教職員の協力を高める学校づくり〈№143〉 熱中症から子どもを守る 学校安全と危機管理意識と遂行力④(教職員の協力を高める学校づくり 2024-07-26付)
今号では、熱中症に係る危機管理について記述します。
熱中症はかって関東以南の問題でしたが、北海道においても30度を超える状況の長時間化と範囲の拡大、熱帯夜の出現日数の増加といった高温化の傾向が見られ、これに伴い高温にさらされる延べ時間数が増加しており、日常生活環境における熱中症が大きな健康問題となっています。
近年、学校における熱中症事故は毎年5000件程度発生しています(災害共済給付制度で医療費を支給した件数、独立行政法人日本スポーツ振興センター)。
3年5月に環境省と文部科学省が「学校における熱中症ガイドライン作成の手引」を示しました。熱中症は、高温・多湿な環境下で体温調節機能が十分に機能せず、体温が異常に上昇してしまう状態を指し、暑い環境での活動や長時間の日光暴露によって体内の水分や塩分が失われ、体温が上昇することが原因とされ、めまい、吐き気、頭痛、倦怠感、脱水、意識障害などの症状が現れます。重症化すると、日射病や意識喪失などの深刻な合併症が発生することがあります。
また小学生や中学生の熱中症の発症要因として、一般に小中学生の体温調節機能は成人よりも未熟であり、暑さに対する耐性が低いことがあり、体育の授業など屋外での活動や運動が増えることにより、暑さや日射病のリスクが高まる結果となっています。
さらに適切な服装や帽子を着用せずに直射日光にさらされると、体温が急上昇しやすくなり、長時間にわたる連続した活動や運動が続く場合、適切な休憩が取れないことがあります。十分な休息が取れないと体温の上昇が抑制されず、熱中症のリスクが高まります。
特に小中学生の熱中症対応で心がけたいことは、部活動を含め「無理をしてでも活動に参加しようとする」傾向があることです。教職員が「大丈夫?」と声をかけ、軽度の症状がみられても「大丈夫です」と答えてしまうことがあります。
結果として重篤な状況に陥る事例が全国で多く報告され、前号で記述しました危険回避義務と危険予知義務や、児童生徒の保護監督義務などが法で問われる事態となります。
まず屋内外での活動で心がけたいことは、環境庁と気象庁による熱中症を予防する目的で提案された指標である「暑さ指数(WBGT)」で示されている、気温35度前後は外での活動は全面禁止、31~35度は厳重警戒として児童生徒にとって負担となる運動は中止、28~31度は、小刻みに休憩し水分を補給させ休憩するなどの対処を行い、24~28度であっても運動の合間に積極的に水分を補給するなど留意する必要があります。
学校によっては職員朝会などで確認し、教頭席の後方にある黒板に赤チョークで「熱中症警戒アラート」の情報とともに、屋内外での活動の有無を明記し、教職員へ周知している学校もあります。
さらに組織していただきたいことは、熱中症の緊急事態に迅速かつ的確に応急処置を講じるための学校体制として①熱中症発生時の教職員の役割分担を定め、全員が理解しておくとともに、職員室、保健室および事務室等の見やすい場所に掲示する②緊急時に連絡する消防署、医療機関、校内(管理職、養護教諭、学年主任等)、関係諸機関等の所在地および電話番号などを掲示する③応急手当てや救命処置(心肺蘇生とAEDの使用)等に関する講習を行うなど、実際の対応ができるようにしておく④救急搬送の必要な傷病者が出た場合に備え、各種行事前に現地消防組織、近隣医療機関と連携することを確立しておくことを重視しなければなりません。
〈参考文献〉
▽学校安全と危機管理・三訂版(渡邉正樹、伊佐野龍司、桜井愛子、大修館、2020)
▽リスクコミュニケーション~多様化する危機を乗り越える(福田充、平凡社、2022)
(北海道文教大学人間科学部健康栄養学科教授・石垣則昭)
(教職員の協力を高める学校づくり 2024-07-26付)
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