道議会質疑一般質問(6月22日)(道議会 2022-10-06付)
【質問者】
▼桐木茂雄議員(自民党・道民会議)
▼中野渡志穂議員(公明党)
▼太田憲之議員(自民党・道民会議)
▼浅野貴博議員(自民党・道民会議)
▼久保秋雄太議員(自民党・道民会議)
【答弁者】
▼鈴木直道知事
▼森隆司環境生活部長
▼相田俊一環境生活部アイヌ政策監
▼鈴木一博保健福祉部少子高齢化対策監
▼倉本博史教育長
【Q質問 Question A答弁 Answer P指摘Point out O 意見 Opinion D 要望Demand】
◆アイヌ文化振興
Q桐木議員 ウポポイが白老町にオープンしてから2年が経過しようとしている。
今後、感染防止と経済回復の両立を視野に、ウポポイへの誘客を促進し、国内外の多くの方々にアイヌの歴史や文化を身近に触れていただけるよう、道においても積極的に取り組んでいく必要がある。所見を伺う。
A相田環境生活部アイヌ政策監 ウポポイへの誘客促進について。ウポポイは、アイヌ文化の復興、発展の拠点であり、アイヌの人たちへの幅広い理解の促進に重要な役割を担うものと認識している。
現時点においても、新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、各施設では入場制限などの対策を行っている状況にはあるが、オープニングからこれまで45万人を超える方々に来訪いただき、アイヌの歴史や文化に触れていただいたところ。
道ではこれまでも、ウィズコロナ、ポストコロナを見据え、テレビ番組や映画館でのCM動画などによって、来訪意欲の醸成に努めてきたところであり、今後も、国内向けには、こうしたメディアの活用のほか、体験ツアーの紹介やガイドの育成など、受け入れ体制の整備を促すとともに、インバウンド向けには、アイヌ文化の魅力を、インターネットを活用し、多言語で発信していく考え。
さらには、東京オリンピック公認プログラムとして演じた伝統舞踊を国内外の各種イベントで披露し、魅力を発信するなど、さらなる誘客促進につなげていく。
Q桐木議員 アイヌ文化の振興のためには、ウポポイに限らず、平取町の二風谷工芸館や、阿寒湖畔にあるアイヌシアター、屈斜路コタンアイヌ民族資料館など、道内各地のアイヌゆかりの施設を訪れ、それぞれの地域で特色あるアイヌ文化を体験していただくことが重要と考える。
こうした取組を進めることによって、文化振興はもとより、本道の観光や地域経済に幅広く貢献することが期待できる。道では、ウポポイをはじめとした道内各地のアイヌ関連施設への誘客をどのように促進していく考えか伺う。
A相田環境生活部アイヌ政策監 道内のアイヌ関連施設への誘客について。道内の豊かなアイヌ文化を深く理解するためには、実際にそれぞれの地域を訪れ、受け継がれてきた伝統的な儀式や舞踊、文様など、多様なアイヌ文化の魅力に触れ、体感していただくことが重要と考える。
このため、道では、それぞれの地域の魅力的なアイヌ文化をPRし、来訪意欲を促進してきた。本年度は、アイヌの食文化をテーマとし、各地域のアイヌ伝統料理をアレンジした新レシピの開発や普及、さらには、アンテナショップにおいて、地域の特色あるアイヌ工芸品の販売を行うなど、アイヌ文化の魅力を積極的に発信することとしている。
今後とも、様々な媒体や機会を活用しながら、縄文世界文化遺産や豊かな自然、食といった道内の様々な地域資源と連携し、発信を行うなど、アイヌ文化の一層の振興を図っていく。
Q桐木議員 近年では、アイヌ民族固有の文化を発展させ、古い記録から伝統的な踊りを復活させようと取り組む人たちや、新しいアイヌ音楽を創造する人たちも増えるなど、アイヌ文化への社会の関心が高まりつつある。
道として、アイヌ文化に対する人々の理解促進、知識の普及啓発をはじめ、アイヌ文化の振興を積極的に進めていくことが必要と考える。知事の所見を伺う。
A鈴木知事 アイヌ文化の振興について。道では、アイデンティティーの基盤とも言うべき民族特有の文化の復興はもとより、それを次世代に継承し、さらに創造、発展させていくことが重要と考えている。
近年、アイヌ施策推進法の施行やウポポイの開設、アイヌを題材とした小説や漫画が人気を集める一方、世界におけるSDGsの浸透や、コロナ禍に伴う効率、集中に対する価値観の変容と相まって、アイヌ文化とその自然や人との共生と持続可能性を基本とする考え方への関心は、一段と高まりを見せている。
道としては、こうした潮流を好機と捉え、伝統舞踊や工芸を通じた学びの機会を提供するとともに、道内各地域のアイヌ文化を身近に感じていただける食や刺しゅうなどの体験メニューを新たな魅力のあるコンテンツとして創造し、ウポポイからそれぞれの地域への誘客を促進することによって、国内外から多くの方々が訪れ、多様なアイヌ文化の価値に理解を深めていただけるよう、積極的に取り組んでいく。
◆ヤングケアラー
Q中野渡議員 6月14日、道から委託を受けた団体が、江別市内にヤングケアラー専門の相談窓口である北海道ヤングケアラー相談サポートセンターを開設した。この事業所の目的や役割について伺う。
A鈴木保健福祉部少子高齢化対策監 相談窓口について。ヤングケアラーの多くは、本人にその自覚がないことや、支援策などについて相談した経験がないことなどから、周囲の関係者がそれぞれの子どもの事情を十分に理解し、信頼関係を構築しながら、必要な支援に結び付けていくことが重要である。
このため、道では、学校現場におけるスクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーの活用など、対面による本人の気持ちに寄り添った相談対応を可能とするほか、ヤングケアラーが気軽に相談できる場を確保するため、道内で先駆的にヤングケアラー支援に取り組んできたNPO法人に相談窓口の運営を委託し、電話やSNSによる相談体制を整備することで、支援に必要な情報を市町村や関係機関につなげるなど、地域の相談支援機能の向上を図ることとしている。
Q中野渡議員 ヤングケアラー支援の取組を進めていく上で、事業所1ヵ所だけでは、北海道全体にきめ細かな支援が広がっていかないのではないか。
地域における既存の協議組織を活用するなど、ヤングケアラー本人やその家族を支援するための体制整備が必要と考えるが、所見を伺う。
A鈴木知事 支援体制の整備について。ヤングケアラーやその家族を支援していくためには、道民の共通理解を求めるための普及啓発の促進や、関係機関による早期発見、相談機会の確保に加え、地域住民や関係団体が一体となって支援する地域づくりを進めていくことが重要である。
このため、道では、啓発リーフレットの配布やヤングケアラー専用相談窓口の開設に加え、児童相談所が所管する圏域ごとに、相談から支援に至るまで、学校と市町村など関係機関の方々との連携調整を行うコーディネーターを配置することとしている。
また、地域における支援体制の構築を促すアドバイザーや、道教委と連携したスクールカウンセラーの派遣を行うほか、児童の置かれている状況や支援の程度など、必要に応じて、市町村に対し、地域の協議会の活用を促すなど、ヤングケアラーやその家族を地域社会全体で支え、誰もが希望を持って生活を送ることができるよう取り組んでいく。
◆健康教育推進
Q中野渡議員 新型コロナウイルス感染症の影響によって、私たちの生活は大きく変わったが、変異株や新たな感染症に備えるためにも、これまで以上に健康教育の重要性が高まっている。
こうした中、子どもたちは、保健の授業や特別活動などにおいて、望ましい生活習慣の定着や疾病予防など、健康に関する様々な学習をしているものと承知している。
道教委では、子どもたちが健康課題について理解し、自ら課題の解決を図ることができるよう、これまでどのように取り組み、今後どのように取り組んでいくのか伺う。
A倉本教育長 健康教育の取組について。子どもたちが生涯を通じて健康、安全で活力ある生活を送るためには、子どもたちが自分自身や他者の健康課題を理解し、自ら進んで自己管理を行い、心身の健康の保持増進に取り組むことができる資質や能力を培うことが重要である。
道教委では現在、養護教諭等を対象とした専門家による研修会を実施するとともに、健康課題に関する指導資料を作成、配布し、その活用を促している。今後は、こうした取組に加えて、各地区で実施する教育課程研究協議会において、これから求められる健康教育に関する指導の在り方について協議する場を設け、北海道の子どもたちの健康課題に対応した取組を展開できるようにすることなどを通して、子どもたちが自ら考え判断する学びの充実を図り、心身共に健康的な生活を営むことのできる力の育成が着実に行われるよう努めていく。
Q中野渡議員 健康教育の充実には、子どもたちの理解を深めるため、学校関係者のみならず、より一層、大学や医療の専門家の活用や関係機関との連携を図ることなどが重要と考える。
道教委として、今後どのように取り組んでいくのか伺う。
A倉本教育長 関係機関と連携した健康教育について。学校における健康教育を進めるに当たっては、大学や医療の専門家など、関係機関等と連携し、より専門性を生かした教育活動を推進していく必要がある。
道教委ではこれまで、医師会等によるがん教育に関する出前講座や子宮頸がん予防ワクチンに関する教員研修、大学生と高校生による健康課題に関する共同研究を行うほか、大学の協力を得て、保健の授業の指導資料を作成するなど、関係機関等との連携を図った取組を推進しており、今後もこうした取組を充実させることとしている。
また、道内の各地域の中核となる養護教諭を健康教育推進リーダーとして位置付け、大学や医療機関等と連携しながら、各学校の指導に生かすための望ましい生活習慣の確立に向けた実践研究を行い、その成果を全道に広く普及するなどして、子どもたちの健康教育の充実に取り組んでいく。
◆特別支援教育ICT活用
Q中野渡議員 ICTの活用については、国のGIGAスクール構想による1人1台端末の整備のほか、デジタル教科書の活用による事業を行うなど、その活用を促進している。障がいのある児童生徒に対するICTの活用促進についてどのように取り組むのか伺う。
A倉本教育長 障がいのある児童生徒のICTの活用について。障がいの状態や特性および心身の発達の段階等に応じたICTの活用は、学習の効果を高め、また、生活の質の向上にも寄与することができ、重要と認識している。
道教委では、各学校において、これまでも、文字の拡大や読み上げ、音声の文字化など、障がいの状態等に応じたICTの効果的な活用のほか、「ばーちゃる文化祭」やデジタルイラスト展の開催などを通して、学習活動の充実を図っている。
今後は、こうした取組に加えて、遠隔地の学校間を結んだ合同授業の機会の拡充や、企業開拓によるリモートインターンシップ実習校の拡充を図るなど、障がいのある児童生徒のICT活用の促進に取り組むことによって、誰一人取り残すことなく、GIGAスクール構想が目指す個別最適な学びと協働的な学びを実現できるよう取り組んでいく。
Q中野渡議員 障がいのある児童生徒の将来の自立と社会参加を見据えたICT活用について、特別支援学校はもとより、通常の学級に在籍している特別な支援が必要な児童生徒についても、障がいの状態に応じたICTの活用促進が大変重要であり、その推進のための教職員の資質・能力の向上が必要である。
特別支援教育におけるICTを活用した教育を推進するための教職員の資質・能力の向上について、どのように取り組んでいくのか伺う。
A倉本教育長 教職員の資質・能力の向上について。障がいのある児童生徒が、就学時はもとより、卒業後においても、その可能性を最大限に発揮し、地域で自立し豊かな生活を送るために、ICTの活用は必要不可欠なものであり、そのためには、教職員一人ひとりが日常の教育活動においてICT機器を効果的に活用する技術、能力の向上を図ることが重要である。
道教委では、ICT活用授業モデルをポータルサイトに掲載するほか、道立特別支援教育センターによるウェブページ等を活用した動画教材の紹介、ICT活用に関する実践交流会や研修会の開催などを通して、教職員のICT活用指導力の向上に取り組んでいる。
今後は、新たに、児童生徒一人ひとりの障がいの状態や発達の段階に応じた効果的なICTの活用方法等について、大学と連携した研究を行い、その成果を各学校に周知するなど、教職員一人ひとりのICT活用指導力の向上に努め、児童生徒の教育的ニーズに応じた学びが一層充実するよう取り組んでいく。
◆生理の貧困
Q中野渡議員 新型コロナウイルス感染症が長期化する中、収入が減少するなどして、生活必需品である生理用品が購入できない方がいるということがクローズアップされている。
そうした児童生徒も含め、思春期にある児童生徒が安心して学校生活を送れるよう、学校がこうした問題にしっかりと向き合うことが大変重要だ。
他県では、公立の高校において、トイレに生理用品を置いて、必要な生徒がいつでも使うことができる環境を整えている事例もあると承知している。
道教委として、生理用品で困っている子どもたちの状況について、どのように受け止め、今後どのように取り組んでいくのか伺う。
A倉本教育長 生理用品の学校への配備について。生理用品は、生活になくてはならないものであり、経済的な理由等で生理用品を用意できないなどの問題は、児童生徒の心身に影響を与えるものと認識している。
このため、道教委では、児童生徒が心身共に安定した学校生活を送ることができるよう、既にトイレに設置している道立学校の成果および課題、他都府県の取組状況を整理しているところ。こうした情報に基づいて、今後、市町村教委や校長会、養護教諭で構成する団体、さらには保健福祉部局等とも連携を図りながら、学校における取組を検討していく。
◆連絡手段のデジタル化
Q太田議員 子どもの欠席連絡について、朝の時間帯に保護者が学校に電話で連絡し、学校側も電話で対応し、担任に引き継ぐ昔ながらの方法で時間が取られており、また、緊急時の情報共有も、電話でのやりとりに、保護者、学校の両方でかなりの労力が割かれている。
最近の学校では、携帯のアプリや、スマートフォンなどPCから連絡できるシステムを活用することで、教職員の負担軽減につなげている事例がある。
教職員の負担軽減を図り、子どもや保護者と向き合う時間を増やし、教育の質を上げていくためにも、こういったアプリやシステムの活用は有効な手段と考える。学校、保護者間での連絡手段のデジタル化について、教育長の考えを伺う。
A倉本教育長 保護者との連絡手段のデジタル化について。子どもたちの学びや成長を支えていくためには、学校と保護者が一層の情報共有を図りながら、保護者の理解と協力を得て、教員が本来担うべき業務に専念できるようにしていくことが重要である。
こうした中、道内の学校では、保護者からの児童生徒の欠席連絡などについて、従来の電話やプリントの配布に替えて、スマートフォンなどの無料の連絡支援アプリを活用することによって、保護者との連絡や情報提供を円滑にするとともに、教員の負担を軽減している事例がある。
道教委としては、連絡支援アプリを含め、こうしたICTの活用事例について、メリットやデメリットなどを整理し、実情に応じた効果的な活用が図られるよう、各学校や市町村教委へ情報発信するなど、保護者との情報共有と学校における働き方改革に向けた取組を促進していく。
◆部活動地域移行
Q太田議員 国においては、休日の運動部活動について学校単位から地域単位に移行していくことが検討されており、スポーツ庁の有識者会議から、運動部活動の地域移行に関する提言が出された。
提言の中では、5年度から運動部活動の地域移行が開始されるとのこと。具体的なスケジュールについて伺う。
また、スポーツだけではなく、文化部活動も、今後、地域移行していく。
高校では、茶道や華道などを外部講師の指導で行っている事例はあるが、中学校と文化団体が連携している事例は、紋別市の文化連盟と市内3中学校が合同でしている事例や、苫小牧開成中学校の茶道部など、全道的にはまだまだ手探りの状態ではないか。
文化部活動の今後の対応について伺う。
A倉本教育長 部活動の地域移行に係るスケジュールなどについて。6月6日に示されたスポーツ庁の有識者会議の提言では、中学校の運動部活動について、5年度から3年間を改革集中期間として位置付け、休日から段階的に地域に移行していくこととしている。今後、国から通知が発出されるものと承知している。
文化部活動については、現在、文化庁の有識者会議において、受け皿の整備や指導者の確保、地域の文化芸術団体との連携の方向性などの議論が行われており、7月に提言を取りまとめる予定とされている。
道教委としては、これら国の動きを注視しながら、都道府県が策定することとなる休日の部活動の地域移行に向けたスケジュールなどを定める推進計画の検討を進めるとともに、各地域において、実情に応じた検討が早期に開始され、移行が円滑に進むよう、知事部局をはじめ、市町村教委や関係団体と連携しながら取り組んでいく。
Q太田議員 多くの部活動がある学校は、生徒の選択の幅が確保されているが、小規模校においては、部活動数が少なく、開設ができなかったり、指導する先生がいなくなった途端に廃部になったりするのではないかと懸念する声が聞こえてくる。
小規模校のみならず、教員の負担軽減もあってか、地方に限らず、部活動数の減少の傾向が見られる。
子どもたちの多様なニーズに応えていくため、部活動が継続して実施できるようにすることが重要だ。道教委の認識や対応を伺う。
A倉本教育長 部活動の在り方について。各学校では、スポーツや文化、科学など、多様なニーズを踏まえつつ、部活動を設置しているが、学校によっては、部員が集まらないことや指導者がいないなどの理由によって、特定の運動競技や文化活動の部活動を設置できていない状況もあると承知している。
道教委としては、北海道の部活動の在り方に関する方針において、単一の学校で活動ができない場合には、複数校の生徒による合同部活動の実施も検討するよう促しており、引き続き、各学校の実情に応じた取組を進めるよう指導するとともに、中体連をはじめ、高体連や高野連、校長会、PTA等と連携し、部活動を学校単位から地域における活動へ移行する取組を、地域の理解と協力のもと積極的に推進するなどして、子どもたちが安定的、継続的にスポーツや文化に親しむことのできる機会の確保に努めていく。
◆少子化対策
Q浅野議員 厚生労働省が6月3日に公表した人口動態統計月報年計によると、全国の出生数は、前年より2万9231人少ない81万1604人となり、調査開始以来、過去最少を更新したことが明らかになった。道内の出生数は、初めて3万人を割り込んだ前年より762人少ない2万8761人となった。
4年度、知事は本道の守りと攻めの主に2つの視点に立って、各般の政策を展開しているが、本道の守りの最重要課題に少子化の加速が掲げられるべきと考える。少子化のこれらの現状を道はどのように認識しているのか伺う。
A鈴木知事 少子化関連施策などに関する認識について。道では、ことし4月1日施行の育児・介護休業法の改正を踏まえ、地域でのセミナーのほか、講演会やパネルディスカッションからなる「男性育休と働き方 北海道みらいフォーラム」を開催し、参加者からは、男性育休制度について理解できたなどの意見があり、意識醸成に向け、一定の成果が得られていると認識している。
少子化が進行する背景には、仕事と子育ての両立や、家事、育児への負担感、子育てや教育に要する費用負担、年齢や健康上の理由など、様々な背景や要因が複雑に絡み合っているものと考えられるところ。
加えて、新型コロナウイルス感染症の流行も、結婚や妊娠、出産などに少なからず影響を及ぼしていることや、近年、本道の妊娠届出件数や出生数の減少傾向が続いており、合計特殊出生率も依然として低い状況にあることから、少子化対策の推進は、今後の道政上の最重要課題であると認識している。
Q浅野議員 子ども政策を一元的に担うこども家庭庁の設置法案が成立、可決した。
道としても、こども家庭庁の発足を見据え、本庁、各振興局ともに各組織を再編整備し、連携していくことを検討しているものと承知するが、単に組織の改編にとどまらない、真に子ども政策の充実、少子化の是正につながるものとする必要がある。
組織再編を含めたこども家庭庁発足を受けた今後の道の取組について伺う。
A鈴木保健福祉部少子高齢化対策監 こども家庭庁への対応について。国では、子ども政策をさらに強力に進めていくため、常に子どもの視点に立ち、子どもの最善の利益を第一に考え、自立した個人として、等しく健やかに成長することのできる社会の実現に向けて、こども家庭庁を創設することとしたところ。
道としても、子どもたちの年齢や発達の過程に応じ、子どもを取り巻くあらゆる環境を視野に入れつつ、その権利を保障し、制度や組織、年齢の壁を越えた切れ目のない包括的な支援に向けた取組を展開することが重要と考えており、今後、こども家庭庁が担う業務や機能に関する検討状況のほか、新年度施策に関する情報収集を進めながら、子どもや家庭が抱える様々な課題に的確かつ迅速に対応できるよう、教育庁をはじめ、庁内関係部で構成する検討委員会で、具体的な対応方向について必要な検討を行っていく。
◆赤ちゃんポスト
Q浅野議員 ことし5月、当別町の児童相談施設内に、いわゆる赤ちゃんポストが設置されるとの報道がなされたことを受け、道は、当別町や児童相談所等の関係機関と共に現地を訪問し、実態調査を行っていると伺っている。
道は、国に対し、設置基準を設けることを要請していると承知しているが、国との協議はどのようになっているのかを伺うとともに、当該施設に対し、今後どのような対応を取る考えでいるのか伺う。
また、本道においても新生児遺棄の事案が発生しているが、このような事態を発生させないために、今後どのように取り組むのか伺う。
A鈴木保健福祉部少子高齢化対策監 いわゆる赤ちゃんポストについて。当別町の施設については、現地調査の結果、適切な保護と医療等の必要なケアが提供できる体制にないことから、道としては、安全確保上、問題があると判断しており、引き続き、事業者に受け入れを控えるよう繰り返し求めるとともに、先般、国に対し、当別町の事例に関する問題を提起し、今後の考え方を検討するよう要請してきているところ。
また、道内で続いた幼い子どもが命を落とす事案が繰り返されることのないよう、先日、児童相談所など関係職員による緊急連絡会議を開催し、児相職員が市町村に直接出向き、支援を要する家庭の状況把握や支援内容へ積極的に助言することなどを指示するとともに、市町村や関係団体に対し、あらためて住民からの相談にきめ細かに対応いただくよう要請したところ。今後とも、道民と一丸となって、地域の見守り機能を十分に発揮し、授かった命が大切に育まれ、健やかに成長できる環境整備に努めていく。
◆部活動地域移行
Q浅野議員 文部科学省は、義務教育の中学校における部活動に関し、土・日、祝日の休日は、地域の民間人等による指導を行う、部活動の地域移行を5年度から7年度までを改革集中期間として始めるべく、現在、検討を進めている。
教職員の負担を減らす観点からも重要な取組であると考える。しかし、その実行のためには、部活動の指導を行える人材の確保ならびに地域偏在の是正、地域移行に際し、発生し得る金銭的な費用や責任の負担の在り方などの課題がある。
道教委は、部活動の地域移行についてどのような認識を有し、その実行に向けて、各市町村教委との連携など、今後どのような取組をしていく考えでいるのか伺う。
A倉本教育長 部活動の地域移行について。部活動は、生徒の自主的な活動を通じて自己肯定感を高めるなど、大きな役割を担っているが、少子化に伴い、部活動数が減少している現状や、教員の長時間勤務を解消し、教育活動の質の向上を目指す観点などから、地域の理解のもとで、持続可能で多様なスポーツ環境を整えることは大変に重要と考えている。
国の有識者会議の提言では、休日の運動部活動から段階的に地域移行していくことを基本に、受け皿の整備や指導者の確保、大会や会費の在り方の方向性などが示されるとともに、都道府県および市町村においてスケジュールを定めた推進計画を策定することなどが盛り込まれた。
道教委としては、国の動きを注視しながら、道内はもとより、全国の先進地域の好事例を収集し、今後行う道民アンケートの結果も参考としながら、各地域において実情に応じた検討がより多くの方々の参画を得て早期に開始され、移行が円滑に進むよう、知事部局をはじめ、市町村教委や関係団体と連携しながら取り組んでいく。
Q浅野議員 少子化の進行に伴い、地域によっては、高校の部活動に十分な部員数を確保できないところもあり、課題が全道各地で見られる。
例えば、野球部に関しては、1チーム9人を満たせない高校同士が合同でチームを組む事例も増えている。
今後、全国的にさらに少子化が進行し、高校生の人数が減っていくことが予想される。中長期の視点に立ち、高校生の部活動の機会を確保していく観点からも、他府県と比較して広域分散化が著しい本道においては、生徒、保護者の選択肢の一つとして、最低部員数を満たしているチーム、満たしていないチームが組むことを認めるような柔軟な規定があっても良いのではないか。
道教委は、このような野球に関する部活動の現状、高野連の規定について、どのように認識しているのか伺うとともに、生徒、保護者の様々な負担軽減と部活動の維持に向けてどのように今後取り組むのか伺う。
A倉本教育長 部活動の連合チームの取り扱いについて。日本高野連においては、少子化による部員不足を踏まえ、部員数が8人以下の高校を対象に、連合チームによる大会参加を特別措置として認めていると承知しているが、広域な本道では、遠方の高校と編成している実態もあることから、部員数にかかわらず、近隣の高校との編成を期待する声もあるものと承知しており、多様な部活動の在り方を考えていくことは重要と考えている。
道教委としては今後、高野連をはじめ、中体連や高体連、校長会やPTAなどによって構成する部活動関係者会議等において、連合チームの成果や課題などについて議論を重ね、生徒や保護者の意見も踏まえながら、より望ましい在り方を検討するとともに、必要に応じて、関係機関等に対し、連合チームの取り扱いについて要請していく。
◆スポーツ振興
Q久保秋議員 スポーツ活動における暴力行為等に関する相談窓口は、日本スポーツ協会や北海道スポーツ協会のホームページで開設されているが、道内でスポーツに取り組む選手や指導者、保護者などが、相談窓口の存在を十分に認識しているのか非常に心配である。
こうした相談窓口の存在を、道としては広く周知する必要があると考える。
道内の市町村において、暴力行為等の相談窓口にどのような役割や効果を求めているのかなどのニーズを把握し、それを今後の対策に役立てる必要があると考える。所見を伺う。
A森環境生活部長 スポーツ活動における暴力行為等について。スポーツは、他者との協同精神を培い、実践的な思考力や判断力を育むなど、人格形成に大きな影響を及ぼすものであり、暴力やハラスメント等の行為は、健全な心身の成長を阻害することから、あってはならないものと考える。
現在、こうした行為への相談については、日本スポーツ協会や道スポーツ協会が窓口を設置しており、道のホームページにおいても紹介しているところ。
道としては、引き続き、ホームページでの広報や、競技団体の指導者が集まる場を活用して根絶に向けた呼びかけを行うほか、今後、住民が相談窓口に求める役割や対応について、市町村を通じて実態を把握し、周知方法を工夫するなど、誰もが安心してスポーツ活動に取り組める環境づくりに取り組んでいく。
Q久保秋議員 道議会では、第1回定例会において、議員提案の北海道スポーツ推進条例を制定したが、その中でも、障がい者が自主的かつ積極的にスポーツに参加することができるよう、障がい者のスポーツの推進がうたわれている。
一方で、現状をみると、障がい者スポーツは様々な課題がある。
札幌市が2年度に実施した調査によると、身近な地域での障がい者スポーツの活動の場の充実、障がいのある方に対するスポーツに関する情報提供の充実、ボランティア、指導者などの育成が課題として挙がっているとのこと。
条例制定を契機に、道として、障がい者スポーツの推進に今後どのように取り組んでいくのか伺う。
A鈴木知事 障がい者スポーツについて。共生社会の実現と障がい者の社会参画を推進する観点からも、誰もが身近な地域においてスポーツに親しむことができる環境づくりが重要な課題と認識している。
道ではこれまで、障がいのある人を対象にしたスポーツ体験会やセミナーのほか、競技団体などとの定期的な情報交換会や、道内で活動する団体の情報発信に取り組んできたところ。
道としては、条例制定を契機に、道障がい者スポーツ協会などとの連携を一層強化し、各地域の団体の活動を支援するとともに、スポーツを始めたい方などへのニーズに応えられるよう、コーディネーターによる相談業務を開始するほか、この秋には、障がい者への理解促進と支援の輪を広げるため、年齢や性別、障がいの有無にかかわらず、誰もが参加でき、パラリンピックの種目であるボッチャなどの競技を体験できる運動会を新たに開催するなど、障がい者スポーツの推進に積極的に取り組んでいく。
◆金融教育
Q久保秋議員 民法改正によって、ことし4月から成年年齢が18歳に引き下げられ、高校生でも18歳から様々な契約が行えるようになった。
これに伴い、ことし4月から学年進行で実施されている高校学習指導要領では、家庭科において、持続可能な消費生活・環境の学習が新たに位置付けられ、その中で、契約の重要性のほか、資産形成の視点にも触れるなど、実践的、体験的な学習活動が求められている。
一方で、消費者教育支援センターの、高校生の消費生活と生活設計に関する調査において、消費生活や生活設計の学習経験があると回答した高校生の割合が64・5%にとどまるなど、ライフプランに係る高校生の学びが十分でない現状が見られる。
道教委では、金融教育に関する学校への周知や教員の研修などについて、これまでどのように取り組んできたのかを伺うとともに、今後の金融教育の充実に向け、どのように取り組もうとしているのか。
A倉本教育長 金融教育の充実について。成年年齢の引き下げによって、高校在籍時に全ての生徒が成人を迎えることも踏まえ、成人として身に付けるべき生涯を見通した経済の管理や資産形成の視点を踏まえた指導が必要である。
道教委では現在、教員の金融に関する指導力の向上に向け、家庭科担当の教員に対し、教育課程研究協議会において金融機関等の外部講師による講義を実施するほか、指導主事による学校訪問を通じて実践的、体験的な金融教育の実施について指導助言している。
今後は、こうした取組に加えて、消費生活センター等が開催する教員セミナーなど、研修機会の一層の確保に努めるとともに、金融機関等と連携し、生徒がライフプランや資産形成について主体的に考える学習を導入するなど、より実践的な取組を進めることなどを通して、生徒一人ひとりが、生涯にわたって自立した生活を営むことができる資質・能力の育成に向けた金融教育の一層の充実に努めていく。
◆キャリア教育
Q久保秋議員 技術革新や産業構造の変化、グローバル化の進展など、社会が急激に変化する中、本道の未来を担う人材を育てていくためには、生徒が就職や進学を経て、身に付けた知識や技術をもとに社会で活躍することができるよう、高校における教育活動を充実していくことが求められている。
これまで、高校においては、生徒一人ひとりの社会的・職業的自立に向けて、基盤となる資質・能力を育成するため、キャリア教育の充実を図るとともに、主体的に自己の進路を考える能力等を育成するため、就業体験活動を実施するなど、生徒の進路実現に向けた学習活動の充実を図ってきたと承知している。
しかし、社会の変化が一層急激になると予見される今、社会における仕事内容や求められる人材像等も大きく変化しており、高校における進路指導について見直しを図っていく必要がある。
生徒たちが将来、社会に出てからも自信と希望を持って活躍することができるよう、時代の変化に対応した進路指導の充実に向けてどのように取り組んでいくのか。
A倉本教育長 進路指導の充実について。第4次産業革命の進展やデジタルトランスフォーメーションなど、産業構造や仕事の内容が急激に変化する中、高校においては、これからの社会で求められる資質・能力を確実に身に付けられるよう、キャリア教育の一層の充実を図ることが重要である。
このため、道教委では、学校におけるキャリア教育の充実に向け、高校進路指導対策会議を開催し、進路指導担当の教員に対し、学識経験者や企業の人事担当者を講師として招いた研修を実施し、今日的な課題への対応に資する取組を行っている。
今後は、生徒が時代の変化に対応した資質・能力を身に付け、自己の確かな進路実現に結び付けることができるよう、教員に対し、新たな業種やICTを活用した働き方など、変化する情勢に対応できる研修内容や研修機会の充実を図るとともに、大学や企業と連携して企業の課題解決に取り組む探究活動や、社会に求められる人材像を踏まえたキャリアガイダンスなどの取組を展開することなどを通して、各学校における進路指導の充実に努めていく。
◆体操着見直し
Q久保秋議員 学校現場においては、校則等の規定に基づき、制服以外に、体育や特別活動等にて着用している、いわゆる学校指定ジャージーについても、児童生徒にとって過ごしやすいデザイン等が求められるところ。
とりわけ、昨今では、新型コロナウイルス感染症対策として、制服の代わりにジャージーで登校したり、暑さ対策として制服の着用を一部緩和したりする学校もあると承知している。
制服と同様に、性同一性障がいや性的指向、性自認に悩みを抱える児童生徒のために、教職員への正しい理解を促進することや校内体制を整備していくことが重要であり、そのことが、誰一人取り残すことのない、持続可能で多様性と包摂性のある社会の実現に向かうと、文科省における答申でも言及されており、ジャージーにおいても配慮が必要なものと考える。
今後、多様性を尊重する態度や、互いの良さを生かして協働し、学校生活を充実していくことや、長時間にわたり見直しを図っていない学校に対し、学校指定ジャージー等の適切な取り扱いが必要と考える。所見を伺う。
A倉本教育長 学校における指定ジャージーについて。学校で指定しているジャージーは、体育実技での動きやすさや強度のほか、価格面やデザイン性なども考慮し、それぞれの学校において選定されており、最近では、新型コロナウイルス感染症対策や暑さ対策の面から、体育の授業に限らず、様々な場面で着用しているケースが見られると承知している。
道立高校において10年以上見直しが図られていない学校が18校あることから、道教委としては今後、各学校に対し、保護者の負担軽減や多様化する生徒の状況などを踏まえた上で、ジャージーの指定が行われるよう指導助言するとともに、こうした対応について、市町村教委にも情報提供を行うなどして、生徒にとって望ましい教育環境を整えていくよう取り組んでいく。
(道議会 2022-10-06付)
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