教職員の協力を高める学校づくり〈№142〉 法令に基づく危機管理とは 学校安全と危機管理意識と遂行力③(教職員の協力を高める学校づくり 2024-07-12付)
今号は、学校の危機管理に関する法令に基づく内容について記述します。
学校の危機管理には、災害発生時の避難手順、救助活動への協力、避難所の運営などの災害対応に関する法令、緊急時に迅速に警察、消防などへの緊急通報に関する緊急通報システムに関する法令、防災訓練や危機管理計画の策定、避難経路の設定などの学校安全、児童生徒に対する虐待への対応や報告に関する児童虐待法、伝染病の発生時には速やかに報告し、適切な対策を講じることが明記されている感染症対策に関する法令、職員や児童生徒の安全を確保するための学校安全衛生法、これら以外に防災基本法などが制定されています。
特に児童生徒の学校事故における対応の法令による原則について概説します。
一般に児童生徒の事故に関する法令に基づく留意事項はつぎのような内容があります。
①安全管理:学校は児童生徒が活用する施設の整備や安全性を確保するため、定期的な安全点検や必要に応じた修繕、保守作業を求める②事故の予防と対応:学校は日常から事故の予防に努め、事故の発生時は児童生徒の命を守り安全の確保を第一とする責任がある。また事故対応には当然、救急処置を行い消防署へ救急搬送の依頼および学校の設置者である教育委員会、保護者へ事故を報告する義務が生じる③安全教育:熱中症発生時や災害時の避難訓練、交通安全教育など児童生徒へ安全に関する教育の提供が求められる④児童生徒への監督責任:授業中や部活動、さらに各種行事など児童生徒の安全を確保するための監督責任が求められる⑤留意事項の②で一部取り上げましたが、事故発生時や児童生徒の安全が脅かされた場合は、関係機関や保護者に速やかに報告をする義務がある⑥児童生徒の権利と福祉:事故発生時は、何よりも児童生徒の最善の利益を最優先して行動する―義務が原則とされています。
つぎに、裁判の判決事例を根拠につぎの内容を日常から意識し行動していただきたいと思い「安全配慮義務と注意義務」について記述します。
▽危険回避義務と危険予知義務
危険回避義務とは、学校や教育機関が児童生徒に対して安全を確保するために努力する法的責任を指し、学校が予測可能なリスクを最小限に抑え適切な対策を講じることです。
また危険予知義務とは、危険を事前に予測し見抜き、適切な対策を講じることであり、法的な責任を伴います。学習活動の円滑な実施のためには事前に児童生徒の体調の様子を把握し、教職員で共有化し顔色などを複数の教職員で複眼的に声かけをするなど活動前の健康チェックが求められます。
また活動中は教職員で役割分担するなどして、安全確認を図らなければなりません。教育裁判の判例からすると、学校が問われる件数が多いのは事後の健康観察の有無です。集合して単に「活動終了」と告げるのではなく「体調の良くない人はいますか」などの声かけや、健康状況の把握が必要です。
▽児童生徒の保護監督義務
監督義務とは、学校は児童生徒を十分に監督し適切な環境で学べるようにする責任が伴い、活動中の監視、事故の予防、生徒同士の安全な関係の確保を言います。保護責任とは、学校は児童生徒たちを物理的や、いじめ・虐待などの精神的な危険からも守る責任があるということです。
さらに保護監督義務は、学校は児童生徒が緊急事態や災害に遭遇した場合に適切に対応し、安全を確保する責任が法で定められています。
▽保護者への通知義務
保護者への通知義務は、健康状態やけがなどの迅速かつ正確な情報の提供を言います。
また安全上の問題に関する通知では、学校内での安全上の問題や重要な出来事が発生した場合、速やかに保護者に通知することが求められ、これらの義務を怠った場合、学校裁判の判例からすると、法的な責任を学校が問われる可能性があります。
〈参考文献〉
▽学校安全と危機管理・三訂版(渡邉正樹、伊佐野龍司、桜井愛子、大修館、2020)
▽リスクコミュニケーション~多様化する危機を乗り越える(福田充、平凡社、2022)
(北海道文教大学人間科学部健康栄養学科教授・石垣則昭)
(教職員の協力を高める学校づくり 2024-07-12付)
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