根室市 6年度教育行政方針 インクルーシブ教育充実 エドテック導入し情報化も
(市町村 2024-03-19付)

根室市波岸克泰
波岸教育長

 【釧路発】根室市教委の波岸克泰教育長は、6年度教育行政方針において、児童生徒一人ひとりが自分に最もふさわしい学び方を自ら選択できる学習指導を推進することで、インクルーシブ教育の充実を図り、これからのまちづくりの礎につながる実践を積み上げていくこととした。また、授業支援サービスの「EdTech(エドテック)」を導入するなど教育の情報化を図るほか、市学校教育情報化推進計画を作成するなど教育の情報化に資する取組を推進していく。

 教育行政方針の概要はつぎのとおり。

▼持続可能な社会の創り手を育てる学校教育の充実

 ウェルビーイングの向上を目指す教育の推進に向けて、学校教育ではレゴブロック型の資質・能力を育成する教育の充実を図る。このことでインクルーシブ教育を推進し、児童生徒一人ひとりが、自分に最もふさわしい学び方を自ら選択し、試行錯誤を重ねながら達成感を味わうことができる学習指導を推進するとともに、知識・技能や思考力・判断力・表現力等、学びに向かう力・人間性等の資質・能力の育成に向け、取組を進めていく。

 花咲港小学校におけるインクルーシブ教育の実践は、共生社会の実現に向けた教育として関心を寄せる市内外の保護者等からも、教育内容や登校に関する相談等を受ける取組となっている。引き続き、校内環境の整備を図るとともに、これからのまちづくりの礎につながるインクルーシブ教育の推進に努める。

 特別支援教育については、新たに特別支援教育に精通した「特別支援教育担当主幹」を配置。道立特別支援教育センターとの連携による教職員研修や相談体制の構築に加え、学習活動を支援する特別支援教育支援員や介助業務員、放課後教室等指導員による学習サポート等により、障がいの種類や程度に応じた専門的な教育を受けられる教育環境のさらなる向上、幼保小中高の横断的な連携体制の強化を図る。

 学力向上に向けては、校長・教頭・教諭の代表と教育委員会で組織する「学力向上プロジェクト推進会議」や、市全体の教育課題の解決に向けた、教員による研修組織「根室市学校連携教育研究会」による先進地視察等により、児童生徒に対する指導方法をさらに工夫・充実させ、市全体の学力向上等につなげていく。

 また、国や道からの教員加配に加え、市街地区中学校への市独自加配や学力向上等補助教員の確保に努め、教師のペースで進める一斉教育指導からの脱却と併せ、子どもを主語としたきめ細かな学習指導を展開し「令和の日本型学校教育」が目指す「個別最適な学び」と「協働的な学び」の実現に向け取り組んでいく。

 教育の情報化については「全国学力・学習状況調査」のオンライン実施、デジタル教科書の本格導入など、国の動向を注視しつつ、「根室市学校教育情報化推進計画」を作成。一人ひとりの学習状況に応じて学習課題が提供されるEdTech(エドテック)と呼ばれる授業支援サービスの導入、創造性を喚起して課題を解決し新しいものをつくり出すプログラミング的思考の醸成に向けたAI学習教材などの積極的な活用のほか、対応する教員のICT活用指導力向上に向けた研修機会の確保や子どもたちのネットモラル教育の充実などを通して、学校でも家庭でも学びを深められる環境を整備する。

 道徳教育は、道徳科を要として進めるとともに「いじめ問題」をテーマとして小中学生が一堂に議論する「子ども会議」など、子どもたちが主体的に考え行動し、自立した社会人として成長していくための基礎となる道徳性のかん養に向け、あらゆる教育活動を通じて取り組んでいく。

 基本的な生活習慣の確立に向け、各家庭でゲーム機や携帯等の使用時間を決める「スイッチオフ22」運動や、ネットトラブルの当事者とならないよう、タブレット端末やインターネットの利用に関する家庭内でのルール作り等について、関係機関と連携し啓発を促進する。

 近年増加している不登校等の児童生徒への対応として、引き続き、タブレット端末を活用した学びの保障や市独自のカウンセリング体制の整備・充実を図る。また新たに、不登校児童生徒の気持ちに寄り添う外部支援員を委嘱し、支援必要とする児童生徒のサポートを強化する。

 また、部活動の地域移行については、教員の働き方改革なども踏まえながら、仕組みづくり、指導者や活動場所の確保など、学校や地域のスポーツ・文化団体等とも協議・検討を進め、休日の部活動から、段階的移行に取り組んでいく。

 ふるさと学習については、北方領土返還要求運動原点の地として、姉妹都市黒部市とのオンライン交流授業を継続・発展させるとともに、それぞれの自然や歴史、産業など地域の魅力や特徴について学ぶ機会を一層充実させ郷土愛の醸成につなげる。

 防災・減災教育の充実に向けては、切迫する千島海溝沿いの超巨大地震や大津波など、激甚化する自然災害から、自らの命を守るための必要な知識や能力等が身に付くよう、防災関係機関やコミュニティ・スクール、市長部局等とも連携した防災訓練や防災授業などの取組を進め、防災リテラシーの一層の向上を図る。

▼社会構造の変化の中で持続的で魅力ある学校教育を実現する教育環境の充実

 特色ある新たな教育活動に向け、引き続き厚床小中学校校舎の実施設計、おちいし義務教育学校の校舎・屋体・外構工事を進める。

 また、老朽化が著しい北斗小学校については、柏陵中学校との併置校化によって、市街地校初となる義務教育学校制度の導入を見据え、学校やPTA、コミュニティ・スクールとの検討・協議を進めるとともに、保護者・地域の理解を得ながら、学校施設の基本設計に取り組んでいく。

 夏季の暑さ対策として、全市立学校への空調機器設置に向けた電気設備増設工事・機器購入を進める。また、本年度から空き校舎となる旧落石中学校校舎については解体工事に着手。一方で、アスベスト含有等の課題から延期している旧花咲小校舎の解体は、引き続き、解体時期について市長部局との協議を進める。

 各中学校区に設置しているコミュニティ・スクールは、地元漁協の協力による地場産品を使った調理実習や、地域防災教室、地域の方が講師となりふるさとを語る「ふるさと大学」など特色ある活動を実施。さらなる活性化へ、学校内外での多様な学びの確保や地域と連携しながらその企画・運営を支援する「仮称・地域連携担当支援員」を新たに配置するとともに、コミュニティ・スクールアドバイザーによる支援を継続し、取組の充実を図る。

 学校給食については、児童生徒の学校給食費の無償化を継続し、地場産食材による「ふるさと給食」などの取組を進め食育の充実を促す。このほか老朽化する調理場施設の整備に向けては、アレルギー対応や食育の充実、市内事業者や雇用などへの配慮等の意見を踏まえながら、民間活力の導入による地産地消にもつながる持続可能な学校給食提供の仕組みづくりを念頭に体制整備を整えていく。

 教員確保につなげるため、相互協力協定をしている道教育大学と連携し、複式教育を学ぶ教育実習生の受け入れや、教育大生による小中学生を対象に実施する「SDGs子ども大学」事業や放課後教室等での交流授業などを継続。将来、市での教育実践につながる取組を進めながら、広く教員の確保に努めていく。

 また、学校における働き方改革のための業務改善計画に基づき、ICT活用による授業準備に係る教員負担の軽減を図る。また、校務支援システムによる教員在校等時間の把握・管理に努めるなど、校長会や道教委と連携し、教員の働き方改革を着実に進める。

▼社会教育・生涯学習活動の充実と文化・スポーツの振興

 新たな「社会教育計画」「スポーツ推進計画」「子ども読書活動推進計画」の策定年となっているため、関係機関、市民の意見を伺いながら、各種活動の活性化はもとより、将来のまちづくりにもつながる計画策定を目指し取り組んでいく。

 社会教育・生涯学習の拠点である公民館活動では、地域に根差した学習や各種のニーズを捉えた成人学校などの各種講座の実施。市民が対話を通じて子どもとその周りの大人の課題に向き合う「根室子どもピアサポート事業」を引き続き開催するほか、世代を超えた交流活動などを通じて、公民館活動の充実を図る。

 このほか、教育委員会の若手職員で横断的に組織するワーキンググループによる、根室の身近な素材を生かした映像の制作など、地域を知り、学ぶために効果的なコンテンツの発信に引き続き取り組んでいく。

 総合文化会館について「市総合文化会館事業協会」や「市文化協会」等との協働によって、各種の舞台芸術や、作品展示会などを行い、市民の芸術文化活動の発展・支援に努める。また、総合文化会館の施設整備として、講座室や廊下など照明のLED化や小ホール舞台吊物機構の改修など、計画的に整備する。

 子どもたちの社会教育事業への主体的な参加を奨励する「ねむろわんぱくチャレンジ」については、引き続き事業の周知や拡充を図るなど、子どもたちの参加を促進し成長を後押しする。

(市町村 2024-03-19付)

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