札幌幌南小でいじめ防止公開授業  仲裁者となる勇気育む  「噂」教材に傍観者の視点から
(札幌市 2024-12-20付)

 札幌市教委が本年度から研究開発事業の一環で取り組んでいる「いじめの防止等に向けた取組」の公開授業が18日、幌南小学校(大宮健一校長)で行われた。同校の杉原亮平教諭が日常生活で身近に感じられる「噂」を扱った教材で、児童が傍観者の視点に立つ指導展開を工夫。周囲の意見に惑わされない判断力や、仲裁者となる勇気を育む実践を披露した。

 市教委は本年度から3ヵ年計画の研究開発事業でスクールカウンセラーをはじめとする専門家の知見を取り入れながら、いじめの未然防止に向けた体験的・実践的な学びの在り方について研究を進めている。

 研究を通して市全体に普及する教育支援プログラムには、いじめの加害者・傍観者に視点を当てた実践を盛り込む。

 その一環として行われた公開授業では、事業の構成員を務める幌南小の杉原教諭が6年生の道徳(児童数33人)を指導した。

 教材「森川君のうわさ」は工作の出来を学級内で褒められた「森川くん」を、複数人の加害者が「大工の父親が作ったもの」といううわさを流す内容。主人公の「ぼく」は森川くんが工作を得意としていることを知っていながらも、うわさを阻止することができない傍観者の立場にある。

 授業で杉原教諭は、事前に学級内で行ったうわさについての印象や経験を尋ねるアンケート結果を公表し、児童の課題意識を醸成。6割を超える児童がうわさのイメージについて「悪い」「事実度は低い」と回答する一方「うわさを伝えたことがある」と回答した割合が5割に達していることを示した。

 具体的なうわさの例や友人の良い行いを周囲に褒める良い噂もあることを確認し「一人ひとりが安心して生活できるクラスにするためにはどんな心が大切か」を本時の課題に設定。教材を読んだあと「主人公」「森川くん」「加害者」のそれぞれの立場の性格や場面ごとの心情をペアワークでイメージするよう促した。

 児童からは「主人公は勇気を出せずにいる」「森川くんをかわいそうと思っているのに、何もしないのはずるい」など加害者ではなく、傍観者の主人公の心情に寄り添った意見が多く出た。

 杉原教諭は「どうして思ったことを言わなかったのか」と、傍観者の心情をより深く読み取れるように発問。

 教材には、3学期に入ると再度、森川くんの作った作品に関するうわさが流れ、孤立する場面がある。

 また、登場人物の一人「順子さん」が勇気を持って、うわさが事実と反することを学級内に伝える姿勢に、主人公は「ぼくも発言しなければならないと思った」と心情が変化する。

 杉原教諭はこうした「ぼく」の心情の変化を個人思考で確認させた。全体共有の場面では、児童一人ひとりが「このまま時が立つともやもやが残ると思ったから」「順子さんの勇気に背中を押されたと思う」と発表。学習のまとめとして、本時の課題「安心して生活できるために必要な心」を考えるよう促した。

 児童は「うわさを信じず、友人を不安にさせない心」「周りに流されない心が大切」などとワークシートに記入。公正・公平な態度で周囲と接する意識の大切さを実感した。

 杉原教諭は「一つの考えから複数の考えを広げられる点がすごいね」と児童を褒め、「残り50日の学校生活をみんなが安心して過ごせるクラスでいよう」と締めくくった。

 公開授業後は、事業の構成員が指導展開の振り返りや教育プログラムの進捗状況を交流。「事前アンケートの導入は子どもたちも課題が明確化しやすい」「加害者ではなく、傍観者にフォーカスすることで、児童の感情が揺さぶられたのではないか」などの意見が上がった。

(札幌市 2024-12-20付)

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