リーディングDX校の帯広柏葉高 生成AI等の活用探る 国語など5教科で研究授業(学校 2024-12-26付)
【帯広発】文部科学省事業「リーディングDXスクール事業」の指定を受けている帯広柏葉高校(鈴木究校長)は18日、同校で事業成果報告会を開催した。生成AIをはじめ、1人1台端末とクラウド環境を活用した効果的な教育実践を5教科の授業を通じて公開。道内の学校における個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実を図る授業改善の推進を目指した。
同校は5年度から文科省「リーディングDXスクール事業」の指定を受け、本年度は生成AIパイロット校として取組を推進。パイロット校として、生成AIを効果的に活用した授業案の開発や情報活用能力の育成を図るとともに、個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実や校務DXに寄与する取組の充実を図っている。
この日、道内の小・中学校、高校、義務教育学校および特別支援学校の教職員のほか、各市町村の教育委員会のICT活用担当主事らを対象に事業成果報告会を実施。約170人が参加した。
開会に当たり、鈴木校長があいさつ。「2年間の取組成果を授業実践として公開するこの日に全国各地から校種を越えて多くの方が足を運んでくれた。個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実を図る授業改善の方向性について見識を広げるとともに、学びを自校に持ち帰り自立した学習スタイルの確立に向けて各校で実践を深めてほしい」と期待を寄せた。
続いて、同校の山﨑広平教諭が本年度から始動した国語、地歴公民、理科、外国語、美術の5教科の授業者と校内外の伴走者、担当指導主事を一つのチームとして編成し授業事例の創出を目指すプロジェクトなどの取組状況を紹介。また、生成AIに対する生徒の理解度の状況等をまとめて報告した。
このあと、研究授業として国語、地歴公民、理科、外国語、美術の5教科の授業を公開。教科ごとにリサーチ・クエスチョンや仮説を設定しており、視察者は研究仮説に対する検証の視点を持って各授業を視察した。
このうち、戸川貴之教諭による2学年国語科「科学・技術の歴史の中での社会」では、リサーチ・クエスチョンを「文章生成AIの活用は、個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実に効果を発揮するのか。また、そこから学習者が自己調整を発揮するための最適な環境調整とはどのようなものか」と設定。
仮説として学習者は生成AIと対話をすることで「設定した題材について考えを広げたり深めたりできるはずである」「複数の文章を読んで自分の考えを広げたり深めたりしようと粘り強く取り組み、自らの学習を調整するはずである」と定めて授業を公開した。
また、松久充生教諭による1学年美術科「版画表現」ではリサーチ・クエスチョンを「ファインアートにおいて、生成AIをコーチとして個別最適な学びの充実を図ることができるか」と設定。
「構図(色彩)光と影や動きなどの表現を生成AIに質問する場面(画像分析)において、プロンプトを工夫したり使用する生成AIを適切に選択したりすることにより、的確なコーチングが得られ、その結果、個別最適な学びの充実につながっているか」「シミュレーション画像を生成する場面(画像生成)において、イメージの具現化から生じた共感や違和感を体験することが、他者との協働的な学びの一助となり、その結果、個別最適な学びの充実につながっているか」といった仮説を定めている。
公開した授業では「私の日常」をテーマに制作した版画の下書きを生徒同士で講評。また、AIによる画像分析、画像生成を使ったシミュレーション画像の制作と鑑賞を経て、生徒はそれぞれの講評結果を整理しつつ、手直しの案に納得したら下書きに手を加えていった。
授業公開後には、イノベーションワークスペース「Miro」を活用して研究協議。参加者は仮説ごとに「有効性の高さがうかがえる学習者の様子やキーとなる発言」「改善点がうかがえる学習者の様子やキーとなる発言」「より有効性なものとのなるための提案」について意見を出し合い、各教科の仮説の有効性を4段階で評価した。
美術科の研究協議では「AIへのプロンプトを試行錯誤しながら分析している様子は独立した学習者の姿」「AIによるコーチングをもとに再構成している様子が見られた」との声が上がる一方で「自分のイメージ(情緒的なもの)を伝えることが難しそう。参考程度にとどめる気持ちが重要」など有効性を確立するため意見を交わした。
国語科の研究協議では「要約をAIに任せるなど時間の有効利用に役立っていた」「AIを一つのツールとして使い慣れている様子が見られ自分で必要に応じて使用していた」「AIは学習者に寄り添い過ぎる。異なる視点からの助言の必要性がある」など生成AIの活用の在り方について研究協議を重ねた。
(学校 2024-12-26付)
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