教職員の協力を高める学校づくり〈№139〉 男性優位では決してない 女性管理職が創造する学校④(教職員の協力を高める学校づくり 2024-05-24付)
前回までに女性管理職の優位性および強く望まれる背景を述べました。今回は管理職に就くための課題と対応を記述します。
当然のように、学校管理職は1学級の指導のみならず、学校全体の管理・運営を担い、教育に対する使命感と熱意、さらには子どもたちへの愛情が一層期待されますが、数名の女性管理職候補の方から話を聞くと「管理職の仕事など、私にできるでしょうか」「家庭もあり、忙しくなるのが心配です」など先の見えない不安を話してくれます。
私は「今までのご自分の教育活動を振り返ってみてください」「〇〇先生の助言のおかげで、多くの先生が勇気づけられ教育活動を進められたのではないですか」「教職経験の中でうまくいかないことの経験が豊富であるからこそ、その経験を生かし、改善し今があるのではないですか。私(石垣)は、その多様な経験をお持ちである〇〇先生こそが管理職となり、後進の育成を図っていただきたいです」と説明しています。
「家庭もあり―」に対しては、ほとんどの方は漠然とした考えしかなく、具体的内容に行き着いていないと理解しています。ワーク・ライフ・バランスとして「家庭の〇〇については〇〇のようにする」「〇〇については〇〇する」など課題を明確にし、その対応について家庭の協力を得るなどと考えていくと、さほど大きな負担にはならず、むしろ「管理職に就くことを臆していた自分を反省する」などの話をされた方もいました。
つぎに女性の皆さんの意識の中で「管理職は男性」という潜在意識を持たれていませんかということです。管理職は男性優位ではありません。この意識を払拭してください。むしろ時代の変化とともに、女性の管理職登用が教育界の中で当たり前の存在として認知されなければならない時代です。
さらに本シリーズの第1号で記述させていただきましたが、任意の女性管理職の会がそれぞれの管内で存在するはずです。教育行政で行う「女性リーダー研修会」も有意義ですが、むしろ求められるのは任意の会によるニーズに応じた研修会の開催を期待したいところですし、女性管理職ならではの課題や対応、さらに経験年数の豊富な管理職の方からの助言や勇気づけなど互いにネットワークを構築し、女性管理職の会に積極的に参加してはどうでしょうか。
また将来的には女性のみの研修会を異質に感じる方もいますので、組織を再編し男性を交えての研修会に発展させてはどうでしょうか。道内の女性管理職希望者は、いかに女性管理職が求められる時代の到来と述べても低迷しているのが実情です。ネットワークの構築と研修活動は、現段階での女性管理職の孤立を防ぎ、管理職としての勇気を持つ大きな機会であり、場と言えます。
さらに女性管理職の研修会でいくつか提案させていただいていますが、女性がいかにリーダーシップに適しているかとの認識を広め深めるための機会として、いつも「ザ!研修」ではなく、女性のリーダーシップによる成功事例をワールドカフェ方式などリラックスした雰囲気を醸成しながら、互いの交流を深め合うようにしてはどうでしょうか。
さらに研修としては女性の持つ優位性のスキルを、高め発揮するためのトレーニング研修つまり、キャリアアップの機会を持つことやジェンダーバイアス(性別に基づく先入観や偏見のこと)など男女平等を推進する内容の研修会を奨励します。
本シリーズの最後になりますが、あらためて時代の背景とともに女性の管理職の存在がますます求められています。わが国や本道の教育の進展のため、多くの女性教職員の皆さんが管理職を志していただくことを心から願っています。
(北海道文教大学人間科学部健康栄養学科教授・石垣則昭)
(教職員の協力を高める学校づくり 2024-05-24付)
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