教職員の協力を高める学校づくり〈№129〉 今求められる毅然たる態度 過剰な苦情や不当な要求への対応⑥(教職員の協力を高める学校づくり 2023-12-15付)
今号は、過剰な苦情や不当な要求をする保護者や地域の方への対応の認識と捉え方について説明します。
世相の変化は教育そのものに大きな影響を与えます。わが国の社会的問題として指摘されている閉塞感が高くメンタルを損なう方々の増加に呼応するように、教育の場においても不登校や重大いじめ問題、さらには保護者への対応が増えています。
しかし「社会の変化に問題がある」と論じても、学校を取り巻く様々な問題は解消・解決しません。自校の児童生徒を、保護者や地域、関係機関とチームとなってどのように育てていくのかは、校種は違えども私どもに課せられた重大な役割です。
学校法務で高名な前高崎市教委教育長で高崎経済大学の講師をされていた飯野眞幸氏は、学校は毎日危機の中にあることを前提に教育活動を進めなければならない。さらに「法令を基調としない学校は隙だらけ」と述べています。
過去より、学校法務と言っても通常の教育活動を進める中では、重大な問題の発生以外はあまり意識されてこなかった歴史があります。しかし生徒指導提要にあるように、課題が生じたあとのリアクティブとしての即応的・継続的対応ばかりに重きを置くのではなく、課題が発生する前に常態的・先行的に行うプロアクティブである課題未然防止を時間軸として、その必要性を打ち出しています。
この内容は保護者対応についても同様であり教育を進めるに当たって、児童生徒の背景には保護者がいるとの意識を持ちながら教育活動を行い、法令を理解、順守する中で対応を進め、予防として適切な対応を図るべき知識とマインド(精神、意識)を持つことが最善の未然防止策と言えます。
学校が法に沿って教育活動や保護者対応を進めているかどうかのチェック機能として、スクールロイヤー制度が創設されました。過剰な苦情や不当な要求をする保護者や地域の方への対応も法令によって適切に進めることが求められており、学校法務についての知識を校内研修などで繰り返し教職員と共に理解を深め、確認していかなければ、児童生徒ばかりではなく教職員自身が互いの立場を守ることができなくなります(教職員の協力を高める学校づくり№112~117「学校のリーガルマネジメント」、令和5年)。
また理不尽と思われる要求には、丸く事を収めようとするのではなく、法によって対処・対応する学校の毅然たる態度が今まさに求められています。
つぎに過剰な苦情や不当な要求をする保護者と一般的なクレームとの違いについて概説します。一般的なクレームの場合は、児童生徒の学習環境や安全への対応など、合理的な問題として感じた場合であり、対話を重ねるたびに建設的に問題を解決するための対話を進めることができます。
さらに一般的なクレームは、特定の問題に関しての問いであり一過性と言えます。しかし過剰な苦情や不当な要求の場合は、根拠が不明確で、軽微な問題に対して過剰なほどに反応し、攻撃的な言葉遣いや態度を取り、継続的に不合理な要求を誇張し繰り返します。
また学校が提示した解決策を拒否し、問題をエスカレートさせる傾向が見られます。さらに過去の自身の傷ついた恨みとも思える発言や、同じような話をそのたびごとに繰り返し、特徴的なのは、ある特定の教師や保護者さらに地域の関係者を非難し、問題の解決に至らない場合が見られます。
過剰な苦情や不当な要求をする保護者や地域の方は一般的な保護者と比較し、クレームを提起する方法や内容が過激であり、問題の解決を妨げる可能性が高く心療内科などに通院されている方もいます。
このような保護者への対応は、学校だけではなく第三者である関係機関や警察などと連携を図ることが必要であり、誠意を持って接すれば接するほど、学校に対して優越コンプレックス(本当は劣等感を抱えているにもかかわらず、それを認めようとせず能力があるふりをする)による優位性(ほかと比べて優れている有利性や強みなど)と操作性(他人を思いどおりに動かそうとする幼児的心理)を高め攻撃的で尊大な態度となり、対応者はやりきれない思いに陥りメンタルヘルスを著しく損ねてしまいます。
〈参考文献〉
▽事例解説教育対象暴力~教育現場でのクレーム対応(近畿弁護士会連合会民事介入暴力・弁護士業務妨害対策委員会、ぎょうせい)
▽実践事例からみるスクールロイヤーの実務(石坂浩・鬼澤秀昌、日本法令)
(北海道文教大学人間科学部健康栄養学科教授・石垣則昭)
(教職員の協力を高める学校づくり 2023-12-15付)
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