道議会質疑 一般質問(9月20日)(道議会 2024-11-26付)
【Q 質問Question A 答弁Answer P 指摘Point out O 意見Opinion D 要望Demand】
【質問者】
▼今津寬史議員(自民党・道民会議)
▼中野渡志穂議員(公明党)
【答弁者】
▼鈴木直道知事
▼山本倫彦総務部長兼北方領土対策本部長
▼北村英則総合政策部長兼地域振興監
▼中島俊明教育長
◆高校の探究学習
Q今津議員 道教委では、道立高校の探究学習の充実のため、4年度からS―TEAM教育推進事業を実施しており、5年度、本事業の一環として実施された探究チャレンジ・ジャパンでは、探究学習の成果を発表するなど、高校生が、地域課題を主体的に解決することの意義について理解を深めていると伺っている。
道内高校においても、本事業を通じて、地域と連携した探究学習が行われていると思うが、本事業のねらい、また、道教委としてこれまでの成果をどのように普及していくのか伺う。
A中島教育長 高校における探究学習について。道教委では、各教科の学習を実社会での問題発見・解決に生かすことを目的として、4年度から、全ての道立高校において、企業等と連携して教科等横断的な探究学習を実施するS―TEAM教育推進事業に取り組んでいる。各高校では、地域の教育資源を活用した体験的な学びなどを行っている。
事業に参加した生徒のアンケート調査からは、9割以上が、問題解決能力や言語能力、情報活用能力が高まったと回答するなど、生徒の学びに向かう意欲の向上や、資質・能力の伸長につながったものと考えている。
さらに、これまで、各学校における探究活動の成果発表の場として、探究チャレンジ・北海道や、道外の高校生も参加する探究チャレンジ・ジャパンを実施しており、本年度はさらに、オンラインを活用し、幅広くアジア地域の生徒も参加する探究チャレンジ・アジアを予定しているところである。こうした取組を通じて、探究活動の成果の普及や本道を支える人材の育成に努めていく。
◆MA+CHプロジェクト
Q今津議員 道教委では、地域と学校が連携協働体制を強化しながら、地域課題に主体的に向き合う人材の育成に取り組む北海道MA+CHプロジェクトを、全14管内に各1校の道立高校を指定校として実施しているが、本事業は、地域と学校が共に学ぶ活動が中心であり、そのための地学協働体制の整備が重要である。
各指定校については、それぞれ地域の実情に応じた地域と学校の連携協働に向けた取組が進められていることと思うが、その進捗状況と本事業を通じて目指す成果について伺う。
A中島教育長 北海道MA+CHプロジェクトについて。各指定校においては、観光や農業などの教育資源を活用して、地域課題解決に向けた、生徒の探究の取組が進められており、先般取りまとめた中間報告では、高校生だけではなく、町民の視野も広がり、町にとってもプラスという地域の声や、地域の実態を少しずつ理解できた、今後の進学、就職に役立てたいという生徒の声が聞かれたところである。
道教委としては、こうした取組を通して学校や関係機関の相互理解が進むとともに、地学協働による持続可能なまちづくりに資する人材の育成といった事業趣旨の理解が進んできているものと考えており、引き続き、地域と学校の連携協働体制を強化しながら、将来にわたって地元に愛着を持って地域課題に主体的に向き合う人材の育成に取り組んでいく。
◆地域資源活用
Q今津議員 文化庁は、各地域の歴史の魅力や特徴を生かして、日本文化を伝えるストーリーとして、本道では計6ストーリーについて認定し、各地域で情報発信や地域振興に向けた取組が行われている。
その中で「カムイと共に生きる上川アイヌ」は、上川町を中心とする12市町が設立した大雪山麓上川アイヌ日本遺産推進協議会が平成30年度に申請し、日本遺産として文化庁から認定を受けたが、認定6年後に当たる本年度の総括評価において、文化庁から再審査とする旨の通知があり、今後、あらためて現地調査を行い、年末までに認定継続の可否を明らかにすると伺っている。
道は、本道における日本遺産を生かした地域振興を推進するため、どのような取組をしているのか、さらに、このたび再審査となっている上川アイヌの取組に対してどのような支援を考えているのか伺う。
A北村総合政策部長兼地域振興監 日本遺産を活用した地域振興について。地域で育まれた歴史や文化、産業などの有形無形の財産を、世代を超えて受け継がれるストーリーとして発信する日本遺産の取組は、地域ブランドのイメージの向上のほか、交流人口や関係人口の拡大に資するものと考えている。
このため、道では、地域振興に向けた貴重な資源である日本遺産の利活用を推進するため、本年度は、江差町において、関係する市や町と連携してPRイベントを開催したほか、日本遺産に関する有識者や先進的な取組を行っている地域の担い手を講師として招き、行政と民間が連携した取組や、ガイド育成などについて、各地の協議会の皆様と情報共有を図るための研修会を開催してきたところである。
「カムイと共に生きる上川アイヌ」の日本遺産については、アイヌ民族の伝承がある大雪山系周辺の景観や儀式など、上川アイヌのストーリーを道主催のPRイベントなどを通じて発信してきたところだが、文化庁の現地調査では、人材育成や民間事業者との連携が不足しているとの指摘があったことから、道としては、こうした情報発信の取組に加えて、地域の体制強化に向けて、関係団体が連携を一層深め、専門人材によって日本遺産を活用した地域づくりが効果的に進められるよう、先進事例の情報共有を図るなど、引き続き、上川地域などの市や町や関係者と協働しながら、各般の取組を進めていく。
Q今津議員 日本遺産と同じく、本道の特色ある地域資源としてジオパークがある。ユネスコ世界ジオパークに認定されている洞爺湖有珠山ジオパークやアポイ岳ジオパークをはじめ、十勝岳ジオパークなど、全道各地に壮大なスケールのジオパークがある。
また、火山を有するジオパークでは防災教育の教材となるなど、ジオパークを地域資源とした様々な取組が全道で展開されている。
来年秋には、日本ジオパーク全国大会が十勝岳ジオパークで開催される。本大会は、全国のジオパーク関係者など約1000人の来場が予想される大規模な大会であり、道内の各ジオパーク推進協議会の連携によって、多くの来場者に本道のジオパークを通じた地域づくりを広く発信できる絶好の機会であるものと考える。
全国大会を開催するに当たって道の支援も必要と考える。所見を伺う。
A北村総合政策部長兼地域振興監 日本ジオパーク全国大会の開催について。道内では、平成23年に洞爺湖有珠山、平成30年にはアポイ岳のジオパークにおいて全国大会が開催されたところであり、本大会の実施を通じて、全国の関係者が一堂に会し、相互の連携を深めるとともに、様々な情報を共有することによって、わが国のジオパーク全体のさらなる質の向上が図られることはもとより、開催地である本道にとっても、道内の取組を全国に発信することができる大変貴重な機会となるものと考えている。
本大会については、ことし7月に、開催地の十勝岳ジオパーク推進協議会から、全道の協議会が加盟する北海道ジオパークネットワーク連絡会議の場で、その概要について説明いただくなど、大会開催に向けた情報を共有してきたところである。道としても、道内のジオパークの魅力を広く発信できる貴重な機会となることから、関係自治体などと連携し、連絡調整や情報発信など、来年秋の全国大会の開催に対し、必要な協力を行っていく。
◆難聴児支援
Q中野渡議員 道内における難聴児の人数は、札幌市を除き、6年1月時点で512人いる。聞こえは発達に大きく影響するため、早期発見・療育が重要である。
特に言語聴覚士による療育や相談対応が増え、多職種連携支援体制の整備が課題となり、難聴児支援センター設置を求める声が強くなっている。
広域な本道に不可欠な難聴児支援センターを、既に中核的に機能している札幌医科大学に設置を検討すべきと考える。所見を伺う。
先般の委員会では、第1期ほっかいどう障がい福祉プランについて、難聴児支援のための中核的機能の確保の取組を進めることとしているとの答弁をいただいた。中核的機能を有する体制整備目標を令和8年までに1ヵ所と示されている。いつまでに中核的機能の確保をしていくのか、併せて知事の所見を伺う。
A鈴木知事 難聴児支援について。国では、難聴児の早期発見、早期療育の推進に向けて、福祉部局と教育部局の連携のもと、専門人材を配置し、難聴児とその保護者への支援や、関係機関・団体等との連携などを行う難聴児支援の中核的機能の整備を推進しており、こうした取組の拠点として、いわゆる難聴児支援センターを設置している都府県があると認識している。
道では、今後、拠点の設置の必要性や在り方などを含め、医療や教育、福祉等の関係機関の方々から意見をいただきながら、ほっかいどう障がい福祉プランに基づく、難聴児支援に係る中核的機能の確保に向けた取組について早期に検討を進めることとし、難聴児やその家族が身近な地域において適切な相談支援および療育を受けることができるよう努めていく。
◆障がい児の意見反映
Q中野渡議員 障がいのある子ども一人ひとりの声に丁寧に耳を傾け、聞いた意見を施策に反映していくことは大変重要なことと考える。知事の所見を伺うとともに、今後どのように進めるのか、併せて伺う。
A鈴木知事 障がいのある子どもの意見反映について。こども基本法の基本理念には、全ての子どもについて、その年齢や発達の程度に応じて意見を表明する機会が確保され、その意見が尊重されると規定をされており、障がいのある子どもたちを含め、一般に声を上げづらい子どもたちについても、適切な配慮や工夫をした上で、丁寧に意見を聞き、施策に反映していくことは大変重要であると考えている。
特に、障がいのある子どもたちは、障がいの種類や程度によって、意見の表明に一人ひとり違った難しさがあることを理解し、対応することが必要であるため、道では、関係団体から、障がいのある子どもたちに意見を聞く際に配慮すべき点として、意見を聞く環境や内容、回答方法などに関する助言をいただきながら、実施に向けた準備を進めているところである。
道としては、子どもたちが安心して意見を表明できるよう、保護者や支援者の方々などと連携して、子どもたちが日常生活を送る施設等に出向いた上で、それぞれの子どもたちの希望や状況に応じた形でコミュニケーションを取り、意見を聞くなどの取組を進め、出された意見を関係部門で共有し、施策に生かしていく考えである。
◆私学助成
Q中野渡議員 全国的に、公立高校との格差をなくし、私立高校の授業料を無償化する動きが広がっているとともに、大学の授業料も無償化へ向かっているところである。私立高校に通う生徒の保護者の負担軽減を図り、授業料の補助の所得制限を緩和すべきと考える。
私学助成に関してどのように取り組んでいくのか、所見を伺う。
A山本総務部長兼北方領土対策本部長 私立高校生への修学支援等について。道では、私立学校の教育条件の維持向上や、修学上の経済的負担の軽減を図るとともに、学校経営の健全性を高め、教育の振興を図ることができるよう、修学支援制度や管理運営費補助金などの充実に取り組んできたところである。
このうち、修学支援に関しては、所得が一定の水準を下回る世帯に対して、国の就学支援金と道の授業料軽減補助金を組み合わせることによって、授業料の負担軽減を図っているところであり、これに加えて、授業料以外の教育に必要な経費の負担を軽減するため、奨学給付金を支給しているところである。
(6面から続く)
道としては、私立高校に通う生徒の皆さんが、家庭の経済的事情に左右されることなく、安心して教育を受けることができるよう、保護者に授業料の負担が生じない実質無償化世帯の拡充や、私立学校の運営に対する財源措置の拡充といったさらなる支援を国に要望するほか、学校関係者も参加する場において、保護者などの意見を伺うなどして、本道の未来を担う子どもたちが多様な教育機会を得られるよう取り組んでいく。
◆不登校対策
Q中野渡議員 不登校の子どもたちへの支援について質問してきたが、昨年の第4回定例会一般質問では、教育長から、各学校におけるスペシャルサポートルームの設置を促進するとの答弁をいただいた。校内教育支援センター、いわゆるスペシャルサポートルームは、自分のクラスに入りにくい児童生徒の校内の居場所であるが、現在の設置状況と併せて、今後、道教委としてどのように取り組んでいくのか伺う。
A中島教育長 校内教育支援センターについて。本年策定した「HOKKAIDO不登校対策プラン」においては、児童生徒が学びたいときに学べる環境を整備する取組の一つとして、校内教育支援センター、いわゆるスペシャルサポートルームの設置促進を掲げており、札幌市を除く道内の公立小・中学校において、校内教育支援センターの機能を持つスペースのある学校の割合は約8割となっている。
道教委では、本年度新たに、校内教育支援センターの設置促進、機能強化を図るための教員加配を15の中学校に措置したところであり、今後は、各種研修会等において、道内外の先進的な事例を積極的に発信するなど、不登校の児童生徒の居場所と教育機会の確保が図られるよう、校内教育支援センターの設置促進に向けた取組を推進していく。
Q中野渡議員 対策プランの進捗状況をしっかりと検証し、実効性を高めるため、外部の専門家による助言も必要と考えるが、誰一人取り残さない学びが保障され、社会的自立が図られるよう、道教委として、不登校対策にどのように取り組んでいくのか、伺う。
A中島教育長 今後の対策について。道教委としては、不登校対策プランが真に効果を上げるためには、学校、市町村教委はもとより、フリースクール等の関係機関との連携による家庭への支援が重要であると考えており、本年度、教育庁内の不登校対策を担当する組織体制を強化し、取組を推進しているところである。
また、対策を進めるためには、外部の専門家の知見も重要であることから、本年度新たに、医療、心理、福祉を専門とする大学教授等から成る北海道不登校支援運営協議会を組織し、プランの進捗状況等の検証や評価を行っているところである。
今後は、各学校が校内研修等で活用できる研修動画を作成し、不登校児童生徒への効果的な支援の在り方などについて普及啓発を行うほか、ネット上の仮想空間であるメタバースを活用した学習支援や居場所づくりなどの取組を通じて、不登校によって学びや支援にアクセスできない子どもがゼロになるよう、不登校対策のさらなる充実に取り組んでいく。
◆がん教育
Q中野渡議員 日本人の2人に1人はがんにかかると推計される中、学校において、がんの予防や早期発見など、がんについて学習することや、保護者に対する情報発信も重要と考える。保健の授業等において活用できる学習教材など、がん教育の充実が重要である。
HPVワクチン接種の保護者への情報発信も含めて、がん教育にどのように取り組んでいくのか、併せて伺う。
A中島教育長 がんに関する学習については、中学校と高校における保健体育の生活習慣病などの予防の単元で、原因や予防等について取り扱うこととされており、さらに、道教委では、児童生徒ががんのメカニズムなどに関して理解を深めることができるよう、本年度新たに、テレビ局や製薬会社と連携し、がんについて学ぶことができる動画教材を作成し、その活用について学校に周知したところである。
また、毎年多くの女性が患っている子宮頸がんの予防につながるHPVワクチンに関しては、啓発ポスターの学校への配布や、道医師会が開催する保護者や教職員向け研修会の周知を行ってきており、引き続き、子どもたちが、がんについての正しい知識や、がん患者などがんと向き合う人々への共感的な理解を通じて、がん予防の重要性を含め、健康と命の大切さを学ぶことができるよう、がん教育のさらなる充実に取り組んでいく。
(道議会 2024-11-26付)
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