教職員の協力を高める学校づくり〈№144〉 深い学びの先にあるもの ディープラーニングのすすめ①
(教職員の協力を高める学校づくり 2024-08-09付)

 私は年間3~5回程度、わが国の教育をリードされている教育関係者や教育学者、教育心理学者との懇談にズームで参加し、社会の進展に伴う教育の変遷や教育課題について、様々な情報交換をさせていただいています。

 今号から4回にわたって、一度は耳にしたことがあろうかとは思いますが、教育原理としてのディープラーニング(深層学習)を、教育方法学の理論を足掛かりに授業改善の方策を概説します。

 教育現場の皆さんからは「矢継ぎ早とも思える教育進展に、対応できない」との声をよく聞きますが、それは何も教育界に限ったことではなく、人工知能(AI)の出現と可能性の拡大によって社会の様相に構造的変化がもたらされ、関数加速度的に急激な進歩を遂げていると言えます。

 当然その基礎を学ぶ学校は変化に対応すべきであり、教育内容へのさらなる進展が求められています。その変化に対応すべき原点は、職員室のヒューマンネットワークとも言うべき、職場の同僚性をいかに築いていくのかが大きな課題と言えますが、同僚性そのものの築き方については別のシリーズで記述します。

 ディープラーニングですが、大ざっぱに記述すると「主体的・対話的で深い学び」の発展的学習過程であると理解いただければと思います。またその背景には、急激なAIの発展とDX化などと対比的に、人間の持つ特性や英知を高めることにあります。

 本来ディープラーニングとは、人間が手を加えなくてもコンピューターが自動的に大量のデータからそのデータの特徴を発見する技術のことを言います。

 また内容として人間が使う言語を理解したり、論理的な推論を行ったり、経験から学習したりするコンピュータープログラムなど人間の脳をコンピューターでまねたソフトウエアやシステムであるAIと、コンピューターに多くのデータを反復的に学習させ、パターンを見つけ出す機会学習を言います。

 この場合コンピューターは、学習した結果を用い、人間の脳では処理しきれない大量のデータを迅速なパターン発見や複雑なデータでさえも処理することができるため、非常に有用であると言われています。

 ディープラーニングの機会学習の具体的活用例としては、自動運転の自家用車の開発や医療システムなどの分野の実用化に向けて開発・研究が行われています。

 またディープラーニングは、人間の脳神経回路の構造を模したニューラルネットワークがベースになっています。

 ニューラルネットワークとは、データを受け取る「入力層(input layer)」、データを処理する「隠れ層(hidden layer)」、結果を出力する「出力層(output layer)」の三つで構成されています。

 人間の脳で例えるならば、認知事項(理解した内容)をインプットし、インプットしたデータを三つの層で適切に処理し、その結果をアウトプットするということに通じます。

 しかしここで重要なのはデータの処理方法と言えます。

 つまりインプットした学習事項の事実認識(自然言語処理や情報抽出の文脈で使用される用語で、テキストから事実や重要な情報を抽出するプロセス。意味なく覚える学習と言える)ではなく、意味認識(言語の文や文章から意味や意図を理解するプロセス)として既習の学習内容と関連付けさせながらアウトプットができる学習形態を、人が学ぶべきディープラーニングと言い換えることができます。

〈参考文献〉

▽「分かる」とはどういうことか~認識の脳科学(山鳥重、ちくま新書、2002)

(北海道文教大学人間科学部健康栄養学科教授・石垣則昭)

 本紙連載中の「教職員の協力を高める学校づくり」は、新たな章に入ります。

 テーマは「ディープラーニングのすすめ」。

 急激なAI(人工知能)の発展や教育はもとより、あらゆる分野においてDX(デジタルトランスフォーメーション)化が進む中、それとは対比的に人間が持つ特性や英知を高めることが、今あらためて求められています。

 主体的・対話的で深い学びの発展的学習形態とも言えるディープラーニング(深層学習)は、インプットした学習事項を単に覚えるのではなく、その意味や意図を理解し既習の学習内容と関連付けながらアウトプットすることができる力を養う手法と言えます。

 新章ではディープラーニングの概念やその背景にあるもの、実際の進め方などを、実例を交えて分かりやすく解説します。

 本シリーズは連載4回を予定しています。

(教職員の協力を高める学校づくり 2024-08-09付)

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