教職員の協力を高める学校づくり〈№135〉 身に付けたい柔軟な姿勢 教師力を高める傾聴と話す力④(教職員の協力を高める学校づくり 2024-03-21付)
今号では、前号で概説した教師に求められる話す力の基本について記述します。
核家族化が進む現代は、家庭や地域社会での教育力が以前よりも低下している反面、前シリーズに掲載した「過剰な苦情や不当な要求をする保護者や地域の方への対応」にあるように、保護者からの教師に対する要求がますます多様化し増加しています。
このような中にあっても教師は児童生徒と教育活動を通して、長い時間接し大きな影響を与える存在であり、「人づくり」という崇高な責務を担っています。教師として話す力を高める第一として、教えるばかりではなく、柔軟さを忘れず時には児童生徒から学ぶ姿勢を持ちたいものです。
教師の柔軟な姿勢は、児童生徒との関係性を改善させる基本であり、適切なコミュニケーションを保ち高めることにつながります。
実例を記述すると、教師の無自覚な長い話は児童生徒の発達段階や学習課題への関心などの影響によりますが、理解への個人差が大きくなり、話の要点が分かりづらくなり、教師が思うほど児童生徒には肝心な内容が伝わりません。
学習指導要領では、児童生徒の学習の主体化を図るためいかに「考える時間」を創設するかがわが国の教育課題とされ、教師が話せば話すほど、児童生徒から自分で考える時間を奪うことになっているとの反省を前提にしています。
教師が説明すること自体を否定するものではありませんが、要点を適切に説明し児童生徒が説明された内容を自分事として捉えられる余裕を持たせるようしたいものです。
そのためには、センテンスが長いと的を絞って聞くことができませんので、フレーズを短く区切るようにして説明します。
つぎに、話す内容を重要な内容ほど児童生徒の立場に立って整理し「〇〇については○〇である」など簡潔にゆっくり、分かりやすく話ができるよう事前準備することです。
特に難易度の高い説明については、複雑な概念を分かりやすく説明できる能力が求められており、言葉遣いは明確で簡潔であり、児童生徒の側に立ち、どう説明すれば理解できるだろうかと検討することが望まれます。
また説明内容によって臨機応変に「先生の話した内容を、近くの人と何が大切か確認してください。近くの人と話をしても理解できなかったことや、聞きたいことがある人は手を挙げて質問してください」と述べます。
つぎに児童生徒の発言には、発言したことを評価し「〇〇について発言してくれてありがとう。○○君の発言を足掛かりに協議を進めましょう」など、誤答であっても肯定的な言葉がけを意識し自信を持たせるようにします。
この際、重視されるのはポジティブボディランゲージです。教師は言葉だけではなく、開かれた姿勢を示し、表情やボディランゲージで児童生徒の発言を受け入れるようにします。さらに児童生徒に意識させたいことは「聞く構え」です。教師の話す力を生かすためには、話す側と聞く側の双方向を重視しなければなりません。
特に①児童生徒へ、視線を教師に向ける②説明内容の意味を考えながら聞く③教師が手を上げたら話し合いを中止し、教師側にいすを向け説明を聞く準備をする―など、日常から聞く側の構えを説明し守らせるようにします。
本シリーズの最後になりますが、教師の聴く力や話す力を高めるためには児童生徒への洞察力や観察力が求められます。学校規模によっては違いますが、言葉にしなくてもちょっとした変化を見極めてコミュニケーションを図り、一人ひとりの様子に目を配る姿勢が必要です。
前記した内容を繰り返し進めていくことで、聴く、話す力が身に付くと考えられます。教職経験年数に関わりなく、自分の実践の振り返りに役立ていただければ幸いです。
〈参考文献〉
▽プロカウンセラーの共感の技術(杉原保史、創元社、2015)
▽コミュニケーションの社会心理学(岡本真一郎、ナカニシヤ出版、2023)
(北海道文教大学人間科学部健康栄養学科教授・石垣則昭)
(教職員の協力を高める学校づくり 2024-03-21付)
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