道議会質疑 一般質問(9月17日)(道議会 2024-11-19付)
【Q 質問Question A 答弁Answer P 指摘Point out O 意見Opinion D 要望Demand】
【質問者】
▼白川祥二議員(北海道結志会)
【答弁者】
▼鈴木直道知事
▼中島俊明教育長
◆人口減少対策
Q白川議員 ことし1月1日現在における道内の日本人人口は、前年比5万6603人減の503万9100人と26年連続で減少、12年連続で減少数が全国最多となっており、外国人を含む総人口は、都道府県別で福岡県を初めて下回り、全国9位に後退した。
市町村では、札幌市が2年前から人口減少に転じ、昨年は道内最多の4800人の減少で、次いで、函館市、旭川市と4000人台が続いており、一方で、人口増加は南幌町の222人と千歳市の55人の増となっている。
総人口の減少率や社会減少率、老年人口の割合が全国一の市区もあり、著しい偏りが顕在化している。
道として、人口減少をどのように認識し、今後どのように対策を講じていく考えか、知事の所見を伺う。
A鈴木知事 人口減少問題への対応などについて。道ではこれまで、北海道創生総合戦略を策定し、戦略の推進と併せて市町村戦略への支援を行い、本道の地域創生に取り組んできたところだが、人口の増加や、減少の緩和が見られる市町村が見受けられるものの、全国を上回るスピードで人口減少が続いており、女性や若年層の転出超過といった課題を抱え、依然として大変厳しい状況にあるものと認識している。
道としては、人口減少問題は、わが国最大の戦略課題であり、道政にとっても最重要課題であるとの認識のもと、引き続き、全国知事会等とも連携し、必要な対策を国に求めるとともに、人口減少の緩和と人口減少社会への適応の観点を踏まえ、次期創生総合戦略の策定に向けて検討を進め、一人ひとりが豊かで安心して住み続けられる地域の実現を目指して、実効性のある施策を展開していく。
Q白川議員 このほど策定された北海道総合計画の中でも、石狩振興局管内へのさらなる人口集中が懸念されており、過度な人口集中を緩和し、地域からの人口流出を抑制していくことが必要となると、かなり踏み込んだ認識を示しているところであり、札幌圏への人口集中を抑制するための中核都市の人口ダム効果は重要となる。
地域からの人口流出抑制策を具体化するに当たって、各圏域の中核都市の人口のダム機能がどのように維持されているのか、あるいは、弱まっているのかを詳細に分析し、それぞれの都市機能を検証し、その上でそれらの状況を基本政策や連携地域別政策展開方針に反映すべきと考える。知事の所見を伺う。
A鈴木知事 連携地域ごとの政策展開などについて。道が第2期北海道創生総合戦略の検証の中で、道内6つの連携地域別の人口動態等の分析を行った結果、各地域から札幌圏への人口移動と比較すると、札幌市から東京圏への移動数は相対的に少なく、本道全体では札幌市が道外への人口流出を抑えていることや、いずれの連携地域でも域内の中核都市へ転入する動きがあることなどが明らかになったところである。
道としては、こうした分析結果を踏まえながら、本年度策定する次期連携地域別政策展開方針において、中核都市を中心とした広域的な施策の展開に向けて、連携地域の特性や資源などを生かした基幹産業の担い手確保対策や、地場産品のブランド化といった若者の地域への定着に向けた取組を盛り込むなど、多様な主体と連携、協働し、誰もが将来にわたって安心して住み続けることができる持続可能な地域づくりに取り組んでいく。
◆外国人就労
Q白川議員 国はことし6月、外国人受け入れの拡大を目指して、途上国の技術移転を目的とした技能実習制度に代わって、労働力不足解消のため、人材確保を目的とした在留資格(育成就労)を創設する改正入管難民法を成立させた。同じ業務分野で職場を変える転籍を容易にして、特定技能につなげることによって、長期の在留、永住をも可能とし、外国人が日本で働き続けられる制度である。
育成就労制度は、日本の労働力不足を補うための事実上の移民政策の一環として、人口減少対策として有効なものと考えるが、知事として本制度をどのように捉えているか、所見を伺うとともに、今後、本道における外国人労働者の確保に向けてどのように取り組んでいくのか伺う。
A鈴木知事 外国人材の確保について。今般の育成就労制度の創設は、海外との人材獲得競争が激しさを増す中、外国人材に選ばれる国となるよう、人権保護や育成といった観点などから現行の技能実習制度を見直したものであり、人口減少によって深刻さを増す人手不足対策に資するものと考えている。
一方、本制度では、転籍の制限緩和が予定されており、今後、外国人材の都市部への集中が加速することが懸念されることから、制度改正に向けて設置された国の有識者会議において、私から地方の人材確保対策の必要性について提言を行ったところである。
国においては、現在、こうした視点も踏まえながら、具体の制度設計が進められているところであり、道では、本年度から、外国人材の受け入れ環境整備に向けたモデル事業を実施し、地域の実態把握に努めながら、人手不足が深刻化する地域の実情が育成就労の制度構築に確実に反映されるよう、引き続き、国への働きかけを行うとともに、賃金の比較だけでは得ることのできない、本道で働き、暮らすことの魅力や価値を国内外に発信するなど、外国人に選ばれ、働き暮らしやすい北海道の実現に向けた取組を推進していく。
◆ケアラー支援
Q白川議員 6月、改正子ども・若者育成支援推進法が成立し、ヤングケアラーを定義して、自治体の対応格差の解消を目指すとしているが、道内でヤングケアラーなどの支援に関する条例を定め、相談体制づくりや啓発活動を推進しているのは6市町にとどまっている。未整備の市町村は、支援の必要性が職員に広く共有できていないなどとしており、ケアラー支援の体制強化が求められている。
道として、現下の状況を踏まえ、今後どのように対策を講じていく考えか、所見を伺う。
A鈴木知事 ケアラー支援の取組について。ケアラーの方々を孤立させることなく、適切な支援につなげていくためには、ケアラー本人やその家族をはじめ、多くの方々に支援の必要性を理解いただくことはもとより、相談の場の確保や、ケアラーを支援するための地域づくりを進めていくことが重要である。
このため、道では、これまで、道内各地域でケアラーに対する理解促進のための普及啓発やケアラー支援に携わる方々への研修会を開催するほか、関係者間の連携強化に向けた助言等を行うアドバイザーを派遣しているところである。
また、本庁および振興局の職員が直接出向き、地域の実情に応じた取組が進むよう働きかけを行うなどしているところであり、今後とも、こうした取組を通じ、全ての市町村で相談支援体制の構築と窓口の明確化が図られるよう取り組んでいく。
◆子ども政策
Q白川議員 先日、北海道こども基本条例の骨子案が示されたが、国の法律や指針などに沿った内容となっており、道独自の内容がうかがえないものとなっている。
知事は、ことし2月の道政執行方針の中で、道の政策を総動員しながら、妊娠から子育てに至るまでの支援に取り組むと述べた。こどもまんなか社会の実現に向けて、知事は強い決意で挑むつもりだと思うが、その思いを条例にどう反映しようとしているのか、伺う。
A鈴木知事 子どもに関する新たな条例について。本道におけるこどもまんなか社会を実現するためには、子どもたちの声をしっかりと聴き、社会に参画していると実感できる環境をつくるとともに、社会全体で子どもたちの育ちを支えることが重要との考えに立ち、法の規定に加えて、学校関係者や子ども・子育て支援団体などの子どもに関わる様々な関係者の方々が果たすべき責務、役割や、子どもの社会参加などについて、骨子案に盛り込んだところである。
条例の検討に当たっては、道議会での議論や審議会に加えて、子どもたちの意見をしっかりと聴く必要があると考え、現在、道内の小学生、中学生、高校生から直接意見を聞く取組を行っているところであり、子どもたちから出された意見を受け止め、条例への反映について検討することとしている。
道としては、新たな条例によって、本道の全ての子どもたちが、置かれた環境にかかわらず、健やかに成長でき、さらには、誰もが安心して子育てができるよう、しっかりと検討を進めていく。
Q白川議員 少子化の流れを変え、人口減少を食い止めるためには、制度や施策の実施だけでなく、意義や施策の目指す姿を道民に分かりやすいメッセージで伝えることも重要という知事の思いを、道民に向け、道独自の条例としてメッセージを発信することが、人口減少を食い止め、少子化対策に資することとして重要と考える。あらためて、条例制定に向けた知事の決意を伺う。
A鈴木知事 子どもに関する新たな条例について。私としては、本条例の制定によって、本道の子どもたちが将来にわたって幸せな生活を送ることができる、こどもまんなか社会の実現を目指すという道の基本的方向性を、道民の皆さんに分かりやすいメッセージとして発信したいと考えている。これによって、様々な環境に置かれた子ども一人ひとりを大切にし、その成長を後押しするとともに、道民誰もが安心して子育てができる社会を実現できるよう、しっかりと検討を進めていく。
Q白川議員 国は、6月に合計特殊出生率を発表し、令和5年は全国平均の1・20に対し、道は1・06で、東京の0・99に次ぐ全国ワースト2という結果だった。道は、その要因として、経済的な不安定さ、仕事と子育ての両立の難しさなど、個々人の結婚や出産、子育ての希望の実現を阻む様々な要因が複雑に絡み合っていると分析している。
また、政府が掲げる異次元の少子化対策の一環として、6月に少子化対策関連法が成立している。知事は、本道の現状をどのように受け止め、少子化対策をどのように施策として講じていく考えか、所見を伺う。
A鈴木知事 少子化対策について。少子化の進行は、経済活力の低下や働き手不足、子ども同士の交流機会の減少など、地域の社会経済に甚大な影響を及ぼすことが懸念されることから、少子化対策は、本道にとって一刻の猶予も許されない、待ったなしの課題であると認識している。
こうした中、国は、少子化はわが国が直面する最大の危機であるとして、ことし6月、児童手当制度の拡充や、就労要件を問わず柔軟に保育所等を利用できるこども誰でも通園制度の導入など、経済的支援や子育て支援策の抜本的強化を図るため、子ども・子育て支援法を改正したところである。
道としては、改正法に盛り込まれた施策を着実に実施するとともに、多子世帯の保育料無償化や子どもの医療費助成など、各般の施策を市町村や関係団体等と連携しながら進めていく。
また、少子化の流れを変え、人口減少を食い止めるためには、制度や施策の実施だけではなく、その意義や子ども施策の目指す姿を道民の皆さんに分かりやすいメッセージで伝えることも重要であり、新たな条例制定や、こどもファスト・トラックの取組など、社会全体で子ども・子育て世帯を応援する機運を高めていくといった社会の意識改革を同時に進めることで、希望する若い世代の誰もが、結婚や子どもを産み育てることができる北海道づくりに取り組んでいく。
◆男女格差解消
Q白川議員 世界経済フォーラムが2006年に初めて公表した、男女間の格差を示すジェンダーギャップ指数は、1に近いほど格差が少ないとされているところ、2006年段階で日本の数値は0・645で115ヵ国中80位、ことしの数値は0・663で146ヵ国中118位と低迷している。
国勢調査によると、道内は、他府県と比べて、民間企業における役員、管理的公務員に占める女性の割合が低いなど、いまだ男女間で様々な格差、いわゆるジェンダーギャップが生じている。
本道におけるジェンダーギャップをどのように認識し、今後、その解消に向けてどのように取り組むのか、所見を伺う。
A鈴木知事 ジェンダーギャップ解消に向けた取組等について。道内は全国に比べ、女性公務員の管理職の登用や企業等の管理的業務に占める女性の割合が低い状況にあり、背景には固定的な男女の役割分担意識などが根強くあるものと認識している。
このため、私を含め、官民のトップで構成する北の輝く女性応援会議において、講演や意見交換等を通じてアンコンシャス・バイアスの解消に取り組むとともに、本年度、内閣府との共催でシンポジウムを道内で初めて開催し、女性の活躍推進に資する好事例をセミナーや動画配信などを通じて道内企業や市町村に横展開していくなど、男女間の様々な格差の是正に向けた取組を進めている。
道としては、今後も関係機関や団体と連携しながら、ジェンダーギャップを解消し、誰もが性別に関わりなく、その個性と能力を発揮できる社会の実現に向けて取り組んでいく。
◆野外教育
Q白川議員 道では、キャンプや登山などの青少年の野外での自然体験、子ども会などの各種団体のリーダー研修やキャンプ事業、ネーチャーゲームやレクリエーションなどの親子で一緒に四季を感じる自然体験、障がいのある方も誰もが利用できる環境の中でのスポーツや自然体験などの活動を行っている。
特に、道立青少年体験活動支援施設条例に位置付けられる道内6ヵ所のネイパルでの自然体験活動は、様々なメニューをそろえ、参加者からも非常に高い評価を得ており、今後も本道の野外教育にとって欠かすことができない。
本道の社会教育活動における野外教育の重要性とその認識、また、利用者の減少や施設の老朽化が進む中、今後のネイパルにおける取組の方向性について、教育長の所見を伺う。
A中島教育長 野外教育の重要性などについて。野外教育は、自然の雄大さや神秘性、厳しさから得られる感動や驚きの体験、非日常的な自然の中で困難を乗り越える体験が、青少年の創造力やチャレンジ精神、他者と協働する能力など、社会を生き抜く力として必要となる基礎的な能力を養う有効な教育活動であると認識している。
道教委では、これまでも、計画的に施設の改修等を行うとともに、周辺の自然環境や教育資源を生かした体験活動プログラムを用意するほか、研修や会議、合宿など、青少年に限らず、道民の皆さんの多様な目的に応じたネイパルの利用促進に努めてきた。今後は様々な世代が集い、学ぶ拠点となるよう、野外教育に取り組む各地域のNPOや民間事業者等と一層連携協力しながら、豊かな自然の中で学んだり交流したりする多様な機会を提供するなど、本道の野外教育の充実に向けて取り組む。
◆キャリア教育
Q白川議員 道では、ラピダス社の立地を好機と捉え、半導体製造、研究、人材育成などが一体となった複合拠点を実現するため、北海道半導体・デジタル関連産業振興ビジョンを策定し、半導体人材の安定供給を掲げている。ビジョンでは、道内理工系大学院、大学、高専卒業者の道内就職率を大学院で25%、大学、高専で50%を目標としており、今後、半導体関連産業に携わる人材の育成が急務である。
ラピダス社の立地に伴い、半導体関連産業の進出が予想される中、大学院、大学、高専のみならず、高校もこうした人材育成の取組が必要ではないか。教育長の所見を伺う。
A中島教育長 高校におけるキャリア教育について。最先端の技術革新に対応する人材を育成していくためには、学校と産業界等が連携協働し、キャリア教育の深化を図ることが重要である。
道教委はこれまで、関係機関等と協力し、専門高校のデジタル技術に関する実践的な学習のほか、半導体や洋上風力発電に関するセミナーを実施するなど、先端技術を取り入れた職業教育や、新たな産業についての職業理解を図ってきた。
本年度は、経済部次世代半導体戦略室と連携した出前講座を高校25校で実施しているほか、就職指導実践事例集に半導体出前講座の事例を掲載し、全道の公立高校に配布した。今後もこうした取組を通じて、半導体を中心とした最先端のテクノロジーへの関心を高めるなど、人材育成の推進に努めていく。
(道議会 2024-11-19付)
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