半導体人材育成へ協力を 熊本県議会・教委が苫工高視察
(学校 2024-08-30付)

熊本県議会・教委が苫小牧工業視察
熊本県側からは半導体を扱う新学科や学習量・クラス数の増加の有無などについて多くの質問が上がった

 【苫小牧発】熊本県議会と熊本県教委が27日、苫小牧工業高校(小山彰博校長)を視察し、同校が半導体関連の人材育成・キャリア教育に関する取組について説明した。5年度に実施したSTEAM教育で半導体産業の人手不足問題を研究した成果を説明し、小中学生から興味を持ってもらえるよう実施した「半導体展」などについて、視察団は「参考になる。今後も同じ課題を持つ者同士協力していきたい」と話していた。 

 熊本県では、半導体の受託生産世界最大手の台湾企業「TSMC」が、日本初となる巨大工場を建設。今後も新工場建設が見込まれているが、半導体の専門人材が不足しており、企業間での奪い合いが激化するなど、人材の育成が大きな課題となっている。

 こうしたことから、最先端の半導体製造工場を千歳市で建設中のラピダス社の本格稼働を見据え、北海道でどのような教育が行われているかを視察に来たもの。ラピダスに最も近い工業高校であり、5年度に半導体の人材育成に取り組んだ苫小牧工業高を視察先とした。

 県議会教育警察常任委員会の中村亮彦委員長ら8人と県教委の白石伸一教育長ら3人、警察本部、議会事務局を含め15人が訪れ、小山校長ら3人が応じた。

 冒頭、中村委員長があいさつ。「TSMCの進出で半導体の人材育成は喫緊の課題となっている。ラピダスも2020年代後半の量産体制を目指しており、人材育成は共通の課題。ぜひ貴校の取組を参考にさせていただきたい」などと述べた。

 続いて小山校長が苫小牧市の立地や産業などを、長田淳教頭が同校の教育の概要を説明。田中俊正教諭が、同校が5年度に取り組んだSTEAM教育について説明した。

 生徒たちは半導体を扱う企業などの協力を得て半導体の製造工程や現状と課題について学習し、一番の課題を「半導体産業の人材不足問題」と分析。「小中学生から興味を持ってもらうことが必要」と考え、4年度から実施しているプログラミング教室に併設し「半導体展」を開催した。

 苫小牧市教委の協力を得て市内の小中学生の保護者に一斉メールで呼びかけてもらい、多数の参加者を確保。ソーラーパネルと充電器などを展示するとともに、シリコンウエハーを顕微鏡でのぞき、半導体の仕組みを体感するなどして、体験型で楽しく半導体を理解してもらった。

 田中教諭は「やはり顕微鏡で見てもらうなどの体験をするとみんな興味を持ってくれた」「進路指導では親の意向が大きく左右することから、保護者にも半導体について興味を持ってもらうことが大切。その意味では半導体展では保護者にも大変興味を持ってもらえた」などの成果を語った。

 続いて意見交換。県側からは「小中学生のうちから教えることが大切と感心した」「ラピダスの稼働に伴い、情報技術科のクラスを増やすなどの計画はあるのか」「非常に頑張っていると感じた。熊本では熊本工業以外の工業高は定員割れが著しく、参考になった」などの声が。

 対して苫小牧工業高では「道教委主催で普通科を含む全道の高校で半導体教室を行っており、半導体とは何かを企業の方から説明していただいている」「どの産業も人材が不足しており、半導体関連だけを増やすことは考えていない」などと答えた。

 また「ラピダスからの求人は今のところあまりないとのことだが、熊本でも最初は大学や高専以上の求人だろうと予想していたが、1、2年で高校に10人ほど求人がくるようになり、昨年は50人にもなった。半導体の学科の新設や学習の拡大の計画はあるか」との質問があり、小山校長は「一校長としては、半導体のみに特化した教育は高校にはなじまないと思う。教科として週1、2時間なら良いが、学科までは考えられないのではないか」などと回答した。

 最後に中村委員長が「小中学生を対象とした取組など大変参考になった。今後も同じ課題を持つ地域として力を合わせていきたい」と謝辞を述べた。このあと校内の施設見学を行った。

(学校 2024-08-30付)

その他の記事( 学校)

建設業の魅力 肌で実感 北見工高 現場見学会

 【網走発】北見工業高校(佐藤靖尚校長)建設科の生徒は4日、開発局網走開発建設部主催の現場見学会に参加した。32人の生徒が工事現場3ヵ所や鹿ノ子ダムを回り、建設業の魅力や開発局の仕事のやりが...

(2024-09-06)  全て読む

野球部が強くなれば 稚内高 グラウンド土入れ

野球部が強くなれば 稚内高 グラウンド土入れ 【稚内発】稚内高校(矢橋佳之校長)で8月上旬、山本建設㈱(稚内)による、野球部グラウンドの土入れ作業が行われた。同社などから4人が参加。土が...

(2024-09-06)  全て読む

道教大等3大学の博士課程 7年度設置が決定 9月中に募集要項発表

 文部科学省の大学設置・学校法人審議会による答申を経て、道教育大学、大阪教育大学、福岡教育大学による共同の博士後期課程「臨床発達教育科学」の7年度設置が決定した。9月中に募集要項を発表し、試...

(2024-09-05)  全て読む

函館高支 地域との協力体制整備へ HKSサポーターズ発足 初会合でCSの重要性確認

函館高支・HKSサポーターズ発足  【函館発】函館高等支援学校(源一広校長)は、学校と地域が協力し合う体制整備を目指し、地域住民や保護者、民間企業らが集う「HKSサポーターズ」を立ち上げた。8月21日、同校で開かれた初会合に...

(2024-09-02)  全て読む

江別対雁小 単元内自由進度学習 学習意欲向上に手応え アウトプットの場など課題に

対雁小単元内自由進度学習  個別最適な学びと協働的な学びの充実に向けて、各学校の試行錯誤が続く。江別市立対雁小学校(後藤章夫校長)は5年度から、校内研究として単元内自由進度学習に取り組んでいる。初年度は、算数科を切り...

(2024-08-30)  全て読む

新理事長に山谷氏就任 学校法人北翔大

浅井学園大山谷敬三郎  学校法人北翔大学の新理事長に23日、北翔大学・北翔大学短期大学部学長の山谷敬三郎氏が就任した。  小柴寛芳前理事長の死去に伴うもので、学長と兼任する。  山谷氏は昭和27年2月13日生...

(2024-08-27)  全て読む

函西高 函西34プロジェクト 夏季休業中に探究活動 生徒の主体的な活動後押し

 【函館発】函館西高校(古御堂徹校長)は夏季休業期間の延長に伴い、生徒の主体的な活動を後押しする「函西34プロジェクト」を立ち上げた。有志教員による提案を踏まえ、生徒の任意参加によって希望に...

(2024-08-26)  全て読む

じもと×しごと考える 檜山北高 企業見学会

檜山北高・企業見学会  【函館発】檜山北高校(山田延彦校長)はこのほど、「じもと×しごと企業見学会」を実施した。15の企業・団体・官公庁が協力。2年生59人が事業所等を訪れ、業務説明や職場見学などに臨んだ。  ...

(2024-08-22)  全て読む

旭工情報技術科が学校魅力化推進 Vチューバー活動展開 ユーチューブに動画投稿等

 【旭川発】旭川工業高校(中島泰彰校長)の情報技術科では、科公認バーチャル・ユーチューバー(Vチューバー)「神楽テクノ」を使って学校の魅力化に取り組んでいる。前年度から開始した取組で、情報技...

(2024-08-22)  全て読む

厚岸翔洋高 学校設定科目に 7年度 LLマリン開設へ 文科指定事業終了後見据え

 【釧路発】文部科学省のマイスター・ハイスクール事業の指定を受けている厚岸翔洋高校(山本十三校長)は来年度以降の事業終了後を見据え、学びの継続性を維持していくために、学校設定科目「LLマリン...

(2024-08-20)  全て読む