文科省 学習活動重点化にかかる留意事項(中3) 授業外の学習状況把握を 十分な事前指導求める
(コロナウイルス関連 2020-06-11付)

【各教科等に共通の考え方】

 特に授業時数が限られている現下の状況にあっては、学習指導要領に規定されている内容をあらためてよく確認し、それを効果的に指導する観点から、主たる教材である教科書および教科書と併用できる教材について、授業において取り上げるべき個所を確認することが重要である。なお、教科書における発展的な学習内容については、生徒の理解や習熟の程度に応じて必要に応じ学習するものであり、必ずしもすべての生徒が学習しなければならない内容ではない。

 学校の授業以外の場で取り扱う学習活動については、事前指導を十分に行った上で取り組ませるとともに、生徒一人ひとりの授業外での学習状況を適切な方法によって把握し、その後の指導の改善等に生かしていくことが大切である。

 指導計画の作成に当たっては、教科等や学習活動の特性に応じて、学校の授業以外の場で取り扱う学習活動と学校における授業との関連や、指導順序の変更を行う際の単元や題材などの内容のまとまりについて十分配慮することが重要である。

【国語】

 言語活動を通して、人とのかかわりの中で国語で伝え合う力を高めることは、学校の授業以外の場では困難と考えられるため、互いの考えを生かしながら話し合ったり、様々な文章を読んで考えたことを伝え合ったりするなどの学習活動は、学校の授業で取り扱うことが望ましい。

 学習の目標を理解した上で、関心のある事柄について自分の考えを書いたり、学習課題に応じて文章を読んだりするなどの学習活動のうち、個人でも実施することが可能と考えられるものについては、これまでの学習状況を踏まえた上で、学校の授業以外の場で取り扱うことが考えられる。

【社会】

 生徒が社会的事象の意味・意義や特色を踏まえて歴史の大きな流れについて理解したり、日常の社会生活と関連付けながら具体的事例を通して、政治や経済などについての基本的な考え方や概念、制度や仕組みの意義や働きについて理解したりすることは、学校の授業で取り扱うことが望ましい。

 生徒が議論などを通して互いの考えを伝え合い、自らの考えや集団の考えを発展させることなどを通して思考力、判断力、表現力等を育成したり、それらの活動を通して学習内容の確かな理解と定着を図ったりすることは、学校の授業で取り扱うことが望ましい。

 歴史的分野の学習においては、単元の導入時の学習の見通しを立てる活動や、単元末において自らの学習の振り返りを行う活動について、その後の生徒の学習の改善や、学校の授業における学習活動で活用できるよう、ワークシートを準備したり、学習ノートなどに記入するなどの指示を行ったりした上で、学校の授業以外の場で取り扱うこととすることが考えられる。

 公民的分野の学習においては、学校の授業で取り扱う学習活動を踏まえ、情報を収集して読み取る活動や、これをもとに考察、判断した結果を表現する活動について、学校の授業以外の場で取り扱うこととすることが考えられる。

【数学】

 知識および技能の習得や思考力、判断力、表現力等の育成、学びに向かう力、人間性等のかん養に当たり、具体物を操作して考えたり、データを収集して整理したりするなどの具体的な体験を伴う学習を通して、数量や図形などの性質を見いだしたり、基礎的な概念や原理・法則などを実感を伴って理解したりすることは、学校の授業で取り扱うことが望ましい。

 学習を主体的に、また、深い学びとするためには、数学の問題発見・解決の過程において、見いだした数や図形の性質などについて説明し伝え合う機会を設けたり、言葉や数、式、図、表、グラフなどの数学的な表現を用いて、論理的に考察し表現したり、その過程を振り返って考えを深める学習活動を取り入れたりしていくことが必要であり、このような学習活動は学校の授業で取り扱うことが望ましい。

 学校の授業以外の場で取り扱う学習活動としては、教科書の問題演習や、学習した内容について自分の考えをまとめる活動などが考えられる。

 また、数学を活用した問題解決の取組において、自ら問題を見いだし、解決するための構想を立て、実践するような活動なども、事前指導などをしっかりと行った上で、学校の授業以外の場で取り扱うことが考えられる。

【理科】

 観察、実験などに関する基本的な技能の習得、また、観察、実験などを通じて自然の事物・現象について理解を図ることは、学校の授業以外の場では困難と考えられること、さらに、安全性の観点から学校の授業以外の場での実施が困難な活動が多いことから、問題を見いだし見通しをもって観察、実験などを行い、その結果を分析して解釈するといった科学的に探究する学習活動は、学校の授業で取り扱うことが望ましい。

 学校の授業以外の場で取り扱う学習活動としては、例えば、あらかじめ課題の解決に必要な情報を図書資料やウェブサイト、身近にある自然の事物・現象の観察等を通じて集める活動、学習したことを自然の事物・現象や日常生活に当てはめて考える活動、授業で行った実験結果の分析や考察を踏まえ、まとめのレポートを作成する活動などが考えられる。

【音楽】

 表現の学習においては、試行錯誤しながら曲にふさわしい音楽表現を創意工夫したり、他者と協働しながら音楽表現を生み出したりする活動を通して学びが深まることから、これらの学習活動については学校の授業で取り扱うことが望ましい。

 学校の授業以外の場で取り扱うことが可能な学習活動としては、歌詞を音読して、言葉のもつ語感やリズムなどを感じ取ったり、曲の特徴に着目して音源を聴き、気付いたことや感じたことを書き留めたり、音源に合わせて歌ったり楽器を演奏したりすることなどが考えられる。

 鑑賞の学習においては、音楽のよさを味わって聴いたり、感じたことなどについて話し合ったりする活動を通して学びが深まることから、これらの学習活動については学校の授業で取り扱うことが望ましい。

 学校の授業以外の場で取り扱うことが可能な学習活動としては、教科書等を読みながら曲の概要や作曲された背景などについて理解したことをまとめたり、音楽や演奏の特徴に着目して音源を聴いたり動画を見たりして、気付いたことや感じたことを書き留めたりすることなどが考えられる。

 指導順序の変更に際しては、創作や鑑賞の学習を、歌唱や器楽の学習のうち全員で歌ったり演奏したりする学習より先行して行ったり、知識や技能に関する学習の一部などを学校の授業以外の場で先に学習を進めておいたりするなどの工夫が考えられる。

 学校の授業以外の場での学習活動の実施に当たっては、教科書記載のQRコードや公衆送信等で音源や動画が視聴できない生徒への配慮についても留意する必要がある。

【美術】

 表現の学習においては、発想や構想に関する学習活動では、可能な範囲で主題について考えてみたり、ワークシートやアイデアスケッチなどを工夫して大まかな構想を練ったりすることなどを、学校の授業以外の場で取り扱うことが考えられる。実際に描いたりつくったりする学習活動は、個人の教材や教具を使用する、生徒同士で用具の貸し借りをしないようにするなどの点に配慮し、学校の授業で取り扱うことが望ましい。

 また、近距離での活動になるような共同で行う創造活動を計画している場合は、地域の感染状況等を見極めて題材の実施時期を見直すことが考えられる。

 鑑賞の学習においては、これまでの学習状況を踏まえた上で、ワークシートなどを工夫することなどによって、可能な範囲で学校の授業以外の場で事前に教科書等の作品を鑑賞する活動を取り扱うことが考えられる。

 作品などについて説明し合ったり、批評し合ったりする活動は、授業以外の場では困難と考えられることから、近距離での活動にならないよう留意しながら、学校の授業で取り扱うことが望ましい。

【保健体育】

 生徒が密集する運動や近距離で組み合ったり接触したりする運動については、地域の感染状況等を踏まえ、運動の時間を段階的に長くしたり、年間指導計画の中で指導順序を入れ替えたりするなどの工夫が考えられる。

 体育分野については、一般的には毎週2~3コマ程度の授業を実施することとなるが、夏季休業期間を短縮する場合で、熱中症事故の防止の観点から授業の実施が困難なときは、学校の授業以外の場で学習活動を行うこととすることが考えられる。

 その場合の学習活動の内容としては、個人や少人数で距離をとって実施する運動でけがのリスクが低い運動や、健康と環境について理解し、自分の考えをまとめる活動などが考えられる。

【技術・家庭(技術分野)】

 製作・制作・育成の実習等については、適切な工具や機器等を使用する必要があり、安全に作業を進めるために、十分な作業スペースを確保したり、機器等の使用前後に適切な消毒や手洗いを行わせたりすることなどの点に配慮した上で、学校の授業で取り扱うことが望ましい。

 その上で、例えば、各内容の技術に関連して調べたりまとめたりする活動や、特別な道具や機器等を要しない生物の育成等にかかる実習については、事前・事後指導を適切に位置付けた上で、学校の授業以外の場で取り扱うことも考えられる。

 例えば、道具の使い方等を調べる活動を学校の授業以外の場で取り扱うこととしたとしても、実際に製作・制作・育成等を行う前には、教師が生徒の理解の状況を確認するなど、安全や健康に関する事項の指導については十分な配慮が必要である。

【技術・家庭(家庭分野)】

 製作、調理等の実習の指導において、実習室の用具や機器、設備などを使用しなければ学習内容の理解や技能の習得を図ることが困難な学習活動については、学校の授業で取り扱うことが望ましい。

 その際、調理実習については、感染状況に応じて、年間指導計画の中で指導順序を変更した上で、学校の授業で取り扱うことが望ましい。

 見学・調査・実習等の校外で実施する学習の指導において、感染予防の観点から見学・調査等が実施できず、視聴覚教材の活用やロールプレーイング等の活動をしなければ学習の理解を図ることが困難な学習活動については、学校の授業で取り扱うことが望ましい。

 生徒が教科書の記述や家庭生活の様子を確認し自分の考えをまとめたり、実習等の計画を立案したり、自分なりに気付いたことをまとめたりする活動については、学校の授業での指導と適切に関連付けた上で、学校の授業以外の場で取り扱うことが考えられる。

【外国語】

 聞くこと、読むこと、話すこと(やり取り、発表)、書くことの各領域の言語活動を通して、文法の規則性などに気付いたり、理解し使えるようにしていったりすることは、学校の授業でないと難しいと考えられるため、言語材料の理解や活用にかかる内容は学校の授業で取り扱うことが必要である。

 例えば、旅行や買い物等の言語の使用場面特有の表現については、中学1年および2年でも一定程度扱っていると考えられるため、その状況を踏まえた上で、学校の授業以外の場で取り扱うことが考えられる。

 読むことに特化した学習活動については、他の単元および中学1年および2年で一定程度行っていると考えられること、また、訳文等を用意することで個人でも実施することが可能であると考えられることから、これまでの学習状況を踏まえた上で、学校の授業以外の場で取り扱うことが考えられる。

 話すことや書くことに特化した学習活動についても同様である。

【特別の教科 道徳】

 中学校学習指導要領(平成29年告示)第3章第3の「指導計画の作成と内容の取扱い」の1において、道徳科の年間指導計画を作成するに当たって「第2に示す内容項目について、各学年においてすべて取り上げることとする」とされていることを踏まえ、学校の授業ですべての内容項目を取り上げることが求められる。

 その上で、どの内容項目を授業でより重点的に指導するのかについては、各学校で十分に検討し、判断することが重要である。

【総合的な学習の時間】

 総合的な学習の時間については、地域の教育資源の活用による多様な学習活動の充実を図ることが重要である。

 その際、「休業日等における総合的な学習の時間の学校外の学習活動の取扱いについて」において、公民館や図書館、博物館、美術館および青少年教育施設等の社会教育施設、社会教育関係団体、NPO・企業等の各種団体を含む地域や家庭等の協力を得て行う学習活動を念頭に、休業日等における総合的な学習の時間の学校外学習活動を各学年における年間授業時数のうちの4分の1程度まで実施することができるとされていることを踏まえ、例えば、学校の授業においては課題の設定やまとめ・表現にかかる学習活動を重点的に実施することが考えられる。

【特別活動】

 特別活動は、学級、学年、学校を単位とした集団生活におけるよりよい人間関係の形成を通して、学級や学校の生活の充実・向上を図る特質を有することから学校という場において行うことが基本となる。

 特に、学級活動は、教師と生徒との信頼関係および生徒相互のよりよい人間関係の形成を通して学習や生活の基盤の形成に資する活動であることに鑑み、原則として毎週1コマ、学校の授業として行うこととして、年間指導計画等の諸計画を見直すことが重要である。

 学校再開に当たっては、特に学級生活における人間関係の形成、生活や学習の基盤の形成を重視することとし、例えば、

▽学級や学校における生活づくりへの参画では、学級や学校における生活上の諸問題の解決

▽日常の生活や学習への適応と自己の成長および健康安全では、心身共に健康で安全な生活態度や習慣の形成

▽一人ひとりのキャリア形成と自己実現では、主体的な進路の選択と将来設計のうち、関連する内容に重点をおいて学級活動を展開

 ―することが考えられる。

 生徒会活動、学校行事についても、それぞれの目標や必要性を確認して年間指導計画等の諸計画を見直すとともに、感染症対策を講じながら、生徒や学校の実態に応じて創意工夫して実施することが求められる。

(コロナウイルス関連 2020-06-11付)

その他の記事( コロナウイルス関連)

道徳の授業でフェイスシールドづくり 108枚作製 半数を福祉施設に 石狩市花川小「貢献すること」学ぶ

 石狩市立花川小学校(高橋秀明校長)6年生は8日、同校で「特別の教科 道徳」の一環としてフェイスシールドづくりに挑戦した。108枚作製、うち半数の54枚を、近日中に市内の老人福祉施設へ寄贈す...

(2020-06-11)  全て読む

スクールサポーター派遣 児童生徒の学習を保障 7月以降14校に 北広島市教委

 北広島市は本年度、新たにスクールサポーター派遣事業を開始する。学校再開後の児童生徒の学習保障に必要な学習支援員と校務支援員を配置。7月以降、小・中学校14校に配置する予定で、市の広報や学校...

(2020-06-11)  全て読む

土曜授業工夫例 服務の点で留意点 文科省が通知

 文部科学省は9日付で、通知「新型コロナウイルス感染症への対応に伴い土曜授業等を実施する場合における週休日の振替等の適切な実施および工夫例等について」を各都道府県・指定都市教委教育長に発出し...

(2020-06-11)  全て読む

新型コロナ対策300億円を計上 道の2定補正案

 道は、16日開会の2定道議会に提出する補正予算案を発表した。  新型コロナウイルス感染症対策に約300億円を盛り込むなど総額320億8100万円を計上。  このうち、安心こども基金関連...

(2020-06-11)  全て読む

特別支援学校在籍生の現場実習 受け入れに協力を 道教委が事業所等へ要請

 道教委は、関係団体・事業所の関係者に対し、特別支援学校に在籍する生徒の現場実習の受け入れ協力を呼びかけている。新型コロナウイルス感染症の影響に伴う臨時休業によって、春先に実施している現場実...

(2020-06-11)  全て読む

学校臨時休業対策費補助金が内定 道内に1.8億円交付見通し 保護者への給食費返還支援

 新型コロナウイルス感染症による臨時休業(3月から春休み前まで)に伴い、保護者への学校給食費返還を支援する学校臨時休業対策費補助金の内定額がまとまった。道内では140の市町村教委・大学が内定...

(2020-06-11)  全て読む

余市町内小・中に消毒液 町内で工事担当の建設業者

余市町教委アルコール消毒液寄付  【小樽発】岩内町の㈱草別組(草別義昭代表取締役)は9日、新型コロナウイルス感染拡大防止対策のため余市町内の小・中学校で活用してほしいと、アルコール消毒液100本を寄贈した。小松知史社長らが...

(2020-06-11)  全て読む

22日の実験研修皮切り 道研 研修講座取扱い決定

 道立教育研究所は、延期・中止としていた7月22日までの研修講座等の実施について、今後の取扱いを決定した。本年度研修講座の皮切りとなるのは、6月22日から紙上研修方式で実施する観察・実験の実...

(2020-06-10)  全て読む

後志管内市町村のICT学習支援 オンライン授業を展開 動画配信しALTが出演

 【小樽発】後志管内の各市町村や公立小・中学校は、新型コロナウイルス感染症の影響に伴う臨時休業中、ICTを活用した様々な学習支援に取り組んだ。小樽市で学習動画を配信したほか、喜茂別町では全校...

(2020-06-10)  全て読む

地域の応援 心の支えに 江別高が懸垂幕作成

江別高懸垂幕設置  江別高校(吉田岳夫校長)は、学校再開に当たって懸垂幕「乗り越えよう!! 江高生」を作成した。同校のPTA・同窓会の協力を得たもの。PTA・同窓会の担当者は「懸垂幕を見て、少しでも心の支えに...

(2020-06-10)  全て読む