道高教組24年度運動方針 地域の高校守り育てて 長時間過密労働解消へ取組
(関係団体 2024-03-28付)

道高教組全景

 道高教組(尾張聡中央執行委員長)は3月上旬の2日間、札幌市内のかでる2・7で第126回定期大会を開き、2024年度運動方針を決定した。20人以下学級を展望し、国の責任による少人数学級の早期実現や教職員定数改善に向けた計画の策定などを目指す運動の推進とともに、道教委による「魅力化」を競わせながらの高校再編・統廃合を許さず、地域の高校を守り育てる運動の推進を確認。労働条件改善に向けては、長時間過密労働の是正、給特法改正、教職員定数の大幅増の実現に向け取組を推進することを申し合わせた。

 前年度に続いて、対面・オンラインを組み合わせたハイブリッドでの開催となった。

 冒頭、尾張委員長があいさつ。前日に挙行された道立高校の卒業式に触れ「それぞれの学校の子どもを主人公に、地域や保護者、教職員の力を合わせてつくり上げるのが学校だということを再認識した」と述べた。

 一方で、学校現場を取り巻く課題として、長時間過密労働の解消や教職員定数の改善、給特法の見直し、教育予算および学校予算の改善、ハラスメントの深刻化などを挙げ「現場の声から始まる運動をどのように組み立てるかを意識したい」と強調した。

 また、道立学校におけるエアコン設置に言及し「運動の成果として非常に喜ばしい」と評価する一方で、設置方法については「学校独自の設置は無責任極まりない」と断じ、道教委の責任のもとで確実に設置されるよう、引き続き要望するとした。

 続いて、2024年度運動方針を決定。運動の基調には「職場を基礎に、対話から要求を練り上げ、要求を実現する道筋を明らかにする教職員組合の役割を発揮する」など6点を掲げ、教育予算の大幅増額や、教職員の長時間労働解消、給特法の改正などに取り組む方向性を確認した。

 運動方針の概要はつぎのとおり。

【運動の基調】

▼職場を基礎に、対話から要求を練り上げ、要求を実現する道筋を明らかにする教職員組合の役割を発揮する

▼今こそ、「教え子を再び戦場に送らない」というスローガンを深く捉え直し、戦争の準備・大軍拡・9条改憲に反対し、憲法を生かした教育・社会の実現を目指す

▼「軍拡よりも教育に予算を」の一致点を職場・地域に広げ、教育予算の大幅増額を実現させる取組を地域との共同で進める

▼教職員の長時間労働を解消し、教職員の専門性が生かされ、ゆとりある学校にするための給特法改正と教職員の大幅増を求める運動を職場・地域で広げる

▼教職員と子ども・青年の人権が保障され、生き生きと過ごせる学校づくりを目指す取組を職場・地域で広げる

▼道高教組の取組を全ての教職員に知らせ、組合のメリットだけでなく、つながる・連帯する運動への参加を呼びかけて、組織の強化につなげる

【教職員の働き方が教育政策の焦点】

 およそ50年ぶりの給特法の抜本的改正が政治日程にのぼっている。その背景には、教員不足と教職員の長時間労働が、もはや現行制度では解決できなくなっている深刻な実態がある。この春にも予想される中教審答申を受けて法案が検討され、2025年1月の通常国会に提出されることが見込まれる。

 自民党特命委員会の「提言」などが示す教職調整額の増額や人事評価の強化か、「全教7つの提言」(①教職員定数増②少人数学級③競争教育の見直し④給特法見直し⑤労安体制の確立⑥部活の見直し⑦教職員の声の反映)や、教育研究者有志の署名が決める教職員にも残業代を払う仕組みを設けるかが焦点となる。

 道教委は「学校における働き方改革~北海道アクション・プラン第3期素案」を発表しているが、現状認識が甘いと言わざるを得ない内容だ。それどころか、「必ずしも教員一人ひとりの意識や働き方の変容に結びついておらず」「学校以外が担うべき業務や教員が担う必要のない業務に係る役割分担、教員の負担軽減が可能な業務の見直し・簡素化が十分に進んでいない」ことを列挙しており、学校と教職員、地域に責任を転嫁する姿勢を示すだけで、学校現場の教職員や教育関係者を落胆させる記述である。

「重視する視点」として、「改革を自分事に」「自走するチーム」「地域との協働」を掲げ教職員や学校、地域の責任や覚悟を求めるものであり、教育行政が取り組むべき施策に触れていない。

 12月には「学校に希望を!長時間労働に歯止めを!ネットワーク」が結成され、全教は教職員が学校から一歩出て、子どもや教育のことを語り合う取組として「教育大運動1741」を提起している。

 教職員の働き方問題と合わせて、教育費問題、不登校、学校統廃合、インクルーシブ教育、ジェンダー問題など、あらゆる教育に関わる課題を地域や保護者と考える場をつくり出す運動である。

【組織】仲間づくり

▼組織拡大強化のため、立体的なつながりづくりを軸とした「仲間づくり」により、つぎなる飛躍を生み出す

▽「支部・分会マップづくり」を本部・専門部の協同で行い、次期大会までに組合員現勢の回復を目指す

▽組織化の学習など計画的に行い、組織化、分会オルグを担う組合員を増やす

▽全教総合共済加入者の早期現勢回復、自動車保険の加入者純増を目標に、全ての支部・分会、専門部で新加入者を迎えることを目指す

▽支部の分代として分会レインボーを活用するなど、引き続き持続可能な組織、運動の在り方について議論を進めるとともに、本部・支部・専門部のつながりを強化する

▽各分会は、支部分会代表者会議、あるいは本部分会レインボーに積極的に参加する

▽労働組合に加入していることは、権利や教育に関する学びや人のつながりができる等のメリットだけでなく、職場環境の改善や交渉や平和活動など、他者と連帯するといった助け合いの活動であることを意識しする

▼「学習」「交流」の場づくりの工夫、年間を通した「新採用・期限付総当たり」の追求

▽3~5月を「春の集中月間」とし、各支部で「高教組歓迎会」を開催し、その取組みを「はるがく」「新歓学習会生まれ変わってもせんせいになりたい!?」への参加組織へとつなげる

▽加入グッズを活用し、積極的な「加入の訴え」に取り組み「総あたりキャンペーン」(2000円の助成)は、年間を通して取り組む

▼「つながる」「配る」「声をあげる」活動を通して、高教組の「見える化」を広げる

▽組合員同士の日常的な「声かけ」「つながり合い」を大切にし、困っている仲間を助けあう分会づくりを目指す。また、分会会議の定例化や本部からの発送物の共有化などで、組合員間の情報共有と、取組に対する意思統一を図る

▽職場での職場新聞、組合掲示板の活用、高教組情報・速報・支部ニュース・職場討議資料・SNS・ホームページ・メーリングリスト等による情報共有など、道高教組の取組や考え方を未組織者に大きく広げ、高教組活動の「見える化」に取り組む

▽高教組メールマガジン登録者を増やし、全ての組合員が最新情報を入手できるようにする

▽アンケートや対話の取組を通して、職場の教職員の要求を束ね「職場要求書」提出に取り組み、校長との交渉・懇談を通して、要求の前進を図る

▼連帯と助け合いの職場づくりに向けて

▽政策的に職場の分断が持ち込まれている教育現場において、職場でのコミュニケーションを深めることが求められる。悩みや不安を率直に語り合える民主的な職場づくりに努める

▽民主的な学校運営、創意あふれる教育活動を進めるために、教職員間の日常的で率直な意見交換はもちろん、管理職との対話も重視し、集団的な議論に基づく合意形成に努める

▽職場学習会、歓送迎会、レクリエーションなど、全ての教職員を対象とする多様な「集まる場」を追求する

【教育】憲法と子どもの権利条約が息づく学校づくり

▼憲法と教育の条理に立脚した教育を実現する取組

▽日本国憲法、子どもの権利条約の意義・内容を子ども・教職員・保護者・地域に広げる。個々の生活との接点と日々抱えている課題を大切にし、どの子どもも大切にされる教育制度・政策への転換を求める共同の連動を広げる

▽教員免許更新制に代わる新たな「研修管理」に反対し、教職員の自主的な研修権を守る取組を進める。道教委による教職員への権利侵害と、自主的研修・教育活動への不当な管理統制を許さない組織的な取組を進める

▽人格の完成を目指し、子どもの願いに寄り添える教育課程づくりを、子どもたち、教職員、地域、保護者・教育研発者と共に合意形成を図りながら進める。新学習指導要領やICTの活用をはじめとする諸課題の学習を、学びカフェ、情報交換会、支部教研や地域教研、学校・職場づくり学習会、全道合研などを通して行う

▽全教が提起する「教育大連動1741」に呼応して、教員未配置・教育の完全無償化・高校統廃合・子どもの貧困・BYODによる教育格差など、教育に関する諸課題を保護者・地域とともに考え、参加と共同の学校づくりを進める。民主的な団体と連携し、全道合研をはじめ学習会を計画し、民主的な教育に対する理解を進め、共同の運動を広げる

▽国連障害者権利委員会が日本政府に出した「勧告」を受け、インクルーシブ教育を実現する取組を進める。インクルーシブ教育を、通常教育も含めて「全ての子どもたちに学習する権利、発達する権利を保障する教育」と捉え、高校も含めた全ての学びの場の充実のために学習・討議を深め、認識の共有を進める

▽発達段階や個々の実態に応じて主権者教育を進める。子どもや保護者との合意形成を図りながら丁寧に行うとともに、教育実践を掘り起こし、教育課程全体へ位置付けされるよう、子どもの意見表明権を大切にして、学校で議論しながら取組を進める

▽教育への不当な介入に反対し、子どもたちの思想・信条の自由、良心の自由などを守るとともに、高校生の政治活動の自由を保障する取組を進める。「日の丸・君が代」の押し付けを許さず、憲法19条を立脚点に、子ども、教職員の内心の自由を守る取組を進める

▼教育条件整備と修学・進路保障を求める取組

▽20人以下学級を展望し、国の責任による少人数学級の早期実現、教職員定数改善計画の策定、給付奨学金や無償教育の前進を目指す運動を推進し、「ゆきとどいた教育を求める全国署名」はもちろん、「えがお署名」にも総力を挙げて取り組む

▽道教組や民主団体などとの共同を広げ、ゆきとどいた教育、民主的な地方教育行政の実現を求め、地方自治体・議会・教育委員会への要請行動などの働きかけを進める

▽道教委による「魅力化」を競わせながらの高校再編・統合を許さず、地域の高校を守り育てる運動を進める。道教委の「指針」に対し、20人以下学級を展望することも含め地域の声を反映させる取組を進める

▽特別支援学校の過大・過密・狭隘化の解消を目指し、保護者、関係団体と共同を広げ、特別支援学校設置基準が実効性あるものとなるよう運動を進める

▽通級指導教室の設置、特別支援教育担当教員・SSW・SCの配置など、高校における特別なニーズに応えるための条件整備を求める運動を進める

▽高校生・若者の就職を保障し、労働者の雇用と「8時間働けばまともなくらしができる社会」の実現を目指してワーク・ルール教育の取組を進める

【労働】賃金・労働条件改善を求めて

▼長時間過密労働を是正し、教職員のいのちと健康を守る取組

▽全ての職場で、管理職も含めた全教職員の協力のもと、長時間過密労働の解消を課題として取り組む

・全教「教職員勤務実態調査2022」の結果や統一職場要求書をもとに、超勤解消に向け校長交渉・話し合いを行う

・給特法・条例の矛盾や問題点および全教の給特法改正要求について学習を進める。学校の長時間過密労働を解消するため、全教「教職員勤務実態調査2022」の結果を踏まえ、多くの教育関係者、民主団体や共闘組織、保護者・地域と連帯し、給特法改正と教職員の大幅増員を実現させる大運動を進める

・職場における勤務時間の客観的把握が、使用者の責任によって労働者保護の観点から適正に行われること、持ち帰り勤務や休憩時間中の勤務も含めた正確な勤務実態を記録・可視化するよう取り組む

・これまでの勤務実態の弊害や課題を出し合い、長時間過密労働解消のための合意づくりを進める。報告書等の簡略化、諸会議の精選と効率化、研修参加の必要性の有無、休憩時間の確保など「不要な仕事は減らし、休みを確保する」ことに取り組む

・地域部活動への移行に向けた動きについて、教職員の負担を軽減する観点と、子どもの文化・スポーツ要求に応える観点から議論を深め、交渉・要請などに取り組む

・36協定締結の意義を職場に広げ、労使対等の原則・民主的な手続きを確保するとともに、職場全体の残業規制に位置付けるなど超勤縮減につなげるよう取り組む

・組合員が積極的に衛生管理者になり、労働安全衛生活動の活性化を進めるとともに、長時間過密労働とハラスメントの根絶を目指して、実効ある取組を追求する

▽引き続き「1年単位の変形労働時間制」を学校に導入させないため、管理職も含めた職場内での対話を重視しながら、教職員定数改善、持ち時間数の上限設定、少人数学級推進など抜本的対策を対峙させてたたかう

▽道教委「働き方改革アクション・ブラン」(第3期)の問題点を明らかにし、実効ある働き方改革の実現に向けて道教委との交渉を強める

▼賃金・労働条件改善を求める取組

▽職場を基礎に地域経済を支える賃金権利闘争を官民共同で進める。道労連や道公務共闘に結集し「最賃アクション・プラン」「公共を取り戻す」などの運動に取り組む

▽教職員の専門職性や広域な北海道での勤務実態に見合った賃金・労働条件の改善を求める。実習教員等の2級格付け改悪をはじめとする人事評価制度と賃金・処遇リンクの問題点を明らかにしながら、差別賃金反対・職場に分断を持ち込ませないたたかいを強める

▽雇用と年金の確実な接続を求め、諸課題について当事者や学校現場の実態・要求をもとに交渉等に取り組む。とりわけ、暫定再在用・定年前再任用短時間勤務職員について、希望者全員の雇用および65歳まで働き続けられる勤務条件の確保や、賃金・諸手当の大幅改善など待遇格差の解消を求める取組を強める

▽臨時・非常勤職員の正規教職員との均等待週を求めるたたかいを進める。会計年度任用職員の賃金・手当のさらなる改善をはじめとする諸課題の解決に向け取り組む

▽全ての教職員が、仕事と家庭を両立し安心して働き続けられる労働条件の改善を求めて取組を進める

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道高教組尾張委員長
あいさつに立った尾張委員長

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