教職員の協力を高める学校づくり〈№130〉 「誠意を見せろ」「責任を取れ」 過剰な苦情や不当な要求への対応⑦(教職員の協力を高める学校づくり 2024-01-12付)
今号と次号は、過剰な苦情や不当な要求をする保護者や地域の方への対応の具体例について説明します。
先に結論を述べると、当然のことながら過剰な苦情や不当な要求をする保護者や地域の方への対応の基本は、冷静さを保ち法令を根拠にし、丁寧に児童生徒の利益を最優先に考え対応することです。
まずは学校へのクレームは全て過剰な苦情や不当な要求をする内容であると思い込まないようにしなければなりません。1回目はクレームを述べる方の話を、本シリーズに示したように聴くことです。聴き方が適切であると過剰な苦情や不当な要求ではなく、一般的なクレームとして対応が可能となります。
しかし「学校として誠意を見せろ」「責任を取れ」など言葉が常とう句(この場合、協議の場面で繰り返し用いられる文句をいう)として使用された場合は、つぎの実例のように屈することなく、法令に準拠し対応します。
「誠意を見せろとはどのような内容ですか。具体的にお話しください」「責任を取れとは何をすれば良いのですか」と聞き返し、内容によって「今お話しされたことは法令に反する言動となり、しかるべき所に相談させていただきます」と告げ「どこに相談するのか」との問いには「しかるべき所です」と述べ、当初は警察などへ相談するとの発言は控えます。
さらに「謝罪文を書け」と言われた場合は、それを作成し署名や押印することなく「書くことはしません」と断り、繰り返し発言するようであれば「恐喝罪として警察に相談させていただきますがよろしいですか」と告げます。
金品を要求された場合は、金額の多寡(多いか少ないか。この場合は金額や物品名をいう)への回答はせず「お支払いできません」(脅迫罪)と発言し、主観を入れず時系列に報告書を作成し警察(派出所ではなく警察署生活安全課)に持参し相談します。
「校長に面会させろ」と要求された場合は「この件は私が担当ですので私が伺います」「校長とお話ししても結論は同じです」と告げ、校長が直接面会に応じないようにします。
この根拠として、校長は学校全体の教育方針や組織を管理し教育の質を高めるための役職であり、保護者や地域の方への対応に追われるとほかの重要な業務に支障を来す恐れがあることと、校長が個別の対応に直接関与することは、中立性や客観性を損なう可能性があるからです。
また過剰な苦情や不当な要求をする保護者や地域の方は、学校での権限者である校長と面会することで、権力関係を不均衡に是正(校長を自分のレベルに引きずり下ろす)しようとする心理によって、不当な要求を突き付ける強い動機となる恐れがあるからです。
しかし校長は不測の事態に備え退勤することなく、校長室で待機する姿勢が必要です。協議中の発言は必要最低限にとどめ、不用意な発言をしないよう言葉を選び慎重に発言し、誤った発言をした場合は、速やかに訂正するようにします。
過激とも思えるような発言にちゅうちょし、不当と思われる要求に対して「学校内であらためて相談してみます」など、相手に期待を持たせるような発言は厳に控え「要求には応じられません」「結論は先ほどお話ししたとおりです」と丁寧に答えるようにします。
学校教育は過去より一般に、警察や弁護士などと程遠い位置にありましたが、今はもはや学校の熱意や誠意だけでは解決できない問題が教育現場で散見されています。特に副校長・教頭や生徒指導部長、学年主任などの学校リーダーは尻込みすることなく「法が学校を守ってくれる」ことを理解し、児童生徒や教職員を守り、円滑な教育活動を進めるためには毅然とした姿勢が求められます。
過剰な苦情や不当な要求をする保護者や地域の方への対応を含めた危機管理の対応は、現代における学校管理職の重要な役割の一つであると再確認していただければと思います。
〈参考文献〉
▽事例解説教育対象暴力~教育現場でのクレーム対応(近畿弁護士会連合会民事介入暴力・弁護士業務妨害対策委員会、ぎょうせい)
▽実践事例からみるスクールロイヤーの実務(石坂浩・鬼澤秀昌、日本法令)
(北海道文教大学人間科学部健康栄養学科教授・石垣則昭)
(教職員の協力を高める学校づくり 2024-01-12付)
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