江別対雁小 単元内自由進度学習 学習意欲向上に手応え アウトプットの場など課題に
(学校 2024-08-30付)

対雁小単元内自由進度学習
対雁小単元内自由進度学習

 個別最適な学びと協働的な学びの充実に向けて、各学校の試行錯誤が続く。江別市立対雁小学校(後藤章夫校長)は5年度から、校内研究として単元内自由進度学習に取り組んでいる。初年度は、算数科を切り口に、2学年ごとにブロックを形成して実践。伸びしろ層や定着層の学習意欲向上に手応えを実感する一方で、アウトプットの場や自走する手だての必要性といった課題も浮かんだ。本年度は全教科に門戸を広げ、児童の自己調整の機会がより多くなる単元デザインの構築を目指している。

 昨年10月に行われた6年生算数科「角柱と円柱の体積」の授業。児童たちは、角柱の体積を求める確認プリントに臨んだ。自力での解決に向けて、教科書や端末を活用し、それぞれが考えた方法で学習。机間指導する教諭に質問したり、児童同士で教え合ったりするなど、積極的に学習内容の定着を目指す児童たちの姿があった。

 同校は5年度、3ヵ年研究の開始に当たって、メタ認知能力の向上に着目。これまでの研究から「主体的な判断や行動に課題が見られる」という教職員の意見を踏まえ、自己決定場面を増やす学習の一つとして自由進度学習の研究を開始した。

 道内における実践例をみると、小規模校で取り組むケースが目立つ。一方で、同校のように児童数600人規模の学校で導入されている例は多くない。従来の一斉学習とは異なり、個別最適な学びと協働的な学びの両立が期待される半面、「学習の遅れ」「教員の負担増」などの懸念があるためだ。

 このため同校では、道外先進校の視察を踏まえ、独自のスタイル構築に着手。

 具体的には―

▽1単位時間で一斉指導・自由進度学習・振り返りを行う「一斉指導類似型」

▽単元の前段で一斉学習し中段以降で自由進度学習を進める「一斉指導前段型」

 ―など部分的に導入するものと、単元全てで取り組む完全自由進度学習の計5パターンを用意した。

◆初年度は算数科で 計算、図形に限定

 初年度は、研究部長を務める茶谷康介教諭が先進事例視察で得た「個人差の大きく出る単元が自由進度学習に適している」という観点から、算数科「計算」「図形」の領域に限定した。

 実施に当たっては、低学年、中学年、高学年のブロックを構成。各ブロックは、一斉指導類似型などをベースに、児童の実態に合わせて授業デザインを検討。同じスタイルに取り組み、より多くの実践・検証を積み上げるよう意識した。

 各教諭は、自由進度学習の導入でガイダンスを実施。児童個々の学習計画表と振り返りシート、単元末のテストで、授業後における理解度の把握を図った。その上で、授業準備の負担軽減や教職員の転出入、次年度以降への円滑な引き継ぎなどを見据えた「授業のパッケージ化」を目指した。

 5年度の実践から、教員らは「伸びしろ層の学習意欲が高まった」「定着層の意欲が大変高かった」「対話や協働的な学びが自然と生まれる場面が随所で見られた」などの成果を実感。一方で「一斉指導類似型では、自己調整を図る視点が生まれにくい」「学習内容のアウトプットの場が必要」「“分かったつもり”の改善が必要」「伸びしろ層が自走できるような手だてが必要」などの課題も見えた。

 児童たちからは「勉強が好きになった」「自分に自信が持てるようになった」「友達と一緒に解決できた」「今までよりも進んで勉強できた」「自分でできた達成感があった」など、自由進度学習を肯定的に捉える意見が多かった。

◆全教科に対象拡大 自己調整機会増へ

 成果と課題を踏まえ、本年度は対象を全教科に拡大。児童たちの実態を踏まえた上で、自己調整の範囲がより大きい単元デザインとなるよう教員間で申し合わせた。

 10月には研究授業を開催する予定。茶谷教諭は「一斉指導は大切だが、一人ひとりの見取りには限界がある」と強調する。自由進度学習は「あくまで教師の引き出しの一つ」と述べ、児童の自己選択・決定能力向上、自己調整能力を育む学びの在り方を突き詰めたい考えを示す。

(学校 2024-08-30付)

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