3定道議会代表質問の質問・答弁概要(9月10日)
(道議会 2015-12-11付)

 三定道議会代表質問(九月十日開催)における笠井龍司議員(自民党・道民会議)、道下大樹議員(民主党・道民連合)の質問、および高橋はるみ知事、山谷吉宏副知事、柴田達夫教育長の答弁の概要はつぎのとおり。

◆学力向上対策について

笠井議員 市町村教委や各学校が道教委の提唱する学力向上対策に取り組んだ結果、本年度の全国学力・学習状況調査では、二教科で全国平均を上回ったものの、ほかの教科では差が縮まったとはいえ、依然として全国平均を下回る状況にあることから、あらためて家庭とも連携した取組を進める必要があると考える。

 しかし、地域によって保護者や地域住民の間に、子どもたちの学力に対する認識に大変温度差があり、現状や課題が十分に理解されているとは言えない現状にあるのではないか。

 ついては、保護者や地域住民の意識啓発に努め、学力向上に向けた取組を一層充実すべきと考えるが、見解を伺う。

柴田教育長 学力向上に向けた取組について。本道の子どもたちの学力向上のためには、授業の改善とともに、望ましい生活習慣を確立することが重要であり、道教委ではこれまで、学校、家庭、地域、行政が一体となった「ほっかいどう〝学力・体力向上運動〟」を展開する中で、教育関係者のみならず、保護者や地域住民など道民全体に対し、積極的な普及啓発を行ってきた。

 こうした取組によって、本年度の全国学力・学習状況調査では、本道の子どもたちの家庭学習の時間やテレビを見る時間等は、前年度と比べると改善しているものの、全国と比べると、いまだ十分ではない状況もみられる。

 このため、道教委では、今後、市町村教委や学校に対し、調査結果をもとに、子どもの学習状況などをより一層分かりやすく公表し、保護者や地域住民と課題や改善方策を共有した取組を進めるよう、指導助言するとともに、子どもの発達段階に応じた家庭学習の在り方を示した保護者向けの資料を新たに作成し、普及啓発に努めることや、PTAと連携した効果的な意識啓発に早急に取り組むなど、保護者や地域住民と一体となった学力向上に向けた取組を徹底・強化していく。

― 指 摘 ―

笠井議員 本年度の全国学力・学習状況調査の結果をみると、成績に改善がみられる部分はあるものの、依然として全国の下位にあり、また、ゲームやテレビ視聴の時間が長く、学習時間が少ないことなど、家庭での過ごし方に課題がある状況は変わっていない。

 学力向上を図るためには、市町村教委が保護者に対し調査結果と課題をきちんと明らかにし、保護者の理解が深まるよう努めるとともに、家庭においても危機感をもって取り組むことが必要であると考える。

 そのため、道教委として、市町村教委に対し、調査結果の公表について積極的に助言し、学力向上に努めるべきであると強く指摘しておく。

◆高校配置計画について

笠井議員 道教委は、九月一日、二十八年度から三十年度までの、高校配置計画を決定した。

 本年度の道内における中学校卒業者数は、ピークであった昭和六十三年の半数以下にまで減少するなど、全国を上回るペースで少子化が進んでいる。

 そのような中、教育効果を損ねないように学校の適正な規模を維持していくため、再編整備を進めてきたが、一方、地方創生の観点で申し上げると、高校の削減は人口減少等に重大な影響を及ぼすことから、本道の特性を踏まえた統廃合の在り方について検討する必要があると考える。

 文部科学省はことし四月、高校において双方向でライブ配信できるシステムを活用した、いわゆる遠隔授業による単位認定が可能となるよう、学校教育法施行規則の一部を改正しており、今後、遠隔授業を積極的に活用することによって、遠隔地にある小規模校の教育環境の充実を図ることが期待できると考える。

 道教委として、広域分散型の本道の特性を十分に配慮し、特に、ほかの学校への通学が困難な地域にある高校などについては、小規模校のメリットを生かしつつ、教育環境を充実し存続を図ることができるような弾力的な方策について、指針の見直しも含め早急に検討を進めるべきと考えるが、見解を伺う。

柴田教育長 高校配置計画について。道教委では、中学校卒業者数の減少に対応し、一定規模の生徒や教職員による活力ある教育活動を展開する観点から、高校の配置を検討しているが、広域分散型の本道において、人口減少社会への対応や地方創生の観点から、地域の教育機能を確保することも重要な課題であると認識している。

 このため、庁内に検討組織を設置し、現行の「高校教育に関する指針」の成果や課題などを検証するとともに、特に、ほかの学校への通学が困難な地域にある小規模校の在り方や教育環境の充実に向けた検討を進め、年度内をめどに方向性を取りまとめる。

◆中等教育学校について

笠井議員 中等教育学校に対する認識について。「高校教育に関する指針」においては、中等教育学校について、「今後は、中等教育学校の成果を見極めるとともに、市町村での設置を促進する」とされている。

 公立として道内で最初の中等教育学校となった登別明日中等教育学校の成果について、どのように評価しているのか、見解を伺う。

 また、本年度、札幌市が開設した札幌開成中等教育学校について、いわゆる受験倍率が十倍を超えたことをどのように認識しているのか、併せて見解を伺う。

柴田教育長 中等教育学校に対する認識について。登別明日中等教育学校においては、幅広い異なる年齢集団による生徒の交流などの教育活動や、六年間を見通した系統的・組織的なキャリア教育の実施によって、思いやりの心や向上心の醸成、物事に積極的に取り組む姿勢やリーダーとしての資質の向上、希望する進路の実現に向けた学習意欲の高まりなどの成果がみられ、中等教育学校の特色を十分に生かした教育活動が展開されているものと考えている。

 また、本年度、札幌市が開設した札幌開成中等教育学校については、六年間を通して課題探究的な学習に取り組むなどして、将来の札幌を支え、国際社会で活躍するバランスの取れた人材の育成を目指しており、このような特色ある教育内容に生徒や保護者の期待が高かったものと認識する。

笠井議員 意識調査について。「中等教育学校について、今後は、市町村での設置を促進する」、つまり、市町村立の中学校と高校の組み合わせで設置するという指針の考え方に大きな疑問を抱かざるを得ない。

 中等教育学校であれば、学級規模は一学年二クラスまたは三クラスが望ましく、ほとんどの生徒が常識的な範囲での時間で通学できることが望ましいと考えるが、この条件を満たす市町村は、極めて少ない現状にあるとも考える。

 中等教育学校設置の在り方について、保護者および生徒の意向調査を行うなどして、見直すべきであると考えるが、見解を伺う。

柴田教育長 中等教育学校の設置の在り方などについて。道教委では、市町村での中等教育学校を設置促進するという「指針」の考え方に基づいて、市町村に対し、登別明日中等教育学校における教育活動の成果等の情報提供や、設置に向けた意向や課題を把握するアンケート調査を実施するなど、中等教育学校の設置の促進に努めているが、札幌市以外での市町村では取組が進んでいない状況にある。

 今後、個別に意見を伺うなどして、市町村における設置がさらに促進されるよう取り組むとともに、現行の指針の成果や課題などを検証する中で、保護者等の幅広い意向把握の方法を含め、中等教育学校の設置の在り方について検討していく。

― 再質問 ―

笠井議員 登別明日中等教育学校の成果について伺ったところ、「積極的に取り組む姿勢や、リーダーとしての資質の向上」「希望する進路の実現に向けた学習意欲の高まり」など、中等教育学校の特色を十分に生かした教育活動が展開されているとのことである。

 また、本年度開校した札幌市立開成中等教育学校において、いわゆる競争倍率が十倍を超える出願状況であったことについては、「将来の札幌を支え、国際社会で活躍するバランスのとれた人材の育成を目指す教育に、生徒や保護者の期待が高かった」との認識を示した。

 このように伺うと、全道各地の生徒や保護者の間で、中等教育学校の設置を希望する声が多いのではないかと考えられるが、道内各地域にバランスよく設置すべきであるとも考える。

 教育長は、現行の指針の成果や課題を検証する中で、保護者等の幅広い意向把握の方法を含め、中等教育学校の設置の在り方について検討する考えを示した。

 中等教育学校の設置の在り方の検討に当たっては、人口減少社会が到来する中、地域社会を担う個性豊かで多様な人材を育成するためにも、総合教育会議の場で検討する必要もあると考えるが、教育長の見解を伺う。

柴田教育長 中等教育学校について。道教委としては、今後の在り方の検討に当たっては、人口減少の進行による児童生徒数の減少など、教育を取り巻く環境の変化や、現行の中高一貫教育の成果や課題の検証などを踏まえて、道立、市町村立などの設置主体の在り方、一体型、併設型、あるいは、連携型といった中高一貫教育の形態、さらには、設置にかかる地域の意向や地域に与える影響など、幅広い観点から検討を進めるとともに、中高をはじめ多様な学校間連携の在り方などについて、総合教育会議など様々な機会を通じて、知事部局と連携・協議を深め、明日の北海道を支える人材の育成に向けて取り組んでいきたい。

◆全国学力・学習状況調査

道下議員 八月二十五日に道教委から全国学力・学習状況調査の結果および教育長のコメントが発表された。その結果の考察は、全国とのポイント差をもってのみ論じられ、全国平均を大きく下回っていることを、いまだに、ことさら大きく取り上げ、学習状況を改善するなど一層の努力が必要としている。

 この文言からは、頑張っている児童生徒、日々指導に熱心に取り組んでいる教職員へのねぎらいの言葉、学校を支える地域や保護者への敬意や感謝の念は一切感じられない。それどころか、授業改善と生活習慣の確立のため、学校、家庭、地域、行政が一体となって取り組むと一方的に決めた「ほっかいどう〝学力・体力向上運動〟」などを継続し、来年度には、すべての教科で全国平均点以上にするとして、目に見えない目標に向かおうとしている。

 そこで、学力・学習状況調査は、そもそも誰のために、何に資するために実施されているのかの所見、また、今回の調査結果が本道の子どもたちにとって、どのような意味があるものと押さえているのかの見解、さらに、ポイント差のみをもって分析することの意味について伺う。

高橋知事 全国学力・学習状況調査の意義等について。この調査は、市町村教委や学校が、全国、全道との比較において、子どもたちの学力や学校での指導方法、基本的な生活習慣などについての状況や課題を把握、分析し、さらなる改善に役立てることを目的とするものと認識する。

 本年度の調査結果についても、今後、道教委をはじめ、各市町村教委や学校において詳細な分析を進め、授業の改善や望ましい生活習慣の確立など、本道の子どもたちのさらなる学力向上に向けた取組につなげていくことが重要と考える。

柴田教育長 全国学力・学習状況調査について。本調査は、義務教育の機会均等とその水準の維持向上の観点から、児童生徒の学力や学習状況を把握・分析し、教育施策の成果と課題を検証し、その改善を図るとともに、学校における児童生徒への教育指導の充実や学習状況の改善等に役立てることを目的としている。

 道教委としては、こうした検証改善サイクルの確立を通じて、本道に住むすべての子どもたちに社会で自立するために必要な学力を身に付けさせることを目指しており、二十七年度の本道の状況は、前年度に引き続き改善の傾向がみられ、これまでの学校、家庭、地域の取組が一定の成果として現れてきているものの、一方で、いまだ多くの教科で全国平均を下回っている状況にあることから、すべての関係者がこの事実と真摯に向き合い、子どもたち一人ひとりに確かな学力を保障する取組を推進する必要があると認識している。

 なお、調査結果については、市町村教委や学校において、教育の改善に効果的に活用することができるよう、教科の平均正答率や全国とのポイント差に加えて、領域別、設問別の解答状況や質問紙調査等の分析を踏まえた本道の子どもたちの生活習慣や学校の取組などについて公表を行っている。

道下議員 調査結果の解釈等に関する留意事項について、学力の特定の一部分であることや、学校における教育活動の一側面にすぎないことに留意する必要があるとしているにもかかわらず、本年度も、市町村名を明らかにした公表を行おうとしている。

 道教委は、小中一校や対象児童生徒が少ない市町村には配慮が必要としているが、学校数や児童数が多ければ公表して良いのか、その整合性について伺う。

山谷副知事 全国学力・学習状況調査の結果の公表について。調査の結果については、教育施策の改善や児童生徒の学習状況の改善に、学校、家庭、地域、行政が一丸となって取り組むことができるよう、道教委において、分かりやすい公表に取り組んできたと承知している。

 なお、公表する内容や方法については、調査結果は学力の一部分であることを踏まえるとともに、児童生徒の個人の結果を特定されるおそれがある場合は公表しないなど、教育上の効果や影響等を十分考慮したものとすることが大切であると考えている。

柴田教育長 調査結果の公表について。子どもたちの学力向上のためには、教育委員会や学校が保護者や地域住民に対し、調査結果を踏まえた的確な情報提供を行い、学力向上に向けた認識を共有し、一体となって取り組むことが重要であると認識している。

 このため、道教委では、前年度から、国の実施要領に示されている、公表する内容や方法等は教育上の効果や個人が特定される影響等を考慮して適切なものとなるように判断すること、また、調査によって測定できるのは学力の特定の一部であることや、学校の教育活動の一側面であることなどを明示することなどの配慮すべき事項を踏まえつつ、市町村ごとの特色や取組状況などを明らかにした公表を行うこととしており、本年度においても、国の定めた方針を踏まえて対応していく考えである。

道下議員 市町村別の結果公表が、子どもたちに与える影響は計り知れない。例えば、学校間、児童生徒間での得点競争が過熱化するのは当然である。その影響を検討したのか。また、検討したとすれば、なぜ、結果公表の必要性につながるのか。

 さらに、前年度よりも多くの市町村に結果公表を働きかけるとしているが、結果公表は強制すべきものではなく、市町村の意向を尊重しなければならないと考えるが、見解を伺う。

山谷副知事 市町村別結果の公表について。調査結果については、道教委において、教育施策や児童生徒の学習状況の改善に、学校、家庭、地域、行政が一体となって取り組むことができるよう、教育上の効果や影響等を十分に考慮しながら、分かりやすい公表に取り組んできており、市町村別結果の公表も、同意が得られた自治体について行われているものと承知している。

柴田教育長 市町村別結果の公表について。道教委では、国の実施要領を踏まえ、市町村別結果の公表内容については、平均正答率の数値等を単純に並べ、優劣を付けるといった、いわゆる序列化につながることがないよう検討したものであり、市町村教委に対しても、こうした考え方を丁寧に説明し、同意を得られた市町村について公表を行っている。

道下議員 調査自体が家庭の経済力や地域性が大きく関係していると指摘されているにもかかわらず、道教委の施策のみで結果向上を目指すのは、すでに限界がきていると考えるが、見解を伺う。

柴田教育長 学力向上の取組について。道教委では、機会均等を旨とする義務教育の趣旨を踏まえれば、生まれ育ったところによって、学力に大きな差が生じることは、本来あってはならないことと考えており、家庭の経済状況等にかかわらず、社会で自立するために必要な学力を、すべての子どもたちに確実に身に付けさせる必要があると認識している。

 そのため、これまでもチャレンジテストの実施や、家庭での望ましい生活習慣を確立するための取組などに加えて、退職教員や学生ボランティアなどを派遣する学習サポートの実施など、子どもたちの学力向上を支援する取組を進めてきたほか、知事部局とも連携し、学校、家庭、地域、行政が一体となった「ほっかいどう〝学力・体力向上運動〟」を推進してきており、こうした取組が一定の成果として着実に現れてきている。

 こうしたことから、今後においても、これらの取組を徹底するとともに、地域の実情などを踏まえ、知事部局と一層連携を強化しながら、子どもが安心して学べる環境づくりに努めていきたい。

道下議員 本道の子どもたちにとって必要な学力の向上を目指すのであれば、市町村まかせではなく、道が責任をもって教育条件の整備、教職員の加配等を進めることが最優先と考えるが、見解を伺う。

山谷副知事 教育環境の充実について。本道の小中学生の学力については、前年度に引き続き、改善傾向がみられるものの、一部の教科を除き、依然、全国平均には達していない。

 これまで、道教委では、学力の向上に向けて、チャレンジテストの実施、国の加配措置を活用しての若手教員の指導力向上、退職教員や学生ボランティアによる学習サポートの実施など、市町村教委や学校の取組を支援してきたと承知している。

 道としては、学力向上を図るため、今後とも、道教委と一体となって進めてきた「ほっかいどう〝学力・体力向上運動〟」を一層推進するとともに、教職員定数の改善など、教育環境の充実に関し、国に、必要な働きかけを行っていく。

柴田教育長 教育条件の整備等について。道教委では、これまでも、本道教育の推進に当たり、その責任と権限のもとに、教職員の任用や人事、給与の負担を行うとともに、本道教育が直面する教育課題を解決するために必要な様々な施策を展開してきており、今後においても、義務教育の機会均等とその水準の維持向上の観点から、全国学力・学習状況調査を活用した検証改善サイクルをより一層確かなものとし、子どもたちがたくましく成長し、より良い未来を生きるための教育環境づくりに向けて、引き続き、教職員の定数改善など、国に対して必要な働きかけをするとともに、市町村教委や学校の取組を支援していきたい。

― 再質問 ―

道下議員 学力の向上について、知事、教育長ともに、学校、家庭、地域、行政が一丸となって取り組むとしているが、この答弁はあくまでも調査結果の向上を目標としているとしか受け止めることができない。

 また、調査結果は学力の特定の一部であり、学校教育活動の一側面であるとしているとわざわざ明示するなど配慮をするなら、すべての規模の学校に対して行うべきであり、そうであるならば、市町村別の結果公表の必要性はないと考えるが、見解を伺う。

高橋知事 全国学力・学習状況調査の結果の公表について。調査結果については、市町村教委や学校において、保護者、地域住民の理解と協力のもとに、適切に連携を図りながら、子どもたちのさらなる学力向上に向けた取組につなげていくことが重要であり、公表の内容や方法等について、教育上の効果や影響等を十分考慮しながら、公表していくことが大切と考える。

柴田教育長 全国学力・学習状況調査結果の公表について。子どもたちの学力向上のためには、学校、家庭、地域、行政がそれぞれの課題を共有し、教育施策の改善や児童生徒の学習状況の改善に一丸となって取り組むことができるよう、教育委員会や学校が、保護者や地域住民に対し、調査結果を踏まえて的確に情報提供する必要があるものと考えており、道教委としては、引き続き、より多くの市町村教委の理解をいただきながら、それぞれの特色や取組状況などを明らかにした公表を行っていく考えである。

道下議員 知事の答弁では、学力向上のために、「ほっかいどう〝学力・体力向上運動〟」の一層の推進を図るとしているが、教育条件の整備は、そのためだけではない。本当に必要なのは、子どもたちが学校において、安心して学習や生活ができる環境づくりこそが、教育の機会均等ではないか。その条件が整っていない中で学力向上を目指すことは本末転倒である。

 道教委が、教職員の加配等に後ろ向きであることから、各自治体が、独自に臨時採用教員を配置し、学校配当予算の増額などを通して、学校における教育環境の整備に努めている。

 国任せではなく、知事自らがこの課題に対して率先して取り組むことを明言すべきと考えるが、見解を伺う。

高橋知事 教育環境の整備について。すべての子どもたちに、社会で自立して活躍できる力や、互いを尊重し、相互に支え合う心を育んでいくためには、子どもたちが安心して学び、生活できる教育環境をつくっていくことが重要と考えており、私としては、今後とも、学校の状況を踏まえた教職員の配置や、子ども未来塾の実施による学習支援など、道教委と連携して、教育環境の整備に向けてしっかりと取り組んでいく。

― 指 摘 ―

道下議員 学力テストによる学力向上の取組は、点数至上主義に陥るとの懸念どおりになってきている。学校現場は、平均点、順番付けの圧力に押しつぶされようとしており、市町村別結果公表などの動きは、こうしたことに地域を巻き込もうとする以外の何物でもない。市町村別結果公表はすべきではないと指摘する。

◆高校配置計画について

道下議員 これまでわが会派は、道内の実態と乖離(かいり)した高校の配置計画や新たな高校教育に関する指針の見直しを求めてきた。しかし、道教委は、見直しに着手するどころか、中学校卒業者の減少のみを取り上げて、間口削減、キャンパス校化、そして、募集停止を繰り返してきた。この対応は都市部の目線に立ち、地方を軽視しているものと言わざるを得ない。

 知事の掲げる「地域で子どもを安心して産み育てることができる環境」「地域を支える若い世代を育てる」を実効あるものにするためには、あらためて現在の高校配置計画と指針の見直しを進めるべきと考えるが、見解を伺う。

 また、教育の機会均等をうたうのであれば、地域で学び続けられる環境や、保護者への支援をどのように確保していくのかの見解を併せて伺う。

高橋知事 高校教育について。人口減少問題への対応が重要課題となる中、住民の方々が安心して暮らせる環境を確保するとともに、地域の未来を支える人材を育成する観点からも、地域における高校の果たす役割は大切と考えており、その再編整備に当たっては、地元市町村や教育関係団体などの意見を伺い、地域の実情などを十分に考慮しながら進めることが重要と認識する。

 道としては、生徒一人ひとりの個性と多様な能力を最大限に伸ばすことができるよう、道教委と連携しながら、教育環境の整備に取り組んでいく。

柴田教育長 高校配置計画について。道教委では、中学校卒業者数が減少する中、教育水準を維持し、活力ある教育活動を展開する観点から、高校の配置を検討しているが、広域分散型の本道において、人口減少社会への対応や地方創生の観点から、地域の教育機能を確保することも重要な課題であると認識している。

 このため、庁内に検討組織を設置し、現行の「高校教育に関する指針」の成果や課題などを検証するとともに、生徒や保護者への負担なども考慮しながら、特に、ほかの学校への通学が困難な地域にある小規模校の在り方や教育環境の充実に向けた検討を進め、年度内をめどに方向性を取りまとめる考えである。

◆道総合教育大綱について

道下議員 先日の第二回総合教育会議で大綱の素案が了承された。今回の会議でも、教育委員の一部は、自身の持論を展開するばかりで、大綱の内容が十分に検討されたとは言いがたい状況であり、教育委員の選任方法について、あらためて検討する必要があるのではないかという意見さえある。

 大綱の素案については今後、パブリックコメントを経て、十月の策定を目指すとされているが、今回の素案は総花的な内容で、北海道の教育が何を目指そうとするのか、はっきりしない。

 大綱とはいえ、策定の手順として、パブリックコメントだけでなく、日々、児童生徒に向き合う教職員や学校関係者の声を聞き、反映する必要があると考えるが、知事の見解を伺う。

高橋知事 北海道総合教育大綱の策定について。道教委においては、常日ごろから、教育委員や職員が地域を訪れ、地元の教育長、教職員と意見交換するなど、学校や地域の声の把握に努めていると理解しており、私自身もこれまで、地域に出向いた際などに、教職員や、学校教育にかかわっている地域住民から話を伺うなどしてきている。

 大綱の策定に当たっては、こうした機会も活用しながら、現在行っているパブリックコメントを通じて寄せられた意見などを参考にするとともに、今後とも、広く道民の意見を伺って策定していく考えである。

道下議員 知事部局と教育委員会との連携促進のために連携チームを発足したとするが、その内容は、キャリア教育や国際理解教育といったものであり、北海道の教育課題に目が向いていない。経済的に厳しい家庭に対する支援や地域に高校を存続させるための取組など、教育の機会均等にかかわる連携が優先されるべきと考えるが、見解を伺う。

高橋知事 知事部局と教育委員会の連携について。道では、これまでも、青少年の健全育成など、目的に応じて、知事部局と教育委員会の職員で構成する連絡会議等を設置し、互いに連携して取り組んできたほか、子どもの貧困対策についても、現在、協働して検討を進めている。

 また、知事部局と教育委員会との連携をこれまで以上に促進するため、コミュニティ・スクールの導入の推進など、地域と学校の連携を一層進めるための方策を検討する庁内連携チームなどを新たに設置しており、今後とも、知事部局と教育委員会が協力して取り組むべき教育課題については、迅速に連携チームを設置するなど、教育委員会と積極的に連携して取り組んでいく考えである。

柴田教育長 知事部局と教育委員会の連携について。道教委では、生活困窮世帯等の子どもの学習支援や、特別支援学校における医療的ケアなど、教育環境の整備に関し、これまでも、知事部局と連携を図りながら取り組んできた。

 このたびの教育大綱素案においても、家庭環境等の要因によって学習に困難のある子どもたちへの学習支援や、小規模化が進行する公立学校における教育活動の充実などについて、知事と政策の方向性を共有し、一致して対応を進めることとしており、今後も、教育環境の整備・充実をはじめ、様々な教育課題に適切に対応できるよう連携チームの設置のほか、知事部局・教育委員会連携促進会議での検討など、これまで以上に、知事部局と連携を図りながら、取り組んでいく考えである。

― 再質問 ―

道下議員 知事部局と道教委との連携を懸念して質問したが、明解ではない。

 知事の公約を実現するのであれば、道内各地域・各家庭への支援が欠かせないはず。コミュニティ・スクールの導入を検討するなどとしているが、まずは、地域の実態や保護者の経済状況など、具体的な指標をもとにして丁寧に分析した上で、施策に反映する必要があると考えるが、見解を伺う。

高橋知事 教育政策の推進について。本道が抱える教育上の諸課題の解決に向けては、学校、家庭、地域、行政が一体となって取り組むことが不可欠であり、私としても、地域における教育の実情の把握に一層努め、本道の将来を担う子どもたちが心身ともに健やかに育っていくことができるよう、取り組んでいく考えである。

柴田教育長 知事部局と教育委員会の連携について。道教委としては、「北海道の子どもたちは、道民の手で、地域全体で育んでいく」という姿勢で、本道の将来を担う心身ともに健やかな人材を育成していくことが重要と考えている。

 こうした中で八月には、知事部局と道教委が連携して取り組む、生活困窮世帯等の子どもの学習支援事業の推進会議が開催されており、今後においては、こうした会議を通じて、地域の実情や家庭の状況などを含め、幅広く情報を交換するなど、知事部局と方向性を共有しながら、道民の皆さんとともに、子どもが安心して学べる環境づくりに努めていく。

(道議会 2015-12-11付)

その他の記事( 道議会)

3定道議会代表質問の質問・答弁概要(9月11日)

 三定道議会代表質問(九月十一日開催)における山崎泉議員(北海道結志会)、荒当聖吾議員(公明党)、宮川潤議員(日本共産党)の質問、および高橋はるみ知事、山谷吉宏副知事、柴田達夫教育長、室城信...

(2015-12-18)  全て読む

道議会予算特別委員会(12月7日) 年度内に事例集 部活動の外部指導者活用で道教委が方針

 道教委は、部活動指導の外部指導者活用について、優れた事例をまとめた事例集を年度内に取りまとめる方針を決めた。四定道議会予算特別委員会第二分科会(七日)で、柴田達夫教育長が赤根広介委員(北海...

(2015-12-14)  全て読む

道議会文教委員会(12月9日)―クリアファイル問題 政治的行為の制限を通知 服務規律確保へ道教委

 道議会文教委員会(九日)では、道教委のクリアファイル調査結果報告を受け、質疑が行われた。山本広海教育部長は「教室内でクリアファイルが生徒の目にふれたことが確認された」などの調査結果を踏まえ...

(2015-12-14)  全て読む

道議会予算特別委員会(12月7日) 設置の課題解消に向け検討 中学校夜間学級で教育長

 七日に開かれた四定道議会予算特別委員会第二分科会では、中学校夜間学級について質疑が行われた。柴田達夫教育長は、夜間学級設置の課題解消に向けた対応について検討を進める考えを表明した。太田憲之...

(2015-12-11)  全て読む

道議会予算特別委員会(12月7日) 介助添乗員への研修効果を検証 特別支援学校のスクールバス運行で教育長が答弁

 四定道議会予算特別委員会第二分科会(七日)では、特別支援学校のスクールバスについて質疑が行われた。  柴田達夫教育長は「バス事業者においては、介助添乗員の業務に専門性が求められることから...

(2015-12-11)  全て読む

道議会文教委員会の質問・答弁概要(9月7日)

 道議会文教委員会(九月七日開催)における山崎泉委員(北海道結志会)、佐野弘美委員(日本共産党)の質問、および杉本昭則学校教育監、梶浦仁学校教育局長、佐藤和彦特別支援教育担当局長、加賀学施設...

(2015-12-10)  全て読む

クリアファイル問題調査結果―道教委 8管内の道立15校で確認 学校や市町村教委へ指導通知

 道教委は、「政治的目的を有する」と考えられるクリアファイルが道立高校内で確認された問題に関し、道立学校・市町村立学校を対象に実施した調査結果を九日の道議会文教委員会で報告した。空知など八管...

(2015-12-10)  全て読む

道議会文教委員会の質問・答弁概要(9月7日)

 道議会文教委員会(九月七日開催)における加藤貴弘委員(自民党・道民会議)、佐々木恵美子委員(民主党・道民連合)、川澄宗之介委員(民主党・道民連合)の質問、および山本広海教育部長、秋山雅行総...

(2015-12-09)  全て読む

教頭候補者確保へ道教委 早い段階から中核的役割を 組織的・計画的な人材育成方針策定

 道教委は、公立学校の教頭候補者確保のため、積極的に取り組む姿勢を明らかにした。教頭昇任を目指す教員が減少傾向にあることに対する措置で、組織的・計画的な人材育成方針の作成を進める。方針には、...

(2015-12-09)  全て読む

服務規律徹底の指導が必要 クリアファイル問題で道教委

 道教委は、政治的スローガンを記載したクリアファイルが職員室に置かれていた問題にかかわり、服務規律徹底について、指導が必要との認識を示した。四定道議会予算特別委員会第二分科会(七日)で、山本...

(2015-12-09)  全て読む