全小社研北海道大会公開授業⑭山鼻小 多面的に日本の近代化考察 札幌のビール工場建設取り上げ
(札幌市 2022-12-22付)

第6学年授業研究会A(2)

山鼻小学校6年2組(中田充教諭)

明治の国づくりを進めた人々~外面・内面の両面から近代化を捉える

◆第6学年で目指す子どもの姿

▼歴史から学び、新たな社会を創り出そうとする子

 第6学年で目指す「社会を知り、世界を切り拓く北国の子」とは「歴史から学び、新たな社会を創り出そうとする子」である。学習指導要領には本単元の目標として「近代化を進めたことを理解すること」とある。黒船来航以降の外国からの脅威に対し、大久保利通を中心に行われた廃藩置県等の諸制度の改革、殖産興業等の政策は近代化を目指した社会変化の一側面である。

 しかし、活動の主体はあくまでも人間である。明治の近代化は制度などの外面のほかに生き方や考え方等、内面の近代化が同時に行われていたからこそ、列強に伍する力を急激に付けることができたと考える。

 本単元を通して、国を変革するには制度だけではなく、人々のそれまでの考え方や生活様式を変えていくことも必要だったと学ぶことができる。本単元での学びをもとに、現代社会においても、国民一人ひとりの考え方の変化が社会をより良く変えるためには必要だと認識し、自分たちで新たな社会をつくり出していこうとする姿を目指していく。

◆本単元の目標

 欧米列強の外圧にさらされた幕末の国際情勢や明治維新を進めた人物の働きや代表的な文化遺産などに着目して、地図や年表などの資料で調べてまとめ、黒船の来航の意味や廃藩置県、殖産興業、徴兵令などの改革、文明開化の様子を捉え、明治維新でのわが国の変革・変化について考え表現することを通して、わが国が明治維新を機に欧米の制度や文化を取り入れつつ近代化を進めたことを理解する。

 また、国づくりのための変革や世の中の変化について主体的に追究し、それを生かして学習問題を解決しようとする態度を養う。

◆本時のねらい

 黒田清隆が札幌に官営のビール工場を造った理由を考える活動を通して、北海道開拓を進めるとともに、文化(内面)の近代化を推し進めようとしていた意図に気付き、国産のビールが国内に広まることの意味を考え、適切に表現する。

◆本時の展開

【子どもの主な活動】

〈問いを生む場〉

▽既習や北海道開拓の新たな事実から疑問や予想を話し合う

・開拓途上の札幌

・娯楽品であるビール

▼課題「(まだ開拓して間もない時期なのに)黒田清隆はなぜ札幌にビールの官営工場を造ることを決めたのだろうか」

〈考えをつなぐ場〉

▽問いについて考えたことを話し合い、ビール工場建設の意味について考えをまとめる

▽産業の近代化

・自然条件が適していた

・外国に輸出

・開拓が進み、札幌に人や物が集まるようになる

・技術面でも国内外にアピールできる

▽文化の近代化

・オリジナルビールを外国にアピールできる

・日本人にも飲んでもらいたい

・文化面でも外国に追いつこうとしていた

▼まとめ「産業と文化、両面の近代化をねらっていたんだね」

〈吟味・検証・再考する場〉

▽ビールの生産が明治維新に果たした役割について再考する

・外国の人に紹介できるほど質の高いビールだったんだ

・外国の人に日本の技術力をアピールしようとしたんだ

・日本の技術力は外国に追いついたのではないだろうか

▼まとめ「黒田清隆は、産業と文化の両方を近代化することを考えて札幌にビール工場を建てることを決めた。ビールは日本の技術力と文化の向上を国内と外国にアピールする意味もあった」

【教師の具体的な手だて】

〈問いを生む場〉

▽前時の北海道開拓に関する振り返りを行い、本時の学びにつなげる

▽黒田清隆が開拓途上の札幌に娯楽品であるビール工場を建設した事実を提示し、子どもの反応や予想を束ね問いを生む

〈考えをつなぐ場〉

▽産業の近代化に関する要素から取り上げていき、国産ビールを日本人や外国人が飲む意味について考えをまとめていく

▽日本産ビールやビールの製造に対する外国人の視点で発言する児童の考えなども価値付ける

〈吟味・検証・再考する場〉

▽大久保利通が計画した博覧会にビールが出品された事実を提示し、政府の意図について考えさせ、ビールが内面の近代化を意図したものであったことに気付くようにする

▼評価

▽ノートやスクールタクトへの記述から「札幌にビール工場を建設した意味について産業と文化の両方の近代化に関係付けて考えているか」を評価する

(札幌市 2022-12-22付)

その他の記事( 札幌市)

高校雪像コンテスト等 さっぽろ雪まつり事業計画案

 第73回さっぽろ雪まつり第2回実行委員会が16日、札幌プリンスホテル国際館パミールで開かれ、事業計画案が示された。  市制100周年記念と銘打った今回は、来年2月4日から11日の8日間、...

(2022-12-22)  全て読む

札幌市中学校長会 教育経営研修会 自ら考える人づくりを ラルズ役員・樋口氏が講演

札幌市中学校長会教育経営研修会  札幌市中学校長会(富川浩会長)は7日、ホテルライフォート札幌で4年度教育経営研修会を開いた=写真=。道内でスーパーマーケットなどを展開する㈱ラルズの取締役販売統括部店舗運営部ゼネラルマネジ...

(2022-12-22)  全て読む

札幌市中学校長会 12月例会 積極的な情報発信を 小中引継ぎの取組等確認

札幌市中学校会12月例会  札幌市中学校長会(富川浩会長)は7日、ホテルライフォート札幌で12月例会・研修会を開いた=写真=。各部の担当者が所管事項について報告し、小中引き継ぎに係る課題の改善に向けた取組などについて...

(2022-12-22)  全て読む

日本語会話等に悩み 市内在住外国人意識調査 札幌市

 札幌市国際部は、今夏に市内在住外国人を対象に実施した意識調査の結果をまとめた。札幌の生活での困り事を尋ねると、日本語でのコミュニケーションや差別・偏見に関する悩みが多く寄せられた。  調...

(2022-12-22)  全て読む

特命担当大臣表彰を受賞 さっぽろ青少年女性活動協 内閣府 子と家族等応援団表彰で

 子どもや若者の居場所づくりの場「いとこんち」を運営するさっぽろ青少年女性活動協会が、4年度内閣府子どもと家族・若者応援団表彰で、内閣府特命担当大臣表彰を受けた。  本年度の表彰は、同協会...

(2022-12-22)  全て読む

札幌市立校 ゲレンデスキー実施校 9日時点で計262校に 指導体制工夫し安全確保を

 札幌市立小・中学校、高校等における本年度のゲレンデスキー実施予定校数(9日時点)がまとまった。小学校197校中194校、中学校・中等教育学校前期課程を合わせて98校中65校、高校・中等教育...

(2022-12-22)  全て読む

園長室から―未来育む札幌の幼稚園― 園の良さ・強みを発信 札幌市立白楊幼稚園

白楊幼稚園長・顔写真修整 ▼わが園の強み  豊かな実りのある園庭です。サクランボ、ブドウ、クリなど、子どもたちが楽しみながら収穫し、旬の自然の恵みをいただきます。秋には畑の収穫物を使ってカレーの会や焼き芋会。子ども...

(2022-12-21)  全て読む

田中組に感謝状贈呈 札幌市 災害遺児基金寄付

田中組に感謝状贈呈  札幌市子ども未来局は13日、災害遺児基金として50万円を寄付した市内の建設企業㈱田中組(松村敏文社長)に対する感謝状贈呈式を挙行した。山本健晴局長が同局を訪れた松井智樹取締役常務執行役員総...

(2022-12-21)  全て読む

札幌市教委 デジタル教育普及へ レバンガと連携協定 高校eスポーツ部支援など

市教委とレバンガ連携協定  札幌市教委は3日、㈱レバンガ北海道と市立高校におけるデジタル教育普及・振興に向けた連携協定を締結した。eスポーツ部の発足および活動支援を行うなど、市立高校の魅力化やデジタル人材育成に向けた...

(2022-12-21)  全て読む

札幌市教委 5年度開校の福移学園 時間講師配置を検討 教職員負担軽減へ週10時間

 札幌市教委は、5年度に開校する市内初の義務教育学校・福移学園への時間講師配置を検討している。人数は1人で、週10時間程度授業を担当する想定。市全体への情報発信、学校運営体制の確立など、市内...

(2022-12-21)  全て読む