道議会質疑 一般質問(9月19日)
(道議会 2024-11-21付)

Q 質問Question A 答弁Answer P 指摘Point out O 意見Opinion D 要望Demand

【質問者】

▼千葉真裕議員(自民党・道民会議)

▼清水敬弘議員(民主・道民連合)

▼武市尚子議員(自民党・道民会議)

【答弁者】

▼鈴木直道知事

▼古岡昇保健福祉部長兼感染症対策監

▼中島俊明教育長

◆デジタル社会 障がい者配慮

Q千葉議員 あらゆる情報がデジタル化されていく現代社会において、障がいのある方々にとっては新たなバリアが生まれる可能性があること、そうした新たなバリアによって情報から取り残される状況が生じ得ることを忘れてはならない。

 障がいのあるなしにかかわらず、等しくデジタル社会の恩恵を被ることができるようにするためにも、道は、この状況をどのように認識し、今後どのように取り組んでいくのか伺う。

A古岡保健福祉部長兼感染症対策監 障がいのある方々への配慮について。道では、障がいの有無にかかわらず、全ての道民が共生する暮らしやすい社会の実現のため、平成30年にいわゆる意思疎通支援条例を制定し、障がいのある方の意思疎通の支援に関する施策の総合的な推進に努めているところである。

 こうした中、日常生活において様々な機器のデジタル化が進む一方で、障がいのある方にとって、意思を伝えにくく、また、必要な情報を得づらい環境が生じている場合があることから、道としては、障がいのある方への合理的な配慮が必要と認識している。

 道では、障がいのある方が日常生活で直面している課題について、定期的に障がい者団体から直接伺う場を設けているほか、福祉、医療をはじめ、建築や経済、交通事業者などで構成している北海道福祉のまちづくり推進連絡協議会において情報の共有を図っているところであり、今後、デジタル化に伴い、障がいのある方が直面している課題についても、こうした場を通じて合理的な配慮を求めるなどして、障がいのある方が障がいのない方と実質的に同等の情報を得られるよう、情報のバリアフリー化の促進を図っていく。

◆医療人材確保

Q清水議員 医療現場では、医師、看護師のコメディカルなどの人材など、地域医療の崩壊を防ぐ取組が求められている。

 このため、中長期的な展望や即効性のある対策など、今後はどのように地域医療を担う人材を確保していくのか、具体の取組と併せて知事の所見を伺う。

A鈴木知事 医療従事者の確保について。広大な面積を有する本道においては、医師や看護師など医療従事者の地域偏在の是正が喫緊の課題であることから、道では、これまで、中長期的な医療従事者の確保対策として、医師や看護師を対象に、卒後一定期間、地域勤務することを返還免除の条件とする修学資金貸付制度を運用しているところである。

 また、本道の子どもたちに、将来、医療職を志向してもらえるよう、医療体験事業など、様々な施策に取り組むほか、即効性のある対策として、医育大学の地域医療支援センターからの医師派遣や、緊急臨時的医師派遣事業のほか、地域応援ナース事業などにも取り組んできた。

 道としては、今後とも、医育大学や医師会、看護協会等の関係団体と密接に連携しながら、より効果的かつ実効性のある施策の推進に努め、地域医療を担う医療従事者の確保に取り組んでいく。

◆教員業務支援

Q清水議員 第1回定例会での答弁で、道教委では、スクール・サポート・スタッフ事業の配置校の決定に関する通知で、各学校の実情に応じ、障がいのある方の積極的な任用について触れていたが、これまでは障がい者の採用実績はないということであった。

 第1回定例会では、当時の教育長から、就労支援機関と連携しながら、障がい者雇用の一層の促進に取り組む旨の答弁があった。現在のスクール・サポート・スタッフにおける障がい者雇用の進捗状況について伺う。

 また、障がい者雇用を増やしていくためにどのように取り組んでいく考えか、併せて伺う。

A中島教育長 障がいのある方の雇用などについて。児童生徒の身近に障がいのある職員がいることは、共生社会に関する自己の考えを広げるなどの教育的意義も期待されるものであり、道教委では、これまで、スクール・サポート・スタッフも含め、学校における積極的な任用について、市町村教委や道立学校に働きかけてきた。

 ことし9月現在、スクール・サポート・スタッフとして、障がいのある方2人を特別支援学校で任用しており、今後は、業務分担上の工夫や職場環境の面での配慮のほか、就労の様子などを任用事例として取りまとめ、学校や市町村教委、就労支援機関に情報提供するなど、学校現場において、より多くの障がいのある方がその意欲と能力を発揮できるよう、雇用の一層の促進に取り組んでいく。

◆子どもの自殺

Q武市議員 10歳から19歳までの死因順位の第1位が自殺となっている国は、G7各国では日本のみであり、自殺死亡率も最も高い数字となっている。本道においても、10歳から19歳までの死因順位の第1位は自殺である。

 知事は、昨年第3回定例会で、教育や保健、福祉、医療の関係機関と連携しながら自殺対策を総合的に推進し、子どものかけがえのない命を守っていくと答弁した。しかしながら、対策の前提となるべき原因分析については、不十分と言わざるを得ない。

 道は来年、北海道子ども基本条例および北海道子ども計画の制定を目指しており、このほど、その骨子案が示された。その中にも、子ども、若者の自殺対策が掲げられている。

 今後、子どもの自殺について、要因分析的観点を取り入れた実効性のある自殺対策にどのように取り組んでいくつもりなのか、知事の見解を伺う。

A鈴木知事 子どもの自殺対策について。令和2年に全国の20歳未満の自殺者数が平成21年以降で過去最多となったことや、若年層の死因に占める自殺の割合が高いことなどを踏まえ、道では、現在取り組んでいる第4期北海道自殺対策行動計画において、子ども、若者の自殺対策を主要な課題に位置付け、重点的に取り組むこととしている。

 こうした中、道としては、子どもや若者が相談しやすいSNSなどを活用した相談窓口を設置しているほか、様々な自殺のリスク要因を抱える子どもに対し、市町村や教育委員会等と連携しながら、学校や家庭環境などへの支援体制の構築に取り組んでいるところである。

 今後とも、道が設置する北海道自殺対策連絡会議などにおいて、有識者からの知見を取り入れながら、子どもが自殺に追い込まれることのない社会の実現に向け、実効性のある自殺対策を進めていく。

◆観光人材育成

Q千葉議員 観光立国・北海道を目指す上で、観光人材の確保は喫緊の課題であり、地元で就職したいという若者たちの希望をかなえていくことは、人口減少対策の上でも大変重要なことである。

 多様な地域からのインバウンド需要など、新たな観光ニーズの高まりに対応する観光の専門家を育成する必要が一層高まっていることなどを背景に、令和4年4月からの新しい高校学習指導要領では、教科・商業に、科目・観光ビジネスが新たに設けられた。

 こうした科目が活用されることを期待する一方で、新しい科目であるがゆえに、経験豊富な教員と蓄積された教育ノウハウによって教育手法が確立されている簿記や情報処理などの伝統的な商業科目と異なり、知識や経験の蓄積不足によって、当面の間、新しい科目である観光ビジネス導入の本来の目的を十分に達成することが難しいのではないかと危惧を抱く。

 新しく設置された科目・観光ビジネスについて、今後どのように取り組んでいく考えなのか、道教委の見解を伺う。

A中島教育長 観光の振興に関する学習について。4年度に施行された高校学習指導要領において、教科・商業に新設された観光ビジネスの科目は、観光資源や観光政策、観光地域におけるマーケティングやマネジメントなど、観光産業全般に対する理解を深める学習であり、道内の公立高校では、より実践的な学びにつなげるため、地元の観光協会、観光関連企業の職員によるワークショップ等や、企業と連携し、マーケティングや誘客など、観光産業に求められる資質・能力を育む探究活動に取り組んでいる。

 道教委では、ことし12月、新たに商業科の教員を対象とした授業等改善セミナーを実施し、観光ビジネスにおける教員の教科指導力の向上を図ることとしており、さらに、観光業に携わる民間講師の方を学校に紹介するなどして、高校生の、観光に関する知識と技術の習得や、観光の振興に取り組む態度を養うなど、地域の活性化に貢献する人材の育成に努めていく。

◆小児慢性 特定疾病

Q武市議員 1型糖尿病は、小児期に罹患した場合は小児慢性特定疾病に指定されている。発症年齢は10歳から13歳までがピークであり、一度発症した場合、現在のところ、臓器移植以外には根治治療はなく、ほとんどの患者は、発症以降、生涯にわたってインシュリン補充療法を続ける必要がある。

 小児期に発症した患者は、20歳までは医療費が支援されるが、20歳になると自己負担することになる。

 医療費の負担を苦に受診を控え、血糖コントロールが不十分となり、合併症を引き起こし、失明や人工透析の導入に至った患者もいるとのことである。20歳に達してからも、何らかの医療費支援が継続されるような枠組みが必要である。

 1型糖尿病に限らず、20歳に到達した小児慢性特定疾病患者の問題は、その疾患の予後や治療法等により支援の必要性や課題などがそれぞれ異なると思うが、生涯にわたってインシュリン補充療法を継続しなければいけない1型糖尿病患者の課題について、道としてどのように対応するか伺う。

A古岡保健福祉部長兼感染症対策監 1型糖尿病患者の方々などへの対応について。1型糖尿病を含む小児慢性特定疾病への医療費助成制度は20歳未満までが対象となりますが、患者の方々の療養は長期にわたることから、20歳に達したあとも、患者本人やその家族が抱える精神的な不安や医療費など経済的負担は大きいものと考えている。

 一方、難病法に基づく指定難病については、年齢要件なく医療費助成が受けられ、対象疾病は、国の審議会の検討を経て、要件を満たしたものが順次追加されており、1型糖尿病についても、直近では平成30年度に検討されたものの、その時点では、指定要件を満たしていないと判断されているものと承知している。

 道としては、小児慢性特定疾病の患者の方々が安心して適切な医療を受けられることが重要と考えており、引き続き、国における審議会の動向を注視するとともに、20歳以上の患者も必要な支援が受けられるよう、難病法に基づく施策との一体的な検討も含めて、国に要望していく。

◆医療的ケア児

Q武市議員 現在、特別支援学校はもとより、小・中学校等においても、医療的ケアを必要とする子どもたちに対して、看護師の配置など、必要な措置が講じられ、安心して通学できる環境が整ってきたことは大変素晴らしいことと感じている。

 様々な病気と向き合いながら生活する子どもたちが、より安心して学校生活を送るためには、医療と連携した教育環境を整えることが非常に重要であり、小・中学校等においても、教員と看護師の協力体制があって初めて子どもたちの支援が充実すると考える。

 学校における医療的ケア児への支援体制の整備に向け、どのような取組が行われているのか、また、さらに支援を充実させていくためにどのように取り組んでいくのか、教育長に伺う。

A中島教育長 医療的ケア児への支援について。道内の公立学校で令和5年度に医療的ケアを必要とする児童生徒が通学する学校は106校あり、160人の看護師の方が配置されるなど、医療的ケア児が安心して学べる体制整備が進んできている。

 道教委としては、学校において、看護師と教員が相互の緊密な協力のもとで連携しながら医療的ケアを行えるよう、研修の充実や、医療的ケアに精通した医師による巡回相談の実施など、教育と医療の両面から支援を行ってきている。

 今後は、特別支援学校で試行的に実施している校外学習における夜間の支援など、医療的ケアの一部を外部に委託した場合の体制整備の在り方等を検証し、その結果を全道の学校に周知するなど、引き続き、小・中学校や高校を含む全ての学校で、医療的ケア児とその家族が安心して学校生活を送ることができるよう、医療的ケアによる支援体制のさらなる充実に努める。

◆人権教育

Q武市議員 ハンセン病やアイヌ民族の問題など、社会における差別の問題は深刻であり、学校教育でも様々な形で差別解消に向けた教育に取り組まれているものと思う。

 道立高校における差別解消に向けた人権教育をどのように充実させていくのか、教育長の見解を伺う。

A中島教育長 高校における人権教育について。各道立高校では、全ての生徒が、公民科の科目・公共において、個性や多様な考え方、生き方を尊重できるよう、外国人、障がい者、LGBT等に対する差別や偏見の解消など、現実社会の諸課題と関連づく具体的な事例を通した学習を行っており、さらに、一部の地域においては、高校と法務局が連携し、人権擁護委員を講師として招いた講座を行うなど、人権に関する意識の高揚や理解の深化を図っているところである。

 道教委では、人権問題に対する正しい知識を広めることを目的として、知事部局と連携して行っている人権啓発活動地方委託事業における出前講座の事例について、本年度発行する教育課程編成・実施の手引きに新たに掲載することとしており、今後においても、学校の教育活動全体を通じて、生徒が人権を尊重し、差別のない、より良い社会を実現しようとする態度の育成につながるよう、人権教育のさらなる充実に努めていく。

(道議会 2024-11-21付)

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