札幌市学校保健会が研修会 子の自尊感情高めて 宝塚大・日高教授講演
(札幌市 2022-07-08付)

学校保健会日高教授
積極的に授業に取り組むことを訴える日高教授

 札幌市学校保健会(多米淳会長)は6月中旬、札幌医師会館を主会場に、4年度研修会をオンラインで開催した。宝塚大学看護学部の日高庸晴教授が「LGBTsの児童生徒への理解を深める~児童生徒の自尊感情を高めるために」と題して講演。日高教授が調査したデータをもとに、性的マイノリティーの児童生徒に対する学校の支援の在り方や教師の関わり方などを説明。「当事者にとって、誰が本当の理解者なのか分からない。人権教育などの一環で、学校が積極的に授業に取り組むことが重要」と訴えた。

 同会は、学校医・学校歯科医、学校薬剤師、教職員、PTAの代表者が集まり、児童生徒の健康増進に向けた活動を展開。例年6月に研修会、12月に研究大会を開催している。

 日高教授は冒頭、同性愛者および両性愛者の人口比率に関する調査結果を示し「性的マイノリティーの児童はクラスに1人の割合でいると考えた方が良い」と指摘。管理職の中には「自校には性的マイノリティーの児童がいない」と捉えて、LGBTsへの対応に配慮が少ない状況が少なからずあることに警鐘を鳴らした。

 わが国における性的指向と性自認に関する動向として「テレビなどで“ネタ”として扱われたり、公職にある人が差別発言したりする」などの例を挙げ、「こうした社会にあって、LGBTsの当事者は自己肯定感や自尊感情を育むことができるのか」と疑問を呈した。

 3年3月、札幌地裁が同性婚を認めないのは違憲とした判決を解説。その上で、LGBTsの存在を視野に入れた教育現場における実施可能な取組として、①教員研修②授業③性的指向や性自認などに関する教諭のポジティブな発言④図書の配架―などを例示した。

 トランスジェンダーや性別違和に係る児童生徒に対する学校の支援の事例として、服装やトイレに関する配慮を挙げ「校長次第で取組をするかしないか変わることがあってはならない」と強調した。

 続いて、LGBTsの当事者約1万人を対象にした調査結果を紹介。周囲との違いに初めて気づいた年齢について「トランスジェンダーの人は、レズビアンやゲイ、バイセクシャルの人と比べて低年齢の傾向があった」と説明。「児童生徒が他者との違いに気づき始める年齢を知って、早め早めに教育を始めても良いのでは」と提起した。

 周囲との違いに気づいたとき、誰かに相談したいと感じたかを年齢別に調査したところ、「10代が最も高かった。とりわけトランスジェンダーに高率な傾向があった」と指摘。「教師がいじめの解決の役に立ってくれたか」という調査については、各年齢層で低い結果だった一方で、若年層ほど教師が助けになったと認識していることを紹介した。

 親や職場・学校へのカミングアウトする状況をみると、若年層ほどカミングアウト率が高くなっていることを示した一方で、およそ25%が性的指向と性自認を暴露される被害に遭っていることを説明した。「当事者にとっては、誰が本当の理解者なのか分からない」と指摘。多様性を尊重する環境整備の推進を前提に「人権教育などの一環で、学校が積極的に授業に取り組むことが重要だ」と強く訴えた。

(札幌市 2022-07-08付)

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