高める学校づくり 教職員の協力を 〈№127〉 「善処します」「指導します」 過剰な苦情や不当な要求への対応④(教職員の協力を高める学校づくり 2023-11-17付)
2号と3号は初期対応の基本について記述しましたが、過剰な苦情や不当な要求をする傾向が強い保護者であっても、学校の対応が適切であればそのようなことに陥らない場合が多くあります。
また決してそのような傾向を持たれていない方でも、学校の対応いかんによっては、怒りや不信感を誘発させてしまう場合もあります。
私への相談事例を含め感じるのは、感情的な論調に惑わされ過ぎて、何を願いとしているのか「主訴」を捉えることができず、曖昧な対応に陥るが故、問題となる事例が多いと感じています。
今号と次号は私が作成し研修会で使用した資料をもとに、保護者や地域の方が過剰な苦情や不当な要求をすることがないための具体例を説明します。
具体例1「新型コロナウイルス感染症は5類となったが、学校では手洗い、消毒が徹底されていない。学校ではどのような指導をしているのかと、保護者から攻撃的な口調で電話があった」―。
攻撃的な口調に学校は困惑を深め、該当の保護者をクレーマーと称し具体的対応を示すことなく「善処します」とだけ述べました。果たしてこのような対応で良かったのでしょうか。
残念ながらこれ以降、該当の保護者から学校に対する不平・不満とも取れる電話が繰り返されました。この事例では言い方を受け止め反応するのではなく、保護者が何を願っているのかをよく考えてみると、手洗い指導への意見を求めていることが理解できます。
そうすると「子どもたちの健康・安全にお心配り、また貴重なご意見をいただきありがとうございます」「早速手洗いの様子を把握するとともに、手洗いの大切さを繰り返し説明し、場合によっては給食の前などでは、教師が手洗い場で指導いたします」「また学校の指導だけでは不十分ですので、学校だよりを通して全家庭に呼びかけいたします」「今後とも気が付かれたことがありましたら、何なりとご意見をお寄せいただければありがたく存じます。このたびはありがとうございました」とするとどうでしょうか。
このように具体例1は、まさしく学校への意見を述べる保護者をクレーマーにさせてしまった実例と言えます。
具体例2「〇〇先生の授業は説明ばかりで学習の内容がよく理解できないと、うちの子もほかの子も言っている。このように生徒の口々から不満が出る授業でいいのか。学力が下がったら学校は責任を取れるのか、と厳しい口調で電話があった」―。
管理職が該当の教員を呼び「しっかり授業をするように」など抽象的な助言にとどまり具体的な授業改善は教師任せにし、保護者へ「しっかり授業をするように指導しました」と伝えたところ「しっかりとは、何をしっかりするのだ」「何も授業が良くなっていないと子どもは言っている」などと憤慨され、数人の保護者が来校し、こぞって教科担任を代えるよう管理職に強く要求しました。
この事例でも具体例1と同様に保護者の厳しい口調に反応し、授業づくりそのものを該当の教員に委ね抽象的な伝え方をした結果、教科担任を代えてほしいとの抗議に至った典型的な初期対応の失敗例と言えます。
保護者の主訴を捉えてみると、授業に対する改善要求であることが理解できます。保護者の多くは、実際の授業を日々参観することなく子どもの声を聞いて、事実関係よりも自分の思いで不満を述べます。
保護者には「生徒の側に立つ授業づくりについてのご意見に感謝いたします」「〇〇さんがおっしゃるように、分かる授業づくりは教師の職務であり使命とも言えます」「早速該当の教員の授業を参観し、何をどう改善するのが良いのか明らかにします」「また、担当の教員には児童生徒の意見を聞く機会を持ち、生徒と共に分かる授業づくりを進めるよう努めさせます」「授業づくりの具体的な内容につきましては、ご指摘をいただいた〇〇さんにもお伝えした方がよろしいでしょうか」「お子さまから、授業づくりがどう進んだのか、ぜひお聞きいただき、必要があればあらためてご連絡をいただければありがたく存じます」「良い授業づくりへの貴重なご意見に感謝いたします。ありがとうございました」と結ぶようにします。
保護者からの指摘の聴き方の基本は①ある物事に対して、どう改善を願っているのか②ある物事に対して、どう学校への意見を求めているのか③ある物事に対して、どう謝罪を求めているのか④ある物事に対して、どう対応を求めているのか⑤ある物事に対して、どう不満を述べているのか―など主訴を捉えることです。
〈参考文献〉
▽教育相談(森田健弘・吉田佐治子、ミネルヴァ書房)
(北海道文教大学人間科学部健康栄養学科教授・石垣則昭)
(教職員の協力を高める学校づくり 2023-11-17付)
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