教職員の協力を高める学校づくり〈№148〉 改革の本質は主体性にあり 働き方改革を進める学校づくり①
(教職員の協力を高める学校づくり 2024-10-04付)

 学校における働き方改革推進のため、中教審特別部会は前年度、危機的な状況にあり社会全体で取り組むべきだとする緊急提言をまとめ、地域など教員以外への業務の分担に加え、標準を大幅に上回る授業時数を見直すことなどを対応策として盛り込んでいます。

 5年4月に文部科学省が公表した教職員の勤務実態調査の報告では、国が残業の上限としている月45時間を超えるとみられる教員は中学校で77・1%、小学校で64・5%に上り、「過労死ライン」と言われる月80時間に相当する可能性がある教員は中学校で36・6%、小学校で14・2%と、依然として長時間労働が課題となっていることが明らかになりました。

 長時間労働に加え、法律によって教員の残業代は支払われない実態に、マスコミは「定額働かせ放題」などの言葉を使うなど、依然として進まない教職員の働き方改革の現状を取り上げています。

 さらに全国的な教職員へのなり手不足の深刻化により、子どもたちの学力低下を来すとともに、新学期に担任が足りないといった事態にまで陥っている現状にも触れています。

 中教審の特別部会が早急に取り組むべき施策を盛り込み取りまとめた提言では、その重点としている内容として①従来の学校業務の一部を教員以外へと分担し負担軽減を図る②様々な学校行事を重点化し、なおかつそれに係る準備を簡素化する③年間の授業時数の見直し(特に年間授業時数を確保するための余剰時間)④小学校における教科担任制の前倒しによる実施―が挙げられています。

 このように学校の働き方改革を進めることはワーク・ライフ・バランスを図るだけではなく、教育の質を保障し教師のなり手を増加させる手だての一つでもあります。

 私が理解している範囲では、働き方改革実践校の指定を受け、教職員の合意形成を高めながら試行錯誤を繰り返し、残業時間を30時間以下にした日高管内浦河町立堺町小学校。さらに空知管内美唄市立東中学校のDX化による働き方改革の実践は、道内の働き方改革の先進校として大いに参考にできます。

 研修会の折、私への質問内容に、遅々として進まない学校の働き方改革があります。私が「学校の働き改革として、どのように進めていますか」と問うと、ほとんどの学校では勤務時間を問題にします。つまり勤務時間か勤務時間外なのか。さらに行政側がより積極的に進めてほしいなどの意見も聞かれます。

 しかしながら「働き方改革の本質はどこにあるでしょうか」との質問には漠然とした返答しか返ってきません。

 働き方改革の本質とは、従来の働き方や勤務環境で発生している問題やニーズに柔軟に対応し、より効率的で生産的な教育活動を進めるためのものであり、行政頼みではなくそれぞれの学校が主体性を持ち人的・物的資源を活用し、実情に合わせて法令の範囲で臨機応変な対応を促進することにあります。

 働き方改革は行政や管理職など人任せでは改善できません。それぞれの教職員が意識化し改善を進めていくことが最も重要な課題だと理解しています。

 本シリーズでは①授業のデジタル化と業務の一元化・クラウド化②開かれた学校の創造③職場の同僚性の構築―の三つの視点とその根底になるマネジメントサイクルによる教職員参画型のプロセスおよび同僚性について記述します。

(北海道文教大学人間科学部健康栄養学科教授・石垣則昭)

(教職員の協力を高める学校づくり 2024-10-04付)

その他の記事( 教職員の協力を高める学校づくり)

教職員の協力を高める学校づくり〈№151〉 今求められる職場の同僚性 働き方改革を進める学校づくり④

 今号はシリーズ①で触れた開かれた学校の創造、職場の同僚性について記述します。  先に教頭職の業務の軽減について記述します。多忙に多忙を重ねる教頭の様子を見て「校長になりたいと思うが、教頭...

(2024-11-15)  全て読む

教職員の協力を高める学校づくり 〈№147〉 予習重視する振り返り学習 ディープラーニングのすすめ④

 今号は予習と授業を効果的に組み合わせるディープラーニング(深層学習)学習法を皆さんに提供いたします。  実践可能年齢について、人が外界のものを認知する枠組みを「シェマ」と名づけ、それを学...

(2024-09-20)  全て読む

教職員の協力を高める学校づくり 〈№146〉 欠かせない教育DX化 ディープラーニングのすすめ③

 今号はディープラーニング(深層学習)を進める上で欠かせない教育DX化について概説します。  本道でも既にデジタルドリルを導入し学習の効率化に伴う働き方改革の一環や、授業過程上の問いはタブ...

(2024-09-06)  全て読む

教職員の協力を高める学校づくり〈№145〉 他の教科等の学びで活用 ディープラーニングのすすめ②

 前号ではディープラーニング(深層学習)そのものについて概説しましたが、今号から、どのように授業過程を編成し進めるのかを、学習理論によって概説します。  小・中・高の校種を問わず学習指導要...

(2024-08-23)  全て読む

教職員の協力を高める学校づくり〈№144〉 深い学びの先にあるもの ディープラーニングのすすめ①

 私は年間3~5回程度、わが国の教育をリードされている教育関係者や教育学者、教育心理学者との懇談にズームで参加し、社会の進展に伴う教育の変遷や教育課題について、様々な情報交換をさせていただい...

(2024-08-09)  全て読む

教職員の協力を高める学校づくり〈№143〉 熱中症から子どもを守る 学校安全と危機管理意識と遂行力④

 今号では、熱中症に係る危機管理について記述します。  熱中症はかって関東以南の問題でしたが、北海道においても30度を超える状況の長時間化と範囲の拡大、熱帯夜の出現日数の増加といった高温化...

(2024-07-26)  全て読む

教職員の協力を高める学校づくり〈№142〉 法令に基づく危機管理とは 学校安全と危機管理意識と遂行力③

 今号は、学校の危機管理に関する法令に基づく内容について記述します。  学校の危機管理には、災害発生時の避難手順、救助活動への協力、避難所の運営などの災害対応に関する法令、緊急時に迅速に警...

(2024-07-12)  全て読む

教職員の協力を高める学校づくり〈№141〉 教育文化等アップデートを 学校安全と危機管理意識と遂行力②

 今号は、教師の安心や慢心とも言える心理状態や、危機管理意識の低下さらに危機管理の遂行能力の減退について記載します。  まず言えることは、学校管理職やそれ以外のスクールリーダーが、日常から...

(2024-06-28)  全て読む

教職員の協力を高める学校づくり〈№140〉 今、学校は危機の連続下に 学校安全と危機管理意識と遂行力①

 ことしもまた酷暑と言われる時季になりました。北海道といえども教室へのクーラーの設置が求められていますが、マスコミでも昨年、熱中症による児童生徒の救急搬送が社会的ニュースとして連日のように取...

(2024-06-14)  全て読む

教職員の協力を高める学校づくり〈№139〉 男性優位では決してない 女性管理職が創造する学校④

 前回までに女性管理職の優位性および強く望まれる背景を述べました。今回は管理職に就くための課題と対応を記述します。  当然のように、学校管理職は1学級の指導のみならず、学校全体の管理・運営...

(2024-05-24)  全て読む