教職員の協力を高める学校づくり〈№128〉 意見等にどう対応すべきか 過剰な苦情や不当な要求への対応⑤(教職員の協力を高める学校づくり 2023-11-29付)
今号は学校に対する一過性の意見であっても、過剰な苦情や不当な要求にエスカレートさせてしまう、いわば保護者の感情論に感情的に対抗してしまい、2次的問題を発生しやすい教師の心理的特徴を先に記述します。
①それは誤解だ②保護者からそのような言われ方をされるのは心外だ③私の言い分を聞いてほしい④私だけが問題なのか⑤そのくらいのことで、なぜそこまで言われなければならないのか―などの心理的傾向がうかがうことができます。
当然このような心持ちで保護者や地域の方の話を聴くと、感情の応酬となり当初の問題よりも教師の対応が問題視されます。またこのような傾向を持つ教師は「過去の経験では…」など自身の経験知に頼り安易に対応し、保護者や児童生徒の側に立つことができず、自分本位で対応しようとする傾向があります。
さらに前号で記述したように、成功VS失敗・改善の経験が教師力を高めますが、失敗・改善の少なさが教師力をゆがめ主訴を捉えることができず、感情的応酬に陥る傾向があります。
保護者対応に当たる教師は、保護者や地域の方の話を洞察、浄化、整理するために①いつ、どこで、どのようなことがあったのか②どのようなことに保護者は不満を感じているのか③不満は誰が持っているのか④どのような問題点があったのか⑤教師や学校にどのような要求をしているのか―を整理しながら聴くようにします。
保護者や地域の方の中には、極めて敏感に反応し特定の思い込みによって否定的観念を持って臨む場合があるため、適切に傾聴する姿勢と対応が求められます。
保護者と教師の関係性の違いによる対応の基本について、つぎの3つに分類できます。
1 ビジタータイプ:教師とその保護者の間にそれほど関係ができていない場合
①相談をいただいたことに感謝する②傾聴する③非には謝罪する④今後の手だてを伝える
2 コンプレイナントタイプ:不平・不満を学校や教師に伝えてくる場合
①伝えてくれたことに感謝する②否定をせず傾聴する③内容を要約し整理する④解決・改善策を後日提示し理解を求める
3 カスタマータイプ:教師との間にある程度関係ができていて、問題状況の解決に協力的な態度を取る場合
①連絡したことに感謝する②傾聴する③非には謝罪する④今後の手だてを協議する―。
またカスタマータイプの保護者には、関係性ができていると教師が勝手に思い込み、安易で軽率に対応すると怒りを買います。
保護者と教師の関係性の基本を3つ示しましたが、タイプが違っても共に重視すべきことは、原因は学校や教師にあることを前提に保護者との対話や目的を明確にし、共通の目標を達成するため、保護者との連携をどのように進めるかにあります。
つぎに保護者からの意見にどう対応すべきか具体例を挙げて記述します。
1 保護者:先生の指導法はおかしいじゃないですか。
「児童生徒の一人ひとりの発達段階や成長を見ながら、その様子に見合った方法で指導しているつもりですが、どのようなやり方が良いとお考えでしょうか。ご意見を頂ければありがたく思います」。
2 保護者:先生は子どもの気持ちを分かっていますか。
「私としては子どもたちに寄り添い、共感的に受け止めるよう努めていますが、そのように感じさせてしまったのであれば、担任として努力が不足していたと反省しています」。
3 保護者:他の先生の時は、このようなことはありませんでした。
「教師として未熟ではありますが、良い学級にしていこうという気持ちは誰にも負けないつもりです。ご一緒に最善策を考えていきたいと思います」。
4 保護者:他の保護者の方もそのように言っています。
「お教えいただきありがとうございます。せっかくの機会ですので皆さんにも私の考えを個別に話します。今後のこともございますから、よろしければ皆さんのお名前を教えていただけますか」。
5 保護者:何度も電話をしていますが、どうして電話に応じてくれないのですか。
「お電話の連絡を受けておりましたが、出張や会議などで機会が合わなかったようで申し訳ありませんでした。お時間をつくっていただいてゆっくりお話ししましょう。お母さんのご都合の良い日を教えてください」。―などと対応するようにします。
〈参考文献〉
▽教育相談(森田健弘・吉田佐治子、ミネルヴァ書房)
(北海道文教大学人間科学部健康栄養学科教授・石垣則昭)
(教職員の協力を高める学校づくり 2023-11-29付)
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