変形労働時間制 条例化反対 札幌市高教 23年度運動の進め方
(関係団体 2023-04-13付)

 札幌市立高等学校教職員組合は3月中旬、道教育会館で第56回定期大会を開き、2023年度の運動の進め方を決めた。給特法改正案における変形労働時間制の適用について、客観的な勤務時間把握が実施されていない現時点での一方的な条例化に反対することを確認。主幹教諭が導入された職場の諸課題に対し、札教組と連携しつつ市教委と協議・交渉を継続することなどを申し合わせた。

 2023年度の運動の進め方はつぎのとおり。

▼生活と権利の擁護に向けた取組

▽全組合員の声をもとに「対市要求書・要望書」を作成し、諸要求の実現に向けた対市要求交渉を設定するとともに、市教委とは必要に応じてきめ細かな事務折衝を行う

▽道条例準用の影響で現在も導入されている成績主義にもとづく査定給与の廃止を目指し、また地方公務員の賃金抑制に反対するため、市労連および札幌地区連合、北教労協の一員として、組合員とその家族の生活を守る活動に全力を注ぐ

▽現在実施されている査定給与による不公平や不合理を少しでも減らすために、教員の仕事が持つ協働性に基づき、特定の教員が恣意的に高い評価を得ることのないよう、市教委や校長会に働きかける

▽2017年4月の政令市への教職員給与移管に伴う賃金・労働条件について、未解決の課題を札教組や市労連と連携して協議・交渉を進める

▽市条例における自家用車の支給基準を改善し、組合員の自己負担がないように取り組む

▽他の市職員と同様、事務職員の昇級改善に向けて取組を強化する

▽年休、夏季休暇の完全消化に向けた取組を行う

▽時間外勤務、サービス残業の縮減を目指し、教職員の心身の健康を守るため、部活動の週休2日の実現や活動時間の適正化を高校独自の観点から推進し、勤務時間割り振り変更の一層の拡大に向けて取り組む

▽給特法改正案は、超勤時間を「月45時間、年360時間以内」と定めた上限ガイドラインを指針化するとともに、都道府県ごとに条例によって教育職員に1年単位の変形労働時間制を適用可能とするものだが、客観的な勤務時間把握が実施されていない現時点での一方的な条例化に反対する

▽客観的な方法によって勤務時間を把握し、超勤排除に向け大幅な業務削減を求めるとともに「原則時間外勤務は命じない」「命ずる場合は限定させる」ことを順守させ、やむを得ず行った超勤に対しては直近に実質的な回復を措置させる取組を進める

▽新型コロナ感染症拡大に伴って生ずる過剰な業務負担増の防止、教職員健康問題、新たに導入された在宅勤務制度などの諸課題について、札教組と連携して市教委と協議・交渉を続け、教職員が安心して働くことができるように取り組む

▽部活動顧問制度について、複数顧問制を維持しつつ、1人の教員が2つ以上の部活動の顧問をすることがないようにするために各学校の部活動数適正化に取り組むことに加え、組合員に対して行ったアンケート結果をもとに、全員顧問制の在り方について検討し、市教委との協議を進める

▽定年延長に伴う諸課題に対し、調査研究を進め、市労連と連携して協議・交渉を進める

▽再任用教職員の寒冷地手当の支給などの勤務条件改善を、市労連や札教組と連携して取り組んでいく

▽福利厚生事業に対しては、市高教主催のボウリング大会などを含め、積極的に関与・利用し、福利厚生の充実を図る

▽職場の衛生委員会には、全ての分会員の健康を守るため、労働環境の一層の改善を求めて主導的に参加する。また、メンタルヘルス対策に取り組み、男女共通のセクシャルハラスメントの防止、男女別休憩室と男女別更衣室の実現に向けて働きかける

▽市条例の育児休業制度、介護休暇制度、結婚休暇制度等の期間延長・範囲拡大など、市労連に結集して福利制度の充実に取り組む

▽藻岩高校と啓北商業との発展的再編は、教職員の雇用と教科の専門性が守られるように全力で取り組む

▽会計年度任用職員制度にかかわって生じる諸課題に対し、市労連と連携して解決に努める

▼教育条件整備・民主教育確立に向けた取組

▽全ての教育活動の基本に日本国憲法を置き、行政による不当な支配に服さない民主教育の確立を目指す。また「対市要求書」等にもとづいて、豊かで行き届いた教育の必要性を広く市民に訴えるとともに「札幌市子どもの権利条例」が掲げる理念の実現に向けた教育実践を推進する

▽教育課程は各学校の実情に応じて教職員の総意により編成されるという原則にもとづき「日の丸・君が代」の強制に反対し、民主的な手続きを踏まえた学校行事の運営に取り組む

▽主任制については、市教委との「確認書―札幌市立高校教育の新しい流れを創造するために」にもとづいた立場を堅持し、職務職階性に反対の立場から今後の在り方を検討する

▽現場の協働性・同僚性を破壊し、民主的な学校運営を妨げるものして主幹教諭の導入に反対する。「学校職員人事評価制度」や「査定給与制度」に反対し、実体化の阻止に取り組む。評価制度が給与や異動・昇任に連動することを阻止するために、他組織との連携を含めて取組を強化する

▽主幹教諭が導入された職場における諸課題に対し、札教組と連携しつつ市教委と協議・交渉を継続する

▽学校会計の公開と公正な執行、教育活動にふさわしい職場の実現を目指して、職員会議の議論を学校運営にしっかりと反映させる取組を進める

▽「自主・民主・公開」の原則に反する「初任段階者研修制度」や各種の「経験者研修制度」に反対し、教職員の自主研修権を守る取組を強化する

▽教員免許更新制の廃止後の「教育公務員特例法の改正を踏まえた新たな教師の学びを実現する研修の高度化」に関して、あらゆる官制研修に対して「自主・民主・公開」の原則を順守するよう、また、研修の記録に係る業務負担の増加が発生しないよう、引き続き市教委に対して求めていく

▽教職員の定数配置については、時間外勤務の縮減および教育条件改善につながるよう教諭や養護教諭、事務職員等の加配を要求し、標準法定数の充足と各校の教育課程に応じた十分な講師時間数の確保を目指す

▽新たな市立高校教育改革計画に対しては、安易な学校の統合削減に反対し、単位の互換に伴う無理で非効率的な共通時間割を実施させないなど問題点の是正に向けた取組を強化する

▽藻岩高校と啓北商業との発展的再編で作られる新しい学校づくりで、教職員の希望が取り入れられるように、教職員が過度の負担を強いられることのないように市教委へ働きかける

▽開成中等教育学校については、前期課程と後期課程の所属について、市立高校教職員の権利侵害、労働条件の低下がないように、札教組と連携して市教委への働きかけを続ける

▽教科別研究会に関して、開催の意義について教員の肯定と否定の双方の意見が反映されるよう、市教委に働きかけ、廃止を含めて議論していく

▽教員の能力や資質の維持を図るために、札幌市独自の高校教員採用について、市教委への要望と協議を継続する

▽奨学金支給対象者の枠の拡大および定時制に通う生徒への教科書代や食費に関わる制度的補助の維持を市教委に働きかけるとともに、学校徴収金等に関わる事務職員の負担軽減に向けた取組を継続する

▽中途退学や卒業後の進路に不安を抱える生徒に対し、安心して学業に専念できるよう、奨学制度や雇用確保について関係機関に対する働きかけを強化する

▽市立高校の入試倍率改善のための方策を市教委と協議する形で取組を進める

▼平和・反核・脱原発と民主主義擁護に向けた取組

▽平和主義を基本とする日本国憲法の改悪に反対し、札幌平和運動フォーラムの一員として、各種の反戦・平和・反核・脱原発・人権・環境などの運動に取り組む

▽「核と人類は共存できない」をスローガンに反核・脱原発の運動を展開していく。原水爆禁止運動の推進のため、2023年第37回大都市高教組平和学習交流集会の成功に向けて市高教代表団を派遣する

▽脱原発に向けて札幌平和運動フォーラムの仲間とともに積極的に取り組む

▽日本国憲法に反する教育の反動化や道徳教育の押し付け、愛国心の強制にかかわる動きに反対し、学校現場における平和教育の推進に努める

▽民主教育をすすめる道民連合、札幌市民連合に役員を送り、積極的に諸活動に参加する

▼組織の維持強化・拡大を目指す取組

▽市立高校全体の組織率80%以上を目標に組織拡大に向けた取組を強化する。新採用者、道立高校、義務制からの現職採用者に対しても積極的に組合加入を働きかけ、他の市労連加盟単組並みの組織率を目指す。特に新採用者について全員加入を目標とする。女性の会など各校ごとの親睦行事開催を支援し、友好的で協働的な職場をつくることで未組合員の組織化を進める

▽「市高教ニュース」を全教職員に配布することで組織拡大に向けた広報誌としての役割を強化する市高教情報や市労連ニュースなどを通じて、情勢や課題、取組方針等の周知に努める

▽職場ごとに分会執行部を組織し、必要に応じて校長交渉を行うとともに、分会会議、分会役員会の定例化や分会ニュースの定期発行など活動の強化を目指す

▽引き続き再任用教員の期末勤勉手当への教員評価反映を阻止し、市教委に複数年の同一校勤務を働きかけるなど、権利擁護のために取り組む。臨時的任用職員の組織化を進めるとともに、会計年度任用職員の権利の擁護にも取り組む

▽事務職員部・青年部の各専門部について、組合活動の意義や意味を学ぶ機会を増やし、会議や諸活動に対する財政援助も含め活動の充実を積極的に図る

▽自主教研活動の中心に市高教の教育研究集会をおき、2023年度大会の成功に向け、年度当初から計画的に取り組む

▽男女平等参画社会を目指すため、女性組合員の割合が約30%という現状を踏まえ「女性参画」の割合を高めることで「誰もが生きやすい、ゆたかな社会」を目指し、運動を豊かなものにするよう取り組む

▽職員全体に占める再任用職員の割合増加、5年度から始まる定年延長を考慮し、組合業務の処理の効率化を一層進めることに加え、役員体制の在り方についても検討を進める

▼他組織との連携にむけた取組

▽市労連加盟単組として、市労連三原則のもとに、市労連運動の基本である「基本賃金の改善」「健康管理体制」「福利厚生制度の充実」の実現に向けて、運動を進める

▽全国あるいは道の教育公務員に対するあらゆる攻撃に関していち早く情報を入手するとともに、教職員の諸権利を守る闘いに参加し成果を得るために、北教労協を構成する他組織との連携を強化する。北教組高校部とは、勤務条件に関わる多くの共通課題に関する情報交換を行い、研究大会にも参加して連携を深める。道私教協とは高校教育に携わる仲間として私学助成署名に協力して連携を深める

▽札教組とは、市労連との二者共闘会議の仲間として、教員評価や研修記録にかかわる問題、勤務時間の適正化、長期休業研修の問題など、多くの共通の課題について共闘し、より一層の連携強化を進める

▽政令市に設置された高校に共通する課題に取り組むため、大都市高教組連絡協議会に積極的に参加し、情報交換、交流を深め、友好と連帯を強化していく

▽高校教育に課せられた今日的な課題や全国的な高校教職員運動の状況を把握するため、各種集会などに積極的に参加し、情報の収集に努める

▽札幌市立高校退職教職員協議会と積極的に共同行動をとるとともに、その活動に対する援助を行っていく

▽福利厚生の向上のためろうきん推進活動を推進する

▼新たな組織のかたちを探る取組

▽市教委との交渉や協議などで最も有効な組合の在り方を巡って、様々な可能性を探りつつ、市高教の将来の組織的な形態を研究する

▽市高教として、独自で市労連加盟単組の形態で組織を継続することに備えて、減額中の組合費のあり方を検討しながら、今後救援費積立金を復活させ、将来の組合攻撃に備えるとともに、安定的な組織の運営を目指す

◆藤田執行委員長を再任 23年度の役員体制

 札幌市高教は、第56回定期大会で新役員体制を決めた。藤田直人執行委員長を再任したほか、市立札幌平岸高校の成田厚博教諭を新書記長に選出した。

 2023年度の役員体制はつぎのとおり。=敬称略=

▽執行委員長=藤田直人(札幌藻岩教諭)

▽副執行委員長=北山義大(札幌旭丘教諭)、嶋守徹(啓北商業教諭)―新

▽書記長=成田厚博(札幌平岸教諭)―新

▽書記次長=西原美幸(札幌大通教諭)―新、山本浩平(札幌大通事務職員)

(関係団体 2023-04-13付)

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