道議会質疑 予算特別委員会(10月1日) Q 質問Question A 答弁Answer P 指摘Point out O 意見Opinion D 要望Demand(道議会 2024-12-17付)
【質問者】
▼鶴羽芳代子委員(自民党・道民会議)
▼水口典一委員(北海道結志会)
【答弁者】
▼中島俊明教育長
▼菅原裕之教育部長
▼山本純史学校教育監
▼伊賀治康総務政策局長
▼山口利之ICT教育推進局長
▼出分日向子教育政策課長
▼田口範人義務教育課長
▼髙田安利高校教育課長
▼伊藤直人社会教育課長
▼北川慎太郎ICT教育推進課長
◆小・中学校の少人数学級
Q鶴羽委員 本道においては、本年度、全ての小学校で35人学級が導入された。導入に伴って、小学校第1学年から第6学年までの学級数はどれぐらい増加したのか、伺う。
A出分教育政策課長 35人学級の導入に伴う学級数について。札幌市を除く道内の公立小学校におけることし5月1日現在の学級数は5545学級、一方で、ことし5月1日現在の児童数および学級数を基に40人学級として機械的に算出した場合、5147学級となり、398学級の増となる。
Q鶴羽委員 本道においては、国に先行して、小学校第6学年に加え、中学校第1学年の一部でも少人数学級を導入しているとのことだが、実施の方法および学級数がどれぐらい増加したのか、こちらも伺う。
A出分教育政策課長 本道における先行実施の状況について。本年度は、札幌市を除く道内の公立小・中学校において、国の加配を活用して、小学校第6学年の全ての学級を35人以下とするとともに、中学校第1学年において、生徒数が70人を超える学校で1学級を35人以下としており、全ての学級を40人以下とした場合と比べて、小学校第6学年が75学級増、中学校第1学年が50学級増となっている。
Q鶴羽委員 ほかの都府県や政令市でも、国に先行して小・中学校で1学級当たりの児童生徒数を40人未満としているところが多いと聞いている。その状況について伺う。
A出分教育政策課長 他の都府県等の状況について。小学校第5学年までを35人以下学級としている国に先行して、本年度、一部の学校を対象とする場合を含めて、1学級当たりの児童生徒数を40人未満としているのは、都道府県に指定都市を加えた全67自治体のうち、小学校第6学年は、北海道を含め、56自治体と8割以上、中学校第1学年は、北海道を含め、64自治体とほぼ全て、第2学年は47自治体、第3学年は46自治体と、およそ7割の自治体となっている。
Q鶴羽委員 道教委としては、本道における少人数学級の導入によってどのような成果や課題があると認識しているのか、伺う。
A伊賀総務政策局長 少人数学級導入による成果および課題について。少人数学級実践研究実施校から、児童生徒の学習意欲の向上や学習規律の定着などの報告が多く寄せられたほか、子ども一人ひとりに目が行き届く、個別相談の時間が確保できたなどと聞いている。
一方、35人学級のさらなる拡大に当たっては、中学校の教科担任制を踏まえた教員の増員のための人材および財源の確保が必要と考えている。
Q鶴羽委員 教職員定数に関しては、ことし8月、質の高い教員の確保に向けて出された中教審の答申を受けて、国では、小学校における高学年に加えて、中学年への教科担任制の推進や生徒指導担当教師の全中学校への配置が検討されている。
道教委としては、こうした国の動向についてどのように認識しているのか、伺う。
A伊賀総務政策局長 教職員定数に関する国の動向などについて。文部科学省においては、多様化、複雑化する教育課題への対応と新たな学びの実装による教育の質の向上を目指し、小学校中学年における教科担任制の推進や生徒指導担当教師の全中学校への配置などを来年度の概算要求に盛り込んだところであり、道教委としては、既に小学校中学年の一部で教科担任制を導入し、成果が見られることも踏まえ、持続可能な学校の指導・運営体制の充実に向けて有効な施策であると認識している。
Q鶴羽委員 不登校やいじめ等、多様化、複雑化する教育課題に対応するとともに、個に応じた学びの充実を進めるためには、教職員の一層の定数改善が必要である。
道内の教育関係者からも、中学校における少人数学級の拡大について要望が出されていると伺っており、これまでの少人数学級の成果や課題を踏まえて、多くの都府県や政令市でも取り組まれている中学校全学年への35人学級編制の導入に向けた検討が必要であると考える。
道教委としては、今後どのように対応していくのか、伺う。
A中島教育長 今後の対応について。少人数学級は、主体的・対話的で深い学びの実現や、教員が生徒一人ひとりに向き合う時間を確保し、きめ細かな指導を行う上でも有効であると認識している。
一方で、中学校におけるさらなる少人数学級編制の拡大には、教科担任等の増員など大幅な定数改善が必要となるが、現在、国では、小学校の35人学級の整備を計画的に進め、効果の検証結果を7年度中に取りまとめることとしていることから、道教委としては、定数改善に向けた動向を注視しながら、広域分散型で小規模校が多い本道の実情に鑑みた改善が行われるよう、様々な機会を捉えて、国に対し強く要望するとともに、既に導入している他県等の取組状況を把握していく。
◆キャリア教育
Q水口委員 専門高校における職業教育、職業理解に向けた取組の実施状況について伺う。
A髙田高校教育課長 職業理解に向けた取組について。各専門高校においては、職業生活に必要となる基本的な能力や態度、望ましい勤労観や職業観を育成するため、それぞれの学科の特性に応じて、卒業生や職業人等との対話や現場見学、企業等におけるインターンシップ、企業と連携した商品の開発、販売、学科の特色を生かした地域や小・中学校でのボランティア活動などに取り組んでいる。
各高校においては、こうした様々な取組を通じまして、産業社会における自己の生き方について考えさせ、社会に積極的に寄与し、生涯にわたって学習に取り組む意欲や態度を養う観点で教育活動を展開している。
Q水口委員 代表質問の答弁で、本年度は、経済部と連携した出前講座を25の高校で実施しているとのことだった。
出前講座について、専門高校において、各部と連携してどのような取組を実施しているのか、伺う。
A髙田高校教育課長 出前講座の実施状況について。各専門高校においては、学校の実態や学科の特性に応じて、知事部局の各部局と連携し、外部講師による出前講座を行っており、例えば、農業高校では、農政部と連携した6次産業化や農業経営等の学習、工業高校や農業高校では、建設部と連携したドローンなどのICT機器の体験講習、工業高校や水産高校では、経済部と連携した洋上風力発電に関する施設見学や出前授業などが行われている。
Q水口委員 専門高校において、新たな産業に対応する新学科の新設について、道教委の認識を伺う。
A髙田高校教育課長 新たな産業への対応について。専門高校においては、グローバル化や情報化の進展、技術の高度化など社会の様々な変化に対応し、地域の持続的な発展を支える人材を輩出することが求められており、道教委では、職業学科について、これまでの創意工夫ある取組の継承や地域産業との関連などを総合的に勘案しながら、新たな産業に対応していく必要があると認識している。
他方、学科の新設については、既存の教育課程における学びの継続の必要性や指導者の確保、施設設備等の課題への検討を要することから、当面は、生徒の学習ニーズを踏まえ、教育課程の工夫改善によって新たな産業についての基礎知識を身に付けさせるなど、各学校の実情に応じた教育の在り方を検討していく。
P水口委員 時代のニーズに的確に対応すること、スピード感を持って対応することが求められている時代において、前向きとは言えない答弁であった。人材不足、担い手不足と言われる時代で、職業学科の新設について、ぜひともスピード感ある対応を求めておきたい。
Q水口委員 過日の新聞報道で、全国の建設業や製造業が人手不足のため、即戦力を養成する道内工業高校への求人が右肩上がりで増えており、1校に2000件以上の求人が寄せられるなど、極端な売手市場になっている。
大卒採用に絞ってきた都市部の大手企業も工業高校の生徒を積極的に採用しており、若者の都市部流出は道内の中小企業にとって深刻な課題になりつつある。このことについて、認識を伺う。
A髙田高校教育課長 高校の求人状況について。就職を希望する生徒への指導においては、毎年度の求人の動向にかかわらず、生徒の希望や適性、能力を踏まえ、卒業生のこれまでの就職実績や活躍等による企業との信頼関係のほか、保護者の意向等も十分に確認した上で、学級担任や関係学科の教員などが連携し、組織的、系統的な就職指導に取り組んでいる。
こうした取組に加えて、生徒が地域の企業の魅力や仕事の内容を理解した上で、高校卒業後に実際に働いている姿をイメージできるよう、地元産業界と連携したインターンシップや応募前職場見学などの体験的な学習活動を通じて、一人ひとりの希望を尊重したきめ細かな進路指導が実現できるものと認識している。
Q水口委員 本道は、人手不足が深刻化する中で、専門高校への進学を自ら選択できる中学校での教育も重要になってくると考えている。
中学校においては、学習指導要領で職場体験活動を実施することになっている。中学生に対し、本道経済の発展に寄与するため、技術を習得することの必要性について、キャリア教育としてより一層積極的に取り組むべきと考える。これについての見解を伺う。
A田口義務教育課長 中学校におけるキャリア教育について。中学校では、技術・家庭科で、ものづくりなどの技術に関する実践的、体験的な活動を通して基礎的な理解を深めることとされているほか、特別活動等において、職場体験活動を学校教育全体として行うキャリア教育の一環として位置付け、職業や進路、生き方に関する啓発的な体験が行われるようにしている。
道教委としては、毎年度の教員研修等において、職場体験活動の重要性や教育活動全体を通した組織的かつ計画的なキャリア教育の充実に向けた指導助言を行うとともに、生徒が自身の学びの過程や自らのキャリア形成を振り返ることができるキャリアパスポートの活用促進を図るなどして、中学校におけるキャリア教育の一層の充実に努めていく。
Q水口委員 今後、児童生徒へのキャリア教育について、道教委としてどのように取り組んでいく考えなのか、伺う。
A中島教育長 今後の取組について。デジタル化の進展などに伴い、産業構造が大きく変化する中、専門性の高度化や最先端の技術に対応した人材を育成していくためには、学校と産業界等が連携協働し、キャリア教育の深化を図ることが重要である。
道教委では、これまで、専門高校におけるデジタル技術に関する実践的、体験的な学習のほか、半導体や洋上風力発電に関するセミナーを実施するなど、先端技術を取り入れた職業教育や新たな産業についての職業理解の充実を図ってきた。
今後は、これまで以上に産業界等と緊密に連携して、デジタルトランスフォーメーション(DX)に関する学習の充実を図るとともに、企業等での実習と学校での講義等を組み合わせた、いわゆるデュアルシステムの効果的な活用や、産業構造の変化に対応した教員の指導力向上を図る機会を充実させるなどして、児童生徒一人ひとりが持つ可能性や能力をさらに高めるキャリア教育を展開して、地域の持続的な成長を支える人材の育成に取り組んでいく。
◆ネイパルの活用
Q水口委員 道内6施設のネイパルにおける利用状況の推移について伺う。
A伊藤社会教育課長 ネイパルの利用状況について。コロナ禍以前である平成30年度の施設利用者は、6施設の合計で約19万1000人であったが、コロナ禍による休館や宿泊定員の制限等によって、令和2年度は、平成30年度の約35%となる約6万6000人となったところである。
令和4年度以降、小・中学校の宿泊研修等の再開によって回復傾向ではあるものの、児童生徒数の減少や学校行事の見直し、子ども会や少年団、生涯学習活動の団体など、社会教育関係団体の利用が十分回復していないことなどによって、令和4年度は、平成30年度の約51%となる約9万8000人、令和5年度は、約65%となる約12万3000人となっている。
Q水口委員 それぞれのネイパルにおいて、利用促進のためにどのような取組を行っているのか、伺う。
A伊藤社会教育課長 ネイパルにおける取組状況について。各施設では、スタッフの資質向上や効果的な広報、利用者層の拡大など、施設運営上の課題の解決や、より魅力ある取組の企画、実施に向け、指定管理者と駐在職員がミーティングやワークショップ、スキルアップ研修等によって、チームとしての連携体制の強化を図ってきたところであり、市町村教委や学校等との意見交換によって、ニーズを把握し、新たなプログラムや連携事業の提案等を行っているほか、地元自治体と連携したスポーツ合宿の誘致や、新規利用の拡大に向けた職員による出前講座の実施、利用者のニーズに応じた柔軟な対応や電子決済等による利便性向上など、利用促進につながる取組を展開しているところである。
Q水口委員 今回の研修は、ネイパルが提供している防災アクティブ・プログラム、通称「防災A・P」を活用させていただいた。その中で、愛称「Doはぐ」という避難所運営ゲームを実施したが、道内においても、振興局、各市町村などで実施実績があると伺っている。地震、水害の自然災害が頻発する昨今で、このプログラムは、青少年にとって大変有意義な研修であると考える。
道教委としても、毎年9月を「防災A・P月間」としているが、ネイパルでの研修プログラムとして、「防災A・P」の普及と取組について伺う。
A伊藤社会教育課長 「ネイパル防災A・P」について。本プログラムは、防災に関する体験的なプログラムの提供を通じて、災害に対応できる人材の育成を図ることを目的として、4年度から6施設全てで実施しており、ネイパルを利用する学校や子ども会等の研修プログラムや1日防災学校、リーダー養成などの市町村事業で活用されるほか、児童生徒や親子を対象とした事業を企画、実施してきた。
また、毎年9月の「防災A・P月間」では、かでる2・7や道庁本庁舎でパネル展を開催するとともに、各ネイパルにおいて取組の展示や主催事業を実施するなどして本事業の普及を図ってきたところである。
今後は、道などが主催する各種防災イベント等と連携し、一層の普及啓発を図るとともに、各施設の取組を紹介するプログラム集を作成するなど、引き続き、学校や団体、地域における取組を支援し、地域全体の防災力の向上に努めていく。
Q水口委員 今後、ネイパルの利用促進に向け、どのように取り組んでいくのか、所見を伺う。
A菅原教育部長 今後の利用促進について。ネイパルは、集団での宿泊活動や自然体験、生活文化体験などを通して、青少年をはじめ、様々な年代の学びを支援する役割を担っており、ネイパルの持つ教育機能を今後も十分に発揮するためには、これまで以上に地域や学校が抱える様々な教育課題や地域の方々のニーズを的確に把握し、社会の変化に対応した施設運営を進めていく必要がある。
このため、道教委としては、今後、より多くの道民の皆さんにネイパルを活用いただき、様々な年代が集い、学ぶ拠点となるよう、地域と連携した多様な主催事業や体験プログラムの充実、学習ニーズに対応した柔軟な施設運営、SNSを効果的に活用した情報発信など、指定管理者と一層、連携協力し、一体となって利用促進に向け取り組んでいく。
◆ICT教育
Q水口委員 義務教育段階の1人1台端末の更新について、令和6年度は25市町村で9250台の端末を更新する予定とのことである。現在の状況と、今後の各年次の対象市町村数と更新台数について伺う。
A北川ICT教育推進課長 1人1台端末の更新について。道教委では、ことし1月に実施した調査に基づき、25自治体で合わせて9250台の端末を更新できるよう予算を計上したところであるが、市町村に対し、あらためて希望調査を実施したところ、6年度は、15自治体で2258台の更新予定となっている。
また、次年度以降の更新については、各年度の5月1日現在の児童生徒数の推計を基に必要台数を調査した結果、7年度が159自治体で32万5022台、8年度は44自治体で3万5190台、9年度が11自治体で4990台、10年度が10自治体で1326台の調達予定となっている。
Q水口委員 中学校と高校の接続について、義務教育では、1人1台端末で切れ目ないICT教育が実践をされている。高校では、保護者負担で端末を購入し、活用していると承知しているが、中学校から高校に進学する中で、ICT教育の継続性が途切れるとの話も聞く。
道学校教育情報化推進計画では、小中、中高の学校種間で円滑な接続を図るとされているが、中学校から高校へはどのような接続を行っているのか、伺う。
A北川ICT教育推進課長 中学校・高校間の接続について。一部の道立高校においては、ICTに関する教員の指導の在り方などによって、授業での活用が進んでいないケースもあり、中学校における学習活動との相違が生じるなどの課題が見られるところである。
道教委としては、学習の基盤となる情報活用能力を、小学校から高校までの12年間を見通して育成を図るため、教育局ごとに小・中・高の管理職や教職員などを構成員として開催する協議会において、ICTの効果的な活用に向けた議論を行っているところである。
こうした取組によって、先進的なICT教育を推進する中学校と地元の高校とで授業交流を行うことや、ICTを効果的に活用した授業を中学校と高校が協働して開発するなどの実践につながっているところである。
Q水口委員 切れ目ない一体的なICT教育実践のために、1人1台端末の公費での購入を高校まで広げるべきと考える。道教委の見解について伺う。
A山口ICT教育推進局長 高校における端末の費用負担について。道教委では、個人が所有し使用する教科書や電子辞書等の教材に係る経費は、これまでも、保護者からの理解を得ながら私費負担としてきており、端末についても、これらの教材と同様に私費負担を基本としているが、様々な事情によって、その用意が困難な生徒に対し、学校所有の端末を貸与するなど、きめ細かな対応を行っている。
道教委としては、引き続き、保護者に対して丁寧に説明するとともに、生徒が端末を活用した個別最適な学びや協働的な学びを継続することができるよう、国に対し、公費による端末整備を含めたICT環境の充実に向けた恒久的な財政措置を今後も強く求めていく。
Q水口委員 道学校教育情報化推進計画では、小学校から高校までの12年間を見通してICTを活用した授業改善等の取組を一体的に推進するとされており、高校への指導、支援の取組を充実する必要があると考える。どのように取り組む考えなのか、伺う。
A山本学校教育監 高校における取組について。各学校がICTを効果的に活用して、主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善に取り組んでいくためには、教員の指導力向上を図ることが大切であり、道教委では、教員を対象にICTを活用した授業づくりなどICTの活用に関する研修を実施してきたほか、ICT活用指導者養成研修の実施や、学校に対して研修コンテンツを提供するなどの支援に努めてきた。
今後は、全学校種の教員が参加する国指定事業の成果報告会や、ICT活用全道協議会において、ICTを効果的に活用した授業改善等に関する協議を行うとともに、小・中学校の優れた実践を、校種を超えて高校へも展開することとし、こうした取組を通じて、生徒の学びの質を高めるための個別最適な学びと協働的な学びを一体的に進め、高校教育の一層の充実に努めていく。
(道議会 2024-12-17付)
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