道議会質疑 一般質問(9月24日) Q 質問Question A 答弁Answer P 指摘Point out O 意見Opinion D 要望Demand(道議会 2024-12-10付)
【質問者】
▼前田一男議員(自民党・道民会議)
▼赤根広介議員(北海道結志会)
【答弁者】
▼鈴木直道知事
▼北村英則総合政策部長兼地域振興監
▼中島俊明教育長
◆教員確保
Q前田議員 教員および管理職の成り手不足の解消は、先の見えないトンネルなのか。今後10年程度の見通しをお示しいただきたい。
A中島教育長 教員などの確保について。本道においては、定年年齢の段階的な引き上げによる年度ごとの増減はあるものの、今後10年間においても教員の退職者が多い状況が見込まれており、教員や管理職の確保は喫緊の課題であると認識している。
こうした中、文部科学省においては、教職の重要性などを踏まえた処遇改善と併せて、教職員定数の改善などによる学校の指導・運営体制の充実などを進めることとしており、道教委としても、学校や教員の実情に応じた業務の見直しと併せて、教員業務支援員や副校長・教頭マネジメント支援員などの効果的な活用により業務負担の軽減を図るなど、働き方改革を着実に進めるとともに、高校生を対象とした教員養成セミナーによる教職の魅力発信や、教員選考検査の受検資格の拡大などによって、教員志願者の裾野を広げる取組を進めるなど、教員等の確保に最大限努めていく。
Q前田議員 学校を運営していくには、再任用の先生方の協力が必要である。しかし、給与は、条例に基づき、61歳年度の段階で7割水準に設定され、再任用の際、さらに低い給与となる。担任を持ち、生徒指導や保護者の対応もし、やることは現職時代と一緒でも給与は7割以下である。
大事なのは本人の納得だと思う。納得感を持って仕事をしてもらうための努力を道教委はどのようにしていくのか。
A中島教育長 再任用制度などについて。道教委では、これまで、60歳を迎える職員全てに、定年引き上げや再任用の制度の内容、選択肢となる働き方などについて丁寧に説明し、適宜、相談に対応するなど、制度の周知に努めるとともに、再任用に当たっては、本人の意向や経歴なども十分考慮し、長年培った経験などを学校運営のサポートや若手職員の育成などに生かすことができるよう、配置上の配慮も行っている。
道教委としては、今後とも、専門性や経験を生かし、やりがいを感じながら働き続けることができるよう、適切な制度の運用と効果的な職員配置に努めるなど、再任用職員が豊富な知識や技術などを十分に発揮できる環境や体制を整備していく。
◆義務教育学校
Q前田議員 北海道における学校の姿として、義務教育学校をどう見ているか、お聞かせいただきたい。
A中島教育長 義務教育学校について。義務教育学校は、平成27年の学校教育法等の改正によって制度化され、9年間の一貫した教育課程を編成し、系統的な教育を行うものであり、義務教育において目標に掲げる資質・能力、態度の育成に向け、小学校段階と中学校段階の円滑な接続を図り、学力、体力の向上や、いじめ、不登校の防止などの観点から、成果が期待できるものと認識している。
また、義務教育学校は、既存の小・中学校に加え、地域の実情や児童生徒の実態など、様々な要素を勘案して設置者が主体的に判断できるよう、国として選択肢を増やしたものであり、現在、道内には22の市町村に28校の公立の義務教育学校が設置され、今後もさらなる設置が見込まれている。
道教委としては、学校段階間の接続に関する優れた取組が普及されることによって、公教育全体の質の向上につながるものと考えている。
◆総合計画
Q前田議員 道は、総合計画で、豊かな学びの機会を通じて未来を担う人材を育むとし、14の政策の方向性を示しているが、これらは、自己肯定感を育てていくことから始まるのではないか。
日本の子どもの自己肯定感は、ほかの国と比べて極めて低いという調査もある。ここを引き上げていくことが、日本における人づくりのポイントだと思う。
本道で生まれ育った子どもたちが、みんな高い自己信頼感を持てるようになるためには、道庁は一体何ができるのか。
A北村総合政策部長兼地域振興監 未来を担う人材の育成について。子どもたちが豊かな人生を切り開いていくためには、自らのよさや可能性を認識するとともに、全ての人を価値のある存在として尊重し、多様な人々と協働しながら、持続可能な社会のつくり手として成長できる教育環境づくりが求められており、総合計画にもその旨を位置付けたところである。
また、道教委では、一人ひとりの人生を幸せで豊かなものにしていくため、全ての子どもたちが、分かる喜び、学ぶ楽しさを実感することや、自然・社会体験を積み重ねることによって、自己肯定感を高め、生涯にわたって学び続ける意欲を持てる環境を実現するための取組を進めているものと承知している。
道としては、今後とも、子どもたちが、社会の中で自分の役割を果たしながら、自分らしい生き方を実現していくための資質・能力を身に付けることができるよう、道教委と連携し、教育環境づくりに取り組んでいく。
Q前田議員 今回の総合計画は、14の振興局ごとに地域づくりの考え方を書いているが、これらを実現するには、振興局の職員一人ひとりが知事の目となり耳とならねばならない。
知事は、振興局の在り方についてどう考え、何を求めていくのか。
A鈴木知事 振興局の役割について。全国を上回るスピードで人口減少が進行する本道において、地域の活力低下や担い手不足などが懸念される中、地域が抱える課題も複雑化、多様化しており、地域づくりの拠点である振興局の果たすべき役割は大きいものと認識している。
このため、振興局においては、日頃から、市町村をはじめ、地域の関係者との対話を積み重ねることによって、信頼関係を構築するとともに、地域課題に迅速かつ的確に対応し、地域の強みや資源を生かした地域振興施策を展開していくことが重要と考えており、振興局がこうした役割を果たせるよう、その機能の一層の充実に努めていく。
◆いじめ対策
Q赤根議員 旭川市で発生したいじめ問題で、再調査委の報告書は、SNSへの投稿をAIを活用して分析し、投稿からいじめ被害に関するキーワードを抽出し、自殺の直前までいじめの恐怖や苦痛を感じ、死に追い込まれた過程を解明し、自殺の原因がいじめだったと結論付けたものであった。
この問題に関連して、相談窓口の充実や、道教委と市町村教委の連携強化の必要性など、対策についてこれまで議論を重ねてきたが、報告書の内容をどのように受け止めているのか、また、報告書では、多岐にわたる再発防止策も提言されているが、今後の対策にどのように取り組むのか、知事および教育長に所見を伺う。
A鈴木知事 いじめ対策について。いじめは、児童生徒の教育を受ける権利を著しく侵害し、心身の健全な成長と人格の形成に重大な影響を与えるのみならず、その生命や身体に危険を生じさせる恐れがある、決して許されない行為である。
旭川市において、未来ある生徒が貴い命を失うに至ったことは大変痛ましく、私としては、このたびの再調査委員会の報告書において、いじめが主要な原因であった可能性が高いと判断されたこと、さらに、学校や市教委、道教委などの対応の在り方について指摘されたことを大変重く受け止めている。
道では、これまでも、道教委と連携して、各学校に対し、いじめ重大事態に係る対応、再発防止策などを、具体的な事例も含め、情報発信するとともに、学校訪問や研修会など様々な機会を活用しながら、いじめ防止対策推進法の趣旨を踏まえた取組の徹底を求めてきたところである。
道としては、このたびの報告書における、再発防止に向けた提言の趣旨も考慮し、いじめの未然防止はもとより、早期発見と積極的な認知による組織的対応の重要性について、各学校に、理解を深め、適切に運用していただくための取組を道教委と連携して進めるなど、このような痛ましい事案が二度と繰り返されることのないよう、本道の未来を担う子どもたちの大切な命を守るという断固たる決意のもと、いじめ防止対策に取り組んでいく。
A中島教育長 旭川市におけるいじめ事案の再調査報告書について。このたびの報告書においては、いじめ被害が自殺の主たる原因であった可能性が高く、いじめ被害が存在しなければ生徒の自殺は起こらなかったことなどが指摘されており、未来ある中学生が貴い命を失うに至ったことは、誠に痛ましいことと考えている。
また、報告書では、学校や市教委が、法の要請に基づく措置は取っていたものの、現実の運用の場面では生かされず、本事案についていじめ認定に至ることができなかったことなどが指摘され、併せて、道教委の市教委への指導の在り方についても指摘があることは、大変重く受け止めている。
今回の再調査においては、生徒が残したSNSへの投稿などをもとに、心身の苦痛を心理学的、精神医学的に分析しており、道教委としては、このたびの再調査の手法等を今後の対応に生かすとともに、このような事案が二度と繰り返されることのないよう、今後も、より一層の危機感を持って子どもたちの命と心を守る取組を進めていく。
Q赤根議員 ぜひ実効性のある取組を強く求めるところである。
この報告書をあらためて拝見すると、まさに胸が締めつけられる思いである。報告書では、学校や教育委員会の対応はもちろん、病院や警察の対応についても言及している点も重要と考える。
警察との連携については、5年2月の文教委員会などでも議論を交わしたが、この報告書を受けて、これまでの想定を超えた対応の必要性をあらためて強く感じたところである。
知事も教育長も二度と繰り返さない決意であれば、ぜひ、関係機関との取組の見直しなど、早急に対策強化を図るべきと考える。再度、所見を伺う。
A鈴木知事 いじめ問題においては、学校だけで対応するのではなく、医療、福祉や心理、法律などの専門家や警察等と連携することも重要であり、道と道教委が5年3月に改定した北海道いじめ防止基本方針では、学校と警察が認識を共有し、対応できる体制の構築など、関係機関との連携を図ることとしている。
道としては、このたびの報告書における再発防止に向けた提言の趣旨も考慮し、関係機関との連携も含めた組織的対応の重要性などについて、各学校に、理解を深め、適切に運用していただくための取組を道教委とより一層連携して進めるなど、本道の未来を担う子どもたちの大切な命を守るという断固たる決意のもと、いじめ防止対策に取り組んでいく。
A中島教育長 いじめへの対応に関し、国のいじめ防止基本方針では、学校は、警察や医療機関など関係機関と適切に連携するため、平素から情報共有体制を構築しておくことが必要と示されており、道の基本方針においても、学校は、各市町村において、毎年度開催する学校警察連絡協議会を活用し、学校と、警察や司法、福祉等の関係機関との連携を図るよう示しているところである。
このたびの報告書では、学校と各関係機関との連携や対応の在り方などについて様々な指摘がなされており、道教委では、こうした指摘を今後の参考にさせていただくとともに、各市町村と関係機関との連携の実例なども踏まえ、いじめの防止等に関する取組プランの進捗状況について、毎年度開催している北海道いじめ問題審議会に諮る際に、関係機関との連携の在り方についても協議事項とし、より実効性ある対策へとつなげていくなど、より一層の危機感を持って、子どもたちの命と心を守る取組を進めていく。
◆オリンピアン活用
Q赤根議員 文部科学省は、来年度から、オリンピックやパラリンピックへの出場経験がある選手の教員登用を支援するとして、従来の公立学校の教員数の枠を超えて採用できるよう財政措置する方針で、都道府県教委にアスリートの登用促進策を周知するとしている。
多くのどさんこオリンピアンが活躍している本道においても、積極的に本制度を活用するとともに、世界の大舞台で活躍した経験や知識を広く活用すべきと考える。知事および教育長の所見を伺う。
A鈴木知事 オリンピアンの活用について。オリンピアン、パラリンピアンをはじめとするアスリートが有する能力や技術、経験を財産と捉え、世界を目指す次の世代の選手の育成や、スポーツ参画人口の拡大などにつなげていくことは重要である。
このため、道では、これまで、アスリートの協力のもと、子どもたちを対象としたスポーツ教室の開催や、有望なジュニア選手の発掘、育成に当たっての専門的な指導、障がい者スポーツの理解促進、普及に向けたイベント開催などに取り組んできたところである。
道としては、オリンピック、パラリンピックでの本道ゆかりの選手の活躍といった好機を逃すことなく、オリンピアン、パラリンピアン、プロスポーツチーム等とのさらなる連携協力を図りながら、スポーツの裾野の拡大や競技力の維持向上など、本道スポーツの一層の振興に取り組んでいく。
A中島教育長 オリンピアンなどの活用について。学校が対応する教育課題が複雑化、多様化する中、専門性のある多様な人材を確保し、教育の質の向上を図ることが重要であることから、道教委では、平成13年度以降、スポーツの分野で顕著な実績を有する方を対象に特別選考を実施し、これまで、オリンピアン9人を含む50人を教員として採用してきた。
こうした中、文科省では、特別免許状の活用によって、オリンピアン、パラリンピアンなどアスリートの学校教育への参画を促進するため、教職に関心のあるアスリートのリストの作成や、入職前の研修パッケージの作成、任用する場合の加配措置など、新たな方策を決定したところである。
道教委としては、アスリートなど外部人材の活用は、学びの充実だけではなく、多様な専門性のある学校組織の形成の面でも意義のあるものと考えており、文科省の施策の活用も含め、より積極的な採用について検討していく。
(道議会 2024-12-10付)
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