教職員の協力を高める学校づくり 〈№146〉 欠かせない教育DX化 ディープラーニングのすすめ③
(教職員の協力を高める学校づくり 2024-09-06付)

 今号はディープラーニング(深層学習)を進める上で欠かせない教育DX化について概説します。

 本道でも既にデジタルドリルを導入し学習の効率化に伴う働き方改革の一環や、授業過程上の問いはタブレット上に個別の学習状況に応じた選択問題を提示し、児童生徒同士、さらに教師との3方向の授業を進め、学習への動機付けはもちろん、ディープラーニングによる学力向上を進めている学校が数多くあります。

 今号では、数年前から前任校でいち早くデジタルドリルなどを導入し、現任校においても市内校長会へ活用の意義を説明し、美唄市教委の理解のもと予算化し、4月から市内一斉に導入するに至った経緯について、教育のデジタル化をけん引している美唄市立東中学校の悪七広仁校長による理解を得て、活用の現状と導入上の課題を概説します。

 前任校ではデジタルドリルをトライアルさせてくれる教育情報会社をピックアップし、リフレクションによって活用後の評価を行い教育教材開発に協力しました。その後、学校が選定したデジタルドリルを活用するため、従来採用していた補助教材などのワークブック等を見直し、保護者負担の軽減を図りながら採用しました。

 日進月歩の進化を続けるデジタルドリルですが、小学校の国語科であれば漢字のはねや書き順などがチェックされ、算数の課題などでは不正解である場合は、過去に学習した単元へナビゲートし学習の振り返りに成果が見られました。

 また文章問題などでは、タッチペンで書き込むことができ、それぞれ回答後、近隣の児童生徒同士が互いに学び合うことができ、学習への興味・関心が高まり自然発生的に対話的学習に授業が発展することができたと述べています。

 さらに教科学習のデジタル化によって各教科の小テストが自動的に採点でき、その場でフィードバックが個々の児童生徒へ配信され、学習内容への理解度が深まる利点が大きいと述べています。

 導入の感想として、特別支援学級では紙ベースの問いには回答に困難を要していましたが、デジタルドリルを採用すると、個人差はあるものの学習へ興味を持って取り組み、適切な回答につながっていると説明していただきました。

 現任校ではタブレットを家庭学習のため自宅に持ち帰らせ活用させていますが、家庭学習の習慣化が進み、学習の定着に役立っているとのことです。結果としてデジタルドリルなどの活用によって前時の振り返りが容易となり、学習事項の定着や応用・発展問題に取り組む生徒が増加していると話してくれました。

 美唄市においては教育委員会の理解を得て、デジタルドリルとしての「ミライシード(協働学習・一斉学習・個別学習、それぞれの学習場面に対応した三つのアプリケーションからなるタブレット学習オールインワンソフト)」の導入がなされました。

 さらに全小・中学校にICT担当の支援員が配属され、教員の授業支援、校内研修、ハードのメンテナンスやソフトのインストール、アカウントの準備や2次元バーコードからログインできるよう一人ひとりのカードを作成、配布し活用できるようにしています。

 また市内のICT担当の支援員の情報交換会を定期的に設け、それぞれのスキルアップにつなげ、教師の働き方改革につながっていると話していただきました。

 課題としては、タブレット活用ルールの徹底とセキュリティーの強化、さらにデジタルドリル一辺倒の授業ではなく、同時に生徒相互と教師とのコミュニケーションを充実させるための有効な活用法を模索しているとのことです。

 私が存じている本州の先進校では、児童生徒の意識化を図るために「学習のねらい」は板書化され、それ以外の内容は全てタブレットと児童生徒および教師とのコミュニケーションの活性化を図りながら授業を進め、個々の思考時間が確保されています。

 つまり説明一辺倒の単に覚える事実認識ではなく、意味認識として学習を進めていました。

 関東圏の友人の教育学者は、もはや従来の「主体的・対話的で深い学び」では時代の変化に対応できない。ディープラーニング型の学習をどう創設するかが、重視されなければならない時代であると、明快に述べています。

(北海道文教大学人間科学部健康栄養学科教授・石垣則昭)

(教職員の協力を高める学校づくり 2024-09-06付)

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