十勝教育研究所・連絡協3年度研究概要 深い学びに向かう子育成 共同研究 ルーブリック作成等(関係団体 2022-04-05付)
【帯広発】十勝教育研究所、十勝管内教育研究所連絡協議会(会長・山田洋十勝教育研究所長)は、3年度の研究概要をまとめた。2ヵ年継続研究1年次となる共同研究、2ヵ年継続研究最終年度となる協力員研究を推進。取組の詳細は十勝教育研究所が発行した『研究紀要』第216号に掲載している。
研究主題や取組等の概要はつぎのとおり。
【共同研究】(2ヵ年継続研究1年次)
▼研究主題
「深い学び」に向かう子どもを育む研究~課題設定の工夫と評価の充実を通して
※「深い学び」に向かう子ども=見方・考え方を働かせながら①知識を相互に関連づけてより深く理解しようとする②情報を精査して考えを形成しようとする③問題を見いだして解決策を考えようとする④思いや考えをもとに創造しようとする―の4点を設定。
▼研究仮説
ねらいを具体化したパフォーマンス課題を設定し、到達目標を明確化したルーブリックを活用することで「深い学び」に向かう子どもを育むことができるだろう。
▼取組内容
士幌町立士幌小学校3年算数科(伊澤亮教諭)、浦幌町立浦幌中学校2年社会科(松林一彦教諭)の2グループで授業実践。
各教科による見方・考え方を働かせ、既習の知識や技能を活用・応用し、思考・判断・表現を評価するためのパフォーマンス課題を、単元のねらいに沿って実施した。また、パフォーマンス課題を評価する際に用いる評価基準表・ルーブリックを作成し、単元や内容の導入時など、早い段階で児童と共有することで、見通しを持った学習につなげた。
▼パフォーマンス課題
▽成果
・パフォーマンス課題を単元計画に位置付けたことで、子どもに身に付けさせたい力や深い学びの姿を明確にし、計画・指導することにつながった
・知識や技能を活用・応用・統合したり、自分の考えと結び付けながら課題を解決したり、発展させたりすることができるパフォーマンス課題を実施することで、深い学びにつながった
・パフォーマンス課題を単元の早い段階で示すことで、子どもが見通しを持ち、意欲的に学習する姿が見られた
・ペーパーテストだけでは見取ることが難しい「思考・判断・表現」の観点を見取ることができた
▽課題
・パフォーマンス課題の選択や評価方法によっては、評価に時間がかかった。課題の熟慮とともに、見取るための具体的な方法を検討する必要がある
▼ルーブリック
▽成果
・中学校での実践では、単元の早い段階で子どもにルーブリックを提示し、子どもが学習課題を探究するための視点が明確になり、見通しを持って学習できた
・単元の途中やパフォーマンス課題に取り組む中で、学習の過程や成果の把握をするものとして活用できた
・ルーブリックを子どもと共有することで、評価の信頼性と妥当性を高めることにつながった
▽課題
・小学校の算数科では、ルーブリックの記述によって、これから身に付けていく知識や技能を示すことにつながる可能性が想定された。子どもと共有するために記述を工夫する必要がある
・発達段階に応じたルーブリックの記述や学習過程での活用が難しかった
【協力員研究】(2ヵ年継続研究2年次)
▼研究主題
子どもたちにしなやかな心を育む研究~道徳科における発問と対話の工夫
▼研究仮説
道徳科において、道徳的価値を深める発問や、多様な見方に接することで、しなやかな心が育まれることにつながるだろう。
※しなやかな心=どのようなことにも前向きに取り組み、意欲的に挑戦しようとする心を指す。
▼取組内容
清水町立清水小学校5年(梶浦哲平教諭)、幕別町立札内中学校2年(田口健人教諭)の道徳科で授業実践。
変化に対して柔軟に適応できる心を育むために、道徳的価値の理解を自分自身との関わりの中で深めることを重点に置いた。授業において「主題に迫る中心発問」「道徳的価値を深める問い返し」「自分自身と関連付ける発問」の3点を心がけ、発問を工夫した。
多様性に対して柔軟に対応できる心を育むために、多面的・多角的な見方への発展を意識。教材に対する考えを持つこと、児童生徒の対話場面への教員による効果的な介入、観点を設定した振り返りを行った。
▼本年度研究の成果と課題
▽成果
・発問の目的を明確にし、子どもたちの心に響くような工夫をすることで、道徳的価値の理解を自分自身との関わりの中で深めようとする姿が見られた
・対話場面の工夫によって、子どもたちの発言やノートへの記述からは、一面的な見方から多面的・多角的な見方へとより深く学ぶことができた様子が見て取れた
▽課題
・終末の段階で内容項目の押さえにずれが見られ、学びを日常生活に生かす場面でも思考が滞る様子があった。導入の段階でねらいを正しく理解し、自分事として問題意識を持って取り組む必要がある
▼2ヵ年継続研究としての成果と課題
▽成果
・前向きに取り組もうとする心、変化や多様性に柔軟に適応できる心につながる部分で良い変化が見られ、一定の成果を得られた
・特別活動では、ソーシャルスキルを計画的に継続して用いることで、自己の良さや可能性に気づくことができたと考えられる
・道徳的判断力、心情、実践意欲と態度など、目的に応じた指導を工夫できるようになり、子どもたちの学びがより深まった
・道徳科の指導のみでは十分に定着しない部分を、特別活動でも意識して指導できたことは、子どもたちにしなやかな心を育む上で大変効果的だった
・1年次の研究では、授業実践者だけでなく、学年団の教員たちが継続して研究に携わったことで、多様な思考ツールの効果的な使い方を検証できた
▽課題
・取組によって育んだ力を「しなやかな心」まで高めるためには、他教科や特別活動など、学校生活における計画的かつ継続した指導が必須となる
・思考ツールやソーシャルスキル等を授業で活用する際は、活用することが目的にならないよう注意する必要がある
(関係団体 2022-04-05付)
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