道高校長協会総会 宮澤会長あいさつ 「育てる」に力入れて 教職員、管理職の協働体制を
(関係団体 2024-05-14付)

北海道高等学校長協会宮澤一会長
北海道高等学校長協会宮澤一会長

 8日にホテルライフォート札幌で開かれた道高校長協会総会(10日付1面既報)における宮澤一会長のあいさつ概要はつぎのとおり。

 本年度も会長職という重責を務めさせていただくに当たり、道教委の示唆や各校長の言葉に真摯に耳を傾け、様々な教育課題に迅速かつ丁寧に対応し、北海道教育推進のため、高校生のウェルビーイングのために最善を尽くす決意である。

 新会員の校長54人を含め、公立私立高校全校長には、道高校長協会の諸活動・運営等に理解・協力を賜ることを心よりお願い申し上げる。

 高校を取り巻く現状は、生成AIを含めたIT化の急速な進化、グローバル化の進展、少子化のさらなる進行など、目まぐるしく変化している。

 先行き不透明で将来の予測が困難なVUCAの時代において、果敢にかつ柔軟に生き抜くための力を子どもたちに育ませることは、学校教育に課せられた重要な使命。その使命を果たすためには、各校を任されている校長が、時代に即した的確な学校経営を行い適切なリーダーシップを発揮することが肝要である。

 また、公立私立を問わず、われわれ一校を預かる校長の仲間として北海道の教育課題に対し、心を一つにして解決を図る体制の構築のために、私自身誠心誠意努力したいと考える。

 4年前に、協会運営の柱として「支える」「備える」「攻める」の三つのSが掲げられ、そのつぎの年には、後進の確保・育成という喫緊の課題に直面したことによって「育てる」が加わり、四つのSとなった。引き続き「4つのS」を継承していくが、本年度は特に「育てる」に力を入れたいと考えている。

 現在、北海道のみならず国レベルでの最も大きな教育課題は、人材不足、人材確保にあると考える。道立高校において、4月当初に前年度は17人、本年度は15人欠員という深刻な事態が生じた。

 また、各都府県でも、教員採用試験倍率が低迷しており、先人たちが「国家百年の計は教育にあり」の精神で築かれてきたわが国の学校教育が衰退していく危機にあることをわれわれ校長は認識すべきである。

 昨年の5月、永岡桂子前文部科学大臣が中教審に「令和の日本型学校教育」を担う質の高い教師の確保のための環境整備に関する総合的な方策について諮問した。そして、8月には中教審の分科会から「教師を取り巻く環境整備について緊急的に取り組むべき施策」の緊急提言があった。

 高校に関しての議論が十分ではないという懸念はあるが、教育行政が動き出した感があり、教職員定数の抜本的見直しや処遇改善について、現場の声を国へ届けるまさしくチャンスの時と考えている。

 教職調整額の引き上げについては実現するようだが、働き方の抜本的改革には、教職員定数の大幅な見直しは必要不可欠と考える。

 全国高校長協会でも、教職員定数改善を求めるべくプロジェクトチームを設置し、文科省へ要望書を提出する動きがある。そこで、道高校長協会としても、全高長を通して国へ強く要望したいと考えており、皆さんから意見・要望等を寄せていただいたことに、心から感謝申し上げる。

 教育行政が本気で教職員の職場環境改善や待遇改善を進めることで、教員離れの歯止めになると考えるが、教員志望者を増やすために学校現場では何ができるか。

 第1に、校長を中心とした管理職がハラスメントのない明るい職場環境の構築に努めること。いじめと同様、ハラスメントと感じられたらそれはハラスメントであり、強い立場の人が弱い立場の人に対する心遣いのある職場にすることが肝要である。

 少なくとも、組織のトップであるわれわれ校長は、私も含めて自戒の念を込めて学校経営にまい進する必要性があると強く考える。

 つぎに、働き方改革における教職員の意識改革および具体的実践。教員としての必須の役割を明確に示しつつ、ワーク・ライフ・バランスを意識した働き方を促すとともに、自校の現状を適切に把握する中で、できることから具体的実践を進めていくことが大切と考える。

 また、道教委が推進する「教員養成セミナー」「みらいの教員育成プログラム」等の取組を学校現場が後押しするとともに、大学生によるインターンシップを推進するなど、教員志望者を増加させる大学との実効性ある連携を行うことも考えられる。

 教育実習生が教員になりたいと思うような学校現場であることが理想であり、それに加えて教育行政の本気度が世間に伝わっていくことで、少しずつでも教師を目指す優秀な人材が増えていくと信じる。

 同時に、学校では同僚性を高めるとともに、校内研修はもとより道教委や道研等による質の高い研修を奨励し、若手を育てることで「教育は人なり」を実践する学校現場に導くと考えている。

 また、管理職の後進の育成、管理職の質の確保についても喫緊の課題。課題解決には、管理職候補の先生方が管理職として働きたいと思えるよう、処遇改善、副校長・教頭マネジメント支援員の配置・拡充および特例任用や再任用時における制度設計等を教育行政に意見具申するとともに、管理職が一枚岩となり活力あふれる姿を先生方に示すことが大切と考える。

 全道各支部で、副校長・教頭の研修会や管理職候補者の研修会が実施されているが、各校長がミドルリーダーへの声がけをするとともに、校長協会会員が問題意識を共有し、道教委と共に真剣に考え解決を図っていくことが肝要であると考える。

 続いて、四つのSにおける「支える」「備える」「攻める」について。各校長が大きな問題に直面し、困った時や悩んだ時に、支部長・ブロック長を中心として、誰一人取り残さない「支える」校長協会、教職員の不祥事や生徒の命に関わるような危機を未然に防ぐことに加え、危機に対して迅速かつ的確に対応するべく「備える」校長協会、そして、教育現場の声を積極的に教育行政に届けるとともに、各校長の学校経営に資するための調査研究にまい進する「攻める」校長協会でありたいと考えている。

 つぎに、前年度から「学校経営」「協会運営」を推進していくキーワードとして示している「協働」と「バランス」について。

 協働について、一つは各校における教職員の協働を大切にすること。そして、各学校における管理職の協働体制の構築を志すことである。

 校長は、副校長や教頭の意欲や資質・能力を高めるとともに、副校長・教頭・事務長を大切な「同士」として意識することが肝要であり、管理職間の強い絆は学校経営・学校運営の肝になると信じる。

 もう一つは、道高校長協会会員の協働体制の構築。各校長が孤立感を感じず、安心感を持って学校経営に当たるために、校長間の太いネットワークを築き、みんなが仲間意識を持てる協会にしていくことが大切であると考える。

 バランスについて、まずはじめに、校長が学校経営を推進する上で、生徒、教職員、地域、保護者、外部機関等をバランス良く観察し全体を俯瞰することが、適切な教育活動の実践や的確な危機管理につながる。つぎに、国や北海道教育全体の動向を注視する中で、自校の教育活動の推進を中心に据えつつ、道高校教育の質の向上のためにも行動するバランス感覚は、校長として大切であると考える。

 最後に、校長協会として、大鐘委員、柴田教育指導監をはじめとした道教委の指導・示唆を仰ぐことと、現場の声を道教委へ的確に意見具申を行うことの両面をバランス良く実践することを私自身大切にしていく所存である。

 結びに「教職は、子どもたちの一瞬から永遠に関わる重要な仕事である」。これは、私が感銘を受けたある教育長の言葉。われわれ校長の職務は、子どもたちの一瞬から永遠に関わる仕事であることに加え、その重要な責務を担う教職員の一瞬から永遠に関わる仕事であると考える。

 われわれ校長一人ひとりが、自らの職に夢と希望を抱きつつ、トップリーダーとしての自覚と誇りを持ち、各高校と北海道教育のさらなる発展のために活躍していくことを心から祈念して、私の所信とする。

(関係団体 2024-05-14付)

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