文科省26年度インクルーシブ教育システム構築モデル事業の成果 「合理的配慮」充実に向け 道内指定校・地域の取組まとめる
(道・道教委 2015-09-29付)

 文部科学省は二十六年度インクルーシブ教育システム構築モデル事業の成果をまとめた。本道分では、札幌市立栄町小学校・栄町中学校、新十津川町立新十津川中学校、新ひだか町立三石小学校のほか、地域指定を受けた知内町の実践を報告。合理的配慮協力員の配置やデジタル教材の活用、訪問型家庭教育支援、就労相談体制の構築など障がいのある児童生徒等への「合理的配慮」を充実した方策を示した。モデル事業は本年度で終了し、来年度から補助事業として全国展開していく予定。文科省では、全国の研究成果を集めた独立行政法人国立特別支援教育総合研究所の「合理的配慮実践事例データベース」を、各校で取り組む際の参考にするよう呼びかけている。

 インクルーシブ教育システム構築のための特別支援教育を着実に推進していくため、各学校の設置者および学校が、障がいのある子どもに対して、その状況に応じて提供する「合理的配慮」の実践事例を収集。交流・共同学習の実施や、域内の教育資源の組み合わせ(スクールクラスター)を活用した取組の実践研究を行い、その成果を普及する事業。

 二十六年度、本道では、インクルーシブ教育システム構築モデルスクールとして、札幌市栄町小・栄町中、新十津川中、新ひだか町三石小に、インクルーシブ教育システム構築モデル地域(スクールクラスター)として知内町に事業を委託していた。

 栄町小・栄町中では、合理的配慮協力員を配置し、学識経験者や関係機関代表などからなる運営協議会も設置。対象児童生徒の合理的配慮について検討し、「誰もが受け入れられる学級風土の醸成や、合理的配慮によって小さな成功体験を繰り返していくことで安定して登校できるようになった」「合理的配慮協力員が保護者との合意形成など連絡・連携を密に進めてきた」「授業のユニバーサルデザイン化や個別の配慮、学習内容の調整、個別学習によって学習の理解や達成感を得られた」と成果を報告。今後は、認知特性を踏まえた配慮、タブレット端末などICT機器の効果的活用を進めていく。

 新十津川中では、通常の学級との交流・共同学習や特別支援学級における個別の指導など、多様な学びの場を設定。有識者を招き、授業参観や検討会を開催して生徒の効果的な学び合いを進めるノウハウを蓄積してきた。

 さらに、病弱・身体虚弱学級を二階から一階に移設し基礎的環境を整備。特別支援教育コーディネーターと合理的配慮協力員を中核に校内委員会において、生徒の個別の教育支援計画、実態記録をもとに、合理的配慮を検討するとともに、教職員研修を実施し、校内体制の充実に努めた。

 三石小では、個に応じた指導・支援体制を確保するため、合理的配慮協力員一人と、支援員を複数配置。特別支援学級にパソコンを設置し、学習支援教材として算数のデジタル教材を活用したほか、外部有識者を招いた特別支援地域研修会も開催した。

 校内教育支援委員会の定期的な開催によって、配慮すべき事項の情報を全教職員間で共有化し、校内体制を組織化できたことなどを成果に挙げている。

 知内町では、合理的配慮協力員が幼稚園から高校まで教育相談を行ったほか、道教育大学や特別支援学校の専門的な教諭を就学相談員、就労相談員として配置し、各学校における研修、相談に対応できる体制を構築した。

 一般町民や町内・町外の教職員などが参加したインクルーシブ教育の講演会の開催、就学に対して不安や悩みをもつ保護者に対する訪問型の家庭教育支援、高校・特別支援学校・地域企業団体の連携による就労相談体制の構築も進めた。

 これらの取組は今後、国立特別支援教育総合研究所のホームページにある「合理的配慮実践事例データベース」で紹介していく予定。文科省では、来年四月から「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」が施行されることから、各校では、このデータベースを参考に体制整備を進めるよう呼びかけている。

 なお、同事業は本年度で終了し、二十八年度からはインクルーシブ教育システム推進にかかる補助事業として進める予定。小・中学校へ看護師、合理的配慮協力員、外部専門家などを配置する計画としている。

(道・道教委 2015-09-29付)

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