道特長総会 四木会長あいさつ 同僚性基づき学校経営を 管理職退職見据え候補者育成も(関係団体 2024-05-14付)
道特長・四木会長
8日にホテルライフォート札幌で開かれた道特別支援学校長会の本年度総会・春季研究協議会における、四木定宏会長のあいさつ概要はつぎのとおり。
新型コロナウイルス感染症が5類へと移行して、昨日で1年が経った。各校では特別な感染対策を取ることなく、学習や行事などの教育活動を行い、本来の教育の目的の達成に近づいたと思う。保護者や地域と共に進める学校教育の姿に戻りつつあるのではないだろうか。
また、教職員の親睦を深める行事を再開し、以前のような活気が戻ってきた学校もあるようだ。本会も、コロナ禍で得られた経験と知見を生かし、本年度は参集とリモートを効果的に組み合わせて活動を進めたいと考えている。
各校とも、始業式・入学式からひと月余りが過ぎ、新入生をはじめ、子どもたちは新たな学校生活にも慣れ、意欲的に学習に取り組んでいると思う。新年度の校内体制も落ち着き、それぞれの教職員が持ち味を生かして、役割や使命の達成に向けて力を発揮するなど、学校の推進力となって活躍されていると思う。各校とも概ね順調な船出となったのではないだろうか。
私は学校経営を「舟モデル」で考えるようにしている。学校は「舟」、学校教育目標は「目的地」、学校経営は「航海」である。教職員は「船員」で、舟に乗るのは子どもたちである。この舟の使命は、子どもたちを安全・安心で確かな航海によって、目的地に確実に送り届けることである。
船長は校長、舟全体をマネジメントするのは副校長や教頭、オールをこぐ船員は教員や寄宿舎指導員、船員を束ねるのは主任や主事、子どもたちや船員の栄養を管理するのは栄養教諭や調理員、子どもたちや船員の健康を管理するのは養護教諭や看護師、舟が順調に動くように管理したり修理したりするのは行政職員である。船長のリーダーシップのもと、全ての船員はそれぞれが有する専門性や強みに基づいて役割を分担して舟を進めるが、この舟を安定して力強く進める上で、外部の支援は欠かせない。予算、物品、人員など、船会社である道教委から示されるもののほか、運営協議会や保護者など、舟の航海を直接支えてくれる方の力も必要だ。
航海は平穏な時ばかりとは限らない。子どもたちを目的地に送り届けるためには、嵐に遭遇して舟が大きく揺れても前に進む必要がある。舟が大きく揺れたり推進力を失いかけて止まりそうになったりした時、船長はリーダーシップを発揮し、全ての船員と協働で早期の安定を図り、動き出すように努力するが、保護者や地域の方の協力を得ることで、より早く安定し、再び力強く前に進むことが可能となる。新年度、皆さんの舟の様子や航海の状況はどうだろうか。
今、学校では、いじめや不登校への対応、体罰の防止など教職員の服務規律、スクールバスの運行や学校給食の安定した提供、医療的ケアの対応、コミュニティ・スクールを生かした学校づくり、施設・設備の老朽化への対応、様々な状況を想定した危機管理、教職員がやりがいと幸せを感じられる働き方改革の推進、そして少人数化や狭あい化への対応と学校の在り方など、実に多くの課題を抱えている。
また、国や道の施策では、学習指導要領の確実な実施、個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実とその実現に向けたICTの活用促進、令和の日本型学校教育の実現、研修履歴を活用した対話に基づく受講奨励、「道教育推進計画」「特別支援教育に関する基本方針」の実現に向けた取組の推進と評価、インクルーシブな学校運営モデル事業や特別支援学校の在り方の検討など、どれも優先度が高く待ったなしの状況だ。
このように、学校を取り巻く課題は多岐にわたり、困難さを増し、複雑に絡み合うなどして、各校が単独で対応しても課題解決になかなか近づかない状況だ。本会は、会員数62人と小さな校長会だが、このことを強みとして、各校が抱える種々の課題にアプローチできると良いと考える。会の小ささは小回りが効くということで、迅速な情報共有と機動力を生かした対応が可能となる。
また、互いの顔が見えるネットワークが機能し、各校長が有する強みを生かして、協働体制で課題に対応することができる。いかに困難な課題であっても、共に立ち向かう仲間がいれば打開の道は見えてくるものだ。今後一層、各支部や各障がい種別校長会、そして道特長全体の組織力を高め、協働力を高め、組織的な対応を推し進めていきたいと考える。
「同僚性」という言葉を聞いたことがあると思う。保育や教育の現場で用いられることが多いようで「職員室内で個人の職務に影響を与える人間関係」と定義している文献もある。同僚性を、生成AIに尋ねたところ「同僚性とは、職場や学校などで同じ仕事をする人々が互いに支え合い、高め合っていく協力的な関係のことを指す」という回答を生成した。
さらに①互いの背景を理解していること②定時出勤・退勤している先生に温かい目を③職場の先生は敵ではない―と語り「同僚性は単なる“同調性”ではなく、互いの尊重と協力を基盤としている。働きやすい環境を築くために、同僚性を大切にしよう」と締めくくった。
社会は、先行きが不透明で将来の予測が困難な時代に突入し、私たち校長も、何を信じて、どこに向かって学校経営のかじ取りをすれば良いのかが判断しにくい状況にある。だからこそ、校長会に所属している者同士が同僚性に基づいて、互助で歩んでいくことには大きな意義があるように思う。
本会は、毎年10人前後の会員の入れ替えの時期に差しかかっている。本年度末には10人の校長が役職定年を迎え、今後数年間はその状況が続く見込みだ。佐古勝利教育指導監がいつも言っているが、後継者の育成は、特別支援学校の安定的な維持に向けた最重要課題である。
このことも各支部や障がい種別校長会が中心となって、組織的に人材育成に取り組むことに意義があるように思う。
本年度末から定年延長と役職定年が始まった。前年度末に校長職を退いた方々は、学校現場で教員として充実した日々を送っているが、校長が日頃から自分自身の働き方にしっかりと目を向け、有用感を持って働ける環境を整えることは、安定した学校経営の実現のためにも、そして本会の安定的な運営を支える上でも重要なことだと考える。
皆さんと共に、ウェルビーイングで持続可能な組織づくりを進めていきたい。
本会は前年度、創立60周年を迎えた。61年目の校長会としては、安定的で持続可能な学校経営と本道の特別支援教育の充実に向けて、校長の資質・能力の向上、校長会の組織強化、後継者の育成に向けて、道教委ならびに特別支援教育センターとの密接な連携のもと、会を挙げて取り組んでいきたい。
(関係団体 2024-05-14付)
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