機械的な学校統廃合反対 道教組 第37回定期大会
(関係団体 2024-03-29付)

道教組全景
道教組第37回定期大会

 道教組(中村哲也執行委員長)は3月上旬の2日間、道高校教職員センターで第37回定期大会を開いた。2023年度運動経過を報告したあと、24年度の運動方針を決定。具体的な運動の進め方として「機械的な学校統廃合に反対し、子ども・保護者と共に小規模だからこそできる豊かな教育を目指す」「長時間過密労働を解消して教職員の命と健康を守る取組を進める」などを掲げた。

 大会初日には、中村委員長のあいさつに続き、議事では23年度の運動の経過と総括を行ったあと、24年度の運動方針を決定。運動の重点として「北海道の子どもたちが学ぶ喜びを、教職員が誇りと生きがいの持てる、生き生きとした学校・職場づくりを目指そう」「父母・住民、教職員・教育関係者が教育の一地点に基づく共同の運動を広げよう」など5点を確認した。

 運動の進め方として“憲法と教育の条理に立脚した教育の実現”に向け「子どもたちの命を大切にし、学ぶ喜びを保障する教育・学校づくりの取組を進める」「行き届いた教育を進める取組を、学校・家庭・地域の教育関係者との合同で前進させる」などを確認した。

 “教職員の生活と権利を守る”ため「長時間過密労働を解消して教職員の命と健康を守る取組を進める」「教職員の賃金と労働条件の改善を目指す」「労働安全衛生体制を確立し、安全・快適・ゆとりの学校・職場づくりを進める」などを盛り込んだ。

 “対話と共同の運動を前進させ、職場活動の活性化、道教組の発展・強化を進める”ためには「職場を基礎に教職員の要求実現を目指すとともに、語り合い学び合える職場づくりを進める」などを決めた。

 24年度運動方針の概要はつぎのとおり。

【運動の重点】

▽北海道の子どもたちが学ぶ喜びを、教職員が誇りと生きがいの持てる、生き生きとした学校・職場づくりを目指そう

▽父母・住民、教職員・教育関係者が教育の一地点に基づく共同の運動を広げよう

▽「教え子を再び戦場へ送らない」の決意のもと、戦争する国づくりにつながる改憲と新自由主義的「教育再生」を許さず、平和を実現する運動を全ての教職員・道民と共に進めよう

▽教職員定数の抜本的改善を求め、長時間過密労働を是正し、教職員の命と健康を守ろう

▽教職員との対話を広げ、共に力を合わせる仲間を増やし、道教組と共済会を大きくしよう

【具体的運動の進め方】

◆憲法と教育の条理に立脚した教育の実現を目指す取組

▼子どもたちの命を大切にし、学ぶ喜びを保障する教育・学校づくりを進める

▽道教組は結成以来、運動方針の貴重な柱の一つに「参加と共同」の学校づくりを位置付けてきた。その柱の原点はつぎの3点にまとめられる。三つの視点を議論し実践していく。

〈子どもたちの側からの「授業づくり」と「仲間づくり」〉

・受験・学力テスト体制を改め、「問う」ことを大切にした「授業づくり」

・子どもたちの実世界に即した活動と連帯と共感的な仲間づくり

〈権利主体の発達要求に基づく学校の教育条件の前進〉

・「問い」が生まれる「授業」に必要な時間と休息がある生活条件

・子どもたちの安全・安心な学校施設と条件

・教育条件の最も大切な要素としての教職員の働き方

〈子どもたちを支える教職員の教育の自由と父母・地域との共同〉

・子どもに即した教育課程と豊かな学びをつくり、行事・活動を支える教師集団の協働性

・保護者・地域の人々と、子育て・地域の未来像の語り合い

・子どもを取り巻く、保護者・地域の大人および教育機関・福祉機関・医療機関との共同

▽18歳選挙権を踏まえ、小・中学校における自治的活動が重要になる。しかし、児童会・生徒会活動の時間が削減されている状況があり、学級活動などで子どもたちを育てることが大事になる。どのような場面で子どもの自治的活動を保障し育てていくのか、組合・分会・各職場で討議する

▽教育懇談会や学級PTA等で出された保護者の声や学級づくり・学校づくり、教育課程づくりに生かす取組とともに進める

▽不登校などの問題について、教職員・保護者・スクールカウンセラー・スクールソーシャルワーカー・民生委員など地域のネットワークとの連携を目指す

▽学校の運営と組織の在り方について、校長・市町村教委と合意を図りながら、全教職員参加の学校運営、子ども・父母参加と地域に開かれた学校づくりを進める

▼新自由主義的教育改革を許さず、全ての子どもの成長・発達を保障する民主教育を目指す取組を進める

▽新自由主義的教育が憲法改悪と一体のものであることを明らかにし、憲法改悪阻止のたたかいと結んで「戦争する国づくり」や財界のための人づくり、育成を許さない世論を広げる

▽教育の目的を一人ひとりの子どもたちの成長・発達を保障し、人格の完成を目指すものから、国のための「人材」育成へと変質させることをねらう憲法26条改悪の問題点を明らかにし、全ての子どもたちの成長・発達を保障する教育を目指す

▽国に役立つ人材育成を目指し、早期から競争的教育に走らせる新自由主義的教育政策に反対し、全ての子どもの学習権を保障する取組を進める

▽GIGAスクール構想のねらいや学習の「個別最適化」、AIへの依存、過密過大な学習内容などの問題点を明らかにし、抜本的な見直しを求める世論を広げる

▽各学校における教育課程編成に当たっては、学校の自主性を保障し、子どもの実態と地域の実情に応じた取組を進める

▽特定の教育観・教育理論を前提にせず、だれでも気軽に参加でき「子どものための道徳教育」を学び合う場として、全道合研で道徳教育および「特別な教科道徳」の授業づくりを広く交流し、学び合いを広げる

▽土曜授業の実施や長期休業の短縮、標準授業時数の押し付けなど、教育行政による学校の教育課程編成に対する介入に反対する

▽子どもたちが学校生活で「ゆとり」を持ち、安心して生活できる条件整備を求める。特に、障がい児の生活と安全を保障するための取組を重視する

▽学校図書館の図書充実のための予算確保を求める。図書館の司書配置については、専任・専門・正規を求めていく

▽「全国学力・学習状況調査」の実施と都道府県・市町村・管内・学校ごとの成績公表、CBT化に反対する。「全国学力・学習状況調査」の問題点や学力問題などについて、保護者・道民との対話や懇談の取組を進める

▽「Society5・0に向けた人材育成」「GIGAスクール構想」などによる教育のICT化と公教育への民間教育産業の参入について、教育の機会均等や質の保障、子どもの学習権と教職員の専門性が守られるのか等の問題を明らかにし、全ての子どもの成長・発達を保障する立場から取組を進める

▽教職員を激励する「学びあい」を重視する

・北海道子どもセンター等と共同で、全道的規模の学習会を開催する。各単組・連絡会は学習会の成功に向け、組合員が職場の未組織者を誘って参加するように取り組む

・民間教育研究団体や地域のサークル・研究組織などが主催する研究会に積極的に参加し学び合いを深める

▼機械的な学校統廃合に反対し、子ども・保護者と共に小規模だからこそできる豊かな教育を目指す

▽全道各地の学校統合問題を考える時、学校が地域に果たしている役割を明らかにし、統廃合の判断は保護者・子ども・地域・住民の声を聞いた上で検討することが基本である。行政の機械的な学校統合には反対する

▽全道各地で「学校規模が小さくとも、いい教育はできる」を基本に学習会・集会を開催し、小規模校の良さを保護者・教育委員会・地域・住民に訴える

▽財政主導効率優先の義務教育学校の設置の動きに対し、保護者・地域の教育要求に基づく学校づくりを目指す観点から地城懇談会開催や要求書取りまとめなど、学校統廃合の押し付けを許さない取組と結んで進める

▼合同教育研究集会など自主的な教育研究活動を積極的に推進する

▽日常的な学校での実践と教育研究を励ますため、気軽に集まり、授業や子どもの育ちについて交流する場を大事にする

▽各地での教研集会や全道合研を実践交流の場として位置付け、年間を通して実践を掘り出す

▽2024年度合同教育研究集会が、日常的な学校・地域での実践が交流され教育現場を励ますものとして成功するよう努力する。組合員が積極的にレポートを持って参加するとともに、未組合員や父母を含め開かれた教研集会を目指す

▽8月開催の「教育のつどい」については、全道合研のレポーターを中心に積極的な参加を進める

▽オンラインでの学習会を企画し、参加しやすい学びの場の充実に努める

▼障がい児の豊かな教育を求める取組を進める

▽障がいが重い子どもたちや発達障がいの子どもたちの受け入れで困難な現場の状況を理解し、特別支援学級の編制標準改善に取り組む

▽通級指導教室の定数改善に取り組む

▽専任コーディネーターの確保(兼任の解消)に取り組む

▽臨時教員を解消し、正規教員化に取り組む

▽特別教育支援員の正職員化(打ち合わせ時間の確保と待遇改善)と増員に取り組み、配置の充実も求める

▽併設高等部で進学希望者の多い地域の学校増設と、より身近な地域での増設を求める

▽新設時から適用とされている特別支援学校設置基準を既存校にも適用させ、その基準を現場の要望に見合うものに拡充することを求める

▽「居住保障」ではなく、「教育保障」という観点で寄宿舎の充実に取り組む

▽子どものニーズに応じた特別支援教育をサポートするバートナー・ティーチャー事業の拡充のための予算措置要求に取り組む

▽特別支援学級の学級編制や教育課程の学校裁量の拡大に取り組む

▼ゆきとどいた教育を進める取組を、学校・家庭・地域の教育関係者との共同で前進させる

▽保護者・地域との懇談を広げ、それぞれの教育要求を学校づくり地域の教育づくりに生かしていく「教育大運動1741」に旺盛に取り組む

▽学校における感染症拡大を防止するため、必要な物品配備や施設設備、人的配置を行い、全ての子どもの命と健康、安全を確保するための体制を確立することを求める

▽20人学級を展望した教職員定数の抜本的改善による少人数学級の実現や、特別支援学校・学級の狭あい化を解消し、ゆとりある教室環境の提供を求める

▽心のケアなども含め、子どもや保護者が気軽に相談できる体制を確立するための条件整備を求める。必要なスクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーの配置を求める

▽ヤングケアラーとして家族の介護等に従事しなければならないなどで就学に困難を来している児童生徒に対し必要な支援を実施するよう求める

▽安全でおいしい学校給食のため、機械的な民営化やセンター化に反対する。安全な道産食品を中心に調達し、子どもたちの健康を守り、食中毒対策の充実を求める

▽給食費の無料化を求め、給食民営化に反対するとともに、調理員をはじめ栄養職員・調理員の定数改善の取組を進める

▽老朽校舎の改修、校舎の耐震化、保健室や教室のエアコン設置など子どもたちの安全と健康を守るため、道・市町村教委に求める

▽北海道子どもセンターと連携し、子どもの学びとこころ、くらしを守る取組を進める。主任手当の活用などで、子どもセンターの活動を財政面で支える

▼教育全国署名の運動をさらに発展させ、全ての子どもたちの学習権を保障する教育条件整備を求める取組を進める

▽20人学級を展望した国の責任による少人数学級の前進を目指す

▽小学校2学級3定員、3学級4定員、6学級8定員の改善、複式学級編制基準の改善、養護教員の複数配置、養護教諭・事務職員の全校配置に向けた道民的運動を強め、国の改善計画に反映させる取組を強める

▽道による少人数学級の拡充を求める運動を強め、当面の重点として、中学校全学年での35人学級早期実現を求めていく

▽各単組とともに、自治体訪問や議会要請、地元選出議員への懇談・要請に取り組む

【教職員の生活と権利を守る取組】

▼長時間過密労働を解消して教職員の命と健康を守る取組を進める

▽給特法改正で「定額働かせ放題」を正し、超勤縮減を実現させる

▽持ちコマ数の上限を設定し、義務標準法の改正で教員定数増に向けて取り組む

▽学習と懇談で「全教七つの提言」を広める

▽「1年単位の変形労働時間制」の導入に反対する

▽道教委や市町村教委の責任で業務の縮減を図るための条件整備を行うことを求めるとともに、勤務時間の適正な把握が行われるよう要求し、取組を強める

・客観的な出退勤時刻の記録

・持ち帰り業務も含めた実態の適正把握

・虚偽報告や「時短ハラスメント」の根絶

・管理職の責任による実効ある業務量の縮減

▽割り振り変更制限による休暇も含め、各休暇を気兼ねなく取得できる職場環境づくりに取り組む

▽超過勤務の実質的削減につながるように、部活動の地域移行を求めていく

▽「教職員の権利一覧」をもとに、職場・地域で権利学習を進める

▽教職員の抜本的な定数改善を求め、「せんせいふやせ」の運動を広める

▽「北海道アクション・プラン(第3期)」の問題点、課題を厳しく指摘し、実効ある「働き方改革」プランを道教委に求める

▼教職員の賃金と労働条件の改善を目指す

▽全労働者の賃金向上、待遇改善が教職員にも大きく影響することを踏まえ、春闘に積極的に取り組む

▽人事院、道人事委員会の勧告に向けて、要求行動を強める

▽「定年延長」を迎え、その制度を十分に理解し、再任用も含めた高齢層の処遇改善を求めていく

▽重大な人権侵害であるハラスメントへの対策と根絶を求めていく

▽三六協定の締結促進と、教員の労働基本権回復に向けて取り組む

▽「教職員人事評価制度」が学校現場の実態に合わないことを明らかにしながら、改善・廃止を求める

▽不安定雇用にさらされている会計年度任用職員、臨時的職員の安定化、待遇改善を求めていく

▽権限移譲に伴い生じた、札幌市立学校教職員の待遇のマイナスについて、札幌市教委に働きかける

▼労働安全衛生体制を確立し「安全・快適・ゆとり」の学校・職場づくりを進める

▽教職員の健康を守るため、施設・設備の改善など労働環境の改善、教職員の定期的な検診体制の確立、教職員の働き方の改善を求める。必要に応じ在宅勤務や自宅での研修等が行えるよう、人的配置などの条件整備を行うことを求める

▽快適で安全な学校・職場の当面の要求をつぎのとおりとする

・勤務時間の「上限方針」を見据え、超過勤務の実態とその解決を、衛生委員会・総括衛生委員会の議題とし、実効ある対策を講じるための議論を深める

・「定時退勤日」「部活動休養日」など管理職や組合が積極的に取り組み、働き方改善のきっかけをつくる

・休憩時間45分の確保を目指し、各職場で議論して校内体制を整える

・管理職や職員が、職場で教職員の働き過ぎや心の病をチェックできるよう、小・中学校でも各学校や市町村単位で衛生委員会を設置する

・全教職員を対象にメンタルヘルスの講習を受けることができるよう専門家を招き研修を行う。早期発見のための「ストレスチェック」を活用し、予防や対策をする

▽教職員の命と健康を守る要求をつぎのとおりとする

・脳ドックの拡充、骨粗しょう症診断を含む健康診断体制の充実と、不妊治療休暇の拡充など検診を支援する体制を図る

・安心して健康診断、通院・入院治療ができる職場体制を確立する

▽道立学校の労働安全衛生体制の整備状況の把握に努めながら、衛生管理者の公費での養成を継続する。また「道立学校総活安全衛生委員会」への組合参加体制を生かし、実効ある論議と情報提供を行い、職場における労安体制の確立に努める

▽市町村立学校での労働安全衛生体制の確立を目指し、職場要求の練り上げを行うとともに、市町村単位で労働安全衛生規定を策定し、安全衛生管理体制をつくる取組を進める

▼定年延長、雇用と年金の確実な接続を求める

▽65歳への定年延長で複雑な制度が動き出す中、教職員が不利益を被ることがないよう、情報把握と情宣、行政への働きかけを行う

▽再任用を含む60歳以上の教職員の待遇改善を求める

▽全労連公務部会と連動し、再任用を定数外とする共通の要求で運動を進める

▽教職員の雇用と年金の確実な接続に向け、子どもたちの教育の充実と働きやすい職場環境、生活の不安なしに安心して教育に専念できる労働条件を求める

▼公務員・教職員の労働基本権回復を求める

▽憲法に基づく基本的人権の保障という立場から、全ての公務労働者に完全な労働基本権の回復を目指し、取組を進める

▽「教員の地位に関するILO・ユネスコ勧告」、CEART(セアート)勧告について学習を深めるとともに、教育政策決定の際に教職員組合が対等平等に寄与していく取組を進める

【民主的人事の実現と教育行政の民主化を目指す取組】

▼人事要求の実現と人事交流の実現を目指す

▽各局に対し、人事について話し合い、重要な人事要求については内容を伝え、要求が実現するよう取り組む

▽再任用制度における希望者全員雇用、勤務地の希望尊重を目指し取り組む

▼教員不足の解消と臨時教職員問題の改善を目指して取り組む

▽全国的にも深刻になっている教員不足について、早急な解消と、未配置の学校への有効な支援を道教委に強く求める

▽臨時教職員の拡大・多用化によって引き起こされている教育への深刻な影響を、子どもたちの学習権の保障と併せて指摘し、臨時教職員に関する諸問題の改善を求める

▼父母・道民との共同の力で民主的学校づくりを図る

▽主任制度撤廃の基本的力である父母・道民に信頼される学校づくりを全ての教職員の共同で進める

▽主任制度の意図を持ち込ませない取組を進めるとともに、手当支給に当たっては「個人所得にしない」ことを基本に拠出を広く呼びかける

▽管理職や主幹、主任層など一部の職員による学校運営を許さない体制を確立する

(関係団体 2024-03-29付)

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