。「授業時数の確保をもってのみ“学びの保障”がされると考えるのは、教育の営みを短絡的・一面的にとらえた浅はかなものの見方」「授業以外の教育活動を精選し、授業時間の機械的な埋め合わせを現場に強いている」などと批判。学校現場からは「各学校の状況をまったく踏まえずに一方的に押し付けるもの」「時数確保を目的化せず、学びの本質に目を向けることができるようにすべき」などの声が上がっていることを訴えている。

 申し入れの内容はつぎのとおり。

 新型コロナウイルス感染拡大の収束は見通せず、学校においても長期的な対策が求められている。抜本的な対策で学習保障を考えなければならない中、15日、文部科学省は「新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた学校教育活動等の実施における“学びの保障”の方向性等について」を通知した。通知の趣旨は「学校行事等も含めた学校教育ならではの学びを大事にしながら教育活動を進めていくことが大切であることを踏まえ、感染症対策を講じながら最大限子どもたちの健やかな学びを保障することを目指して、取組の方向性を示すもの」とし、授業のみならず学校行事も含めた学校ならではの教育活動を最大限保障するとしている。

 授業については、「学校教育法施行規則に定める標準授業時数を踏まえて編成した教育課程の授業時数を下回ったことのみをもって、学校教育法施行規則に反するものとはされない」という、従来からの文科省の見解をあえて示し、授業時数の確保のみをもって“学びの保障”とされることを戒めている。

 学校現場では、休業期間中に、コロナウイルス感染拡大防止対策を十分に取りながら、最大限、学びの保障をするにはどのようなことが可能なのか議論を重ね、学校再開後の計画もすでに立てていた。生徒と教職員が議論しながら、可能な範囲での行事の実施に向け、検討を進めていた学校もある。

 ところが、道教委は、19日に発出した事務連絡において、「学校行事の精選については、今後再度臨時休業が実施される可能性もあることから、学校再開後は、感染症対策を十分に講じた上で、教科等の学習の遅れを補うことを最優先とし、当面の間は教科等の授業時数の確保に努めること」としており、9月までの学校行事の自粛を現場に求めている。

 さらに、事務連絡の別紙資料において、夏・冬休みの短縮や7時間授業、土曜授業を例示し、その際、回復できる授業時数までも示している。

 もちろん、学校で行われる授業は大切であり、学びの保障を考える上で欠くことのできないものではある。しかしながら、授業時数の確保をもってのみ学びの保障がされると考えるのは、あまりにも教育の営みを短絡的・一面的にとらえた浅はかなものの見方であり、先の文科省通知の趣旨も踏まえていない。

 また、この事務連絡が学校現場に対してどのような影響を与えるのかという想像力に欠け、生徒に対する学びの保障をどのように進めるのか必死に議論・計画してきた教職員に対する配慮も感じられない。

 道教委は、授業以外の教育活動を精選し、授業時間の機械的な埋め合わせを現場に強いているだけである。

 部活動の大会中止、学校行事の縮減・延期・中止、進路活動の制限、進学・就職に対する不安など、これまで散々傷つき、多くの不安を抱える高校生一人ひとりの苦悩に寄り添うこともなく、授業時数の確保のみをもって教育を保障したとする行政側の都合を押し付けている。

 新型コロナウイルスの影響が長期化することが予想される中、教育課程を柔軟に運用するためにも、編成主体である学校の判断が尊重されるのは当然であり、道教委が安易に学校の年間計画に介入することは許されない。道教委は安心して授業ができるよう、20人学級など教育条件整備をはじめ、授業時数の確保にこだわらない学びの保障をどうするのか、真剣に対策を進めるべきである。

 学校現場では、すでに以下のような声が上がっている。

▽学校行事について、文科省が示した「教育活動の再開等に関するQ&A(13日付事務連絡)」や地域の感染状況をみながら方法や時期を再検討してきたにもかかわらず、事務連絡は、それら各学校の状況をまったく踏まえずに一方的に押し付けるものだ。

▽生徒会執行部と教職員が議論を重ね、密にならない状況をつくるため、例年にこだわらない方策で学校祭を再検討してきた。ある高校では、職員会議で検討した実施の方法を生徒に伝え、生徒会長が学校祭をできる喜びをかみしめていた。そのような中で、このやり方は許せない。

▽事務連絡は、行事の精選の理由を「教科等の学習の遅れを補うことを最優先」としている。学習活動は大切であり、重要であることは、そのとおりだが、授業時数を確保すれば学びの保障になるのか、はなはだ疑問が残る。

▽学校行事自粛期間を9月末までとすることの根拠がまったく示されていない。

▽「こういう事態だけれども、授業だけは何としてもやれ」としか言わず、しかも、教職員の増員や施設の整備を伴わずに時数確保のみを求めているのは許せない。生徒と教職員が一緒になって考え、この厳しい条件の中でもどう工夫して行事を行えるのか模索し、実行していくことが子どもたちを育てる上で大切ではないか。

▽教職員は目の前の生徒に、どう学習を保障しようか、これまでにない状況の中で最適な答えを出すことに労力をさけるようにすべきであり、時数確保を目的化せず、学びの本質に目を向けることができるようにすべきだ。

▽これまで、家庭学習として生徒らが行ってきた学習の成果を認める視点はどこへいったのか。まずは、それを示すべきだ。

▽全道で戸惑いと怒りが広がっている。そもそも事務連絡で示す内容なのか。

 以上の現場の声を踏まえ、19日付事務連絡「新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた学校教育活動等の実施における“学びの保障”の方向性等について」の撤回を申し入れる。

(関係団体 2020-05-27付)

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