教職員の協力を高める学校づくり〈№126〉 プラス1の原則と電話対応 過剰な苦情や不当な要求への対応③(教職員の協力を高める学校づくり 2023-11-01付)
今号は前号に引き続き、学校や教師に意見や要望、改善などを求める方の感情をエスカレートさせることがないようにするための基本的対応について記述します。
対応の原則5として、学校が確認した事実や対応方針を具体的に保護者や地域の方に伝えますが、信頼関係を築くために、まず保護者や地域の方の感情をしっかり受け止め、その後必要なことを伝えるようにします。
保護者対応の基本は①事実や経緯を、記録と事実に基づき説明する②学校のこれまでの対応や今後の対応について具体的に説明し、保護者や地域の方の不安の解消に努めながら、学校の対応について保護者等の理解と協力を求めるようにする③特に事実関係を把握し、学校が改善すべき事柄については、率直に謝罪しなければならない―。
しかしせっかくの機会でありながらも、余計に問題をこじらせてしまう原因を学校がつくってしまうことがあります。
その主な事例として①保護者の感情に巻き込まれ冷静さを欠いた感情的対応②管理職による上目目線の言動③責任を転嫁し弁解に終始する対応④学校の立場を一方的に説明⑤根拠に欠ける安易な言動⑥教職員同士や管理職の言動の齟齬―などがあります。
またつぎのような発言は保護者や地域の方の感情を害し怒りを増幅させます。①「ですから、先ほどから何度も繰り返したようにそれは○○です」(聴こうとしない)②「だってそれは○○ですから」(逃げ腰)③「そのようなことを言われても○○です」(逃げ腰)④「そのようなつもりはなかったのですが」(逃げ腰)⑤「それは学校の決まりですから」「今までもそうしていましたので」(否定)⑥「大丈夫ですよ」「何とかなりますよ」(無責任)―などがあります(教職員の協力を高める学校づくり№57~66、令和3年)。
さらに対応に当たっては、相手側の了解を得てプラス1を原則とします。プラス1の原則とは、保護者や地域の方が1人であれば、学校側は2人、相手側が2人の場合、学校側は3人参加します。また事前に学校側の役割として、保護者が2人の場合(1人では不安であり、ほぼ複数で来校します)、司会者(あくまでも主導権を学校に置くためです)1人、意見や訴えを聴き説明する担当が1人、記録する教師が1人となります。
特に記録する教師の役割は重要で、後々「言った、言わない」の水かけ論を防ぐことと、発言を脱線、飛躍させないことに意味があります(記録者の発言例:先ほどは〇〇について□□というお話でしたが、今は△△とお話しされています。この違いはどのような理由でしょうか)。
また同調者を得て数人で来校する恐れがある場合は、あらかじめ「代表者の方〇人での来校をお願いします」もしくは「知人ではなく、ご主人との来校をお願いします」と告げるようにします。さらに私の体験上、重大な案件以外の内容は、密室である校長室ではなく、教師が行き交う職員室や児童生徒の声が聞こえる開放的な教室が良いと思われます(感情的トーンが低下します)。またいすやソファーより、丸いすを使用するほうが長々しい話とはなりません。
対応の原則6として、電話対応について記述します。教職員の電話対応に問題があると、保護者や地域の方の不平・不満が大きくなります。特に保護者の中には、ごく親しい関係の中で電話やメールを使うのと同じ感覚で、学校(教職員)に苦情を言う方も多いため、電話では要件のみを聴き、来校していただき直接苦情の内容を聴くのが大原則です。
電話でのやりとりだけでは、互いの顔が見えず否定的・推測的に相手の発言を深読みし、感情的なやりとりになりがちです。実際に電話による対応により、子どもの当初の問題よりも、電話での教師の発言の言葉の端々を捉えられ、以降の対応に困難を極めた実例が数多くあります。
電話の応対については「お待たせしました。〇〇学校の〇〇です」と名乗り、該当の教師が授業等で不在の場合は「〇〇は授業中ですので、要件をお聞きします」とした上で、話を正確に伝えるためにメモを取る旨を告げ、電話の内容をじっくり聴き通したあと、疑問点や不明な点は聴き返し確認し「〇〇について□□であるとのご意見でよろしいでしょうか」と先方に確認し、名前と電話番号を聞くようにします。
途中「校長を出せ」などの発言に応じることなく「私から責任を持って〇〇に伝えます」と告げ「のちほど電話するようにいたします」と述べ、応じないようにします(別号で、なぜ「校長を出せ」などの発言に応じてはならないのか説明します)。
その後、該当の教師の学年主任や生徒指導部長、管理職に電話の内容を報告します。
〈参考文献〉
▽事例解説教育対象暴力~教育現場でのクレーム対応(近畿弁護士会連合会民事介入暴力・弁護士業務妨害対策委員会、ぎょうせい)
▽実践事例からみるスクールロイヤーの実務(石坂浩・鬼澤秀昌、日本法令)
(北海道文教大学人間科学部健康栄養学科教授・石垣則昭)
(教職員の協力を高める学校づくり 2023-11-01付)
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