札幌市 食育充実に向けた取組 残食低減で大きな成果 調理校と子学校 残食率に差(札幌市 2021-10-05付)
食べることに注力を―。親子方式による完全給食を実施する札幌市は、児童生徒の食育の充実を図っている。平成18年度から取り組んでいる学校給食フードリサイクル事業をはじめ、栄養教諭らによる長年の指導もあり、残食低減に大きな成果を上げている。一方で、調理校と子学校における残食率は改善の傾向にあるものの、依然として差がみられる。コロナ禍で学校間の往来が制限される中、食指導に関する情報提供や、オンラインを活用したさらなる食育の実践、親学校・子学校との連携深化に期待がかかる。
完全給食を実施する市では、すべての市立小・中学校および特別支援学校5校の計301校を対象に、親子方式を採用。ことし5月現在、自校分のみを調理する単独校が53校、自校分と他校分を調理する親学校が123校、調理施設がなく、親学校から給食の提供を受ける子学校が124校となっている。
市教委は、平成18年度から学校給食フードリサイクル事業を開始。調理くずや残食などの生ごみをたい肥化し、そのたい肥を利用した農作物を給食の食材として提供しており、児童生徒の食育・環境教育の充実を進めている。
取組の成果もあり、16年度には、小学校で12・2%、中学校で14・9%だった残食率が、28年度には小学校で10・1%、中学校で6・5%に低下。令和2年度には、小学校で7・6%、中学校で5・0%に。調理校に配置された栄養教諭による指導や、子学校の給食担当教諭との連携も、残食低減に大きな成果を上げている。
単独校および親学校を合わせた調理校と子学校の残食率をみると、いずれも年々改善傾向にあるが、28年度から2年度までの5ヵ年平均で、小学校では調理校が8・2%だったのに対し、子学校では12・2%と、4・0ポイントの開きがある。中学校においても、調理校が5・9%に対し、子学校が7・2%と、1・3ポイントの差が生じている。
ことし2月に開かれた第4回学校給食運営委員会で、残食を課題とする意見として、「(残食量など)実際の数字は知らせていない」「ある区では、(給食残量を)知らないという子学校の管理職が多かった」という声が上がった。
関係者は、異口同音に「調理校と子学校では、子どもたちの生の声を聞く機会の差もある」と指摘する。ある子学校の管理職は「直接的な原因かどうかは分からない」と前置きし、「調理校では、午前中から学校全体に給食を調理するよい匂いが漂ってくる。嗅覚が食欲を刺激することも無関係ではないのでは」と話す。
手稲中学校栄養教諭で、札幌市学校給食栄養士会の千葉直美会長は、煮物やあえ物など副食での残食を例に、「時間の経過とともに、食感が変わってしまうことも影響しているのでは」と分析する。家庭の食卓に上りにくくなっていることにふれ、「苦手な食材も、給食で食べ慣れてほしい」という思いを明かす。
ある学校では、児童生徒にとって苦手なアサリの深川丼の残量改善に取り組んだ。子どもたちに対し、何を残すかを明確に説明した上で、給食担当の教諭と連携して取り組むことで残量低減の効果が出ているという。
千葉会長は、SDGs(持続可能な開発目標)の観点も踏まえ、「今後予定しているウェブ会議などで、会として何ができるかを考えていきたい」と、より良い給食の提供に向けて意欲をみせる。
市教委の泉照美栄養指導担当課長は「食指導に関する情報提供をはじめ、オンラインを活用した食育の実践など、各学校で工夫している」と高く評価する。コロナ禍で栄養教諭が子学校に直接訪問する機会が制限される中、調理校と子学校のさらなる連携に期待を寄せている。
(札幌市 2021-10-05付)
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