教職員の協力を高める学校づくり〈№145〉 他の教科等の学びで活用 ディープラーニングのすすめ②(教職員の協力を高める学校づくり 2024-08-23付)
前号ではディープラーニング(深層学習)そのものについて概説しましたが、今号から、どのように授業過程を編成し進めるのかを、学習理論によって概説します。
小・中・高の校種を問わず学習指導要領の教科指導では、教科等横断的な学習の必要性が記述されています。この横断的学習がディープラーニングのために重視されなければならない課題と言えます。
教科等横断的学習(cross―disciplinary learning)は、異なる学問領域や専門分野を結び付けて学ぶアプローチを指しますが、カリキュラム論で捉えると、各教科の独自性を保ちつつ、教科間の重複部分を排除する一方、教科間に密接な関係を保ちながら授業を進めることを目的とする融合カリキュラムです。
具体例を挙げるならば、小学校の社会科の内容には地理や歴史、公民が含まれており、このようなカリキュラム構成を言います。
さらに教科の枠を取り払い、各教科の中の類似部分を融合させながら進めることを目的とする相関カリキュラム。具体例としては地理と歴史と公民を関連付けながら学習を進めるそれぞれの類型を言います。
共にそれぞれの教科の持つ特性を組み合わせ、児童生徒が変化する環境に適応し、豊かな視点を持って進めることに意義があり①異なる分野からの知識やアイデアを組み合わせることで、新しい発見やアプローチが生まれる可能性が高まる②一つの分野だけでは解決が難しい問題に対して、異なる学問領域の知識や手法を組み合わせてアプローチすることで、より効果的かつ網羅的な解決策を見つけることができる③異なる分野の知識を統合し、複雑な問題に対処する能力や柔軟性・協調性などのスキルが向上する④現代の職業環境は多様で変化が激しいため、異なる分野の知識を持つことが求められており、横断的学習は新しい分野に迅速に適応し、変化する状況に対処するための柔軟性を提供する―などの意義を見いだすことができます。
具体的には児童生徒が、ある教科等の学びを他の教科等の学びで活用したり関連付けたりすることで学びが深まったり、活用できることを実感できたりするような学びです。
教師にとっては、限られた時間の中で実践の効果を高め、新たな体験や教材の使い方を抑制しカリキュラムのスリム化につながります。学校にとっては、カリキュラム全体で児童生徒を育てる意識を促し、見通しを持った実践へとつながります。
先進的研究を進めている島根県浜田教育センターの教科等横断的な学びの研究である「つなぐ!つなげる!活用する!教科等横断的な学び」のリーフレット、さらに年間の流れを確認するワークシートや、単元や題材を構想するワークシートなどは大いに参考になり、ディープラーニングの切り口として極めて有効なカリキュラム・マネジメントであると理解できます。
またディープラーニングを取り入れた授業を設計する際には、児童生徒の背景や学習目標を明確にし、学習のための前提知識を確認し、必要な基本的学習スキルを理解しているか確認し、その前提に立って学習課題を提示するなど授業過程を意図的に進めるようにします。
(北海道文教大学人間科学部健康栄養学科教授・石垣則昭)
(教職員の協力を高める学校づくり 2024-08-23付)
その他の記事( 教職員の協力を高める学校づくり)
教職員の協力を高める学校づくり〈№151〉 今求められる職場の同僚性 働き方改革を進める学校づくり④
今号はシリーズ①で触れた開かれた学校の創造、職場の同僚性について記述します。 先に教頭職の業務の軽減について記述します。多忙に多忙を重ねる教頭の様子を見て「校長になりたいと思うが、教頭...(2024-11-15) 全て読む
教職員の協力を高める学校づくり〈№148〉 改革の本質は主体性にあり 働き方改革を進める学校づくり①
学校における働き方改革推進のため、中教審特別部会は前年度、危機的な状況にあり社会全体で取り組むべきだとする緊急提言をまとめ、地域など教員以外への業務の分担に加え、標準を大幅に上回る授業時数...(2024-10-04) 全て読む
教職員の協力を高める学校づくり 〈№147〉 予習重視する振り返り学習 ディープラーニングのすすめ④
今号は予習と授業を効果的に組み合わせるディープラーニング(深層学習)学習法を皆さんに提供いたします。 実践可能年齢について、人が外界のものを認知する枠組みを「シェマ」と名づけ、それを学...(2024-09-20) 全て読む
教職員の協力を高める学校づくり 〈№146〉 欠かせない教育DX化 ディープラーニングのすすめ③
今号はディープラーニング(深層学習)を進める上で欠かせない教育DX化について概説します。 本道でも既にデジタルドリルを導入し学習の効率化に伴う働き方改革の一環や、授業過程上の問いはタブ...(2024-09-06) 全て読む
教職員の協力を高める学校づくり〈№144〉 深い学びの先にあるもの ディープラーニングのすすめ①
私は年間3~5回程度、わが国の教育をリードされている教育関係者や教育学者、教育心理学者との懇談にズームで参加し、社会の進展に伴う教育の変遷や教育課題について、様々な情報交換をさせていただい...(2024-08-09) 全て読む
教職員の協力を高める学校づくり〈№143〉 熱中症から子どもを守る 学校安全と危機管理意識と遂行力④
今号では、熱中症に係る危機管理について記述します。 熱中症はかって関東以南の問題でしたが、北海道においても30度を超える状況の長時間化と範囲の拡大、熱帯夜の出現日数の増加といった高温化...(2024-07-26) 全て読む
教職員の協力を高める学校づくり〈№142〉 法令に基づく危機管理とは 学校安全と危機管理意識と遂行力③
今号は、学校の危機管理に関する法令に基づく内容について記述します。 学校の危機管理には、災害発生時の避難手順、救助活動への協力、避難所の運営などの災害対応に関する法令、緊急時に迅速に警...(2024-07-12) 全て読む
教職員の協力を高める学校づくり〈№141〉 教育文化等アップデートを 学校安全と危機管理意識と遂行力②
今号は、教師の安心や慢心とも言える心理状態や、危機管理意識の低下さらに危機管理の遂行能力の減退について記載します。 まず言えることは、学校管理職やそれ以外のスクールリーダーが、日常から...(2024-06-28) 全て読む
教職員の協力を高める学校づくり〈№140〉 今、学校は危機の連続下に 学校安全と危機管理意識と遂行力①
ことしもまた酷暑と言われる時季になりました。北海道といえども教室へのクーラーの設置が求められていますが、マスコミでも昨年、熱中症による児童生徒の救急搬送が社会的ニュースとして連日のように取...(2024-06-14) 全て読む
教職員の協力を高める学校づくり〈№139〉 男性優位では決してない 女性管理職が創造する学校④
前回までに女性管理職の優位性および強く望まれる背景を述べました。今回は管理職に就くための課題と対応を記述します。 当然のように、学校管理職は1学級の指導のみならず、学校全体の管理・運営...(2024-05-24) 全て読む