道議会質疑 予算特別委員会(10月1日) Q 質問Question A 答弁Answer P 指摘Point out O 意見Opinion D 要望Demand
(道議会 2024-12-18付)

【質問者】

▼道見泰憲委員(自民党・道民会議)

▼寺島信寿委員(公明党)

▼中司哲雄委員(自民党・道民会議)

【答弁者】

▼中島俊明教育長

▼菅原裕之教育部長

▼山本純史学校教育監

▼伊賀治康総務政策局長

▼山城宏一指導担当局長

▼齊藤順二生徒指導・学校安全担当局長

▼出分日向子教育政策課長

▼髙田安利高校教育課長

▼田口範人義務教育課長

◆人口減少問題

Q道見委員 年少人口の減少を教育政策の範ちゅうで考える前提として、人口拡大期と人口縮小期の教育政策や施策の内容はおのずと異なると考えている。道の認識を教えていただきたい。

A出分教育政策課長 人口動向を踏まえた教育政策について。人口が増加していた時期には、経済発展を支えるために、上質で均質な労働者の育成が社会の要請として学校教育に求められ、正解の暗記の比重が大きかったと捉えられる一方で、社会構造が変化した現代においては、それぞれの子どもに合った個別最適な学びと探究的な学習等を通じた多様な他者との協働的な学びの一体的な充実等を通して、個性に応じた学びを引き出し、一人ひとりの資質・能力を高めていくことが重要となっている。

 いずれにしても、道教委としては、予測できない未来に向けて、自ら社会をつくり出していく持続可能な社会のつくり手を育むため、次の世代を担う子どもたち一人ひとりの力を最大限に引き出す、令和の時代に即した教育行政を推進する必要があると考えている。

Q道見委員 超長期に及ぶ子どもの数をどのように認識されているのかを教えていただきたい。

 それが現在見込んでいる子どもの数より少なく展開された場合に、どんな影響が起きると捉えているのか、見解を伺う。

A出分教育政策課長 子どもの将来推計について。道教委においては、高校配置計画の策定のため、今後9年間の中卒者数の推計を行っているが、道の人口減少問題への対応に当たって、人口の将来見通しなどを示す人口ビジョンにおいては、国立社会保障・人口問題研究所(社人研)の推計を踏まえ、いくつかの仮定のもとで総人口や高齢者人口割合の見通しを示しているものの、年少人口については示されていないものと承知している。

 なお、社人研が令和5年に公表した地域別将来推計人口では、今後、本道の全ての自治体で、0歳から14歳人口は概ね一貫して減少するとされており、少子化が加速することによって、学校の統廃合や小規模校化、学校単位での部活動が維持困難になるなどの課題が一層深刻になるものと認識している。

Q道見委員 想定以上の人口減少の局面においての機会の確保とは、何がポイントとなるのか。これまで展開されてきた機会の確保のための政策や施策とは何が変わると想定されているのか、見解を伺う。

A出分教育政策課長 学びの機会の確保について。道教委では、少子化に伴う生徒数の減少によって、生徒が遠距離通学等となる際の通学や下宿に係る費用支援を行うほか、遠隔授業を実施するなど、全ての子どもたちが、地域や家庭の経済力などの状況にかかわらず、質の高い教育を受けることのできる環境の整備に努めている。

 道教委としては、より少子化が進んだ場合であっても、様々なニーズを要する子どもたちの多様な学びの機会を確保し、全ての子どもが一定水準の教育を保障されることが重要と考えている。

Q道見委員 想定以上の人口減少の局面においての質の向上とは、何がポイントとなるのか。これまで展開されてきた質の向上のための政策や施策とは何が変わると想定されているのか、見解を伺う。

A出分教育政策課長 質の高い教育について。人口減少下において学校の小規模校化が進む中でも、学校教育においては、多様な考えに触れ切磋琢磨する機会を確保することや、資質・能力の高い教員による教科指導を担保するなど、質の高い教育を受けるための環境を整備することが重要である。

 このため、例えば、ICTを活用するなどして、複数校が連携した授業を実施し、児童生徒が互いの考えを伝え合い、多様な考えを理解できるような学習集団の形成を図ったり、遠隔授業によって専門的な知識と指導力を持った教員が生徒の学習ニーズに応じた授業を展開したりするなどしており、今後とも、社会情勢の変化に対応しながら、知、徳、体のバランスの取れた質の高い教育を受けられるよう、教育環境の整備に取り組んでいく。

Q道見委員 教員の数について、適正な数をどのように定めているのか。生徒数との相関関係についての見解も教えていただきたい。また、それらによって何を目指しているのか、見解を伺う。

 教員の数については、様々な文献を調べてみると、教員不足の議論が先行している現状だと認識している。

 現職教員の年齢分布と子どもの減少とのバランスを見定めておくことが必要である。教員に限らず、全国的に人手不足が顕著となっている中で、教育行政の思うがままに教員を充足することが想像し難くなっていることは明白である。

 教育庁として、教員の成り手の不足を認識されている今、想定以上に子どもの数はまだ減るのに、まだ教員を増やすつもりなのか。見解を伺う。

A伊賀総務政策局長 教員数について。公立学校の教員数については、教育水準の維持向上を目的として、公立義務教育諸学校の学級編制および教職員定数の標準に関する法律などにおいて、児童生徒数を基に編制した学級数などに応じて教員数を算定するよう規定されていることから、道教委においても、法律に準拠して各学校ごとの教員数を決定している。

 人口減少に伴い、教員の成り手不足などが懸念されるが、道教委としては、毎年度の学級数などに応じた教員を配置するとともに、少人数指導の推進など、全ての子どもたちが質の高い教育を受けることができる環境の整備に努めていく。

P道見委員 一つのデータとして、1950年、教員1人に対して生徒は46人程度であった。これは、ただ頭数で割ったわけだが、2020年には、教員1人に対して10・6人というデータもある。忙しさばかりが議論されている印象ではあるが、縮小期においての教員の数は、その不足分を臨時採用等で賄っていることによるあつれきを今後生むことにはなると思う。これも、十分な予測と議論が必要である。教員の数が多ければ質の高い教育が実現できるとは単純に言えない、言い切れないと思うからこその質問である。

Q道見委員 これまでは、地域内の子どもの減少が見込まれる都度、統廃合や小規模化が検討されてきたと承知している。想定以上の人口減少を目の前にした私たちには、新たな学校の在り方が問われているのだと思う。じわりじわりと真綿で首を絞められるように学校の存続の危機が迫ることは、地域にとってあまりに残酷なのである。

 新たな前向きな選択があってもいいのではないかと考える。ほぼ必ずやってくるそのときを待つのではなく、ほかの選択肢の準備を今から進めておくことはできないのか。

 教育庁がモデルケースを想定して検討をしておくことで、新たな選択肢を地域に示すことができる。見解を伺う。

A菅原教育部長 学校の教育機能の維持について。少子化に伴う児童生徒数が減少する中にあっても、地域と一体となって子どもたちを育む取組を推進し、地域の教育機能の維持向上を図ることが重要であることから、将来を見据えた高校づくりを地域と共に考える圏域協議の仕組みを構築するとともに、生徒の学習ニーズや地域創生の観点に立った教育機能の維持向上を図る高校配置の在り方を検討しているところである。

 道教委としては、今後も長期的に人口減少が見込まれる中、社会情勢や教育環境の変化、地域が抱える今日的な教育課題等に的確に対応していく。

Q道見委員 大綱や推進計画と人口減少の関係については、中期計画を繰り返し策定されてきたものと承知をしている。確かに、中期程度で修正を加えていくことで現実味を増していく手法もあるかとは思うが、想定以上の人口減少が見込まれる中で、それでは間に合わない、もっと局面に合わせた政策、施策を展開することで、行政資源の効果的な活用を期待することができる。見解を伺う。

A中島教育長 今後の政策展開等について。従来の知識や経験のみでは将来を見通すことが難しい時代にあって、道教委としては、予測できない未来に向けて自ら社会をつくり出していく持続可能な社会のつくり手を育むため、教育推進計画等に基づき、各般の取組を進めている。

 教育行政に取り組むに当たっては、関係する計画等に基づくことはもとより、人々の生活に大きな影響を与えたコロナ禍において、子どもたちの学びを止めないために、教育DXを着実に進めながら学びの在り方の変容に対応してきたように、今後とも、社会情勢の変化に機動的に対応しながら、次の世代を担う子どもたち一人ひとりの力を最大限に伸ばしていけるよう、引き続き、本道教育の発展に努めていく。

◆JICAとの連携

Q寺島委員 道教委では、若い世代の国際交流を活発化させ、北海道と海外の地域との関係を継続発展させるため、様々な交流事業を展開しているものと承知している。

 道教委では、令和4年の北京市教育委員会との覚書をはじめ、海外の教育機関と書面を交わした上で交流事業を展開していると承知している。

 まず、覚書の締結状況について伺う。

A髙田高校教育課長 教育分野の協力に関する覚書の締結状況について。道教委では、国際交流に関し、学校同士の友好協力関係の構築や、生徒同士の交流活動の展開支援、締結当事者双方の担当部局間の交流と協力の強化等を目的として、教育分野の協力に関する覚書を締結してきており、令和2年1月にはアメリカ・ハワイ州、同年11月にはニュージーランド、同年12月にはオーストラリア・タスマニア州、令和3年2月にはロシア・サンクトペテルブルク市、令和4年3月には中国北京市の五つの国、地域と覚書を結んだところである。

Q寺島委員 覚書のほか、マサチューセッツ州等との姉妹提携などに基づく活動など様々な形で交流事業を展開しているが、道教委の海外交流事業の全体像について伺う。

A髙田高校教育課長 海外交流事業について。道教委が行う海外交流事業としては、高校生を海外の国や地域に派遣し、相手国や地域の高校生を北海道に受け入れる高校生交換留学促進事業、高校生が道内大学の留学生と相互交流を行う「Hokkaido Study Abroad Program」、高校生に対して留学に係る費用を補助金として交付し、留学の促進や留学機運の向上を図る高校生留学促進事業、ウェブによるリアルタイム交流やメッセージ動画交換などで交流する、ICTを活用した海外の学校との交流事業を実施しており、こうした様々な取組を通じまして、語学力やコミュニケーション能力、異文化や国際社会に対する理解を促進し、グローバル人材の育成を図っている。

Q寺島委員 協定締結などの手法もある中、覚書という形式を選んだ理由について伺う。

A髙田高校教育課長 覚書について。道教委では、諸外国・地域との新たな交流を開始するに当たっては、学校間交流や高校生の交換留学などを安全・安心で継続的な取組として進めるため、教育行政機関同士で書面による交流内容の確認を行うことが重要であると認識している。

 このため、令和2年1月に、アメリカ・ハワイ州と教育分野の協力に関する覚書を初めて締結し、その際、他県の例を参考として、覚書の形態によって合意を目指すこととしたものであり、以後、いずれの国、地域とも、同様の方法によって相互の合意内容を確認し、調印している。

Q寺島委員 生徒などの派遣、受け入れれなど海外交流の状況について伺う。

A髙田高校教育課長 高校生の国際交流について。コロナ禍が終息した5年度は、高校生交換留学促進事業において、カナダ・アルバータ州に10人の生徒を派遣し、9人を受け入れ、アメリカ・ハワイ州に5人の生徒を派遣し、5人を受け入れ、ニュージーランドに5人の生徒を派遣したところであり、本年度は、今後の予定も含めて、カナダ・アルバータ州に19人の生徒を派遣し、19人を受け入れ、アメリカ・ハワイ州に5人の生徒を派遣し、5人を受け入れ、ニュージーランドに5人の生徒を派遣し、5人を受け入れるという状況となっている。

 また、ICTを活用した海外の学校とのオンライン交流事業については、5年度は、11の高校が七つの国、地域と交流し、本年度は、11の高校が八つの国、地域と交流することとしており、相互に地域や学校紹介などを行い、交流を深めている。

Q寺島委員 道教委としては、若い世代の海外交流を進めることはもちろん、子どもを教え導く教員側の交流も促し、その資質向上を図っていく必要があると考える。

 教員についての派遣、受け入れの海外交流状況について伺う。

A山城指導担当局長 教員の国際交流の状況について。道教委では、高校生の交換留学促進事業において、高校生を海外に引率した教員が、引率を通じて得た知識や経験を生徒等に還元するため、引率報告会を開催するよう指導しており、こうした取組によって、海外における教育事情についての理解を深めることや国際理解教育の充実につなげている。

 また、国では、在外教育施設への教員派遣を行っており、在外教育施設への派遣経験が多文化・多言語環境における指導能力やカリキュラム・マネジメント能力など、教師の資質・能力の向上につながると示されており、本年度は、道内から24の国に43人が派遣されている。

 道内への受け入れについては、本年度、韓国から高校教諭の参加を含む日本研修団38人の学校視察を受け入れ、札幌国際情報高校、札幌工業高校、石狩翔陽高校において、進路指導や地域との連携などに関する意見交換を行ったところである。

Q寺島委員 学生と教員の交流状況を伺った。世界各地で戦争や紛争が発生し、子どもなど弱い立場の人たちが今も悲惨な状況に陥っている。そのような現実に諦めることなく、平和のうちに発展していく世界を実現するためには、教育の分野において世界との交流を深めていくことが何よりも重要と考える。

 そうした観点から、開発途上国支援を展開しているJICA北海道との連携を道教委として進めていくことが必要と考えるが、所見を伺う。

A山本学校教育監 国際協力機構・JICA北海道との連携について。JICA北海道では、道内における開発教育支援事業として、小学生・中高生国際協力体験プログラムや国際理解教育指導者研修などを展開してきており、道立高校においても、地域と学校の連携協働の仕組みを構築する北海道CLASSプロジェクトの指定校の生徒が、長期研修生との交流事業を行ったほか、先進的な理数教育や国際性を育むための取組であるスーパー・サイエンス・ハイスクールの指定校の生徒が、海外事務所を訪問して意見交換するなどの活動を行ってきたところである。

 道教委としては、今後も、JICAと各学校における多文化共生社会や開発途上国の課題解決などをテーマとする探究学習の機会の拡充などを支援するなど、JICAとのさらなる連携強化に取り組んでいく。

Q寺島委員 今後、道教委として、この連携について具体的かつ積極的に取り組むことが必要と考える。今後どのように取り組んでいくのか、見解を伺う。

A中島教育長 今後のJICA北海道との連携について。グローバル化が進展する中、社会の持続的な発展を生み出す人材として、地球規模の諸課題を自らに関わる問題として捉え、世界を舞台に国際的なルール形成をリードしたり、社会経済的な課題解決に参画したりするリーダーや、グローバルな視点を持って地域社会の活性化を担う人材の育成を推進していく必要がある。

 道教委としては、引き続き、探究学習の機会を拡充する中で、国際的な交流活動の推進や外国語教育の充実を図るなどして、世界で活躍するイノベーターやリーダー人材を育成するとともに、日本への愛着や誇りを持ちつつ、グローバルな視野で活躍するための資質・能力を育成していくために、今後も、JICAと各学校における多文化共生社会や開発途上国の課題解決等をテーマとする探究学習の機会の拡充等を支援するなど、JICA北海道とのさらなる連携強化を図っていく。

◆金融教育

Q寺島委員 人生100年時代において、豊かな人生を歩むためには、自分なりの生活設計を考え、家計を見直したり、適切に資産を運用したりすることが重視されており、学校教育においては、特に高校において金融に関する教育の充実を図る必要があると考える。

 道教委として、金融教育にはどのような意義があると認識しているのか、伺う。

A山城指導担当局長 高校における金融教育について。民法改正によって成年年齢が18歳に引き下げられたことに伴い、生徒が自主的かつ合理的に社会の一員として行動する自立した消費者となるよう、全ての生徒が履修する家庭科において、持続可能な消費生活・環境の学習内容が位置付けられた。

 持続可能な消費生活の学習分野においては、家計管理について理解することや、生涯を見通した生活における経済の管理および計画の重要性について考察することとされており、預貯金、民間保険、株式投資信託等の基本的な金融商品の特徴や資産形成の視点にも触れるなど、実践的、体験的な学習活動を通じ、消費者市民社会の担い手として自覚を持った責任ある行動につなげていくことに意義があると考えている。

Q寺島委員 子どもたちが、生涯にわたって、自分らしい生活を送っていくために必要なお金の知識を身に付けるためには、金融に関する教育を早い段階から行う必要があると考える。小・中学校においてはどのような金融教育が行われているのか、伺う。

A田口義務教育課長 義務教育における金融に関する学習について。小学校では、家庭科の「消費生活・環境」の内容において、買物の仕組みや消費者の役割、金銭の大切さなどについて取り扱うこととされており、一部の小学校では、例えば、小遣いを例に取り上げ、購入の時期や金額を考えたり、購入のための貯蓄をしたりして、計画的な使い方をすることが必要であることを理解できるよう指導している。

 また、中学校では、社会科の「市場の働きと経済」の内容において、経済活動の意義や、現代の生産や金融などの仕組みや働きについて取り扱うこととされており、市場経済の基本的な考え方や、銀行を中心とした金融の仕組みや株式市場の働き、投資の目的と役割などについて指導している。

Q寺島委員 4年4月から実施されている高校学習指導要領では、主に家庭科において、資産形成の視点に触れながら学習するなど、実践的な学習活動が求められていると伺っている。道立高校では、具体的にどのような取組が行われているのか、伺う。

A髙田高校教育課長 家庭科における学習内容について。家庭科においては、科目「家庭基礎」や「家庭総合」で、家計収支の分類、家計管理の重要性、グローバル化と家計、経済、ライフイベントとお金、金融商品の活用などを学習し、さらに、その中で、アルバイトの給料や円高・円安、確定拠出年金、金融リテラシーなどについても学んでいる。

Q寺島委員 金融教育を一層充実させるためには、学校だけではなく、民間も含めた関係機関と積極的に連携しながら学習指導に取り組む必要があると考える。

 金融教育の推進に向けて、学校任せにするのではなく、道教委が中心となり、高校と関係機関、外部人材が連携した実践的、体験的な学習活動に取り組むべきと考えるが、道教委の考えと、今後どのように取り組んでいくのかを伺う。

A山本学校教育監 今後の取組について。現代社会においては、金融や経済との関わりを避けて通ることはできず、社会人として経済的に自立をし、より良い暮らしを送るため、健全な収支バランスを保ち、不測の事態への備えやライフステージに合わせた生活設計をするための金融リテラシーを身に付けることが必要である。

 平成30年に改訂された高校学習指導要領では、家庭科において、契約の重要性や消費者保護の仕組みを理解するための学習を行うことが示されており、今後も、生徒が金融や経済に関する正しい知識を身に付けることができるよう、金融の専門家はもとより、消費者教育やライフプランニング等の様々な専門家との連携など、各学校における好事例を積極的に周知するなどして実践的、体験的な学習活動を推進していく。

Q寺島委員 生徒を取り巻く環境が大きく変化している。投資などのもうけ話、また、アルバイトで自らが詐欺に加わるなどのトラブルに巻き込まれるケースも増加していると聞いている。

 生徒が被害者にも加害者にもならないためにも、より具体的な取組が必要と考えるが、見解を伺う。

A山本学校教育監 具体的な取組について。貯蓄から投資へという国の政策のもと、資産形成のための金融経済教育が推進されている一方で、詐欺的なもうけ話を信じ、安易に金融機関から借金をし、多重債務等のトラブルを抱える若年層は少なくないものと理解している。

 このため、道教委では、各学校に、連携可能な関係機関のリストや企業と連携した実践事例を周知してきており、一部の学校では、金融機関の職員などを講師に招くなどして、生徒がライフプランや資産形成について主体的に考える学習活動に取り組んでいる。

 今後は、家庭科の教員がオンラインで参加する各教科等教育課程研究協議会において、具体的な事例を協議するなど、金融機関等と連携をした実践的、体験的な学習活動をさらに進め、生徒が自主的、合理的に社会の一員として行動する自立した消費者となるよう、金融教育の一層の充実に努めていく。

◆いじめ問題

Q寺島委員 旭川市の中学生がいじめを受けて自殺した問題で、先般、再調査委員会の報告書が公表された。この再調査結果の報告書を踏まえ、道教委の今後の対応について伺う。

 再調査報告書について。今回の再調査報告書では、あらためて7件のいじめが認定されるとともに、いじめと自殺の関連性について示されている。まず、道教委の受け止めについて伺う。

A齊藤生徒指導・学校安全担当局長 事案の受け止めについて。このたびの報告書では、被害生徒に、クラス内の人間関係から疎外されていると感じさせ孤独感を抱かせるに至ったことや、性的被害に係るいじめなど、7件のいじめが認定されたこと、また、いじめ被害が自殺の主たる原因であった可能性が高く、いじめ被害が存在しなければ生徒の自殺は起こらなかったことなどが指摘されており、未来ある中学生が貴い命を失うに至ったことは誠に痛ましいことと考えている。

Q寺島委員 本事案では、生徒がSOSを出しているにもかかわらず、学校や市教委に届いていなかったことが指摘されている。

 道教委は、生徒のSOSを受け止めるためにどのようなことに取り組んでいるのか、伺う。

A齊藤生徒指導・学校安全担当局長 自殺予防の取組について。児童生徒の自殺を防ぐためには、児童生徒自身が、心の危機に気づき、身近な信頼できる大人に相談できる力を培うとともに、安心してSOSを出すことのできる環境の整備を図ることや、児童生徒が出すSOSを教職員が確実に受け止めることが必要である。

 このため、道教委では、児童生徒のSOSの出し方とその受け止め方に関する研修資料を心理、医療の専門家の方々と協働して作成し、各学校での活用促進に取り組むとともに、教職員が児童生徒の心の小さなSOSを見逃がすことがないよう、1人1台端末を活用し、児童生徒の心や体調の変化を早期に発見するための心の健康観察を実施するよう、各学校に指導している。

Q寺島委員 報告書では、道教委の対応についても記載されているが、どのような指摘があり、どのように受け止めているのか、伺う。

A山本学校教育監 道教委の対応について。報告書においては、道教委に関する内容として、道教委は、少ない情報量の中で事案を的確に見立て、市教委を通じて学校への指導の努力をしていることが認められる、道教委も、権限が限られているとはいえ、指導、助言、援助を行う立場にある以上、事案の推移についてフォローアップすべきであった、道教委は、法にのっとって市教委に必要な指導助言を行ったが、市教委がなおいじめ認定をしないことに対し、さらなる強度をもって指導を行うには至らなかったと示されており、各市町村教委に指導助言する立場として、指導力を十分発揮できなかったことが指摘されていることについて、大変重く受け止めている。

Q寺島委員 報告書では、いじめの認識や学校、市教委の対応についての検証に加え、旭川市に対し、再発防止策の提言をしている。こうした痛ましいことが繰り返されないよう、これらの提言や道教委への指摘を踏まえて、再発防止に向けてどのように取り組んでいくのか、道教委の決意を伺う。

A中島教育長 今後の対応について。このたびの報告書では、旭川市に対し、児童生徒に寄り添い、実態に即した相談支援、教育体制の整備を行うこと、特別支援、障がい特性などへの対応を丁寧にすること、自治体がリーダーシップを取っていじめ対策に当たることなどの再発防止策の提言がなされており、道教委としても、こうした提言を参考にしながら、いじめ対策に取り組む必要があると考えている。

 また、学校や教育委員会の対応への指摘のほか、関係機関との連携の在り方など様々な指摘がなされており、道教委は、今後、北海道いじめ問題審議会の御意見も伺いながら、市町村教委や学校に対する指導助言などを徹底し、実効性ある対策へとつなげることができるよう、より一層の危機感を持って、子どもたちの命と心を守る取組を進める。

◆人口減少

Q中司委員 地方の農村部あるいは漁村部では、人口減少と少子化が進んで、ほとんどの地区で小・中学校が統廃合となってしまっていて、学校を中心として成り立っていた地域のコミュニティーの維持もままならなくなっているというのが実態だ。

 これまでも、こうした地域の学校では、ふるさとの歴史だとか産業についての教育をカリキュラムの中に取り込んできたと承知しているが、その内容、あるいは成果についてどのように捉えているか、まず伺う。

A田口義務教育課長 地域における教育について。子どもたちがふるさとへの誇りと愛着を抱き、地域社会の一員としてまちづくりに参画しようとする意欲や資質・能力を育むためには、身近な地域の歴史や文化等について理解を深める学習活動が重要であり、道内の小・中学校においては、例えば、別海町の小学校では、地域の漁業や酪農についての調査活動等を通して自分たちの生活との関わりについて理解を深める活動、むかわ町の中学校では、地域の博物館の見学や職員の講話を通して、地域を活性化させることの意義について学びを深める活動などを年間指導計画に位置付け、計画的に取り組んでいる。

 こうした地域の歴史や産業等に関する教育活動を実施した学校における児童生徒へのアンケート調査では、北海道や自分たちの住んでいる地域に誇りや愛情を持つことができたと回答した割合が9割を超えるなど、一定の成果が見られている。

Q中司委員 産業が要求する新卒の知識レベルが高くなってきたということ、あるいはまた、大卒との給与格差もあって、高校は普通科、そこから大学や専門学校に進んで就職するというコースを希望する親や子どもが増えて、工業系とか農業系、いわゆる実業系の高校での定員割れが加速してきた面が見られる。これが地元就職者の不足を招くという悪循環にもなっているというふうに認識している。

 道は、この傾向を是正するために様々な努力を重ねてきたと思うが、どのようなものだったか、伺う。

A髙田高校教育課長 専門高校の魅力発信などについて。道教委では、これまで、専門高校の魅力についての理解を深めることや、中学生の専門高校への関心を高めるため、各学科の学習内容や特色等について、在校生の声とともに掲載する冊子「わたくしの進路」、専門高校の卒業生の働く姿を紹介した「おしごとガイドブック」、道内の専門高校が開催している各種イベントをまとめたリーフレットの作成、配布などを行ってきたほか、本年度、新たに「職業学科理解推進ガイド」を作成し、全道の中学校に配布する予定としている。

 また、中学校での進路指導に生かしてもらうよう、全道の中学校教員を対象とした職業学科理解促進セミナーをオンラインで開催することとしている。

 各専門高校においては、地元企業でのインターンシップなどを通じ、生徒の地域に貢献しようとする意識の醸成や、地域産業への理解を深めるためのキャリア教育に取り組んできている。

Q中司委員 政府は、少子化対策として「こどもまんなか」をスローガンに施策を進めており、道もこれに沿って対策を進めていると承知している。

 しかし、少子化対策の一番大事なところは、「こどもまんなか」ではなくて、それのもとになる若者真ん中だと言われている。

 今後は少子化問題と教育制度をセットに、教育の側が主体で取り組んでいくべきと思うが、道教委の見解を伺う。

A菅原教育部長 子ども施策などについて。こども基本法に基づく子ども施策には、全ての子ども、若者が夢や希望をかなえるために、希望と意欲に応じて伸び伸びとチャレンジでき、将来を切り開くことなどができる社会を目指し、教育施策をはじめ、幅広い施策が含まれており、関係省庁が連携しながら取組を進めていると承知している。

 道教委では、令和5年に策定した教育推進計画において、自らの夢に挑戦し、実現していく人を育む自立の考えを教育の基本理念に掲げ、各般の施策を進めており、引き続き、知事部局とも緊密に連携し、住んでいる地域や家庭の経済力等の状況にかかわらず、つぎの世代を担う子どもや若者たちの力を最大限に伸ばしながら、一人ひとりの可能性を引き出す教育を推進していく。

Q中司委員 大事なのは、教員の資質と能力、意欲だと思う。そのためにも、学ぶ力と思いやりのある若き人材が教育の世界に入ってくるよう、適切な誘引策を講じる必要があるのではないか。こうした人材を確保するためには、教職の魅力向上と処遇改善の施策を強化することが課題だと思う。

 そのために、親と社会、そして、学校の教職員の努力の実態が正しく評価されて知らされるべきである。教委としては、今後どのようにこうした教育の役割を果たしていかなければならないのか、伺う。

A中島教育長 教育の充実に向けた取組について。全ての子どもたちへのより良い教育を実現していく上で、その直接の担い手となる意欲と能力のある教員の確保は重要であり、そのためには、学校や教員を取り巻く環境を整備し、教職の魅力を高めていくことが必要である。

 こうした中、文部科学省においては、教職の重要性などを踏まえた処遇の改善と併せて、教職員定数の改善などによる学校の指導・運営体制の充実などを進めることとしている。

 道教委としては、教員の処遇改善などが早期に実現されるよう国に求めていくとともに、多くの有為な人材が教職に魅力を感じ、働きやすさと働きがいを実感しながら教育に携わることができるよう、保護者や地域の皆さんと教員を取り巻く環境の認識を共有しながら、学校における働き方改革を着実に推進するなど、社会全体で子どもたちの学びを支える環境の実現を目指していく。

(道議会 2024-12-18付)

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道議会質疑 一般質問(9月24日)

【Q 質問Question A 答弁Answer P 指摘Point out O 意見Opinion D 要望Demand】 【質問者】 ▼檜垣尚子議員(自民党・道民会議) ▼広田まゆ...

(2024-12-06)  全て読む

4定道議会一般質問(2日) オンライン講習 講義数を増加へ 社教人材の育成

 2日の4定道議会一般質問では、社会教育人材の育成が取り上げられた。  道教委の中島俊明教育長は、地域における住民の主体的な学びや実践を促し、地元企業・NPOと連携して地域の持続的発展を支...

(2024-12-05)  全て読む

道議会質疑 一般質問(9月20日)

【Q 質問Question A 答弁Answer P 指摘Point out O 意見Opinion D 要望Demand】 【質問者】 ▼角田一議員(自民党・道民会議) ▼木葉淳議員...

(2024-12-04)  全て読む

82億円を増額補正 給与改定など 教育費補正予算案

 道教委は2日、4定道議会に追加提案する6年度教育費補正予算案を公表した。82億2553万円の増額補正で、既計上額と合わせた6年度教育費予算の総額は3939億5392万円となる。  道人事...

(2024-12-04)  全て読む

道議会一般質問(11月29日) 保護者同士 交流の場設置 不登校支援

 11月29日の4定道議会一般質問では、不登校児童生徒の保護者に対する支援が取り上げられた。  道教委の中島俊明教育長は、フリースクール等の関係者も参画する連絡協議会において不登校の児童生...

(2024-12-03)  全て読む