道議会質疑 予算特別委員会(10月1日) Q 質問Question A 答弁Answer P 指摘Point out O 意見Opinion D 要望Demand(道議会 2024-12-11付)
【質問者】
▼檜垣尚子委員(自民党・道民会議)
【答弁者】
▼中島俊明教育長
▼菅原裕之教育部長
▼山本純史学校教育監
▼岸本亮高校配置・制度担当局長
▼針ヶ谷一義特別支援教育担当局長
▼出分日向子教育政策課長
▼佐藤昌彦道立近代美術館担当課長
▼髙田安利高校教育課長
▼手塚和貴高校配置・制度担当課長
▼中嶋英樹特別支援教育課長
◆障がい児教育
Q檜垣委員 小・中学校で通級による指導を受けている子どもの数と割合について、全国および道内の状況を伺う。
また、自校、他校、巡回指導の実施形態別ではどのようになっているのか、併せて伺う。
A中嶋特別支援教育課長 通級指導の状況について。4年度において、公立小学校で通級指導を受けている児童は、全国では16万4568人で、全児童に占める割合は2・7%、北海道では7755人で3・4%、公立中学校では、全国では3万1515人で1・1%、北海道では967人で0・8%となっている。
また、4年度の実施形態別の割合は、在籍する学校で指導を受ける自校通級では、全国が約69%、北海道が約65%、他校に移動して指導を受ける他校通級では、全国が約24%、北海道が約32%、在籍する学校で巡回教員の指導を受ける巡回通級では、全国が約7%、北海道が約3%となっている。
Q檜垣委員 道教委が本年度から国の委託を受けて実施している、効果的かつ効率的な巡回指導の実施に向けたモデル構築事業の概要について伺う。
A中嶋特別支援教育課長 モデル事業について。効果的かつ効率的な巡回指導の実施に向けたモデル構築事業は、広域で小規模校が多い本道の特性を踏まえ、複数の学校を1人の教員が訪問する巡回指導の活用によって通級指導教室の設置を拡充するとともに、通級指導に関わる教員の専門性向上を図るなど、通級指導を必要とする児童生徒が適切な指導を受けられる体制整備を目的として実施している。
具体的な取組としては、全14管内において、特別支援教育の経験豊富な教員をリーダー教員として指名し、リーダー教員が、自校での通級指導に加え、同一町内や周辺市町村の小・中学校を定期的に巡回するなどして、通級指導を実施する学校の拡充や指導の充実を図ることとしている。
Q檜垣委員 今回の事業で巡回指導を実施することによって、これまで通級指導教室を設置していなかった学校でも、通級による指導が行われているが、こうした取組に対する学校や保護者の受け止めについて伺う。
A針ヶ谷特別支援教育担当局長 事業の成果などについて。事業の対象となっている学校の教員や保護者からは、リーダー教員に対し、学級担任が支援方法を相談でき、個に応じた支援の充実が図られるようになった、通級指導の効果が周知され、通級指導を受けさせたいという保護者等のニーズの増加につながった、他校通級に比べ、児童生徒を送迎する負担がなくなったなどの意見があったところである。
今後も、教員や保護者の意見聴取を通じて不断に事業の点検を行い、より効果的な巡回指導の在り方に関する検討や学習内容の充実に努めていく。
Q檜垣委員 通級による指導を担当する教員は、子どもの一人ひとりの障がい特性に応じた指導を行うことはもちろんのこと、通常の学級担任と連携して支援を行うなど幅広い専門性が必要と考える。本事業においては、どのように担当教員の専門性の向上を図っているか、具体的な取組内容について伺う。
A中嶋特別支援教育課長 教員の専門性向上について。通級指導を担当する教員には、障がいの特性に応じた専門性や、児童生徒一人ひとりの実態に応じた多様かつ柔軟な指導方法を有することはもとより、通常の学級担任等への助言や提案力についても求められており、この事業では、高い専門性を持ち、通級指導の経験が豊富な大学教員をスーパーバイザーに指名し、事業を実施している学校に派遣して、リーダー教員や当該校の管理職等に対して指導助言を行っている。
また、障がいの特性等に応じた具体的な指導や支援に関する講話や事例検討を行う研修会を、本年度は年13回開催することとしており、これまで実施した6回の研修会では、リーダー教員をはじめ、通級指導を担当する教員など延べ734人が参加し、専門的な知識や実践的な指導力の向上を図っている。
Q檜垣委員 今後も、特別な支援を要する子どもが増加することが想定される中、一人ひとりの障がいに応じた指導を行う通級指導教室の果たす役割は一層重要となることから、本道において、通級指導教室設置の拡充と通級に関わる教員の専門性の向上を図ることは急務であると考える。
道教委は、本事業を通じて、通級による指導の充実に向けてどのように取り組んでいくのか、伺う。
A山本学校教育監 今後の取組について。国の調査によると、通常の学級で特別な教育的支援を必要とする児童生徒のうち、通級指導を受けている児童生徒の割合は約10%であり、希望する児童生徒が通級指導を受けることができるよう、通級指導教室の設置の拡充に加え、指導を担当する教員の専門性向上を図ることが求められている。
道教委としては、今後、事業の取組をまとめた指導資料等を作成し、通級指導を適切に担当できる教員の効果的な育成や、地域の実情に応じた形態での通級指導教室の設置拡充について、市町村教委に働きかけるとともに、国に対し、引き続き、通級指導の拡充に向けた教員配置を要望するなどして、本道における通級指導のさらなる充実に努めていく。
Q檜垣委員 特別支援学校が小・中・高校と学校間で行う交流および共同学習の取組状況はどのようになっており、また、どのような課題が見られるのか、伺う。
A中嶋特別支援教育課長 交流および共同学習の取組状況について。交流および共同学習は、相互の触れ合いを通じて豊かな人間性を育むことを目的とする交流の側面と、教科等の目標を達成することを目的とする共同学習の側面があり、この二つを分かち難いものと捉え、推進していくことが重要である。
5年度は、道立特別支援学校61校で、近接している小・中・高校と交流および共同学習を実施しており、学校行事やボランティア活動などの合同実施や、オンラインを活用して交流を深めるなどの取組を行った。
課題としては、日程調整等の関係で回数が限られていたり、学校行事等での交流にとどまったりすることが多く、共同学習を充実させることなどが挙げられる。
Q
檜垣委員 障がいのある子どもとない子どもが在籍している小・中学校では、共に学ぶ環境は整えやすいが、障がいのある子どものみが在籍している特別支援学校では、その立地場所も影響し、他校との交流が難しい場合があると考える。
そこで、本年度から実施している「インクルーシブな学校運営モデル事業」の概要について伺う。
A中嶋特別支援教育課長 事業の概要について。インクルーシブな学校運営モデル事業は、障がいのある子どもとない子どもの交流および共同学習を発展的に進め、一緒に教育を受ける状況と、柔軟な教育課程および指導体制を構築することを目指して実施するものであり、具体的には、渡島管内の七飯養護学校と七飯中学校、十勝管内の中札内高等養護学校と更別農業高校の2地域4校を指定し、教育活動の内容や指導体制などを調整する、校長経験のあるカリキュラムマネジャーを特別支援学校2校に配置するなどして、特別支援学校と中学校、高校の授業づくりと体制構築について一体的に運営するための研究をすることとしている。
Q檜垣委員 充実した交流および共同学習を進めるためには、特別支援学校と中・高校の教員同士も交流を図り、共通認識を持つことが重要になると考える。
本事業では、どのような取組を行っているのか、併せて、取組を通して先生方の意識にはどのような変容が見られているのか、伺う。
A中嶋特別支援教育課長 取組状況について。事業の実施地域として指定した二つの地域では、特別支援学校の教員が高校で授業を行ったり、中学校と特別支援学校の教員が、合同研修の中で子どもの指導や支援に関わったりする協議を行っている。
事業開始当初は、教員から、異なる学校種との取組について、事業の具体的なイメージが持てない、打ち合わせや授業などの時間調整が難しいなどの声があったが、事業を進める中で、学校種を超えて特別支援教育の日頃の取組などを交流できた、子どもとの関わり方をあらためて考えることができたなど、互いの専門性を生かした授業づくりや、効果的な交流および共同学習の実施に向けた肯定的な感想が挙げられるなど、教員の意識も変化してきている。
Q檜垣委員 今後、本事業の交流および共同学習を効果的に進めるため、どのような方向性で進めていくのか、伺う。
A針ヶ谷特別支援教育担当局長 事業の進め方などについて。交流および共同学習の充実に向けては、交流の側面はもとより、教科の目標を達成する共同学習の側面をより意識した取組が必要であり、そのためには、全ての生徒にとって分かりやすい授業を行うことと併せて、生徒の発達段階や学習集団の規模、各教科や授業の構成なども考慮しながら実施することが重要と考えている。
このため、学校や学年といった集団を単位とした交流および共同学習にとどまらず、生徒の個別のニーズに合わせて、例えば、特別支援学校の生徒が高校で授業を受けることや、指定校間に限らず、オンラインを活用して他地域と共に学習を進めることなど、柔軟で新しい学習形態について検討することとしている。
Q檜垣委員 障がいの有無にかかわらず、誰もが分け隔てなく成長していくため、各学校でこうしたインクルーシブな取組を進めていくことが重要であると考える。
道教委は、本事業の意義や成果を市町村や学校に広く周知していく必要があると考えるが、今後どのように取り組んでいくのか、伺う。
A山本学校教育監 今後の取組について。このたびの「インクルーシブな学校運営モデル事業」における2地域4校の取組を他の地域においても展開することができるよう、本年度末には、成果発表会を開催するとともに、事業最終年度に当たる8年度には、事業の取組を「インクルーシブな学校運営のための手引」としてまとめ、全道成果発表会を開催するなどして、全ての市町村教委と学校に周知することとしている。
道教委では、こうした取組を通じて、障がいのある子どもとない子どもが可能な限り同じ場で共に学ぶことや、それぞれの子どもが充実感、達成感を持ちながら生きる力を身に付けることを本質的な視点とするインクルーシブ教育システムの充実につながるよう取り組んでいく。
Q檜垣委員 特別支援学校の教室不足について、当初の建築時と比較して、普通教室が不足している学校は何校で、不足教室は何室あるのか、本年度の状況について伺う。
A中嶋特別支援教育課長 特別支援学校の教室不足の状況について。設計上の普通教室を上回る人数の児童生徒が在籍し、教室不足となっている道立特別支援学校は、ことし5月1日現在、66校のうち20校で、130室不足しております。前年度と比べ、4校16室増加している。
Q檜垣委員 教室不足の解消に向け、これまでどのように対応してきたのか、また、学校における教育活動に支障を生じることのないよう早急な解消が求められるが、今後どのように取り組むのか、伺う。
A山本学校教育監 教室不足の解消に向けた取組について。道教委では、これまで、普通教室を間仕切りして使用することや、理科室など特別教室の普通教室への転用、通学区域の見直し、校舎の増築、さらには、既存施設を活用した学校の新設を行うなどして対応してきた。
本年度においても、北見支援学校など2校で増築や改修工事の設計を行うほか、札幌伏見支援学校ともなみ学園分校の2校間で通学区域の見直しを行ったところであり、今後も児童生徒数の推移を見極めた上で、緊急度の高い学校を優先して整備を検討するなどして、児童生徒が必要な指導や支援を受けることができるよう、教室不足の解消に向け取り組んでいく。
Q檜垣委員 特別支援教育をめぐっては、このほかにも、教員の専門性の向上や就労に向けたキャリア教育の充実、医療的ケアの実施体制の整備など多くの課題がある。
道教委としては今後、特別支援教育の充実に向けてどのように取り組んでいくのか、伺う。
A中島教育長 今後の取組について。障がいのある子どもの自立と社会参加を見据え、その時点でその子どもに最も必要な教育を提供することが大切であり、その際には、それぞれの子どもが、授業内容を理解し、学習活動に参加している実感、達成感を持ちながら充実した時間を過ごしつつ、生きる力を身に付けていけるかどうかという最も本質的な視点に立つことが重要と考えている。
このため、道教委では、小・中学校等における通常の学級、通級による指導、特別支援学級、特別支援学校といった連続性のある多様な学びの場において、障がいのある児童生徒一人ひとりの教育的ニーズに応じた適切な指導や支援が行われることが必要との考えのもと、全ての教員が障がいに関する理解や知識を深め、具体的で実践的な指導や支援の方法などを習得できるよう、専門性向上に向けた研修の実施や管理職のマネジメント強化、大学等の専門機関との連携による各学校における校内支援体制の整備などを通じ、障がいのある児童生徒と障がいのない児童生徒が共存し、通級による指導などの特別な支援も当たり前と受け止められる環境を醸成するなど、本道における特別支援教育のさらなる充実に取り組んでいく。
◆高校教育充実
Q檜垣委員 少子化に伴い、都市部の高校でも学級減による規模の縮小が進んでいる。ことしの配置計画でも、釧路市では、9年度から釧路江南高校の第1学年の入学定員が5学級から4学級となることとなった。地元からは、学級減により教員数が大幅に減少し、学校の特色である単位制による多様な選択科目の展開や、学校行事、部活動にも影響することから、学校再編による学級規模の維持を求める意見が出ていると聞いている。
今回の配置計画によって、9年度に釧路学区で釧路江南高校の学級減を行うこととした理由について伺う。
A手塚高校配置・制度担当課長 釧路江南高校の学級減について。このたびの配置計画では、6年度との比較で、中卒者数が釧路市で60人程度の減少が見込まれることや、釧路学区におけるこれまでの学級減の状況や学校、学科の配置状況、地域の産業人材の動向、私立高校の配置状況などを総合的に勘案し、釧路江南高校の1学級減を行うこととしたものである。
Q檜垣委員 9年度の入学者から、釧路江南高校では1学年5学級から4学級となることになるが、この結果、教員配置数はどのようになるのか、伺う。
A出分教育政策課長 学級減による教員数について。公立高校の教員数については、公立高校の適正配置および教職員定数の標準等に関する法律に準拠して配置をすることとしており、釧路江南高の校長、教頭、主幹教諭および教諭の数は、各年次5学級の場合は42人であり、4学級になった場合は35人となり、7人の減となる。
Q檜垣委員 単位制の釧路江南高では、3年間で、必履修科目に加えて、みらいの教員育成プログラムの拠点校として、教員基礎、教員基礎研究を開設するほか、50科目の選択科目の中からそれぞれの興味・関心や進路希望等に合わせた多様な選択が可能となっているが、1学年4学級となった場合の教育課程の編成、実施に影響はないのか、伺う。
A髙田高校教育課長 教育課程の編成、実施について。現在の釧路江南高は、各年次5学級で、いわゆる高校標準法に準拠して配置する教員数が42人であり、6年度入学者の教育課程においては、必履修教科・科目と選択科目と合わせて82科目を設置している。
各年次4学級となった場合、標準法配置の教員数が35人となり、習熟度別授業や少人数指導の実施、教育課程の編成、実施に影響が生じる可能性があると認識している。
Q檜垣委員 指針の中でも、単位制高校については、多様な選択科目の開設が可能となるよう一定規模の維持を検討するとしている。
今回の釧路学区のように、複数校が配置される都市部においては、個々の学校を学級減にするのではなく、学校の特色を生かした生徒の学習ニーズに応えられるよう、再編による一定規模の維持を図ることが必要と考えるが、見解を伺う。
A岸本高校配置・制度担当局長 都市部における再編について。一定規模の生徒および教職員の集団を維持し、活力ある教育活動を展開していく観点から、複数の高校が所在する都市部などにおいては、再編によって一定の学校規模を確保することも重要と考える。
このため、都市部において高校の小規模校化が見込まれる場合などは、市町村との意見交換や地域別検討協議会、前年度から釧路学区等で行っている圏域協議などの場を活用して、再編によるメリットなどについて説明し、地域との共通認識を図るとともに、圏域全体における高校教育の質の維持向上に向けた施策や、地域の実情に応じた多様なタイプの高校づくりなど、学校規模を含めた望ましい配置の在り方について検討する必要があると考えている。
Q檜垣委員 今後も中学校卒業者数の減少が見込まれる中、道教委としては、地域が抱える今日的な課題に的確に対応し、未来を担う人材を育む教育機能の維持向上に向けてどのように取り組んでいくのか、教育長に伺う。
A中島教育長 今後の対応について。広域分散型の本道においては、少子化に伴う中卒者数が減少する中にあっても、地域と一体となって子どもたちを育む取組を推進し、地域の教育機能の維持向上を図ることが重要と考えている。
このため、道教委では、圏域協議によって、その結果を配置計画に生かすとともに、社会の変化や生徒の多様な学習ニーズに対応できる高校づくりの観点から、普通科新学科や単位制の導入を図ることとしている。
道教委としては、こうした取組を通じ、圏域全体における高校教育の質の維持向上に向けた施策や、地域の実情に応じた多様なタイプの高校づくりなどを進めるとともに、これまで以上に地域との連携を深めながら、生徒から選ばれる魅力ある高校づくりを推進していく。
D檜垣委員 今後は、釧路学区だけではなく、ほかの学区、全道でこのような状況が出てくると思われる。しっかりと地域や子どもたちの声を反映した形になるようお願いする。
◆近美リニューアル
Q檜垣委員 道教委では、近代美術館のリニューアル基本構想の中間報告を取りまとめているが、こうした立地環境にある近代美術館のリニューアルに当たって、目指す姿の実現に向け、どのような認識を持ち、どのようなビジョンで取り組もうとしているのか、あらためて伺う。
リニューアル後の近代美術館の役割や取組に関し、まず、全道的な位置付けについて伺う。
道立美術館は地方にも設置され、このほか道内には、公立・私立美術館が多く設置されているが、その中で、近代美術館はどのような役割を果たしていくのか、伺う。
A菅原教育部長 目指す姿の実現に向けた認識などについて。近代美術館は、長い歴史の中で築き上げられ、大切に守られてきた知事公館・近代美術館エリアの中で象徴的な施設の一つとして、本道文化の創造、振興といった役割を果たしてきたものと認識している。
リニューアルに当たっては、近美がこれまで果たしてきた役割を引き継ぎつつ、これまで以上にアートの普遍的価値の継承、発展と発信に取り組むことによって、誰もがその豊かさを享受することで、多様な人々が互いを受け入れ、生かし合う、創造性と活力にあふれる社会の実現を目指すことをビジョンとして掲げて検討を進めているところである。
近代美術館の位置付けについて。近代美術館は、これまでも美術作品の収集や多彩な展覧会を開催するほか、収蔵作品の貸借など、他の公立・私立美術館との連携はもとより、作家、作品に関する情報提供や作品の取り扱いに関する助言、他館の運営協議会や作品収蔵委員会への参加などによって他美術館の活動を支援するとともに、教育普及活動や学校教育を支援する取組も行ってきており、今後においても内外にわたるそうしたネットワーク機能を通じて、本道の美術文化の振興の中核を担っていく。
Q檜垣委員 目指す姿の実現に向け、リニューアル後の美術館の役割や取組についてどのように考えているのか、伺う。
A佐藤道立近代美術館担当課長 近代美術館の役割や取組について。中間報告においては、近代美術館の使命、役割をミッションとして、本道の美術文化の中核として道民に信頼され、親しまれるとともに、誰もが楽しみ、学び、安らぎを感じ、人生の豊かさを見いだすことができる場所となること、アートを介した新たな発見や感動体験によって、人々の生涯を通じて創造力と豊かな感性を育み、刺激し続けること、様々な人々や団体と協働し、地域のアートの活性化に貢献するとともに、多様性の尊重や持続可能性が求められるこれからの社会づくりに向け、美術館としての活動を積み重ねながら道民と共に歩んでいくことを掲げている。
また、近代美術館が取り組んでいくこととして、ユニバーサルデザインの考え方をソフト、ハードの両面に取り入れるなどのハーモニー、貴重な作品を収集、活用し、大切に守り引き継ぐコレクション、アートの価値を引き出し美術館活動に幅広く生かす調査研究活動を行うリサーチ、様々な人々と協働し、美術文化等を活性化するコラボレーション、子どもが自ら楽しみ、何度も訪れたくなるような企画を実施するウィズ・キッズの五つのコンセプトを掲げている。
Q檜垣委員 コンセプトのうち、施設整備とも大きく関連するハーモニーの実現に向けて、具体的にどのような視点で検討するのか、伺う。
A佐藤道立近代美術館担当課長 ハーモニーについて。このコンセプトは、近代美術館をくつろぎの空間として魅力を向上させるとともに、ユニバーサルデザインの考え方を取り入れるほか、都心の緑の中にある美術館として環境に最大限配慮していくことを目指すものである。
道教委としては、これまで道民の皆さんからいただいた、都心部の中の豊かな今ある自然を大切に守り、残してほしいといった整備に関する多くの意見や、有識者や知見を有する建設事業者から助言をいただいた建築物等に関する最近の議論を踏まえて、これまで以上に魅力を高め、文化と自然の調和のシンボルとなるとともに、道民の皆さんに親しまれる美術館になるよう検討を進めていく。
Q檜垣委員 ウィズ・キッズの実現に向け、具体的にどのような視点で検討するのか、伺う。
A佐藤道立近代美術館担当課長 ウィズ・キッズについて。子どもたちが自らの感性や想像力を働かせながら、鑑賞を通じて、豊かな感性や芸術文化を愛する心を育むことが重要であることから、これまで近代美術館では、修学旅行などにおける学習の場の提供や、収蔵作品を学校で見てもらいながら学芸員が鑑賞の手ほどきを行う出張アート教室などを実施してきたところである。
今後は、さらに、学校教育との連携等による発達段階に応じたラーニングプログラムの開発や、子どもと大人が一緒に楽しめるワークショップの実施、子どもの視点に立った展示の工夫などによって、生涯にわたるアートとの関わりの礎を築いていけるよう検討していく。
Q檜垣委員 リニューアル後の近代美術館がより魅力ある美術館となるためには、収集保存、調査研究、展示、教育普及を担う学芸員の資質向上や人材確保が欠かせないと考えるが、どのように取り組むのか、伺う。
A菅原教育部長 学芸員の資質向上などについて。近代美術館が目指す姿の実現に向けた取組を着実に進めていくためには、美術館で働く職員、特に学芸員の意欲や専門性の向上が重要であると認識している。
他の都府県においては、業務の総括をはじめ、作品の保存、修理、履歴管理、教育普及、資料の収集、保管、公開といった業務や、広報、資金調達など、それぞれの業務に専門的に従事するスタッフを配置、育成するなど、より専門性を高めた職員配置の事例が増えていることから、道教委としても、組織内におけるOJTに加えて、国や関係機関が実施する研修や国際会議等派遣事業への積極的な参加によって専門性の向上を図るほか、インターンシップや学芸員資格認定のための博物館実習の実施による後進育成についても検討し、目指す姿の実現、継承が確実なものとなるよう取り組んでいく。
Q檜垣委員 樹木伐採分の復元について。仮に、各整備案において、樹木伐採分を植樹する場合、知事公館・近代美術館エリア内で代替地を確保することは可能なのか、伺う。
A佐藤道立近代美術館担当課長 樹木伐採に伴う復元などについて。道教委としては、有識者等からの意見を踏まえると、近代美術館の整備に伴い、樹木を伐採するに当たっては、開発による環境や景観への影響を低減するため、知事公館・近代美術館エリア内での回復措置も検討する必要があると考えている。
現在、本エリア内で植樹が可能なのは、樹木のない知事公館裏の芝生広場が約3000平方㍍、その他の広場で約2000平方㍍となっているが、仮に、各整備案において伐採本数分の植樹を行う場合、改修および収蔵庫増築の場合、約10本で約200平方㍍、現地新築の場合、約50本で約800平方㍍、移転新築の場合、約160本で約2600平方㍍の面積が必要になる。
Q檜垣委員 新築案においては、新たに設計するため、自由度は高くなるが、現地改修案において、間仕切りの変更などによって諸室を転用すれば、美術館活動に必要な面積は十分に確保できるのか、伺う。
A佐藤道立近代美術館担当課長 改修案における必要面積の確保について。有識者からは、現在の近美の面積は他の美術館と比べて広いというわけではない、改修の場合は、収蔵庫は増えるが、諸室の面積が不足するなどといった意見があったところである。
このため、道教委では、増床について、美術館等の文化施設に関する知見を有する建設事業者に助言を求めたところ、現在、利用の少ないテラスを活用した諸室への転用や、客席が階段状の大規模空間を有する講堂を多階層化してフラット化したり、休館中に利用できないカフェスペース等、機能の一部を増築または別棟にしたりすることで増床が可能とのことであったことから、目指す姿の実現に向け、十分な面積を確保できると考えている。
Q檜垣委員 近年の他県の美術館のリニューアルにおいて、改修または新築など、整備方法の傾向はどのようになっているのか、伺う。
A佐藤道立近代美術館担当課長 他県の状況について。近代美術館と同様に絵画や彫刻等の美術品を総合的に扱う全国の公立美術館のうち、過去10年間にリニューアルを行っている事例は14館あり、うち、改修が9館、新築が5館と、既存の施設を活用したリニューアルの事例が多くなっている。
なお、新築した事例については、新設の1館を除いて、比較的規模が小さい美術館が大幅に増床するために新築しているものと承知している。
Q檜垣委員 整備案の決定に当たっては、休館期間の長さは重要な要素と考えるが、所見を伺う。
A佐藤道立近代美術館担当課長 休館期間について。美術館の建設に当たって、国の指針では、躯体コンクリートや内装材、接着剤から発生する有害ガスを減衰させるため、いわゆる枯らし期間をコンクリート打設後、二夏以上確保する必要があり、この枯らし期間に基づき、三つの整備方法を比較した技術的検討調査で、休館期間は、改修および収蔵庫増築の場合は約2年、現地新築の場合は約4年、移転新築の場合は約1年という結果であった。
枯らし期間について、専門的知見を有する建設事業者からは、空気循環浄化装置の導入や有害ガスの排出が少ない材料の採用などによって、枯らし期間の短縮は可能とのことであり、これらの工法を採用すると、技術的検討調査で示した休館期間が現地改修および現地新築案で1年近く短縮となる可能性があるといった助言をいただいたところである。
Q檜垣委員 道の北海道地域材利用推進方針に基づき、地域材の利用を促進することによって、本道林業の活性化や森林の適切な整備につなげるためにも、主要構造物以外において木質化を積極的に進めるべきと考えるが、認識を伺う。
A佐藤道立近代美術館担当課長 木質化について。道の北海道地域材利用推進方針では、道が整備、施工する公共建築物について、内装等の木質化や木製家具等には積極的に地域材を活用することとなっている。
道教委としては、近代美術館の整備に当たって、地域材の利用は林業・木材産業の成長産業化や脱炭素社会の実現に貢献することとなることから、関係部局や有識者等から意見を伺うなどしながら、木質化や地域材の利用を積極的に検討していく。
Q檜垣委員 他の美術館では、プロジェクションマッピングなど、デジタル技術の活用が広がっている。カフェやミュージアムショップの充実など、展覧会以外の機能を充実することも必要と考える。
現時点でどのような対応を検討しているのか、伺う。
A佐藤道立近代美術館担当課長 美術館の機能の充実について。道教委では、現近代美術館における課題やこれまでいただいた道民の皆さんの意見などを踏まえて、目指す姿の実現に向けた施設整備の基本的考え方や必要な機能として、デジタル技術を活用した鑑賞方法の確立や、美術図書室や情報コーナーの充実、北海道美術史に関わる基礎資料を利用できるアーカイブの構築のほか、カフェやレストラン、ミュージアムショップなど、美術作品を鑑賞した余韻を楽しむことができる場の創出などを検討しているところであり、より一層、道民の皆さんに親しまれ、魅力ある美術館となるよう、機能の充実について検討していく。
Q檜垣委員 これまでの議論を踏まえ、道教委としては、どのように近代美術館のリニューアルを行っていく考えなのか、伺う。
A中島教育長 道教委では、これまで、道民の皆さんや有識者からいただいた意見や三つの整備案の比較調査結果、専門的知見を有する建設事業者からの助言を踏まえ、整備方法の検討を進めてきたところである。
道教委としては、中間報告のミッションやコンセプトに掲げている持続可能性、環境への最大限の配慮や、緑の保全に関する多くの意見、他県の整備状況、現地改修でも機能を確保でき、休館期間を短縮できるという技術的助言、SDGsの観点からよい建築物を長く使い続けることは世界の潮流といった最近の議論などを踏まえて、文化財への登録の可能性が指摘され、建築物として一定の評価を受けている現在の近代美術館の建物を活用し、諸室の配置の見直しや増築などのリノベーションを行った上で、歴史的価値を有する建築物としても次の世代に適切に引き継いでいくとともに、目指す姿に掲げたビジョン等を実現することによって、これからの時代にふさわしい新しい美術館として、地域社会や人々の生活がより創造性に満ちた豊かなものとなるよう検討を進め、年内をめどに構想を取りまとめていく。
(道議会 2024-12-11付)
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【質問者】 ▼前田一男議員(自民党・道民会議) ▼赤根広介議員(北海道結志会) 【答弁者】 ▼鈴木直道知事 ▼北村英則総合政策部長兼地域振興監 ▼中島俊明教育長 ◆教員確保 ...(2024-12-10) 全て読む
道議会質疑 一般質問(9月24日)
【Q 質問Question A 答弁Answer P 指摘Point out O 意見Opinion D 要望Demand】 【質問者】 ▼檜垣尚子議員(自民党・道民会議) ▼広田まゆ...(2024-12-06) 全て読む
4定道議会一般質問(2日) オンライン講習 講義数を増加へ 社教人材の育成
2日の4定道議会一般質問では、社会教育人材の育成が取り上げられた。 道教委の中島俊明教育長は、地域における住民の主体的な学びや実践を促し、地元企業・NPOと連携して地域の持続的発展を支...(2024-12-05) 全て読む
道議会質疑 一般質問(9月20日)
【Q 質問Question A 答弁Answer P 指摘Point out O 意見Opinion D 要望Demand】 【質問者】 ▼角田一議員(自民党・道民会議) ▼木葉淳議員...(2024-12-04) 全て読む
82億円を増額補正 給与改定など 教育費補正予算案
道教委は2日、4定道議会に追加提案する6年度教育費補正予算案を公表した。82億2553万円の増額補正で、既計上額と合わせた6年度教育費予算の総額は3939億5392万円となる。 道人事...(2024-12-04) 全て読む
道議会一般質問(11月29日) 保護者同士 交流の場設置 不登校支援
11月29日の4定道議会一般質問では、不登校児童生徒の保護者に対する支援が取り上げられた。 道教委の中島俊明教育長は、フリースクール等の関係者も参画する連絡協議会において不登校の児童生...(2024-12-03) 全て読む