教職員の協力を高める学校づくり〈№137〉 対人関係能力に高い優位性 女性管理職が創造する学校②(教職員の協力を高める学校づくり 2024-04-26付)
アメリカの未来学者でありAIの世界的権威であるレイ・カーツルワイルは、シンギュラリティ論(GNR論・技術的特異点)について、2030年には人工知能が人間の知能と並び、2045年には人間を超える時代が到来するとして、その進展はわれわれ人類の予見をはるかに超え、収穫加速の法則(一つの重要な発明は他の発明と結び付き、つぎの重要な発明の登場までの期間を短縮し、イノベーションの速度を加速することにより、科学技術は直線グラフ的ではなく指数関数的〈爆発的〉に進歩するという経験則)によって急激な進歩を遂げていると著作で述べています。
英国オックスフォード大学教授のマイケル・オズボーンは、2013年に論文「雇用の未来(The Future of Employment)」で、2050年までにAIによって現在ある仕事の47%が失われると論じ世界中に衝撃を与えました。さらに2017年に論文「未来のスキル(The Future Skills)」では、AIの発展などにより、これからの社会で必要とされるスキルが変わり「戦略的学習力」として、対人関係能力、創造力、学習力などいわゆるソフトスキルの必要性を述べています。
特にここでいう対人関係能力とは、他者との関わりの中で円滑なコミュニケーションを取る能力を指し、児童生徒が社会人としてたくましく生き抜くためや、日常の学校生活や円滑な職場を築くためにも非常に重要な要素とされ、対人能力が高い人は他者の意見や感情を尊重し、適切なフィードバックを与えることができると言われています。
対人関係能力は、自身の考えを認知し、自身の感情を理解し、相手の言葉や状況を察知し共感し好意的に相手と接する能力をいい、君臨的要素の高い過去のリーダーではなく、新時代に求められる管理職の資質や能力を意味しています。
正にこの能力は女性が持つ優位性(男性を否定している訳ではありません)であり、今後、教育界ばかりではなく様々な社会的分野で女性リーダーの進出が求められているゆえんです。
職員室の日常的風景や保護者との面談の場を振り返ってみてください。教職経験の豊富な女性教員が、職場の円滑な人間関係を保持し高めるため、自らの判断で職場のメンターとして、若手や教育活動に不安を持つ教員に対して親身になって相談を受けている光景を目にしたことはありませんか。また読者の皆さんご自身も勇気づけてもらった経験をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
メンターシップ力に優れた女性教員や女性管理職は保護者からの信頼も絶大で、保護者の側に立ち共感し受容的に相談を受けることができます。
このような感情交流(個人間で感情や情報を共有し合うプロセスを指し、言葉や非言語的な手段を通じて行われ、相手とのつながりを深め、理解を促進し、教育業務の遂行や個人的な関係において重要なスキルであり、効果的な感情交流は良好な人間関係の基盤である)は、AIに比して人間のみが保持している重要な優位性と言われています。
(北海道文教大学人間科学部健康栄養学科教授・石垣則昭)
(教職員の協力を高める学校づくり 2024-04-26付)
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