江別市 6年度教育行政執行方針 自動採点システム導入へ ハイパーQU 小6に拡大
(市町村 2024-03-21付)

江別市黒川淳司
黒川教育長

 江別市教委の黒川淳司教育長は、第1回定例市議会で6年度教育行政執行方針を説明した。児童生徒の確かな学力の定着を図るため、AIドリルを導入するほか、教員が生徒と向き合う時間の確保に向け、自動採点システムを新たに導入するなど、個別最適な学びと協働的な学びのさらなる充実を図っていく考えを表明。いじめ問題については、市独自のいじめアンケート調査や、中学1年生を対象に行っていた「ハイパーQU検査」を小学校6年生にも拡大して実施するなど、いじめの未然防止、早期発見、早期対応に一層取り組んでいく意向を示した。

 執行方針の概要はつぎのとおり。

▼学校教育

 6年度から開始となる「第3期市学校教育基本計画」で掲げる、目指す子ども像「夢を持ち、夢を語り、夢の実現に向けて行動する子ども」の実現に向け、引き続き、様々な教育施策を推進していく。

 また、子どもたち一人ひとりが新しい時代を生き抜くために必要となる資質・能力の確実な育成・定着につながるよう、個別最適な学びと協働的な学びの一体的な推進に努めていく。

 昨年4月から市内全ての公立小・中学校で本格導入した小中一貫教育は、各中学校区において、義務教育9年間の教科系統表に基づく指導をはじめ、学習や生活の規律を小・中学校でそろえる一貫した指導、小学6年生の中学校登校や中学校教員による小学校への乗り入れ授業などの相乗的・補完的な指導など、各中学校区独自に特色のある取組が進められている。

 学校と地域が連携・協働し教育体制を構築することは、今後、ますます重要となることから、引き続き、系統性と一貫性を持った教育の推進に取り組むとともに、えべつ型コミュニティ・スクールのさらなる推進に努めていく。

 併せて、特別な支援や配慮を必要とする児童生徒が個々の状況に応じた適切な教育を受けられるよう、教員の特別支援教育に関する専門性の向上を図るほか、児童が幼児教育等から小学校教育へと円滑に適応できるよう、幼児教育施設職員との合同研修会を開催するなど、連携強化に引き続き取り組んでいく。

 また、これまで本市においても課題の一つとされてきた、児童生徒の自己肯定感や自己有用感の向上については、全国学力・学習状況調査において、一定の改善傾向が見られており、引き続き、子どもたちが自らを含め、全ての人を価値のある存在として尊重し、多様な人々と協働しながら持続可能な社会の創り手として成長できるよう、取組を進めていく。

 さらに、児童生徒の確かな学力の定着を図ることを目的としてAIドリルを導入するほか、教員が生徒と向き合う時間をこれまで以上に確保できるよう、自動採点システムを新たに導入するなど「市教育情報化ガイドライン」に基づき進めてきた「個別最適な学び」と「協働的な学び」のさらなる充実を図っていく。

 こうしたことは、教育デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進に資する取組であると考えている。

 生徒がスポーツや文化芸術活動に継続して親しむことができる機会を確保するため、国の方針に基づき、本市における部活動の在り方について、引き続き、関係団体などの意見を伺いながら検討するとともに、一部の種目において部活動指導員を導入していく。

 様々な悩みを抱える児童生徒への支援を充実させるため、スクールカウンセラーの小学校への派遣時間を拡充するとともに、スクールソーシャルワーカーを増員し、相談体制を強化していく。

 また、いじめ防止対策では、昨年11月に改定した「市いじめ防止基本方針」に基づき、全ての児童生徒が安心して学校生活を送れるよう、いじめを許さない意識の醸成や援助希求的態度の育成に努めるとともに、市独自のいじめアンケート調査のほか、学校現場からの評価が高い「ハイパーQU検査」を小学校6年生に拡大して実施するなど「いじめ見逃しゼロ」を目指し、いじめの未然防止、早期発見、早期対応に取り組んでいく。

 さらに、4月から常設となる適応指導教室では、これまでの午前のみの開設時間を午後3時まで拡充するほか、各校で設置が進められている登校支援室へボランティアを派遣するなど、不登校または不登校傾向にある児童生徒の教育の機会および居場所の確保に努めていく。

 昨年の記録的猛暑を受け、小・中学校における暑さ対策が求められており、児童生徒が涼を取ることができるよう、現在、各校の保健室へのエアコン設置と移動式クーラーの整備を進めている。

 6年度は、普通教室へのエアコン設置に向け、順次、小学校から設置場所等の調査・設計を進めていく。このほか、学校施設の計画的改修と適切な維持管理、給食センター調理場老朽化への対策をはじめとした学校給食の在り方検討、小学校でのフッ化物洗口導入など、さらなる教育環境の充実に取り組んでいく。

 第10期市社会教育総合計画で定めた基本理念である「江別の風土を生かし、豊かで潤いのある地域社会を創造する人づくり」の実現に向け、引き続き、子どもから高齢者までの全ての市民が心身共に健やかで充実した生活を営めるよう、多様な学習・文化芸術活動に触れる機会を提供するほか、市民が郷土に対する愛着や誇りを育めるよう、歴史文化資源を生かした郷土学習の推進など、江別の魅力を学ぶ機会の充実を図る。

 6年度においても、引き続き、青少年の健全育成や生涯学習の推進、文化芸術の振興などの活動を行っている団体に対し、必要な支援を行うとともに、こうした団体と連携のもと、多くの市民が参加し楽しんでもらえる各種事業やイベントを実施していく。

 また、改修を進めている旧町村農場は「市旧町村農場保存活用整備方針」に基づき、多くの人が集い、学び、親しまれる魅力的な施設となるよう、展示内容を刷新し、売店の充実のほか、子どもたちの遊び場機能を加え、6月のリニューアルオープンを目指し準備を進めていく。

 姉妹都市交流においては、昨年、6年ぶりにアメリカ・グレシャム市から市長を代表とする訪問団が江別に来られ、教育交流に加え、経済交流について話し合われるなど、双方に友好を一層深めていく機運が高まっており、本年度再開した中学生・高校生による教育交流を継続して実施するほか、関係団体とも連携しながら、市民が国際交流に関わる機会の提供に努めていく。

 併せて、本年度再開した友好都市・高知県土佐市との小中学生の相互訪問による教育交流について、学校と連携・協力しながら、参加する児童生徒だけではなく、受け入れる児童生徒にとっても、意義のある体験となるよう、事業の充実に努めていく。

 開館から35周年を迎える情報図書館においては、より多くの市民に利用いただけるよう、本のセルフ貸出機等を本館および江別、大麻各分館に導入し図書館のデジタル化を推進することによって、利用者の利便性向上と業務の効率化を図り、地域住民の憩いの場となる図書館を目指していく。

 また、郷土の歴史を後の世代に正しく継承していくため、郷土資料館においては、文化財整理室に収蔵する歴史的文化資源を利活用したロビー展など、展示内容の充実を図るほか、6年度に開館30周年を迎えるセラミックアートセンターにおいては、国立工芸館をはじめとした関係機関との協力連携のもと、桃山時代に発展した「志野」の第一人者である陶芸家・鈴木藏氏の軌跡をたどる展覧会の準備を進めていく。

 そのほか、市民が気軽に涼めるよう、各公民館のロビーにエアコン設置工事を進めている。こうした暑さ対策のほか、社会教育施設においても、引き続き、長寿命化計画に基づき、老朽化した施設や設備の改修を計画的に進めていく。

▼スポーツ

 「第7期市スポーツ推進計画」で定める基本方針の実現に向け、スポーツを「する」「みる」「ささえる」「しる」ことができる機会の充実を図り、スポーツ活動を通じた市民の健康づくりや運動習慣の定着化を目指す。

 そこで、6年度においても、指定管理者と連携し、誰もが安心して利用できる体育館をはじめとしたスポーツ施設の適切な運営に努めるとともに、長寿命化計画に基づき、適正な施設改修を計画的に進めていく。

 また、本市の小中学生の体力は、コロナ禍前の平成30年度と令和4年度で比較すると、どの学年・性別においても低下し、さらに、同じくコロナ禍前後において、市内体育館の小中学生の個人利用者数が減っている状況を踏まえ、市内体育施設の小中学生の利用料を無料とするほか、関係団体と連携のもと、子どもたちにとって魅力あるイベントを開催するなど、気軽に運動できる環境整備に努めていく。

 スポーツ合宿誘致では、市民全体、とりわけ子どもたちへの波及効果などを考慮し、トップアスリートに対する支援へと制度の見直しを行い、昨年9月に実施された競泳日本代表のアジア大会直前合宿においては、多くの市民がトップレベルの技術を目の当たりにする貴重な機会となった。

 本年9月には、日本水泳連盟主催の水泳イベント「水泳の日2024」が本市において開催され、パリオリンピック・パラリンピックに出場した選手との交流事業などが予定されている。

 様々な競技の誘致活動や道内プロスポーツチーム等と連携し、市民がトップアスリートと交流できる機会を提供することで、スポーツ活動の活性化を図っていく。

 夏休みの小学校プール開放においては、利用する子どもたちの安全対策を強化するため、監視体制の充実を図るほか、小・中学校体育館の地域開放や特別支援学校フットサル大会への開催支援、スポーツ関連団体への支援など、各種スポーツ施策を進めていく。

(市町村 2024-03-21付)

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