公立夜間中学を考えるシンポジウム 学ぶ人の立場で学校を 札幌市教委 目指す姿共有
(札幌市 2021-08-24付)

公立夜間中学について考えるシンポジウム
会場では、Zoom画面をスクリーンに投影した

 札幌市教委は21日、市内のアスティ45を主会場に、来年4月に開校する道内初の公立夜間中学「札幌市立星友館中学校」について考えるシンポジウムをオンラインで開いた。基礎教育保障学会の岡田敏之会長による基調講演や、星友館中学校の学校説明、パネルディスカッションなどを実施。約90人が参加し、夜間中学の目指す姿を共有した。

 市教委は、ことし3月に策定した公立夜間中学設置基本計画に基づき、来年4月に道内初の公立夜間中学、市立星友館中学校を開校する。

 シンポジウムは、新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、リアルタイムでオンライン配信。会場では、登壇者を全員オンライン参加とし、Zoom画面をスクリーンに投影した。

 開会に当たり、市教委の相沢克明学校教育部長があいさつ。星友館中の開校について、「今後の札幌市全体の教育の在り方との関連を踏まえ、その果たすべき役割をより広い視野でとらえながら着実に準備を進めている」と報告した。

 また、市の教育が目指す人間像として「自立した札幌人」を掲げていることにふれ、「変化の激しいこれからの社会の中で市民一人ひとりが自立した札幌人であるためには、生涯にわたって学び続けることが不可欠」と強調。そのためには、「一人ひとりが自分の力で学ぶことができる能力を身に付けるとともに、このような学びを支える場が身近なところにあることが大切」とし、市民総ぐるみでつくりあげていく学校を目指すとの考えを示した。

 続いて、基礎教育保障学会の岡田会長が「夜間中学の目指す姿について~近年注目されている夜間中学、今なぜ夜間中学なのか」と題して基調講演を行った。

 「昼間部生徒と夜間部生徒が世代や国籍を超えてふれあい学び合う全国唯一の学校」をコンセプトに取り組んでいる京都市立洛友中学校の実践を紹介。「夜間中学は多様性の宝庫」とし、夜間中学の利点として、「同調圧力文化が起こりにくい」「互いの違いを認め合う文化が醸成されやすい」「高齢者、不登校経験者、外国人、障害者、LGBTQなどあらゆる個性を受け入れる土壌をつくりやすい」などを挙げた。

 また、夜間中学の可能性として「全国すべての義務教育未終了者の学習機会の確保」「外国人の日本語および日本文化と基礎教育の習得」「不登校生徒、不登校経験者の学び直しの場としての選択肢」「昼間の学校との交流・連携による地域教育の活性化」などを提示した。

 一方、課題として「高齢者や外国人、不登校経験者などの多様な生徒を指導できる技量のもった教員の確保」「教員や養護教諭に加えて日本語指導教員、母語支援員、スクールカウンセラー等の専門人材の配置」などを指摘。「このような課題を克服し、札幌市の夜間中学が全国でのモデルとなるとともに、“学ぶ人”“学びたい人”の立場に立った学校づくりを進めてほしい」と期待した。

 引き続き、市教委の末原久史夜間中学担当係長が星友館中学校について紹介。目指す姿や特色のほか、校舎や設置場所、授業日・学習時間、学習内容などについて解説した。

 このあと、岡田会長、北海道に夜間中学をつくる会の工藤慶一共同代表、文部科学省初等中等教育局の白井俊教育制度改革室長、星友館中学校の初代校長に就任する市教委の工藤真嗣夜間中学担当課長をパネリストにパネルディスカッションを行った。

 なお、星友館中学校にかかわって今後、9月26日、29日に入学者対象向け説明会・学校見学を行う予定。

(札幌市 2021-08-24付)

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